2026年3月28日(土)、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)にてゲームクリエイター向けカンファレンス「GAME CREATORS CONFERENCE ’26」が開催されました。
本稿では、プラチナゲームズ株式会社 ステージディレクター兼エンバイロメントアートリードの阿部 雄大氏、エンバイロメントアーティストの島貫 瑞希氏と百瀬 一真氏の3名が登壇した講演「『NINJA GAIDEN4』における最小限で過剰な背景制作」をレポートします。
2026年3月28日(土)、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)にてゲームクリエイター向けカンファレンス「GAME CREATORS CONFERENCE ’26」が開催されました。
本稿では、プラチナゲームズ株式会社 ステージディレクター兼エンバイロメントアートリードの阿部 雄大氏、エンバイロメントアーティストの島貫 瑞希氏と百瀬 一真氏の3名が登壇した講演「『NINJA GAIDEN4』における最小限で過剰な背景制作」をレポートします。
TEXT / 橘いおね
EDIT / 浜井 智史
『NINJA GAIDEN4』の開発では「大量の敵に囲まれる緊張感や逆境感」「敵を真っ二つにするなどの残虐なアクション」といったシリーズの特色を活かしつつ、新システムによって新鮮な楽しさを取り入れることを最大の方針に据えています。
「アクションゲームのプリミティブな喜びを最大化することが『NINJA GAIDEN』の良さを最大化することになる」と定義し、そこから生まれたビジュアルコンセプトについて阿部氏は「逆境感」「刺激的」「変化」の3つを挙げました。
〈逆境感〉
ゲームシステムの面でも表現されている緊張感や逆境感を、ビジュアル面でも最大限に表現
〈刺激的〉
アクションで生まれる刺激に加えてステージビジュアルもピーキーで極端な印象にすることで、強烈で目の離せない刺激的な画面に
〈変化〉
ステージが進むごとにロケーションを大きく異なるものに変化させ、最後まで飽きさせない体験へ
これらのゲームコンセプトを最大化するためには背景を「異常で過剰」に仕上げるべきである一方、『NINJA GAIDEN』はピュアなアクションゲームを追求するべく開発リソースの大部分をアクションに回す必要がありました。
そうした経緯から、背景制作では「最小限で過剰な印象が出るように構築する」という指針が定められたと語られました
ゲームの背景を構成する要素は、ランドマークや戦闘体験、カットシーンにナラティブ演出など多岐にわたります。しかし制作期間が限られる中、クオリティを高めるためには取捨選択が求められます。
アクションを重視する『NINJA GAIDEN4』においては、背景制作にあたって戦闘体験に高いプライオリティを置いたそうです。
戦闘時の画面を構成する上でも、さらに細かな優先順位を設定。「戦闘中にユーザーがよく見る範囲に力を入れる」「ゲームスピードの速さに合わせて重要なアセットを記号化する」「シビアなゲームプレイに適したコリジョンを整備する」などの方針が立てられました。
アセット制作に関して、島貫氏は「戦闘体験以外でも、それぞれの(アセットの)役割を理解しつつ制作を進めることが重要」とも語りました。
本作では特に雨の表現に力を入れたとのこと。これは「最小限で過剰な印象を」という制作方針と「雨」「暗さ」「反射」「発光」というシチュエーションの相性が非常によいと判断したためだそうです。
本作の雨はマテリアル・VFX・ポストプロセスの組み合わせで実装されています。
マテリアルを活用した雨の表現として、水たまりや壁面の雨垂れ、水滴の制作事例が紹介されました。
一方、水跳ねや雨粒、キャラクターと相互作用する雨垂れなどはVFXとポストプロセスで実装されているとのこと。
実装上の技術的な課題として、雨の遮蔽判定を挙げた島貫氏。「建物内部や屋根などで雨を遮ること」「遮蔽がない場合は壁を伝って水を流すこと」という要件を満たすため、遮蔽の判定にWorldAO(World Ambient Occlusion)を採用したそうです。
また、雨の強さの変化を演出するためにチャプターの開始時に雨を過剰に強くするといった表現も取り入れています。
限定的な背景表現として「風表現」「同期表現」「海表現」について解説されました。
風の表現は一部ステージでのみ用いられる演出であることから、新規のシステムを組むのではなく、既存システムの組み合わせによるシンプルな実装を目指しました。
クラブのステージではBGMとライトの同期表現を実装。特定のタイミングで派手なVFXを出すことで、いわゆる「音ハメ」の感覚を演出しています。
海の表現もまた、プレイヤーが侵入できない遠景など一部領域での利用に限られるため、風と同様にシンプルな実装を目指しました。こちらはマテリアルのみで表現しているそうです。
PBR(Physically Based Rendering、物理ベースレンダリング)はリアリティの高い絵作りを可能とする一方で、各種設定や物理的整合性を厳格化しすぎると開発コストが増大するというデメリットもあります。
そのため本作では「異常で過剰な表現」を妨げないよう、PBRのルールを厳格化せず、表現したいことを尊重して柔軟に運用できるようにする方針が取られました。
続いて百瀬氏より、本作のステージ制作において共通アセットの流用でコストを抑えつつ異なる印象を演出した手法について解説されました。
本作ではステージごとにコンセプトが設けられています。そこで、共通アセットでステージ制作を効率化しつつ、ステージコンセプトを強烈に表現するアセットのみを新規作成することで、各ステージの特色を際立たせています。
共通アセットを活用しつつ、新規アセットによってステージのコンセプトを表現した例。東京の街並みを作る共通アセットに、提灯や絨毯、土壁などの新規アセットを追加することで「遊郭のような妖しい雰囲気」を強調している。
また、このステージは迷路のような構造でプレイヤーの視線が近景に集中しやすいことから、壁や床に絞ってアセットを制作することで効率化が図られている
同じロケーションを使用する場合でも、ライティングによって印象を大きく変えられます。本作では雨天時と晴天時におけるライティングの変化などを活用した絵作りを導入しています。
効率化の土台作りとして、まずアーティストとテクニカルアーティストの協力により、ゲームエンジンとHoudiniのオーサリングワークフローが構築されました。
これにより「エンジンで組み立てたレイアウトをHoudiniに持っていく」「Houdiniで組み立てたレイアウトをエンジンに持っていく」という相互運用が容易になり、さまざまな効率化ツール類を開発・運用する基盤ができました。
プリミティブな形状からルールに沿ってレイアウトを作成するツール。講演では一例として、平面やカーブをレイアウトに変換する様子が紹介されました。
レベルの形状を決めるグレーボックス工程では頻繁に地形を調整する必要があるため、作業効率を向上するため「エンジンで調整した地形をHoudiniに持ち込み、必要なコリジョンを自動生成し、エンジンに戻す」というワークフローを補助するツールが整備されました。
レイアウトやコリジョンのサポートツールは、アーティストが主導して開発したツールだそう。先にオーサリングワークフローの土台を組んでいたため、アーティストが各自で効率化を図れる環境が整っていたといい、これについて島貫氏は「最も大きな恩恵」と語っていました。
そのほかにも、ジョイントの設定を自動化するツールや、コリジョンのバグが報告された座標をエンジン上で確認可能にするツールが紹介されました。
『NINJA GAIDEN4』は非常にスピード感のある制作が求められたとのことで、短期間で面白い絵作りを達成するべく、各スタッフが広い裁量を持ち、各々が決断する体制を取っていたそうです。これについて阿部氏は「みんな作り方がバラバラになってちょっと大変」としつつも「みんながゲーム作りに真剣になることで、かなり楽しい開発ができた」と評価し、講演を締めくくりました。
プラチナゲームズ公式noteでは、本講演を含む「GAME CREATORS CONFERENCE ’26」」登壇講演2本に関するフォローアップ記事が公開されています。併せてご確認ください。
専門学校で3DCGとゲーム開発を学びつつ個人サイトで技術記事等を執筆してきた経歴をもとに、現在はライター・イラストレーターとして活動中。
「知る楽しさ」の共有を目標に掲げ、ライター業のかたわらで情報/技術系同人誌の制作なども行っている。
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