「IPを世界に届ける」ため、ゲーム業界へ飛び込んだ
――今回は東映ゲームズの立ち上げメンバーである4名全員とお話できることとなりました。まずはそれぞれ自己紹介をお願いします。
松本:新規事業開発部の松本 拓也です。同部署には創設時から所属し、その前はITなどの領域を担当しておりました。なお、東映ゲームズは現状、この新規事業開発部に所属するメンバーが中心となって活動しています。
長島:長島 寛晃と申します。私も松本と同じく新規事業開発部の創設メンバーですので、ついに4月21日に「東映ゲームズ」ブランドを発表できたことについて、関係各所の皆様に感謝をしております。
岩川:岩川 日和と申します。私は前部署では映像プロデューサーをしておりましたが、2025年10月に新規事業開発部に異動してきました。
加藤:加藤 賢治と申します。「東京ゲームダンジョン」の会場で松本さん・長島さんと出会ったことをきっかけに、2025年8月から「ゲームアドバイザー」という肩書でジョインさせていただきました。
メンバーの中では私がゲーム領域に一番長く携わっていますので、細かいところをサポートさせていただいています。
――映画をはじめとする映像事業で知られる東映が、ゲーム事業を立ち上げるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
長島:東映では2023年に中長期ビジョン「TOEI NEW WAVE 2033」を打ち出しており、会社全体で事業戦略としてIPの創出・展開に力を入れる方針を掲げています。
新規事業開発部として、ユーザーが長く没入しやすいゲームコンテンツは「IPを育てて世界的に展開する」方針に適しているのではないかと考え、ゲーム事業として着手したのが2025年の3月でした。
二人きりの部署、ゲーム知見ゼロからのスタート
――2025年3月時点では、ゲーム事業担当者は松本さんと長島さんのお二人だけだったということですね。
長島:はい。おじさん二人きりの部署で、ゲーム事業をやろうと決断しても右も左もわかりませんでした。
そこで「クリエイターさんと顔見知りになろう」と、2025年3月の「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025」を皮切りに、松本と一緒に名刺をひたすら配る営業のようなスタイルで3か月ほど活動していました。
『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT2025 アフタームービー』
――東映さんにご挨拶いただいたら、相談などしたくなるような気がします。
長島:ゲームイベントを回っているうちに、「企画を見てほしい」「デモプレイに参加してほしい」といった相談を受けることも増えたのですが、ゲーム事業としての経験不足から返答に窮していました。
そんな時期に加藤さんと出会い、困っていることに対する答えや方針について教えていただいたんです。
何度も頼るうちに東映ゲームズのメンバーに入っていただくしかないと勧誘し、そこからは加藤さんによる“スパルタ教育”がはじまりました。
当時は「パブリッシャー」「デベロッパー」という言葉すら知らなかった我々に、ゲーム業界について叩き込んでいただいたので本当に感謝をしています。
――長島さんと松本さんのゲームに関する知見は、当時どれくらいだったのでしょうか?
長島:ゲーム事業発足が決まってからは触れるようになりましたが、それでも本当に全然でした。
松本:僕もほぼ知らなかった状態で、東京ゲームショウに行ったときは新鮮に感じました。ファミコンやPlayStationで少し遊んでいた世代としては、PCゲームの盛り上がりっぷりを目の当たりにして驚きました。
山積みの名作をプレイ、全国のゲームイベントを行脚
――本当にゼロからのスタートに見えますね。スパルタ教育の内容をうかがってもよろしいでしょうか。
松本:ゲームに関すること、すべてですね!
加藤:教えたことが多すぎて思い出せないこともありますが、名作・定番に位置づけられているであろう作品を30以上は挙げて、「全部やってください」とお願いもしました。
たとえば強いIPの事例として『都市伝説解体センター』や『グノーシア』、話題作として『8番出口』、トレンドの『Öoo』なども紹介しました。長島さんは、紹介作品のなかではとくに『Vampire Survivors』が好みだったみたいです。
長島:もうどっぷりハマりました(笑)。しかし、娘が中学受験を控えているのを横目に、父親である私がさまざまなゲームをプレイし続けているのはばつが悪かったですね……。
――ゲームそのものに触れる以外の教育もされていたのでは、と思います。
加藤:それこそゲームメーカーズさんのイベントカレンダーをチェックしながら、展示会などのゲームイベントによく足を運ぶようにもお話しました。
――参加頻度がすごく高そうです。
長島:規模の大小に関係なく国内イベントはだいたい参加し、多くのクリエイターさんとお会いできました。インディーゲームの現場には必ずと言って良いほどJ-monさん(@J__mon)がいらっしゃいますが、私も負けないくらい参加していると思います。
――海外についてはいかがでしょう。
加藤:東映ゲームズはグローバルを目指しているブランドなので、海外のイベントにも行くべきだと提案しました。全世界をめぐるのは厳しいとはいえ近隣地域は見たほうが良いと話し、台湾の「Tapei Game Show」と韓国の「G-STAR」には行ってきました。
松本:Tapei Game Showは2日間で重要人物全員と会うことを加藤さんから掲げられまして、10分刻みで打ち合わせがあって非常に忙しかったですね。
Tapei Game Show(写真左)とG-STAR(写真右)など、国内外の多くのゲームイベントに足を運ぶ
――たしかにスパルタな教育ですね。
加藤:国内でもパブリッシャーさんやクリエイターさんとの面談をギチギチに入れることもしていました。最近はようやく少し落ち着いてきたかと思います。
長島:そのおかげもあって150名ほどのクリエイターさんとお会いできましたし、ゲームや企画も拝見できました。
松本:発表した3本のパブリッシングタイトルについては、自信を持って取り組める作品になったと思っております。
映像でもゲームでも「ものがたり」を届けたい
――ゲーム事業への参入経緯について、もう少しお聞かせください。まず、なぜこのタイミングでゲーム事業をはじめようと思ったのでしょうか。
長島:ゲーム事業が発足した2025年3月は、『都市伝説解体センター』のヒットなど、ゲーム業界のトピックが本当に多かったころです。『8番出口』の映画化の発表もあって、「ゲームと映像のつながり」のようなものが見えたタイミングでした。
ゲームに詳しくない私でも、Steamの名称や存在についてはその前から耳にしていました。つまり、近年はゲームに興味がない人にもゲームの情報が届くようになっており、「ゲームと向き合う時期に適しているのではないか」と松本と話していたんです。
松本:少し硬い話をしますと、2023年の中長期計画の中では「IPをできるだけ自社で作りましょう」「海外でどう展開するのかを考えましょう」といったことが掲げられていて、海外展開が大きな柱になっています。
松本:そのタイミングで「ゲームはSteamなどを通じたダウンロード販売という潮流が生まれ、世界的に展開できる状況にある」情報をキャッチしたのが直接的なきっかけでした。
ダウンロードによって我々が作ったものを直接海外に販売できて、社内のリソースを使ってIPを作り出せるかもしれない。その2点がビジネス的には大きかったですね。
――社内のリソースとは具体的に何を指しますか。
松本:一つ紹介すると、弊社の東京にある撮影所の部署「ツークン研究所」ですね。3DCGやモーションキャプチャーなどを手がけており、Unityやアンリアルエンジンを使うメンバーが在籍しているんです。
長島:ゲーム事業に関する話そのものは、「東映ゲームズ」の件よりもだいぶ前から持ち上がっていました。彼らとはゲームを作りたいと常々話していたことや、先に話したゲーム業界の動きが、ゲーム事業発足へのアクセルを踏むきっかけになりました。
ツークン研究所は、CG/VFX制作だけでなく、モーションキャプチャー専門チームによる「名もなきモーション」の制作・販売なども行っている
――いずれはツークン研究所さんと協力し、ゲームを作ることも視野に入るのでしょうか。
長島:そうですね。いずれはツークンのような社内の各部署と連携して、良いゲームを企画開発できるようにしたいと考えております。
既存IPへの姿勢と今後のビジョン
――現時点においては、東映さんの既存IPをゲーム化する予定はありますか。
岩川:今のところは、考えていないですね。ただ、将来的に絶対にやらないということではありません(笑)。
加藤:外部の人間である私から見ると、東映ゲームズは少なくとも「東映として良いIPを世に出したい」考えが根幹にあります。
松本:そうですね。僕らとしても本当に議論を重ねて、一度はゲーム事業をどっぷりとやってみないことには部署として、会社として身にならないだろうと思ったんです。
事業として育てるプロジェクトであることは上層部にも話し、若手の人に入ってほしい思いで2025年10月に、岩川に来てもらいました。
――ゲーム会社を買収するといった手も取らなかったと。
松本:選択肢としてはあったのかなと思いますが、我々はあくまで東映の中でゲームをIPとして世に問える体制を作りたかった。それが大きな目的です。
そして、加藤さんともお話しした結果として、パブリッシャーとしてゲームを出す経験を積むことからはじめています。
――指針について理解が深まりました。少し気が早いですが、パブリッシャーとしての経験を積んだ後のビジョンはありますか?
長島:パブリッシャーとして年に2、3本のタイトルを世に出しつつ、 3年後から5年後に向けてオリジナル作品も視野に入れて日々活動しております。
――プレスリリースでは、代表取締役社長の吉村 文雄氏は「映画、テレビ、催事などの分野と並ぶ『新たな柱』」に位置づけているとのコメントもありました。
松本:今のところ、弊社の各事業にゲームが有機的につながる姿をイメージしています。
――映像業界から参入した立場として、武器や長所をどのように分析していますか?
長島:映画を宣伝することにも長く携わっている会社ですので、ポスターや予告編作りが上手いのは強みの一つです。いま担当している作品に関しても、キーアートやロゴなどを作っており、完成度の高いPVやMVも作れていると思っております。
パブリッシングタイトル『DEBUG NEPHEMEE』のキービジュアル。ロゴと背景は東映ゲームズが制作している(画像は東映ゲームズのポストより引用)
――映像業界の経験から来る見方やビジョンがあれば教えてください。
岩川:東映は「ものがたりを作ってきた会社」でもあるので、良いものがたりを届けたい意識は強く持っています。ただ、この「ものがたり」は単純なストーリーだけを意味するものではなく、キャラクターや世界観も含めたものを「ものがたり」と呼んでいます。
最初のパブリッシングタイトルとして発表した3作品も世界観が際立っている作品であり、これからもそういった良いものがたりを届けていきたいと思います。
――映像業界とゲーム業界とで通じる部分はありますか。
岩川:「クリエイターさん第一」という土台は不変であり、そもそも変わってはいけない部分です。我々はあくまで届ける役割であって、作品にかかわるすべてのクリエイターさんを大切に、そして感謝する姿勢は映像でもゲームでも変わらないと思います。
「映像化」も視野?契約・権利やサポート範囲は?
――改めて、パブリッシュする際のIPの帰属先や権利についてお聞かせください。
長島:基本的な考えとして著作権などの権利はクリエイターさんにあり、「ゲーム以外の商品化、イベント化」といった二次利用の窓口として我々がいる立ち位置です。
松本:パブリッシュを請け負う際の考え方は一般的なパブリッシャーさんと同じで、売上から一部をいただくのが基本です。今回発表しているパブリッシングタイトルについても、同様の契約を交わしています。
将来的には、一部権利を持たせていただくとか、こちらから発注するとかの形があるかもしれません。その場合でも、契約内容で我々もクリエイターさんも相互にデメリットがないよう、契約についてはご相談しながら進めます。
加藤:業界が違うと常識が異なることも意識しながら丁寧に進めており、オンラインで契約書を読み合わせるなどしているおかげか、今のところハレーションは起こっていません。
岩川:企業間で結ぶ契約書を見たことがないクリエイターさんも多くいらっしゃるというのは、我々としてもあまり知らなかったことなので、すごく学びにもなりました。丁寧に説明しながら、内容を完全に理解・納得していただいたうえで契約させていただきたいなと思います。
――東映ゲームズさんと契約するとなると、映像化に期待を寄せる開発者さんも多いのではないかと思いますが、実際にはいかがですか。
松本:「上手くいけばそういう可能性もあると思いますので、ゲームのリリースから一緒に頑張りましょう」という言い方を最初にしています。
長島:これも「加藤の教え」ですね。
岩川:ゲームとして世に広げることが第一で、映像化の優先順位はまだ高くありません。ただ、東映はゲームを含めたIPを広げやすいチャンネルを持っている会社であるということもお伝えはしています。
松本:対外的な強みではあるんですが、「映像化を前提にゲーム事業は展開しない」という戒めが我々の中にはあります。
――契約に関しては、サポート範囲も気になります。
松本:QAやLQAを丁寧に行うのは大前提ですね。とくにテストプレイに関しては、ものがたりを作ってきた会社としてクオリティを出していけたらと思います。
ゲーム業界での宣伝に関しては、まだ知識も浅いので上手いところには敵わない面もあると思いますが、品質面への取り組みも通じて「プレイしたお客さまに広めていただける」ことが理想的です。
加藤:もちろんマーケティングもやりますし、QAやLQA、翻訳を専門の会社さんにお願いするなど、パブリッシャーの役割としてイメージされることは一通りカバーします。
長島:クリエイターさんから出展したいイベントに関する相談も受けつつですが、イベント出展についても基本的にはこちらが請け負います。
――イベント出展も検討されているのですね。
長島:大きなものですと、京都での「BitSummit」、9月の「東京ゲームショウ」に出展する予定です。その間も、体力の続く限りは規模の大小を問わず全国のイベントに出展したいと考えています。
9月以降は加藤さんからアドバイスをいただいているように、アジアを中心に海外イベントへの出展も検討しているのが、2026年のプランです。
――アジアのゲームショウには足を運んでコンタクトを取っているというお話もありました。現状のターゲットとしてはアジアを中心に、という動きになるのでしょうか。
長島:中長期ビジョンに関しては「全世界」を打ち出していますが、いま手の届かない地域については現地のパブリッシャーさんやマーケターさんにお願いできるよう、我々の中で仕込んでいる段階ですね。
岩川:グローバル展開に関しては、東映内に「国際事業部」があり、ともにグローバルを目指す仲間として社内で情報交換の機会も持っています。
また、ゲームの海外展開に関しては、海外販売に必要なノウハウなどを学ぶプログラム「Global Game Growth Gateway(以下、G4)」に参加しています。このプログラムでは、海外展開に向けた講義を月に1回受けたり、海外のゲームショウの視察に同行させてもらえます。
Global Game Growth Gatewayロゴ(画像はGlobal Game Growth Gatewayのニュースリリースより引用)
岩川:私は、G4の採択者メンバーの中で最もゲーム業界歴が浅いので、講師の方々だけでなく採択者の皆さんからもいろいろと教えていただいています。新参者の我々にも惜しみなく情報を教えてくださるので、すべて吸収して頑張りたいです。
――プラットフォームとしてはSteamがメインになりそうに見えます。それ以外のプラットフォームについては、どう考えていますか?
長島:その都度できる限りのプラットフォームで発売していくことは現時点でも検討はしています。
――パッケージ版も視野に入りますか。
長島:どれくらい先になるかはわかりませんが、目指していきたいです!
発表された3タイトル。選んだ理由は?
――東映ゲームズ設立と同時に発表された3つのタイトルについてもお聞きしたいです。まずは3作品以外も含めた候補タイトルとの出会いについて教えていただけますか?
長島:イベント会場で名刺交換し、メールで企画書を拝見してから面談という流れが大半ですので、基本的に出会いはゲームイベント・展示会ですね。
――対面でのコミュニケーションを重視されているんですね。
長島:そうですね。「会いに行くパブリッシャー」であることを心がけています。
たとえば、岩川が担当している作品のクリエイターさんは広島県在住で、ちょっと出かける感覚で広島を訪問しています。松本も、担当作品のクリエイターさんに会いに韓国まで行っています。
松本:歴史的な寒波でマイナス15度という寒さで大変なこともありましたが、クリエイターさんから「東映ゲームズさんにお願いしたいです」と言っていただけた時には、行った甲斐があったなと。
最後の契約など、大事なお願いをするときは海外であっても現地に行ってもお会いしなければと考えています。もしブラジルのクリエイターさんと契約したとしても、行くはずです。
加藤:一度はチームメンバー全員と直接会うことにしています。やはり顔が見えないと、お互いに不安に思う部分もありますから。
――そんな誠意ある対応でパブリッシュが決まった3つの作品について、ぜひそれぞれご担当者の方から決め手や魅力を紹介ください。
長島:私が担当しているのは、ダークファンタジーの世界を描いた『HINO』です。若手クリエイター5人のチーム「UnGloomStudio」が手がけており、ジャンルとしてはアクションADVです。
長島:絵師の「やたら」さんがボールペンだけで描いたキャラクターをスキャニングし、ゲームに落とし込まれています。そのアートにも惹かれましたし、ストーリーもすごく重厚だと感じます。
将来的にはマルチプラットフォーム展開まで見込めるような作品として、期待を込めてパブリッシュに至りました。
――松本さんが担当しているのは、推理ADV『KILLA』ですね。
松本:『KILLA』との出会いは東京ゲームダンジョンで、実は加藤さんと最初にお会いしたきっかけにもなったゲームです。
初めて触ったときの印象がとにかく強烈で、「ゲームって、今はこんなことができるんだ」と思いました。ビジュアルはかわいいのに怖さも感じさせるギャップ、絵本のようなビジュアルを動かすというアイデア、全体の世界観まで驚きでした。
試遊したとき、加藤さんと「こんなすごいゲームがあるんですね」とお話したのが、もう随分前になりますね。
今回の3作品の中では最初に拝見したゲームだったんですが、そこから多くのゲームと出会ってもパブリッシュしたいと思い続けた、一目惚れと言える作品ですね。
――「ネフェミー」といういきものを“デバッグ”する作品『DEBUG NEPHEMEE』は、岩川さんが担当されています。
岩川:『DEBUG NEPHEMEE』はノロマさんがストーリーもイラストも音楽も、そしてプログラミングまで全部ひとりで作っている個人開発作品です。
ですが、そうは思えないほど緻密に、丁寧に作られていることにまず目を惹かれました。
パブリッシュの検討段階で「ストーリーなどの資料があれば見せていただけませんか」とお願いしたら、世界設定やストーリーがすごく細かくまとめられたExcelファイルが送られてきました。
この作品の世界観はノロマさんが学生の時に思いついていたそうで、ノロマさんはご自分を「ネフェミー愛好家」と表現しています。
彼らの存在を広めるためにゲームを作りながら、かわいらしさの裏にある「使命」がテーマになっていることなど、本当に緻密に作られた世界観とストーリーに惚れて、是非にとお声がけさせていただきました。
――3作品ともダークな雰囲気が漂っているように思います。この共通点は、東映ゲームズとしてカラーを出したいといった狙いがあったのでしょうか。
松本:この並びを役員に知らせたら「ホラーばっかりやるんですか?」とは、聞かれてしまいました(笑)。
結果的にそうなっただけであって、別に狙っていた訳ではないんです。また、いずれもビジュアルが少しダークですがホラー作品ではないですし、方向性も違っています。
東映ゲームズ流・作品の見つけ方
――作品を選ぶ際、東映ゲームズさん全体での方針のようなものはありますか?
長島:キャラクター、ストーリー、世界観からなる「ものがたり」が魅力的であることは注視しています。ジャンルについては何でも歓迎です。
――出会いは展示会が中心とのお話もありました。非常に多くの作品が集まるイベント会場で、皆さんがどこに注目して作品の魅力を探っているのかも気になります。
松本:僕は自分でやるというよりは、「試遊しているお客さまを観察する」ことが多いですね。
自分のプレイだけではまだまだ分からないことも多いので、どういうような楽しみ方をされているのか。どういったお客さまが試遊しているのか。といったことを判断材料にしています。
長島:私は松本とは逆に、自分の直感に従っている気がします。レコードのジャケット買いのような感覚で、資料を見せていただいたりクリエイターさんとお話したりして「良いな」と思ったものは話を進めていきます。
岩川:Steamでちょこちょこ遊んでいたのもあって、元から持っている好みの部分が大きくはなってしまっているとは思いますが、その中でもメインビジュアルには注目しています。
メインビジュアルのセンスが良い作品はコンセプトもしっかりしていて、作品としても筋が通っていると思えることが多いですね。
加藤:付け加えますと、アドバイザーという立場も踏まえ、タイトルの選定については私は一切アドバイスしていないんです。もちろん意見を求められたら私の視点でのコメントは伝えますが。この3名が激推しする作品なら大丈夫だと思うのもあり、決定には関わっていません。
――最後に、皆さんの今後の意気込みをお聞かせください。
長島:我々東映ゲームズとしては映像化を含めた横展開について聞かれることも多いですし、もちろんやっていかなければいけないことでもあると考えています。
ですが、スタートは「ちゃんとゲームを販売すること」。これが大事だと思っていますので、販売に向けて尽力します。よろしくお願いします。
松本:今後についてですと、やはり会社の事業ですので「継続」を意識しなければいけません。できるだけ早く若い方に入ってもらい、経験を積んでもらいながら、事業としてしっかりとしたものにしていきたいなと思っています。
岩川:「東映だからこそゲーム業界でできることがあるんじゃないか」と我々としても考えていますし、反対にクリエイターさんが東映ゲームズに望むことで、我々が想像もしないこともきっとあると思います。これからは広くそういったご意見もいただきながら、「できること」を現実にしていきたいなと思います!
加藤:私は東映のチャレンジを楽しみにしている立場ではありますが、正解のひとつと言える道を選び取り、着実に歩んでいると思っています。
楽しみにしている反面、保守的な考えもありまして、ゲームを事業にして儲けていくことはめちゃくちゃ大変です。
ただ、その中で「売ると決めたら売る」で5年くらい頑張っていけば絶対に何かが起こって夢が見られますよと言っていますし、そのチャレンジが続けられるようにするのが私の仕事だと考えているので、国内外問わずあらゆる可能性を引っ張ってきてご提供できればと思います。
おまけ:カイロソフトにロゴ制作を依頼したのは誰?
――東映ゲームズのロゴとロゴアニメーションは、カイロソフトさんが手がけています。プレスリリースには「メンバーによる熱い希望で実現した」と記載がありました。具体的には、どなたの希望だったのでしょうか。
松本:誰かと言われると僕になります。事業を発足してから、最近プレイしたゲームについて社内で聞くと、カイロソフトさんの名前を挙げる若い方が多かったのです。
僕は世代としてドット絵・ピクセルアートで描かれたゲームを懐かしく思うのですが、若い人にも親しまれているのが面白く感じました。
2025年夏に開催されたドット絵のオンリーイベント「Pixel Art Park」に行ってみたら幅広い年齢層の来場者さんで賑わっていて、ピクセルアートという表現は懐古主義的な見られ方ではなく現代のメインストリームにもなっている、世代を超えて受け入れられているのではないかと思えたんです。
そうした現状を見ていると、東映のロゴをピクセルアートで表現するのは理にもかなっているのでは、と思いました。そこで、ダメもとでカイロソフトの代表取締役である臼井 和之さんに相談したら「良いっすよ」と快諾いただいた、という経緯ですね。
――ロゴについては松本さんがすべて担当されたのですか。
松本:とくに細かい部分へのこだわりについては、岩川が粘ってくれました。
岩川:私から本家の東映ロゴに雰囲気を寄せつつもかわいさを少し盛ってほしいとか、パッと見て東映だとわかってもらえるようにとかお願いをしつつ、カイロソフトのアーティストの方々からご提案をいただいて、本当に二人三脚で完成させていきました。
ピクセルアートのことを理解できていないがゆえに無茶なお願いをすることもあったんですが、その際は「その完成形は思ったより良くならないと思います」と教えていただけて、本当にありがたかったです。
松本:おかげで、カイロソフトのゲームで遊んでいた方を含め、社内からの反応がすごく良かったです。
――「荒磯に波」のピクセルアニメーションのこだわりもお聞きしたいです。
岩川:東映ゲームズ版の「荒磯に波」は8秒ほどのアニメーションで、ピクセルアートの表現としては長い方です。一定の動きを繰り返すのではなく、ずっとユニークなモーションという点が特殊でした。カイロソフトさんとしても「こうしてみるとどうですか?」と段階的に確認していただいたので、やり取りが長くなりましたね(笑)。
長島:業界後発の事業として、インパクトがあるものを出せて良かったと思います。
岩川:カイロソフトの臼井さんからも「自社のクリエイターがこんな表現ができるんだと発見になった」と言っていただけました。
――東映ゲームズさんがパブリッシュしたゲームを起動すると、映画と同じようにザッパーンと波打つ演出が見られるようになるのでしょうか。
岩川:クリエイターさんとお客さまに喜んでいただけるのなら、ぜひ入れていきたいです!
起動すると「荒磯に波」が流れるゲームで遊べる日も近いかもしれない
「東映ゲームズ」公式サイト「東映ゲームズ」公式Xアカウント
大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。