『SILENT HILL』シリーズを復活に導いたプロデュース術。「推し」の時代に推されるゲームを作るには【CEDEC2026】

『SILENT HILL』シリーズを復活に導いたプロデュース術。「推し」の時代に推されるゲームを作るには【CEDEC2026】

2026.07.30
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国内最大規模のゲーム業界カンファレンス「CEDEC2026」が、2026年7月22日(水)から7月24日(金)までの日程で開催されました。

初日の22日(水)には、コナミデジタルエンタテインメント 第1制作部の統括プロデューサー 岡本 基氏、アシスタントプロデューサー 松尾 泰樹氏、プランナー 杉本 絢音氏が登壇し、「SILENT HILLのプロデュース術 『推し』の時代に推されるゲームをめざすには? ユーザーの熱量を重視するプロデュース方針と海外開発を軸にしたグローバルゲーム開発進行」と題した講演が行われました。

約10年の時を経て復活し、リメイク作品『SILENT HILL 2』(2024年)と新作『SILENT HILL f』(2025年)を立て続けにグローバルヒットさせた『SILENT HILL』シリーズ。その裏にあったプロデュース方針と、海外スタジオとの開発体制はどのようなものだったのか、『SILENT HILL f』のケーススタディを中心に語られた講演の内容をレポートします。

TEXT / 高橋 祐介
EDIT / 浜井 智史

目次

右から、第1制作部 統括プロデューサーの岡本 基氏、アシスタントプロデューサーの松尾 泰樹氏、プランナーの杉本 絢音氏。

岡本氏は2019年にコナミデジタルエンタテインメントへ入社後、『SILENT HILL』シリーズの統括を務める。

松尾氏は2018年に入社し、レベルデザイナーを経て、『SILENT HILL 2』ではアシスタントプロデューサーとして海外開発スタジオとのコミュニケーションや進行管理を担当。

杉本氏は2022年に入社し、2年目で『SILENT HILL f』にアサインされ、台湾の開発スタジオとの制作進行や国内外の協力先との実務を担った

「様子見リメイク」はしない。3タイトル同時発表に込めたシリーズ復活への本気度

SILENT HILL』は、1999年にPlayStation用タイトルとして第1作がリリースされ、「サイコロジカルホラー」というジャンルを確立したゲームシリーズです。

最大の特徴は、登場人物の感情や心象風景が具現化した世界が舞台となる点にあります。襲い来るクリーチャーは罪悪感や後悔といった負の感情をモチーフにデザインされており、「視点人物がどのようなトラウマを抱えているか」によってその見え方が変化します。たとえば、トラウマを持たない子どもの視点では、そもそもクリーチャーの姿が認識されず、その子どもだけは安全であるかのように振る舞う――そうした描写すら成立し得る世界観を持っています。

そうした特異な魅力を放つ本シリーズですが、2013年を最後に約10年間の空白期間を迎えました。岡本氏がシリーズ統括として参画した2019年当時は、『SILENT HILL』にインスパイアされたインディーホラーゲームが多数発表されていた時期であり、「『SILENT HILL』ライクな体験であればインディー作品で事足りる」という状況にありました。

そこでシリーズ復活に際しては、アイデンティティである「サイコロジカルホラー」の要素をあえて尖らせ、他作品との差別化を図る方針を選択。その定義を確立した作品として、第1作ではなく『SILENT HILL 2』からリメイクを行うことを決断しました。さらに、全世界5か国のユーザー調査をもとにストーリーのガイドラインを作成し、サイコロジカルホラーや表世界・裏世界、クリーチャーに関する定義を社内で厳密に定めました。

また、リメイク決定の発表手法についても大きな決断が下されました。本シリーズは過去に発売中止となったタイトルが存在した経緯もあり、ユーザーからの信用が低下した状態からの再出発を余儀なくされていました。

リメイクを1本だけリリースしてファンの温度感を測る「様子見リメイク」では、ユーザーにその姿勢をすぐに見抜かれてしまいます。そこで、『SILENT HILL 2』のリメイク版に加えて、完全新作『SILENT HILL f』、外伝作品『SILENT HILL: Townfall』という3タイトルの企画を同時に通し、さらに映画作品の上映も併せて発表。「様子見では?」というファンの半信半疑な見方に対して制作陣の本気度を提示することで、ユーザーの熱量を一気に高める手法に出たのです。

さらに、「舞台は当然サイレントヒルの街だろう」という大方の予想に対し、日本を舞台とした『SILENT HILL f』を発表することで良い意味で期待を裏切り、ファンの感情を大きく揺さぶることを狙いました。

『SILENT HILL 2』ローンチトレーラー

『SILENT HILL f』ローンチトレーラー

『SILENT HILL: Townfall』は2026年9月24日(木)に発売される

海外スタジオとの協業体制。言語の壁を乗り越える開発プロセスの標準化

『SILENT HILL』は25年以上の歴史を誇るシリーズですが、現在の開発チームに初期のメンバーは在籍しておらず、20代の若手メンバーが半数以上を占めています。岡本氏が入社後、いわば「社内ベンチャー」を立ち上げるような気概で、ゼロからメンバーを集めたといいます。若い世代が高い裁量権を持ち、過去作を現代的な視点で分析することで、シリーズの復活を牽引してきました。

開発パートナーの多くは海外に拠点を置くスタジオであり、『SILENT HILL 2』はポーランドの「Bloober Team」、『SILENT HILL f』は台湾の「NeoBards Entertainment」がそれぞれ開発を担当しています。

海外スタジオとの協業にあたり、制作チーム全員が英語に堪能なのかといえばそうではなく、15人中ネイティブスピーカーは約2割にとどまり、登壇した3名も英語話者ではないとのこと。ミーティングの際はチーム内の英語話者に通訳を依頼し、メールやチャットでの日常的なコミュニケーションには翻訳ツールを活用しています。

グローバル開発において最も重要なのは、言語力そのものではなく「ゲームを適切に制作できる力があるか」であると岡本氏は強調。海外には日本の10〜20倍に上る数のスタジオが存在しており、協業先を選定する際は、各企業の過去作品を実際にプレイし、その開発力を見定めたうえで判断するべきであると語りました。

海外の現場ではゲーム開発プロセスの標準化が進んでおり、GDD(ゲームデザインドキュメント)を用いて開発早期にコア要素を固め、バーティカルスライス(※)によってクオリティラインの合意形成を図る手法が一般的だと松尾氏。Bloober Teamとの協業で経験したこの開発プロセスは、その後のタイトルにおいて台湾やスコットランドのスタジオと協業する際にも大いに活用されたとのことです。
※ ゲーム本編の一部分のみを、製品版と同等のクオリティで完成させたバージョン

また、『SILENT HILL』シリーズは売上の約90%を海外市場が占めている背景もあり、海外の開発者側でもIPとしての魅力が十分に言語化され、共有されていました。そこにコナミ側が定義したシリーズのテーマや開発指針を持ち寄ることで、作品において特に重視すべきポイントを明確にすることができました。

オブジェクト配置レベルでのナラティブを設計する「環境ストーリーテリング」においても、丁寧な合意形成がなされた

QAに関しては、今後のタイトル開発に向けた知見の蓄積や、作品のクオリティ管理をコナミ側が主導することを目的に、国内のQA会社へ依頼しました。これにより、迅速なクオリティ判断や修正対応が可能となり、海外スタジオとのコミュニケーションコストを削減することにも成功しています。

ローカライズについても、日本語音声の収録などに際してクオリティを担保するべく、コナミ側で管理・実施しました。進行過程では、日本と他国との協業開発という特殊な体制ゆえに、テキストのフィックス遅延や収録素材の不足といった課題が発生。それを受けて、相手企業の負担を軽減するためにコナミ側が一部のコストを負担するといった柔軟な判断を下し、適宜スケジュール調整などの対応を行いました。

作品のクオリティ管理においては、コナミと開発担当会社の間でマスターアップに対する認識の乖離が生じた事例も紹介されました。

コナミ側は、初回マスター提出の段階で一定のクオリティが担保されていることを前提とし、Day 1パッチは発売までにさらなる品質向上を図るものと捉えていました。しかし開発会社側は、マスター版では必要最低限の実装にとどめ、以降のブラッシュアップはDay 1パッチで行うという認識を持っていました。

この認識の違いが開発終盤になって発覚したといい、マスター提出の基準は開発の初期段階で明確に文書化すべきであると痛感したそう。同じ用語であっても、国や企業によって異なる概念で運用されているケースは多々あるため、譲れない条件やスケジュールは開発初期に簡潔かつストレートに伝達することが不可欠であると語られました。

そのほかグローバル開発ならではの学びとして、アクセシビリティ対応への意識の違いが挙げられました。日本では開発工数を理由に見送られがちな要素ですが、海外では「品質の一部」として対応するものと捉えられています。本作ではハイコントラストモードの導入に加えて、文字の読み書きに困難を抱えるディスレクシアの方に向けた専用フォントの提供なども実装されています。

ケーススタディ『SILENT HILL f』――なぜシナリオに竜騎士07氏を起用したのか

旧シリーズの売上が低迷した原因について、岡本氏は「ユーザーに飽きられたため」と分析。代わり映えのしない舞台、類似したゲームプレイ、既視感のあるストーリーでは、ユーザーが得られる体験がどうしても似通ってしまうのだと考えました。

そこでリブートにあたっては、「サイレントヒル」を単なる街の名前としてではなく、世界各地で起こりうる「現象」を指す言葉として概念を拡張することを決定しました。

そうして企画された新作『SILENT HILL f』のシナリオを託されたのが、『ひぐらしのなく頃に』の制作者として知られる竜騎士07氏。和風ホラーの代表作を手がけてきた実績に加えて、霧に包まれた寒村を描いた同氏の漫画原作を読んだ岡本氏は「先生は絶対に『SILENT HILL』が好きだ」と確信したそうです。そして何より、岡本氏自身が竜騎士07氏の作品の9割以上に触れている熱烈なファンであったことが最大の決め手となりました。

岡本氏は常日頃から、ゲーム制作における持論として「ゲームプロデューサーは作家と真摯に向き合うことが大切である」と主張しているそう。シナリオを発注する以上、作家へのリスペクトとして少なくとも著作の過半数には目を通すべきであるとしたうえで、ストーリーが中核となる作品の意思決定においては、代表作だけでは見えてこない作家の長所と短所の双方を把握してこそ、適切な発注が可能になると述べました。

こうした岡本氏の考えはチーム内の「圧」にもなっており、シナリオ担当者は小説を年間100〜200冊読むべしという空気の中、オフィスには書籍コーナーが設けられ、担当者の机には100冊以上の本が並んでいるという

しかし本作は、シナリオを日本人の竜騎士07氏が、開発を台湾の「NeoBards Entertainment」が担当するという座組であり、岡本氏いわく「普通に考えれば、方向性の違いによるプロジェクトの空中分解が予想される」体制でした。だからこそ、開発の初期段階で作品のコンセプトを強固に定めることが最重要視されました。

竜騎士07氏やNeoBards Entertainmentを含む本作の関係者が一堂に会し、コナミがディレクションを行う形で、シナリオプロット、クリーチャーのデザインスケッチ、コンセプトアート、ゲームデザインの概要をそれぞれ詳細にまとめていきました。

そうして完成した本作のコンセプトの中核が、竜騎士07氏が描きたかったというテーマ「結婚ホラー」です。日本の戦前・戦中期における古い価値観に基づく結婚観や夫婦観を、女性の立場から現代的な視点で見つめ直した際に感じられる恐怖をテーマとして据えています。

キャラクターおよびクリーチャーデザインには、和風ホラー作品で実績のあるkera氏を起用。初期段階では、ゲームの仕様に縛られない自由なスケッチを中心にブレインストーミングが行われました。

「結婚によって旧姓=古い人生を失う」ことを顔の切断で表現した老婆のイラスト。作品内で直接採用こそされなかったものの、その表現の方向性はゲームに大きな影響を与えた

主人公・深水雛子の過去の思い出(霧の町)が浸食されていく様子を視覚化するにあたっては、コンセプトアート制作会社「INEI」の協力を仰ぎ、白と赤のコントラストが際立つ世界観が構築されていきました。スケッチの段階で生み出されたアイデアは実際のゲーム内にも活用され、「父親の暴力性」への恐怖を具現化した巨大モンスターなどのデザインへと結実しています。

父親の暴力性への恐怖を象徴するクリーチャー「アラアバレ」。このデザインは、不採用となった無数の敵のスケッチ素材から形成されたイメーイが反映されている

また、シリーズ全体における本作の位置づけについても明確な指針が設定されました。『SILENT HILL』シリーズでは、各作品のゲーム性を、探索中心の「ウォーキングホラー路線」から戦闘中心の「アクション路線」までの間で意図的に「振れ幅」を持たせることで、タイトルごとに新鮮な体験を提供できる設計としています。

その枠組みの中で、『SILENT HILL f』はアクションの方向へ大胆に舵を切りました。その背景には、追い詰められることで生じる強いストレスと、強力な武器で敵を蹴散らし抑圧から解放される瞬間の落差が、プレイヤーに大きな快感をもたらすという分析があります。

旧シリーズはストーリーやアート面で高い評価を得ていた半面、ゲーム性についてはストレスと解放の落差が小さく「単調である」と評される傾向がありました。1〜2時間でクリアできるボリュームの作品であれば恐怖体験のみで牽引できますが、10時間を超える大作となると、プレイの途中でどうしても緊張が緩む場面が訪れます。本作ではその点にメスを入れ、「怖くて面白いSILENT HILL」を目指したとのことです。

解像度の高い「1960年代の日本」を台湾のスタジオと作り上げる

作品コンセプトやシナリオの検討から着手された本作の開発。杉本氏によれば、マルチエンディング方式の採用が決定した段階で、シナリオのボリュームとカットシーンの総量が大幅に増加したといいます。

本作ではアクション性をふんだんに盛り込みたいという意図がありつつも、同時にシナリオの質も高く維持したいという葛藤を抱えながら、竜騎士07氏、NeoBards Entertainment、コナミの三者間で約半年にわたるシナリオ調整が行われました。

シナリオ制作と並行して、町のレイアウト設計も進められました。この際、各ロケーションをどのようなイメージで制作するかについて、台湾のスタジオとコンセンサスを取ることが課題となりました。そこで、実際のモデルとなる場所の画像資料を集め、空間に対する共通認識を形成しながら設計を進めたそうです。

さらに、ステージギミックやイベントシーンなどの配置順序・長さなどを一覧したタイムテーブルを作成し、プレイヤーにもたらす感情変化のレベル(テンション)を数値化することで「ストレスと解放」のバランスを緻密に調整。ステージの進行に沿って、恐怖やパニックを感じさせる場面には高い数値を、ホッと一息つける場面には低い数値を割り当て、シナリオの展開と連動したプレイの緩急を設計しています。

テンション設計のタイムテーブル。“恐怖の山”と“安心の谷”を数値化し、ゲームプレイの緩急をコントロールした

ロケーションや小物のディレクションにおいては、漠然とした「日本らしさ」を描写するのではなく、「1960年代の日本」に焦点を絞り込んで世界観を形成することが目標とされました。

NeoBards Entertainmentが構築したゲーム世界では、昭和の風景が高い再現度で具現化されていましたが、細部を見ると「箸が縦に置かれている」「菜箸の代わりにスプーンが置かれている」など、日本人からすると違和感を覚える箇所も存在したといいます。そうした部分はコナミ側が歴史資料を参照しながら、食器の配置や使い方に至るまで丁寧にチェックを行い、昭和当時の生活の息遣いが感じられるようなリアリティを追求しました。

また、深水雛子をはじめとする本作の登場人物は、キャラクターモデルのフェイススキャン、フェイシャルキャプチャ、モーションキャプチャ、ボイス収録のすべてを1人の俳優が担当し、「顔と演技と声が同一人物であること」にこだわって制作されました。

俳優陣のほぼ全員がキャプチャ収録の未経験者であったため、実写映像の制作経験を持つ監督と専門のアドバイザーによる演技指導を導入し、手厚いフォロー体制が敷かれました。

モーションキャプチャは多少大げさな演技のほうが映えるため、あえて分業する場合もあるというが、本作では同一性を優先し1人ですべての工程を担当した

なお本作は、岐阜県下呂市金山町の「筋骨」と呼ばれるエリアをモデルにしています。実在の町をホラーゲームの舞台とするにあたり、現地の観光協会に対してゲームのシナリオや恐怖描写の内容まで事細かに説明したうえで撮影取材を実施。さらに、台湾から来日したNeoBards Entertainmentのサウンドチームとともに、SEや環境音の現地収録も行っています。「1960年代の日本」の確かな実在感は、こうして現地から直接持ち帰った生の素材によっても支えられています。

開発後半に実施されたテストとレビューの取り組みについても紹介されました。まず、メタスコアのレビュー経験者が在籍する外部のコンサルティング企業に「模擬メタスコア」の評価を依頼。欧米メディアの視点に基づき、評価を高めるための具体的なアプローチをフィードバックとして獲得しています。

また、チューニングに定評のある国内テスト企業によるマイルストーンごとのテストプレイや、北米の一般ユーザーから初心者モニターを募ってのゲーム冒頭部分のテストプレイを実施したことが明かされました。

「日本を舞台としたSILENT HILL」「竜騎士07氏の起用」といったプロデューサーの直感に基づく仮説も、これらのレビューを通じて客観的に検証されました。岡本氏はレビューを受ける心境を「自分で腹を切るような感覚」と表現しつつも、プロデューサーの情熱と独断だけで最後まで走り切るのではなく、自身の思い込みを是正し、適切な判断を下せる環境を作ることが不可欠であると語ります。

本作では開発後半にレビューを集中させていましたが、直近で開発中のタイトルにおいては、シナリオのプロット段階や企画書での基本仕様設定時、さらには競合分析の際にも、早期からレビューの仕組みを取り入れているとのことです。

令和のコンテンツを牽引する「考察」と「推し」――ユーザーの熱量に応えるには

ユーザーコミュニティへの訴求やファンダムの形成に関する、岡本氏の所感も語られました。同氏は、令和の時代においてエンターテインメントコンテンツに求められる要素として、「考察ブーム」と「推し」の2つを主軸に捉えていると述べます。

『SILENT HILL』シリーズや、『ひぐらしのなく頃に』に代表される竜騎士07氏の作品群も、長きにわたり物語の背景や設定に秘められた真相に想いを馳せる「考察コンテンツ」として親しまれてきました。

確固たる真実は存在するものの、作中でその全貌が明言されることはなく、細部まで緻密に作り込まれているからこそプレイヤーは説得力を感じ、計算のうえであえて秘匿された部分に想像を巡らせる――。同氏は、そうした「霧に包まれて曖昧さが残る」物語構造こそが考察に向いているとの持論を展開しました。

『SILENT HILL f』においては、順次公開されるPVの中に情報を散りばめ、段階的に考察要素を増やしていくプロモーションを展開しました。ゲーム本編も、周回プレイを重ねるごとに真実の輪郭が浮かび上がってくる構造を採用しています。その結果、ユーザーによる多数の考察動画が投稿され、発売から4か月が経過してなお、毎週のようにニュースサイトで関連記事が公開され続けるという盛況ぶりを見せました。

「推し」の側面については、作中に登場する狐面の男が「メロ狐」として女性ファンの人気を集め、SNS等でファンアートが多数投稿されました。岡本氏によれば、竜騎士07氏を起用した時点でキャラクターの魅力が際立つことは確信していたものの、ここまでの熱狂的な人気を獲得することまでは予見していなかったとのことです。

予想を上回るファンからの熱量を受け、公式サイドからもIF設定を描いたイラストや、キャラクターの誕生日にちなんだ記念イラストを投稿したほか、コミカライズの展開、ポップアップストアの開催など、「ファンダムへの燃料投下」を継続的に実施し、ユーザーの熱気に応え続けています

ファンの高い熱量と期待に応えるべく、作品の品質を厳重にコントロールする姿勢。作品のテーマや指針を開発陣一同で細部まで練り上げ、立てた仮説をテストとレビューによって客観的かつ徹底的に検証する体制。今回の講演では、熱量と冷静さを両輪で回す、『SILENT HILL』シリーズにおける精緻なプロデュース術が明かされました。

『SILENT HILL f』公式サイトSILENT HILLのプロデュース術 「推し」の時代に推されるゲームをめざすには? ユーザーの熱量を重視するプロデュース方針と海外開発を軸にしたグローバルゲーム開発進行 - CEDEC2026
髙橋 祐介

ゲームメディアや、劇場アニメのプログラム(いわゆるパンフレット)などに関わるようになり四半世紀。「クリエイターがどのように考え、作品を作っているのか」はつねに大きな関心事です。

インディゲームの文化的側面や、クラウドやAIなどゲーム周辺の技術にも興味アリ。

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