ミリタリーウェポンアーティストが教える「AR-15」の作り方。実在感を与えるウェザリング手法や、ベベル・UVパッキングまで3Dモデリングの全工程を解説

ミリタリーウェポンアーティストが教える「AR-15」の作り方。実在感を与えるウェザリング手法や、ベベル・UVパッキングまで3Dモデリングの全工程を解説

2026.08.10
特別企画注目記事3DCGテクスチャモデリング
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SFやミリタリーをはじめ、多彩なジャンルで写実的なキャラクターやプロップ、背景モデルを手がけるキプロスの3D制作スタジオ「Team From Earth」より、ゲーム向け武器アセットの制作手法に関する記事を寄稿いただきました

本稿では、ライフル「AR-15」を題材に、メッシュ構築からテクスチャリング、レンダリングに至るまで、同社で実際に活用されているワークフローを紹介。長期間使い込まれた痕跡を再現し、モデルに確かな実在感をもたらすための視点など、精巧で説得力のある3Dモデルを制作するための一連のプロセスを紐解きます。

※本稿は、Team From Earth様よりゲームメーカーズにご寄稿いただいたものであり、ArtStationに掲載された記事(英語)の日本語版にあたります。

目次

皆さん、こんにちは。アーティストとして制作に携わっていると、それぞれ「特に好きな工程」があるのではないでしょうか。私にとって、それはテクスチャ制作です。テクスチャリングこそが、制作工程の中でも特に重要なステージだと考えています。そしてこの記事を読み終える頃には、きっと皆さんにも納得していただけるはずです。

はじめまして、Andrew Stokaliukです。ゲーム向けの武器制作を専門とするウェポンアーティストとして、これまでさまざまなジャンルのAAAタイトルに携わってきました。近年は、特に現代ミリタリーやSFテイストの武器制作を中心に取り組んでいます。

現在はTeam From EarthでLead Weapon Artistを務めており、主にリアル志向のAAAゲームに向けた武器アセットを制作しています。今回の記事で取り上げるAR-15も、まさにそのカテゴリーに属するアセットです。

本記事では、このAR-15の制作を例に、モデリングから最終レンダリングまでの一連のプロセスを紹介します。中でも、特に重点を置くのがテクスチャ制作です。私自身が最も楽しんでいる工程であると同時に、最終的なクオリティを大きく左右する決定的な要素だと考えているからです。

なお、本記事は中級者から実務経験のあるアーティストを主な対象としています。ソフトウェアの基本操作や、入門レベルの制作フローについては詳しく触れません。

その代わりに、本記事では単に「どのように作るか」だけではなく、「なぜその方法を選ぶのか」に焦点を当てます。良いプロップを、ポートフォリオで強く印象に残る完成度へと引き上げるための、判断基準や考え方を掘り下げていきます。

制作フロー概要

まずは各工程の詳細に入る前に、Team From Earthで実際に採用している制作フロー全体を簡単にご紹介します。

基本的な流れは、CADでハイポリモデルを作成し、それをテッセレーションしてローポリモデルを制作します。その後、UV展開とパッキングを行い、目標とするテクセル密度を考慮したレイアウトを組みます。続いてベイク工程に進みますが、エッジのベベル表現には一般的なスカルプトではなく、Marmoset ToolbagのBevel Shaderを使用しています。その後、テクスチャ制作とレンダリングへ進みます。

各工程については要点を押さえながら順に紹介していきますが、特に詳しく取り上げたいのは2つあります。ひとつはBevel Shaderを活用したベイク手法、もうひとつは本記事の中心となるテクスチャ制作です。

リファレンス収集

リアリティを生み出すのは、「完璧さ」ではなく、むしろ細かな不完全さです。そのため、メーカーの製品写真のような新品の画像だけを集めても十分ではありません。

効率よくリファレンスを集めるためには、事前に「何を確認したいのか」をリストアップしておくことが重要です。そうすることで、膨大な画像の中から必要な情報だけを整理しながら収集できます。

私が普段チェックしている項目は以下のとおりです。

  • オイルやグリスの付着跡
  • 各アタッチメントに見られる摩耗や使用痕
  • 刻印、ステッカーなど、情報量を増やすディテール
  • 埃や汚れの蓄積、指紋
  • 打痕や小さなへこみ
  • ベースマテリアルの高解像度クローズアップ写真

すべてのパーツに特別な「ストーリー」を設定する必要はありません。目指すのは、「丁寧にメンテナンスされながらも、実際に使い込まれている武器」です。

何度も実戦で使用されてきたものの、決して新品ではなく、かといって極端に損傷しているわけでもない。そのくらいの状態が理想です。

ゲーム中では、プレイヤーが武器を遠景で見ることも多く、細かな傷や汚れまでは認識できないかもしれません。それでも、そうしたディテールの積み重ねは無意識のうちに「本物らしさ」として伝わり、武器全体の説得力を高めてくれます。

今回のプロジェクトでは、何よりもメカニカルな精度を重視しました。そのため、CADモデルの構造を正確に再現することを目的に、あらゆる角度から撮影されたリファレンスを徹底的に収集しています。

CADによるモデリング

それでは、実際の制作フローに入っていきましょう。

一般的なプロップ制作では、まず大まかなシルエットやボリュームを確認するブロッキングから始めることが多いですが、今回のワークフローでは、最初から最終形に近いマスターモデルの制作に取り掛かります。

モデリングにはCADソフトを使用しています。使用するツールはFusion 360でもPlasticityでも構いません。

私自身はPlasticityをメインに使用しています。その理由は、単に作業スピードが速いからではありません。

Plasticityを一言で表現するなら、「CAD版ZBrush」と言えるでしょう。エンジニア向けではなく、アーティストの思考に寄り添って設計されたツールだからです。

Fusion 360のような厳密なヒストリーツリーや、パラメトリックな履歴管理に縛られることがありません。そのため、大胆なデザイン変更を加えても履歴が破綻しにくく、制作の流れを止めずに作業を進められます。

形状をその場で曲げたり、切り出したり、ブレンドしたりしながら、操作手順ではなくデザインそのものに集中できる。それがPlasticityの大きな魅力です。

ウェポンアーティストにとって、CADの知識は「あれば便利」なスキルではなく、今や必須と言えるものです。

従来のボックスモデリングでは、多くの時間と労力をトポロジーの管理に費やします。一方、CADではその前提が大きく変わります。制作時間の約7割を、武器そのものの設計やディテールの作り込みに充てることができます。

その結果、構造的な正確さを備えたフォトリアルなモデルを、クリーンなデータとして効率よく制作できます。さらに、そのままSTEPファイルとして書き出せるため、後工程への展開もしやすくなります。

テッセレーションとローポリモデルの準備

CADで作成したSTEPデータは、そのままではゲームアセットとして扱えないため、まずテッセレーションを行い、滑らかなNURBSジオメトリをポリゴンメッシュへ変換します。

私はこの工程でPiXYZを使用しています。もちろん、Plasticityの標準エクスポート機能やMoI 3Dを使う方法もあり、実際にそうしたワークフローを採用しているアーティストも少なくありません。一方、Team From Earthでは、メッシュ最適化をより効率的に行えることから、武器制作ではPiXYZを標準的なワークフローとして採用しています。

ここで、今回の記事で使用する「ハイポリ(High Poly)」という言葉の意味を整理しておきます。このワークフローでは、「ハイポリ」は文脈によって異なる2つの意味で使われます。

CADにおけるハイポリモデルは、基本的にはローポリモデルと同じ構造を持ちながら、曲面を滑らかに表現するためにポリゴン数を増やしたメッシュです。この段階では、小さなベベルはまだ作成されていません。

一方、ZBrushでいうハイポリモデルはまったく別物です。数百万ポリゴン規模のスカルプトモデルに対し、ベベルや欠け、表面のディテールまでを手作業で作り込んだものを指します。

本記事では、このプロジェクトでなぜZBrushによるスカルプトハイポリを用意する必要がなかったのかについても、後ほど詳しく説明します。

以下は、ハイポリモデルとローポリモデルの違いです。

テッセレーションを行う前に、まずローポリモデルを適切な状態へ整理しておく必要があります。

最初に行うのは、後からベイクするディテールをジオメトリから取り除く作業です。例えば、ネジ山(スレッド)やグリップの滑り止めパターンなど、ノーマルマップで十分に表現できる細かな形状は、この段階で削除しておきます。

判断基準はシンプルです。シルエットや大きなパネルライン、分割ラインなど、形状そのものを印象付ける要素はジオメトリとして残し、それ以外の小さなネジ、ネジ山、細かな表面ディテールはノーマルマップに任せます。

また、この段階で必要に応じてメッシュを統合しておくことも重要です。例えば、マガジンを構成するパーツやサプレッサーなど、1つのメッシュとして扱って問題ないものは、あらかじめ結合しておくと後工程がスムーズになります。

PiXYZへ渡す前のローポリモデルが整理されているほど、その後のメッシュ最適化にかかる手間を大幅に減らすことができます。

UV展開

UV展開には、私はRizomUVを使用しています。非常に高機能なツールで、Blenderとの相性も優れているため、現在のワークフローには欠かせない存在です。

この工程で意識しているのは、できる限り多くのUVシェルをまっすぐに整えることです。そうすることで、テクスチャのエイリアシングを抑え、より安定した描画品質を得ることができます。

ただし、すべてのUVシェルを機械的に直線化するわけではありません。

長い円筒形のパーツであれば直線化は非常に効果的ですが、有機的な形状や複雑な曲面では少し考え方が変わります。このようなケースでは、シェル全体を無理に真っ直ぐにするのではなく、一辺を基準に軽く整列させる程度に留めるようにしています。

無理に直線化するとUVが引き伸ばされ、チェッカーパターンに大きな歪みが発生してしまうためです。

基本的な考え方はシンプルです。もともと直線に近い形状は積極的に直線化し、それ以外のシェルは縦または横方向の基準に合わせて手動で整列させます。

パッキングとテクセル密度

まず理解しておきたいのは、なぜモデルを複数のテクスチャセットに分割する必要があるのか、という点です。

今回のプロジェクトでは、最終的に12個のテクスチャセットに分割しました。モバイルゲームや比較的ディテール要件の低いタイトルであれば、武器全体を1枚のテクスチャアトラスに収めることも珍しくありません。

しかし、近距離での表示を前提としたAAA品質では、高いテクセル密度を確保する必要があるため、モデルをマテリアルIDごとに独立したテクスチャセットへ分割します。例えば、アッパーレシーバー、ロアレシーバー、マガジン、ストックなどがそれぞれ個別のセットになります。

このようなモジュール構成には、パフォーマンス面でもメリットがあります。スコープやサプレッサーのような着脱可能なアタッチメントは、ゲーム中に装備状況が変化することが多いため、エンジン側で必要なテクスチャだけを動的に読み込み・解放できます。その結果、VRAM使用量を抑えられるだけでなく、描画負荷の軽減にもつながります。

次に、テクセル密度についてです。

私が目安としているのは 120〜170 px/cm です。この範囲であれば、AAAクラスのFPSタイトルに求められる品質を十分に満たしつつ、4K解像度でも高いディテールを維持できます。また、プロジェクト全体のメモリ使用量も過度に増やさずに済みます。

プレイヤーから見えない部分に、高い解像度を割り当てる必要はありません。内部構造や通常は隠れているUVシェルは50%程度まで縮小し、リロードなどのアニメーション中に一瞬しか表示されない部分は30%程度まで落としています。

気付かれない場所であれば、積極的に最適化して構いません。視認しにくい場所ほど、より大胆にテクセル密度を下げることができます。

また、目標とするテクセル密度は、テクスチャの解像度だけでなく、アスペクト比にも影響します。つまり、正方形のテクスチャを使用するか、長方形を使用するかは、パーツの形状やサイズ、そしてプロジェクトの要件によって決まります。

例えば今回制作したAR-15では、サプレッサーを4096×4096の4Kテクスチャに配置すると、必要以上にテクセル密度が高くなってしまいます。一方、4096×2048の長方形テクスチャを使用すれば、目標としているテクセル密度にちょうど収めることができます。

画像上部は、長方形のテクスチャ(4096×2048)へパッキングした例です。この場合、テクセル密度は 165 px/cm となり、目標としている範囲に収まっています。

一方、画像下部は同じUVレイアウトを4096×4096の4Kテクスチャへ配置した結果です。テクセル密度は 234 px/cm まで上がり、今回のプロジェクトで想定している予算(ターゲット値)を大きく上回ってしまいます。

そのため、本プロジェクトではパーツごとのサイズや用途に応じて、4K・2Kそれぞれで正方形と長方形のテクスチャを使い分けています。こうすることで、必要な品質を維持しながら、テクセル密度とメモリ効率のバランスを最適化できます。

UVパッキングには UVPackmaster を使用しています。これまで試してきたツールの中でも、空き領域を最も効率よく削減できると感じています。

使用している設定は、下のスクリーンショットを参考にしてください。

1点だけ見落としやすいポイントがあります。長方形のテクスチャを使用する場合は、「Custom Target Box」 を有効にし、テクスチャのアスペクト比に合わせてターゲットサイズを設定することを忘れないでください。

ベベルのベイク

ここで、このワークフローの中でも特に効果の大きいテクニックを紹介します。

ZBrushでベベルを作成する工程を省略し、Marmoset Toolbag 5の「Bevel Shader」を使って、CADモデルから直接エッジの丸みを生成する方法です。

Team From Earthでも、武器制作ではこの手法を実際の制作フローの一つとして活用しています。

ただし、この手法には適用できる条件があります。

Bevel Shaderが真価を発揮するのは、「ハイポリモデルで必要なのがエッジのベベルだけ」という場合です。つまり、ハイポリ側で追加のスカルプト作業を行わないケースに限られます。

CADモデルであれば、この条件にぴったり当てはまります。ジオメトリ自体はすでに正確でクリーンに構築されており、不足しているのはエッジの丸みだけだからです。

一方で、欠けやサビ、溶接跡など、武器らしい使用感や素材感をハイポリモデルへ直接作り込みたい場合は事情が変わります。例えば『Metro』プロジェクトで行ったような表現では、Bevel Shaderだけでは対応できません。このようなディテールはスカルプトが必要になるため、ZBrushを使う工程は避けられません。

つまり、この手法は万能ではありません。クリーンなハードサーフェスモデルに限定されるワークフローですが、条件が合えば非常に大きな効果を発揮します。

追加のスカルプト作業が不要なケースであれば、この方法によって実作業を 1〜4日 短縮できる可能性があります。

これは経験則ではなく、Team From Earthで実際に手掛けたプロジェクトを通して得られた数値です。ナイフやハンドガン程度であれば約1日、内部構造まで作り込まれた複雑なライフルでは約4日短縮できました。

従来のワークフローでは、その時間の多くをZBrush上でのハイポリモデルの管理に費やすことになります。Dynameshによる再構築、Decimation、数多くのSubToolのエクスポートとインポートなど、工程そのものに多くの時間が取られてしまいます。

今回のワークフローでは、PiXYZからハイポリモデルを書き出した時点で、そのままベイク工程へ進むことができます。

ベイク前の準備自体は、ごく一般的なワークフローです。まずシーン内のメッシュを整理し、それぞれの名前を _high と _low にリネームしておきます。

ハイポリモデル側では、マテリアルを2種類作成します。

1つ目の base は、大きなパーツや中程度のサイズのパーツ用です。

2つ目の small_det は、ボルトやリベット、ネジ山、ピンなど、小さなディテール専用に使用します。

この2つの違いは Bevel Width の設定です。この値は見た目以上に重要で、小さなパーツほどベベル幅を細く設定する必要があります。

もし同じベベル幅を適用してしまうと、小さなパーツではベベルが形状の大部分を占めてしまい、本来のシルエットが失われてしまいます。さらに、隣接するエッジ同士のベベルが干渉し合い、ノーマルマップ上でアーティファクトが発生する原因にもなります。

準備ができたら、Marmoset Toolbagの Baker を使用します。

まず、Bakerへハイポリモデルとローポリモデルを読み込みます。

続いて、ハイポリモデルのマテリアル設定を開き、Surface パラメータを Bevel に変更します。すると、CADモデルのシャープなエッジに自動的にベベルが生成されます。

あとは通常どおりベイクを実行するだけです。

ローポリモデルには、生成されたベベル形状とCAD由来の正確なシェーディング情報の両方がノーマルマップとして転写されます。

これが、このワークフローの核心です。工程自体は驚くほどシンプルですが、得られる効果は非常に大きなものになります。

補足しておきたい点がもう1つあります。

ビューポート上でハイポリモデルにベベルが表示されていなくても、ベイク結果には影響ありません。表示されていなくても、ベベル情報は問題なくローポリモデルへベイクされます。

ただし、ハイポリモデル上でもベベルをプレビューしたい場合は、レンダリングモードを 「Ray Tracing」 に切り替える必要があります。

テクスチャリング

いよいよ、テクスチャリングの工程です。

私にとって、この工程は制作の中で最も面白く、同時に最も難しいパートでもあります。

今回のプロジェクトでは、全部で12個のテクスチャセットを制作しました。それぞれが独立したアセットとして丁寧に作り込む必要があり、1セットごとに多くの時間と労力を費やしています。

以下の動画では、レイヤーを1つずつ有効化しながら、各工程が最終的な見た目にどのような影響を与えているのかを順番に紹介しています。

ベースマテリアルの状態から完成まで、テクスチャがどのように積み上がっていくのか、そのプロセス全体を確認していただけます。

この工程で最も重要なのは、冒頭で集めたリファレンスにあった「リアリティのある情報量」を、テクスチャへ一つひとつ落とし込んでいくことです。

その中でも、まず意識したいのがグラデーションです。

意外と見落とされがちですが、適切に使えば、質感にわずかな変化を与えるだけでなく、作品全体の説得力を大きく高めてくれます。ただし、どこにでも入れれば良いというものではありません。

グラデーションが効果を発揮するのは、摩耗や熱の影響を受けやすい場所です。例えば、ピストルグリップ、マガジン、ハンドガードなど、手が頻繁に触れる部分。そして、サプレッサーの先端では、発射時の熱や燃焼ガスによって生じる焼け色やスス汚れが自然なグラデーションを作り出します。

ベースマテリアルの作り込みも同じくらい重要です。

出発点としてはQuixelのマテリアルライブラリが非常に優秀です。アルマイト処理されたアルミニウム、粉体塗装された樹脂製グリップ、スチールなど、品質の高いベースマテリアルを活用できます。

その上で、Substance 3D Painterの中で武器の「履歴」を積み重ねていきます。グラデーション、サプレッサーのスス、グリップ周辺の油汚れや摩耗、そして細かな傷や使用痕など、一つずつ手作業で追加していきます。

Quixelが提供してくれるのは優れた土台です。しかし、その武器らしい個性や説得力を作り上げるのは、最終的にはアーティスト自身の仕事になります。

同時に、コントラストと情報量のバランスも常に意識する必要があります。全体が平坦に見えてもいけませんし、逆に細かなディテールを詰め込みすぎてノイズだらけになってもいけません。

その確認方法として私がよく使うのが、カメラを意図的に引いてチェックする方法です。

モデルを実寸スケールのまま3メートル、そして5メートル離れた位置から確認します。これはゲーム内でキャラクターが武器を構えた状態や背負った状態に近い距離です。

3メートルでは、シルエットや金属と樹脂のマテリアルの違い、明暗のバランスといった大きな情報がしっかり読み取れる必要があります。

一方、5メートルまで離れると、小さな傷やホコリなどの細かなノイズはほとんど認識できなくなります。その状態でも、全体のコントラストやグラデーションだけで魅力的に見えるかどうかが重要です。

もちろん、実際に確認すべき距離はゲームによって異なります。FPSでは武器が常に画面の手前に表示されますが、TPSではさらに離れた位置から見ることになります。

そして、最終的にすべてをまとめ上げるのが、「その武器がどのような時間を過ごしてきたのか」という履歴を再現することです。

テクスチャは、実物の武器と同じ時間の流れを追うように積み重ねていきます。

まずは工場から出荷されたばかりの新品の金属を作り、その上に耐摩耗性のある塗装を施します。そして初めて、使用による変化を加えていきます。

最初は小さな傷。その後に薄く積もったホコリや油汚れ。そして人が触れた痕跡として、指紋や皮脂汚れ、シミなどを重ねます。

さらにエッジの塗装剥がれや深い汚れを加えることで、表面に変化と存在感が生まれます。

刻印やマーキングも忘れてはいけません。これらも他のディテールと同じように、摩耗や経年変化を受けながら自然に馴染ませることが重要です。

このように、実際の時間経過に沿ってレイヤーを積み重ねていくことで、テクスチャ全体に一貫性が生まれ、説得力のある仕上がりになります。

この段階で、Marmoset Toolbagなどレンダリングに使用する環境も組み始めることをおすすめします。

カメラアングルを決めてみると、「ここはもう少し汚れが欲しい」「この部分はコントラストが弱い」といった改善点が見えてくることは珍しくありません。

レンダリングは、一度で完成する工程ではなく、調整を繰り返しながら仕上げていく反復的な作業です。必要に応じてPainterへ戻り、細部を修正しながら最終的なクオリティを詰めていきましょう。

よくある質問 「エンジン上で直接テクスチャを作らないの?」

「それなら最初からエンジン上でテクスチャを作ればいいのでは?」と思う方もいるでしょう。

もっともな疑問です。

実際、その方法も現在では広く採用され始めています。近年では、Substance 3D Painterではマスクだけを作成し、最終的なマテリアルはゲームエンジン側で構築するワークフローを採用するプロジェクトも増えてきました。

この方法では、Dirt、Wear、Metal Edgeといった各種マスクをSubstanceで作成し、それらをプロジェクト専用シェーダーの仕様に合わせて各チャンネルへパッキングします。その後、ゲームエンジン上で最終的なマテリアルを組み立てます。

このアプローチの最大のメリットは、高い柔軟性にあります。

一組のマスクセットがあれば、新品の状態、軽く使用感のある状態、大きく摩耗した状態など、さまざまなバリエーションを簡単に作り分けることができます。

特に、多数のアタッチメントやカスタマイズ要素を持つ武器を扱うプロジェクトでは、このワークフローはほぼ必須と言えるでしょう。

一方で、その柔軟性には代償もあります。

マスクベースのパイプラインでは、利用できる情報は用意したマスクと共通シェーダーに依存します。そのため、摩耗表現などは基本的にプロシージャルに生成され、モデル全体へ比較的均一に適用されます。

大量のアセットを効率良く扱うという点では非常に優れていますが、「この角だけは特別な傷がある」「この部分だけ長年の使用で塗装が薄くなっている」といった、人の手で意図的に作り込んだ細かなストーリーまでは表現しにくくなります。

一方、従来のアセット単位のテクスチャ制作では考え方が異なります。

武器ごとに専用のテクスチャをベイクし、表面の細部まで一つひとつ手作業で調整していきます。

こうした積み重ねこそが、近距離でモデルを見たときの説得力につながります。

そのため、プレイヤーが武器を間近で観察するようなゲームであれば、アセットごとに作り込む従来のワークフローの方が、より高い品質を実現できるでしょう。

レンダリングとライティング

レンダリングを始める際に、まず行っておきたいのが、掲載予定のアングルごとに専用のカメラを作成しておくことです。

実際の制作では、一度レンダリングして終わりになることはほとんどありません。ライティングやテクスチャを調整した後に、特定のカットだけを再レンダリングしたくなる場面が何度も出てきます。

あらかじめ各アングル専用のカメラを用意しておけば、そのような場合でもカメラを組み直す必要はなく、必要なショットだけをすぐに再レンダリングできます。

ライティングは、最終的にどのようなカットを作りたいかによって大きく変わります。

私自身は用途に応じて3種類のライティングパターンを使い分けており、それぞれ少しずつセッティングの複雑さが増していきます。

まず、白背景に武器を置いたシンプルなプロダクトショットであれば、基本的にはDirect Lightを1灯用意するだけで十分です。

そこへ雰囲気を少し加えたい場合は、HDRIをごく弱い強度で併用します。

私の場合、HDRIのIntensityは0.2〜0.3程度に設定しています。これ以上強くするとHDRIの影響が大きくなり、メインライトの役割を奪ってしまうためです。

一方、環境の中で見せるレンダリングでは、基本となるのは3点ライティングです。

使用するのは、Key Light、Fill Light、Rim Lightの3つです。

Key Lightは、シーン全体の主光源となり、モデルの立体感や形状を決定します。

Fill Lightは、シャドウを適度に持ち上げ、暗部の情報を補います。

そしてRim Lightは、輪郭にハイライトを与え、背景からシルエットを際立たせる役割を担います。

基本となるライティングを組んだあとは、光の向きや強さを細かく調整しながら、カメラアングルとのバランスを探っていきます。最終的には、試行錯誤を繰り返しながら、そのモデルに最も合うライティングを見つけていくことが重要です。

クローズアップで見せる環境レンダリングでは、Spot Lightが最も効果的です。

この用途では、広い範囲を柔らかく照らすKey Lightではなく、光を一点へ集中的に当てられるSpot Lightのほうが適しています。

スポットライト特有の鋭い陰影と集中的な光によって、テクスチャや刻印といった見せたいディテールだけを効果的に浮かび上がらせることができます。一方で、それ以外の部分は自然に影へ沈み、視線を主題へと誘導できます。

下のスクリーンショットでは、点灯しているライトはSpot Lightのみです。この1灯だけで、ライティングの印象が大きく変わることが分かると思います。

もちろん、Fill LightとRim Lightも追加します。

Fill Lightは、シャドウが完全な黒つぶれになるのを防ぎ、暗部にも適度な情報量を残してくれます。

一方、Rim Lightはシルエットを際立たせるだけでなく、エッジに美しいハイライトを生み出し、モデルの立体感や素材感をより印象的に演出してくれます。

これで、すべての工程が完了です。

一つひとつ見ていくと工程は多く感じますが、流れ自体はとてもシンプルです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この文章を通して最も伝えたかったことは、「説得力のある武器」は、細部の積み重ねによって生まれるということです。

そして、その細部の説得力を支えているのは、実物らしく表現された無数の傷や汚れ、摩耗、熱変色などの小さな表面表現です。それらが積み重なることで、武器は初めて「その一本だけの履歴」と個性を持ち始めます。

この記事で紹介してきたCADモデリングからライティングまで、すべての工程は、そのリアリティを支えるために存在しています。

ぜひ実際に手を動かし、さまざまな手法を試しながら、自分なりのワークフローを見つけてみてください。そして何より、リファレンスを細部まで観察することを忘れないでください。

積み重ねた観察と試行錯誤は、必ず作品に表れます。

今回ご紹介した内容は、Team From Earthで日々実践している武器制作の考え方でもあります。この記事が、皆さんの制作に少しでも役立つものになっていれば幸いです。

「Team From Earth」公式サイト「Breakdown: How to Make a Weapon Look Realistic and Eye-Catching」(Team From Earth投稿の英語版記事)|ArtStation

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