オープンソースのゲームエンジン「Godot Engine」の勉強会が渋谷で開催。Godot 4.3に移行すべき理由や、Godotベースのツクール誕生秘話などが語られた全6セッションをレポート

2024.07.31
注目記事ゲームづくりの知識講演レポートGodot
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Godot Japan User Communityが主催する、Godot Engine(以下、Godot)の勉強会「Godot Meetup Tokyo Vol.2」が2024年7月26日に開催されました。

本稿では、GodotにおけるApple Vision Pro向けアプリケーションの開発手法や、エンジン開発チームによるアニメーション機能のアップデート内容などが語られた本イベントの様子をレポートします。

TEXT / 神谷 優斗

目次

会場案内およびGodot向けサウンド技術の話

最初に行われたCRI・ミドルウェアによるセッションでは、同社が提供するサービス「CRIWARE」および「OPTPiX SpriteStudio」におけるGodotへの対応状況が語られました。

サウンドツール群「CRIWARE」は、Godotでは「CRIWARE for C#」を通して使用します。

CRIWARE for C#は、C#の開発環境でCRIWAREを扱うプラグインで、2024年8月のリリースが目標となっています。講演時点ではGodot 4での動作が確認できており、将来的にLE版も用意される予定です。

セッションでは、2Dアニメーション作成ツール「OPTPiX SpriteStudio」で制作したアニメーションをGodot上で再生する「SpriteStudioPlayer for Godot」も紹介されました。

OPTPiX SpriteStudioによって作られたパーティクルや2Dイラストのアニメーションを再生できる

SpriteStudioPlayer for Godotは、講演時点でGodot 3.6に対応済み。Godot 4への対応は進行中とのことです。

ツクール開発チームはなぜアクツク最新作でGodotを選んだか?

Gotcha Gotcha Games 開発部 森野 友介氏によるセッションでは、ベースエンジンにGodotを採用した「RPG Maker(旧:RPG ツクール)」シリーズ最新作『ACTION GAME MAKER(以下、アクツク)』の詳細が語られました。

セッションでは、Godotとアクツクの相違点として以下が紹介されました。

    • ビジュアルスクリプトを搭載
    • サイドビューに特化した機能を搭載
    • サンプル素材を同梱
    • Godotの3D機能はオミット

    UIはGodotのものをそのまま使用しているそう。これにより、Godot向けのプラグインなどがそのまま使える利点があります。

    講演時点でのアクツクはGodot 4.1をベースにしており、今後はGodot 4.3ベースにアップデートする予定であるそうです。

    森野氏は、アクツクのターゲット層がそのままGodotを使うようになる流れを作り、Godotへ貢献したいと語った

    エディタアドオンで快適開発@tool

    ふぉるた氏によるセッションでは、Godotのエディタを拡張するツールを実装する手法が解説されました。

    Godotでは、スクリプトに「@tool」アノテーションを付与することで、処理をエディタ内から直接実行できるようになります。

    Godotにおけるエディタ拡張にはエディタプラグインを制作する方法もありますが、@toolを使うとエディタプラグインを実装する手間が省けます。一方で、1つのスクリプトファイルにゲーム用のコードとツール用のコードが混在するデメリットも持ち合わせます。

    その対策として、関数の実行時にエディタ内かどうかを判定する関数を用いて処理を分岐させるテクニックが紹介されました。

    Godotには、エディタ内でのみ使用できるクラスがいくつか提供されています。セッションでは、ふぉるた氏が薦める2つのエディタ専用クラスが紹介されました。

    1つめの「EditorScript」は、スクリプトエディタから実行できる処理を定義するクラスです。RPG Maker用の画像素材をGodotのタイルセットに一括で変換するツールが使用例として紹介されました。

    2つめの「EditorScenePostImport」は、3Dモデルなどのインポート時に行われるシーンの生成に、独自の処理を追加できるクラスです。マテリアルの差し替えや、別々のモデルを1つにまとめる処理などを自動で実行できます。

    Godotでゆるっと!ゲーム制作RTA

    続いてはYuumayay氏が登壇。講演時点で15歳の同氏は、Godotを始めて1年3か月の間で56作品を制作したそうです。

    Yuumayay氏の作品をまとめた動画

    セッションでは、「RTA(※)」を模して、Godotで2Dプラットフォーマーを完成させるまでのタイムアタックを実演。
    ※「Real Time Attack」の略称。ゲーム開始から、ゲームクリアなど特定の状態に到達するまでの時間を競う

    StaticBody2DやCharacterBody2Dなどのノードを追加し、プラットフォーマーを組み立てる

    わずか2分27秒で、操作できるプレイヤーキャラクター地面が存在する2Dプラットフォーマーが完成しました。

    会場ではトラブルがあったため、今回の記録に。リハーサルの時は49秒で完走できたそう

    なお、同氏が主催するゲームジャム「Godotでゆるっとゲーム制作祭」は、冬頃に次回開催が予定されています。

    Godotで始めるApple Vision Proアプリ開発

    shiena氏によるセッションでは、Apple Vision Pro用のアプリケーションをGodotで開発する手法が解説されました。

    Apple Vision Pro向けアプリケーションの開発にはGodotVision」ライブラリを使用します。GodotVisionを使用すると、AR開発フレームワーク「RealityKit」とGodotの橋渡しが可能になります。

    GodotVisionを使うと、RealityKitが入力とレンダリングを担うようになる(画像はGodotVision公式サイトより引用)

    GodotVisionのサンプルプロジェクトはGitHubで公開されている

    ジェスチャー認識は「ドラッグ」「回転」「拡大・縮小」の3つに対応。

    一方、講演時点では以下の機能には対応していません。

      • ハンドトラッキング
      • ARKit機能(平面検出など)
      • GDScript言語単体でのプログラミング(Swiftが必要な場合がある)

      セッションでは、実際にGodotのプロジェクトをApple Vision Pro上で実行する様子が実演されました。

      Godot におけるアニメーション機能の古今東西

      Godotのアニメーションチームであるトカゲ氏は、Godot 4.0からGodot 4.3までに施されたアニメーション機能への改修について説明しました。

      Godotにはキーフレームアニメーションを再生する2つのノード「AnimationPlayer」「AnimationTree」が実装されています。しかし、従来では両者が異なる親クラスを継承していたため、同じ役割を持ちながらも別々に実装されている機能が存在していました

      そこで、Godot4.3では共通のAnimationMixerクラスを継承するよう変更。これにより実装が一本化したほか、今まで潜在的に存在していたブレンドなどに関するバグが修正されました。

      トカゲ氏は特別な理由がない限りGodot 4.3へ移行することを推奨している

      Godot 4.3におけるアニメーション機能の改修については、Godot公式ブログでも説明されています。なお、同氏はVRM 1.0への対応に向けて準備を進めているとのことです。

      講演後の懇親会でも、参加者同士がGodot特有の開発事情や日頃の業務に関する情報交換などを行っており、日本におけるGodotの盛り上がりが感じられました。次回は2024年11月の開催が予定されています。

      「Godot Meetup Tokyo Vol.2」イベントページ「Godot Meetup Tokyo Vol.2」アーカイブ動画
      神谷 優斗

      コーヒーがゲームデザインと同じくらい好きです

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