この記事の3行まとめ
- Epic Games、次世代バージョン管理システム「Lore」をMITライセンスで公開
- 数TB規模のデータや数百万のファイルでも高速な同期とストレージ節約を実現する
- オフラインでのコミット・ブランチ操作なども搭載。2027年にはアンリアルエンジンのエディタとプラグインで統合
Epic Gamesは、次世代のバージョン管理システムである「Lore」のプレステーブル版(pre-stable release)を公開しました。
「State of Unreal 2026 Official 4K Livestream | Unreal Fest Chicago」の2時間19秒時点から、Loreについて説明されている
オープンソース(MITライセンス)で公開されており、価格は無料。プロジェクトの種類にかかわらず使用でき、ソフトウェアの改変、配布、およびLoreを基盤としたツールの構築も行えます。
使用環境としては、Windows、macOS(ARM64)、Linux向けにCLIツールやサーバーバイナリが提供されています。C/C++やRustのネイティブインターフェースに加え、JavaScript、Python、C#、Goなどの言語バインディングも可能です。
(画像は「State of Unreal 2026」動画よりスクリーンショットしたもの)
「Lore」は、既存のバージョン管理システムが抱えていた大規模化やバイナリデータの取り扱いに関する課題を解決することを目指した、バージョン管理システム(以下、VCS)です。
ゲーム開発においては、ソースコードだけでなく、数GBのテクスチャや3Dモデル、音声ファイルなどのバイナリアセットが大量に存在します。それらの巨大なバイナリアセットを含む大規模プロジェクトを管理しやすくするため、マルチテナント(※)の安全性やオープン仕様を備えたシステムとして、Loreが設計されました。
※ 同じシステム・インフラを複数の顧客(テナント)で共有する仕組み
LoreはすでにEpic Games内部や、「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」の組み込みVCS(旧称:Unreal Revision Control)として稼働しており、クリエイターが持つ島データのバージョン管理やクックパイプラインのバックエンドとして利用されています。
(画像は「State of Unreal 2026」動画よりスクリーンショットしたもの)
コンテンツアドレスとフラグメント化による高速化
Loreの最大の特徴は、「バイナリファースト」のアーキテクチャです。データはファイル単位ではなく、さらに細かいフラグメント(チャンク)に分割され、暗号学的ハッシュ関数であるBLAKE3を用いたコンテンツアドレスとして管理されます。
ファイルの分割には、データの内容に基づいて境界を決める「コンテンツベース(FastCDC)」と「固定サイズ」の2種類のチャンク化手法がサポートされています。
数GBのバイナリファイルの一部だけを編集した場合でも、変更されたフラグメントのみが再アップロードされるため、通信量やストレージ容量を節約できます。
スパースな作業ツリーとオフライン対応
Loreはデフォルトでスパースな設計を採用しています。
開発者がリポジトリをクローンする際、「ビューフィルタ」を用いて必要なディレクトリだけを指定でき、データはオンデマンドで取得(遅延フェッチ)されます。数TBの大規模プロジェクトであっても、手元のストレージを圧迫せず作業を開始できます。
また、ブランチの最新ポインタなど更新が必要な状態を管理するミュータブルストアと、データ本体のフラグメントキャッシュをローカルに持っています。
そのため、ファイルのステージング、コミット、ブランチの作成や切り替え、差分の確認といった日常的な操作はオフラインで手早く完了し、サーバーへのPushやSync時にのみ通信を行います。
(画像は「State of Unreal 2026」動画よりスクリーンショットしたもの)
ロック機能と、リンクおよびレイヤーによる柔軟な構成
バイナリアセットのように自動マージが不可能なファイル向けに、ファイルレベルのロック機能も搭載されています。ロックの取得や照会はサーバーと通信して行われ、誰かがロックしているファイルに変更をPushしようとするとサーバー側で拒否されるため、複数人が同じファイルを同時に編集してしまう競合事故を未然に防げます。
さらに、巨大なプロジェクトを複数のリポジトリに分割して管理するための「リンク」と「レイヤー」機能も搭載しています。
リンクはGitのサブモジュールに似ていますが、ディレクトリごとにアクセスを制御でき、指定リポジトリへの権限がないユーザーには、その中身が見えないよう安全に管理されます。
レイヤーはローカルでのみ適用されるオーバーレイ機能であり、CIパイプラインや個人のアセットライブラリをプロジェクトに透過的にマウントする際に役立ちます。
2027年にはアンリアルエンジンのエディタとプラグインで統合
ロードマップによれば、2026年にはVS Codeプラグインや仮想ファイルシステム(VFS)の実装、数百万ファイルに対応するスケーラブルなロック機能の強化が予定されています。
2027年には、早期アクセス版として提供されているデスクトップクライアントのオープンソース化や、アンリアルエンジンのエディタ本体へのプラグイン統合、Webクライアントの提供が計画されています。
Loreの詳細は、公式サイトをご確認ください。
「Lore」公式サイト