ゲムダン史上最大規模を迎えた「東京ゲームダンジョン12」レポート。少女の“大切なもの”をコストにするカードバトルADV『代償少女』など注目作品を紹介

ゲムダン史上最大規模を迎えた「東京ゲームダンジョン12」レポート。少女の“大切なもの”をコストにするカードバトルADV『代償少女』など注目作品を紹介

2026.05.14
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2026年5月3日(日)、東京・浜松町にて、インディーゲーム展示会イベント「東京ゲームダンジョン12」が開催されました。

本稿では、数々の展示作品からライターが注目したタイトルをピックアップし、会場の様子とともにフォトレポート形式でご紹介します。

TEXT / 種村 朋洋
EDIT / 浜井 智史

目次

初の3フロア展開、出展団体数は400超と過去最大規模へ

「東京ゲームダンジョン12」は、東京都立産業貿易センター浜松町館の2階・3階・4階で開催。展示スペースは史上初となる3フロアでの展開となり、出展者数も410団体と過去最大規模を迎えました。来場者数も4,231名を記録し、歴代最多を更新しました。

早期入場・一般入場直前の時間帯には入場待ちの大規模な行列ができており、会場では家族連れでの姿も見られ、インディーゲームイベントのますますの盛り上がりが感じられました。

1秒でも遅刻すると死ぬ!?ハイスピード通学アクションADV『ふまんぐーる』

『ふまんぐーる』は、遅刻すると死ぬ呪いにかかってしまった女子高生が、始業時刻までに登校するべく通学路を疾走するアクションアドベンチャーです。

ノンストップでまっすぐ走り続ける主人公を操作して障害物を避けつつ、拡声器で「だ」という音を出して敵を撃破しながら最速ゴールを目指す、タイムアタック式のゲームとなっています。

障害物にぶつかると徐々にストレスゲージが溜まっていきます。ゲージが一杯になると不満が爆発してバケモノが出現し、強制戦闘に突入。タイムロスとなるため早急に倒さなければなりません。

画面左上のストレスゲージが溜まりきると、ストレスが具現化したバケモノに足止めされてしまう

開発を手がけるのは、プランナーのTochigi Haruka氏をはじめプログラマーやデザイナーなど10名程のメンバーで構成された「Team Sumi」。

Tochigi氏はゲームフリークで『ポケットモンスター』シリーズの開発に携わった経歴をもち、『Pokémon LEGENDS アルセウス』ではCGディレクター、『Pokémon LEGENDS Z-A』ではディレクターを務めています。

本作のコンセプトについて同氏に伺うと、通勤時間を少しでも楽しく過ごすために毎日道を変えたり、ストレス解消のために大声で叫んでみたいという欲求を抱いたりした同氏の実体験から着想を得ているそうです。

通学路を走るアクションパートではRTAのような手触りを心がけており、とくにレトロゲームのRTAのような操作感を強く意識しているとのこと。3本のレーンをクイックに行き来する挙動や、効果音やエフェクトが操作にぴたりとハマる演出にこだわりが見られました。

キャラクターデザインに関しては、Tochigi氏が提案したキャラクターや世界観の設定をもとに、デザイナーの意見も取り入れながら制作しているそう。

女子高生の可愛らしさと、ストレスから生まれたバケモノのクリーチャー然とした造形を対比で見せるアートスタイルが意識されています

着せ替え機能による見た目の変化も楽しめる

本作は2026年内にリリース予定。出展時点において主な機能の実装などが完了しているといい、今後はストーリーパートの制作を進めながらゲーム全体のブラッシュアップに取り掛かるそうです。

『ふまんぐーる』SteamストアページTochigi Haruka氏 Xアカウント

呪われたゲームを解呪せよ。リズムゲーム&シューティングゲームが融合した『Depth:Origin』

『Depth:Origin』は、リズムゲームとシューティングゲームの要素を融合させたアクションアドベンチャーです。

一般的なリズムゲームなら音楽とともに流れてくるノーツをリズムに合わせて押していくシステムとなるところ、本作はシューティングゲームの「攻撃」と「回避」をリズムゲームの要領で行うという独自のゲームシステムを採用。

襲い来る敵をリズムに乗ってショットで撃破し、またリズムに合わせて敵の攻撃を回避。2種類のアクションを駆使してステージクリアに挑みます。

リズムに合わせた攻撃と回避を駆使し、ボスの撃破を目指す

ストーリーは、呪物の取り締まりや鎮圧を任務とする特殊部隊に所属する主人公が、「プレイした人を飲み込む」と報告された呪いのゲームソフト「Depth:Origin」を解呪するというもの。

ゲームを攻略することで解呪が可能ですが、呪い側はクリアを妨害しようと心霊現象によりプレイヤーへ妨害干渉を行います。

呪いの干渉に抗いながら解呪を進めていくと、次第にゲームソフトに秘められた過去が明かされていきます。

ボスを撃破するとストーリーパートが開始する。プレイヤーは作中のゲーム『Depth:Origin』の解呪を目指す

開発者のこはと氏にお話を伺うと、本作は「リズムゲームが苦手な人にリズムゲームの楽しみ方を伝える」というコンセプトを掲げているそう。

リズムゲーム初心者に向けたシステム設計が施されており、攻撃タイミングの判定を比較的広く設定することで、ある程度プレイヤーが任意のタイミングで攻撃を当てられる仕組みとなっています。

音楽・譜面まわりの設計においては、統合型サウンドミドルウェア「CRI ADX」を採用。機能の実行タイミングを専用の譜面データを用意することなくBPMと同期できる仕組みなどを活用しています。

不気味なキャラクターなどのルックは、10年ほど前の3Dアニメーションの雰囲気から着想を得ているそう。出展段階では仮アセットにより表現されている

本作は2023年末頃から開発をスタート。当初のゲーム性は現在とは異なるものだったそうですが、イベント出展での反応などを踏まえつつ、より理想的な結果が得られるようにシステムの刷新に踏み切ったといいます。

また「第2回GYAAR Studio インディーゲームコンテスト」において本作が受賞を果たしたことがきっかけとなり、ゲーム開発者が集まる場に参加する機会を得られ、効果的なアドバイスを受けることができたそうです。

Depth:Origin』は2026年内のリリースを目指して鋭意制作中。今後はストーリーパートや新規楽曲の実装を進めていくとのことです。

『Depth:Origin』Steamストアページこはと氏 Xアカウント

少女の記憶や感覚など“大切なもの”をコストに払うカードバトルADV『代償少女』

『代償少女』は、記憶を失った少女「赤月アイ」を主人公としたアドベンチャーゲーム。怪しげな森の中で目覚めたアイは、なぜか所持していた魔導書を頼りに敵と戦い、森からの脱出を図ります。

戦闘では合計35枚のカードデッキからランダムで配られる4枚の手札を消費することで、敵にダメージを与えたり、特殊効果を発動したりできます。しかしカードの正体は、アイの視覚や発話能力、記憶といった「アイ自身」にほかならず、カードを消費するごとに各要素がアイやゲーム画面上から失われていきます

単なるゲーム的なリソース管理だけでなく、支払う「代償」を考慮に入れながら攻略するのが本作の重要なポイントとなります。

「痛覚」「視覚」といったさまざまなカードを消費して敵と戦う

「視覚」のカードを消費すると、手札やパラメータなどのUIが見えなくなってしまう

開発メンバーは、エンジニア・企画立案者のえいとえいど氏と、アート担当の紅芋けんぴ氏で構成されるユニット「代償プロジェクト」。

もともと本作は、フリーゲーム投稿サイト「unityroom」で不定期開催されている「Unity 1週間ゲームジャム(Unity1week)に応募する目的で制作されました。

重い選択をプレイヤーに突きつける」というコンセプトからカードゲーム形式の戦闘システムを採用する方針が決まり、大切なものの重さやそれを失う喪失感・苦しみ」 をコア体験として設定したそうです。

カードの中には「妹」「誕生日」など、プレイヤーに直接的なデメリットがないカードも存在する。そのような代償を払う際にも、苦しみや喪失感を味わえるゲームを目指しているとのこと

本作は講談社の「ゲームクリエイターズラボ」のラボメンバーに採択されています。ラボに応募するにあたり、Unity1weekで本作を投稿した時点ですでにゲーム体験のコア部分が形になっていたため、製品版の開発に向けて発展させるべき箇所を明確にアピールできたといいます。

現在制作中の製品版では、デッキ構築要素や、カードの所持状況に応じてセリフやストーリー展開が細かく分岐するアドベンチャーパートを実装する予定とのこと。試遊ではこれらの新要素を先駆けて体験することができました。

条件分岐の実装手法について、unityroom版ではスクリプトの中で分岐処理を行う方式を取っていたため、複雑な機能の実装に苦労したそう。製品版では、複雑な分岐処理を管理できる新機能を導入したことで開発を効率化できたといいます。

デッキ構築要素や新たなストーリーパートの構想は、unityroom版を制作していた時点ですでに練られていたそう

『代償少女』製品版は2026年内のリリースを予定しています。

『代償少女』Steamストアページ

AIとの論戦に勝ち残れ。自分が人間であることを証明するADV『Human Error』

『Human Error』は、宇宙船に取り残された1人の人間が、生き残りを賭けてAIと論戦を繰り広げるテキストアドベンチャーゲームです。

複数のAIたちに紛れ込んだ主人公が「自分はAIではなく、宇宙船の維持管理に役立つ生身の人間である」ことを証明するべく、ほかのAIたちを論破したり、自分にかけられた嫌疑を晴らすために釈明したりと議論を交わします。最終的に、AIの一団から下される追放令を回避できればゲームクリアとなります。

登場するAIたちは単なるキャラ設定ではなく、ChatGPTによるテキスト自動生成機能を用いて実装された正真正銘のAIです。より人間らしいセリフを出力するため、AIに対して家族構成や年齢、職歴などのプロンプトをランダムに与えるといった工夫が重ねられています。

当初はAIを相手に採用面接を受けるような穏やかな作風で開発していたところ、ゲームとしての駆け引きやジレンマを演出するため、シリアスな世界観に変更したといいます。

試遊では、お客さんの反応からUIや進行の分かりづらさについて改善点を発見できたそう。また、本作は自由なテキストを入力して遊べるシステムであることから、開発段階では想定していないプレイ方法も観測できたといい、テストプレイの場として良い環境になったとのことでした。

試遊版は想定以上に難易度が高くなってしまい、クリアできたのは10人中1人程度だったそう。今後は難易度や入力のわかりやすさも調整する予定とのこと

本作の開発工程は他作品とは異なりプロンプトの調整に大きく依存しているといい、また新しいAIモデルが登場することで開発に大きな影響が及ぼされるため、開発の見通しは不透明な部分も多いそうです。

一方で、今後の情勢次第で本作のテーマ性が弱まる可能性も考慮すればこそ、できるだけ早期にリリースできるよう鋭意開発を進めているとのこと。

本作の開発者は、東京藝術大学大学院映像研究科のゲーム・インタラクティブアート専攻で教授を務めるほか、「トップゲームクリエイターズ・アカデミー」(TGCA)の第1期育成クリエイターにも選抜されている金井 啓太氏。

なおBogosor Gamesのブースでは、『Human Error』を含めて合計3作品が展示されていました。

金井氏によると、1つのタイトルを制作している間に他作品のアイデアが浮かぶことがあるそうで、その場合は作業負担が増えることがあるものの、並行してゲーム制作を進めていると語っていました。

Bogosor Gamesのブースでは、『Human Error』のほかにも、リバーシをモチーフとした『Reversi2048』、ボード上の駒をタイピングで動かして戦う『NyctoType』などを試遊できた

「Bogosor Games」公式Xアカウント

「東京ゲムダン13」は8月開催。12月には「大阪ゲムダン2」も

東京ゲームダンジョンは今後も東京・浜松町での開催が予定されています。

次回開催の東京ゲームダンジョン13は、2026年8月8日(土)に開催されます。出展申し込みは、2026年5月22日(金)に開始されます。

また、2026年12月には、大阪ゲームダンジョン2の開催も予告されています。

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東京ゲームダンジョン 公式サイト
種村 朋洋

制作者の個性とこだわりが光るインディーゲームが大好きです。

ゲーム以外では謎解きイベントや漫画が好きです。

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