今回の基調講演で登壇した、CESA会長/カプコン代表取締役社長・最高執行責任者(COO)である辻本 春弘氏(画像右)と、KADOKAWA Game Linkage/ファミ通グループ代表の林 克彦氏(画像左)
30年を迎え、史上最多の5日間開催に臨んだ東京ゲームショウ
講演の第1部では、過去30年間における東京ゲームショウ(以下、TGS)の規模拡大と、日本ゲーム産業が迎えた転換点について振り返りが行われました。
1996年に第1回が開催されたTGS。当時のゲームイベントはプラットフォーマー主体のものが多かったのに対し、TGSはパブリッシャーやゲームメーカーが主体となって独自のゲームショウを実施するという目的で立ち上げられました。
当初は出展社数87社からのスタートでしたが、2025年には過去最多となる1,136社が参加し、その半数以上を海外企業が占めるまでに成長しています。
第1回TGSが開催された1996年当時のゲーム業界の動向
こうしたグローバル化の背景には、CESAによるアジア圏への積極的な誘致活動 がありました。当時はアメリカに世界最大級のゲーム見本市「E3(Electronic Entertainment Expo)」が存在しており、それに匹敵する世界規模のイベントへと成長させるべく、まずアジア最大級のゲームショウを目指して各国企業へ協賛を呼びかけたそう。その結果、TGSはアジアにおける「聖地」として認知され、現在では欧米企業からもアジア市場との接点として高く評価されるようになりました 。
TGS30年の歴史の中では、社会情勢に応じたさまざまな転換点があったといいます。
2017年には、当時日本で法律面などの課題から賞金付き大会の開催が難しかったeスポーツを普及させるため、東京ゲームショウ内に大々的なクロスステージを設置しました。これが日本におけるeスポーツ推進の大きな足がかりとなったとのこと。
また、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年には、業界に明るい話題を提供すべく、初のオンライン開催へと舵を切りました。
さらに、年々増加する来場者数に伴う安全確保のため、一部ホールに集中していた大手メーカーのブースを2024年から各ホールに分散させるレイアウト変更を実施しました。
「TGS2000秋」のブース配置図。特定のエリアに来場者が密集してしまうレイアウトとなっていた
「TGS2024」で改善されたブースレイアウト。会場全域にブースを点在させ、来場者が分散するように
そして2026年からは、より多くの来場者を受け入れるため、初の5日間開催 という試みが敢行。運営状況的に会場の拡大などが難しい中、一般公開日を1日増設することで対応した形となりました。
国内ゲーム市場規模は約2.6兆円へ到達。輸出産業の約6割がゲーム産業に
講演に併せて、CESAが刊行するゲーム産業の年次報告書「CESA ゲーム産業レポート」の2026年版 が発表。価格は55,000円(税込)で、2026年12月上旬に発売予定とのことです。
講演では、レポートで報告されているゲーム業界データの一部が紹介されました。
同書によると、国内のゲーム市場規模は約2.6兆円に到達 し、着実な成長を続けています。また、輸出産業としても日本のコンテンツ産業が稼ぐ外貨のうち約6割(6.1兆円)を占める重要な地位を確立しています。
労働環境の面では、平均年収770万円、平均年齢37歳、初任給26.6万円というデータが示されました。これらの結果は、ゲーム産業がデジタル化によって積み上げ型のビジネスモデルへと移行し、世界規模で安定した収益を上げられる産業へと成長したことを裏付けるものとされます。
インディー支援に教育改革。官民共同で取り組むゲーム産業成長戦略
第2部では、日本のゲーム産業が今後もグローバルで競争力を維持・向上していくための課題と、CESAが主導する具体的な取り組みについて説明されました。
これまで、日本の成長戦略における「コンテンツ産業」の中には、長らくゲームが含まれていませんでした。しかし今では、CESAが提供する実データを用いた働きかけが実を結び、エンターテインメント産業の成長を牽引する中核として政府からも高く評価 されています。
毎年CESA会員に向けて実施しているアンケート調査は、年々協力企業も増えてさらに精度が上がっているそう。CESAは官民協議会などを通じて、政府とともに投資と成長戦略を推進 していく意向を示しています。
また、CESAの長期目標として、産業に新しい風を吹き込むためのインディーゲーム支援 にも注力しています。TGSでのインディーブース拡大に加え、海外展開に不可欠なカルチャライズやローカライズにかかる多額の費用負担を軽減するため、政府に対する補助金の要望 なども行われています。
ゲーム産業の未来を担う人材育成も重要な課題として位置づけられています。
CESAは2025年に文化庁と連携のもと、ゲーム分野におけるクリエイター育成プログラム「トップゲームクリエイターズアカデミー(TGCA) 」を始動。若手クリエイターがゲーム制作の技術だけでなくビジネス展開の知見も学べる場として、レベルファイブ 日野 晃博 氏を筆頭に支援を行っています。
また、大学や専門学校に対してゲーム制作に必要な標準的スキルセットを提示する動きを文化庁とともに進めているほか、小学校へゲームクリエイターを派遣し作品制作の授業を行う施策もスタートしています。
こうした取り組みの背景には、社会におけるゲームへの認識を改め、若い世代が早期からゲームに触れる機会を設けて専門性を伸ばすことが、業界で即戦力として活躍する近道である という考えが根底にあります。
小学生が希望する就職先ランキングの上位にプログラマーなどが挙がることも多くなってきた昨今、しかし実際はゲーム専門学校や大学で専門教育を受ける学生の数は依然少なく、ゲーム会社へ就職した人の割合で見ても、専門学校出身者はわずか数パーセントに留まっているとのこと。
将来ゲームクリエイターを仕事にしたいと夢見る子どもたちが、学生の頃から好きなゲームにたくさん触れ、学校で専門技術を学び、やがて即戦力として大手ゲーム開発会社に就職できるような教育の形 を辻本氏は思い描いているといいます。
ゲーム産業が成長傾向にあることを周知しつつ、ゲームを通じた学びを肯定的に捉える環境作りが進められていることが語られました。
TGSは、単なる展示会にとどまらず、国内外のビジネスミーティングのハブや人材発掘の場として、日本のゲーム産業における重要な役割を担っています。業界で活躍する各企業がCESAという枠組みの中で一枚岩となり、産業全体の発展に向けて連携している点は、日本のゲーム産業の強みといえるでしょう。30周年を迎え、新たな一歩を踏み出したTGSとゲーム産業の今後の展開が期待されます。
「東京ゲームショウ2026」公式サイト 「東京ゲームショウ」公式Xアカウント
ゲームメーカーズで編集や諸業務に携わっています。『星のカービィ』シリーズと『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズが好きです。