2026年5月22日(金)から24日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された「BitSummit PUNCH」。
今回、『Mouthwashing』『Buckshot Roulette』などを手がけてきたパブリッシャー「CRITICAL REFLEX」のCEO Rita Lebedeva氏にインタビューを実施し、尖った個性を生み出す秘訣を伺いました。
2026年5月22日(金)から24日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された「BitSummit PUNCH」。
今回、『Mouthwashing』『Buckshot Roulette』などを手がけてきたパブリッシャー「CRITICAL REFLEX」のCEO Rita Lebedeva氏にインタビューを実施し、尖った個性を生み出す秘訣を伺いました。
TEXT / 神谷 優斗
CRITICAL REFLEXは、キプロスを拠点とするインディーゲームパブリッシャー。2020年の設立以来、『Mouthwashing』『Buckshot Roulette』『Arctic Eggs』『No, I’m not a Human』『Lunacid』など、独特の世界観を持つタイトルを多数手がけてきました。
『Mouthwashing』(画像はSteamストアページより引用)
『Buckshot Roulette』(画像はSteamストアページより引用)
——CRITICAL REFLEXが持つパブリッシャーとしての個性を教えてください。
Rita:CRITICAL REFLEXの一番の個性は、他のパブリッシャーが契約しないような、実績のないデベロッパーとも契約する点にあります。
多くのパブリッシャーは、すでに過去作で実績を出しているデベロッパーを求めます。そのため、デビュー作がいかに魅力的でも「実績がないから」という理由で契約を断られているデベロッパーが数多くいました。
CRITICAL REFLEXは、過去の実績やリクープの可能性よりも、開発者が持つビジョンを重視して作品を選定します。共感できるビジョンを持った作品が集まった結果、今のCRITICAL REFLEXができあがっていったと考えています。
——手がける作品の「尖り」も個性のひとつだと感じます。これは意図的に出しているものでしょうか。
Rita:尖りはかなり意識しています。社内ではこれを「CR coded(CRITICAL REFLEXっぽさ)」と呼んでいます。
開発者の強いビジョンから生まれた個性を抑え込まず、良さとして伸ばしていくのがCRITICAL REFLEXの考え方です。
これまで手がけた作品はすべて、何らかの形でCR codedです。一目で分かるものもあれば、遊んでみてやっと理解できるものもあります。
——その「CRITICAL REFLEXっぽさ」は、具体的に何で構成されているのでしょうか?
Rita:ひとつは「ユニークでキャッチーなビジュアル」。もうひとつは「これまでに感じたことのない狂気(英語ではunhingedやferalと表現)」です。この2つがCRITICAL REFLEXっぽさを形作っています。
狂気性が強いゲームはヒットが読みづらく、他のパブリッシャーは手を出しません。安定した投資を重視するパブリッシャーもいますが、最初から「これはヒットするだろう」と予測できるゲームは、基本的にCRITICAL REFLEXっぽくありません。
——『No, I’m not a Human』のようなヒット作は、どんな戦略で個性を形作っていったのでしょうか。元の個性を伸ばすために、どんな要素を加えたのか知りたいです。
Rita:コアのゲームプレイ部分は、ピッチ時から何も変えていません。
CRITICAL REFLEXは基本的にゲームプレイにはあまり干渉しません。質の高いピッチに対して「どう付加価値を持たせるか」を考えるのが我々の役割です。原石を見つけて、それを磨くイメージですね。
『No, I’m not a Human』では「キャラクターが独特なので、その深みをもっと出せば、プレイヤーはもっと彼らの結末を知りたくなるはずだ」とアドバイスし、キャラクター、ひいては世界観の個性をさらに掘り下げてもらいました。
『No, I’m not a Human』(画像はSteamストアページより引用)
——開発者の立場で「CRITICAL REFLEXのような尖ったゲームを作りたい」と考えたとき、何を意識すべきでしょうか?
Rita:逆説的ですが、これからは尖ったゲームを作るほうが安定して売れる時代になっていくと考えています。
尖ったゲームには、競合が少ないという強みがあります。たとえばメトロイドヴァニアはタイトル数が多く、競争が激しい。一方で、『Buckshot Roulette』のようなタイトルは唯一無二で、競争相手がいません。
配信文化との相性もいいですね。よく分からない尖ったゲームほど、配信者は「とりあえず配信してみよう」となりやすく、再生数が伸びやすい。多くのパブリッシャーはウィッシュリスト数や配信の視聴回数を判断軸にしているので、配信で数字が出れば自然と声がかかります。
——独自の個性を持てる開発者と持てない開発者とでは、何が違うのでしょうか。どうすれば尖った作品を作れると思いますか?
Rita:実社会と同じで、作品作りでも他人の目線を気にして自分を抑える人もいれば、自分をさらけ出せる人もいます。ゲームに尖りを入れたいなら、他人の目線を気にしてはいけません。大衆受けを意識した瞬間にダメになります。
内面を全部出し切って、「これが自分の作りたいものだ!」と表現することが重要です。たとえ一人にしかウケなくても、探せば共感してくれる人は必ずいます。
「自分が作りたいものを作りきってやるぞ」という性格でないと、尖りは生まれにくいと思います。
——今後5年間で、インディー市場やゲーム市場全体(プレイヤー文化、配信、AIなど)はどう変化すると見ていますか?
Rita:AIについてですが、消費者は生成AIを毛嫌いする傾向があると感じています。ゲーマーは「アーティストが報われるゲーム」を支援したいと考えているのではないでしょうか。5年後に生成AIを使うインディーゲームが市場に受け入れられているかは、懐疑的に見ています。
プレイ文化については、長いゲームをひたすら遊ぶより、Friendslop(※)のように週末の暇つぶしで遊ばれるタイトルが流行っています。TikTokなどのショート動画やバズり文化の影響で、若者の集中力も短くなっている。今後はゲームひとつひとつが小規模化し、開発サイクルがどんどん短くなると見ています。
※ 友達と短時間で楽しむ協力ゲームの総称
ただし、このトレンドに乗って2年かけてゲームを作っても、完成した頃にはトレンドが終わっているかもしれません。だからこそ、トレンドに左右されない「尖ったゲーム」を作るほうが、むしろ安定したヒットが狙えそうです。
——そうした市場の変化を踏まえて、CRITICAL REFLEX自身は今後どう動いていくのでしょうか?
Rita:CRITICAL REFLEXはホラーゲームのパブリッシャーと思われがちですが、本質は「エクスペリメンタル(実験的)」なゲームを支援することです。たまたまホラーが尖りを表現しやすかっただけで、今後はホラー以外の実験的なゲームもどんどん出していきます。
CRITICAL REFLEXの成功を受けて、他のパブリッシャーも尖ったゲームに注目するようになるでしょう。ただ、我々はヒットしたからといって同じようなゲームばかりパブリッシュする会社ではありません。常にエクスペリメンタルを追求していきます。
「CRITICAL REFLEX」公式サイト「BitSummit PUNCH」公式サイトコーヒーがゲームデザインと同じくらい好きです
西川善司が語る“ゲームの仕組み”の記事をまとめました。
Blenderを初めて使う人に向けたチュートリアル記事。モデル制作からUE5へのインポートまで幅広く解説。
アークライトの野澤 邦仁(のざわ くにひと)氏が、ボードゲームの企画から制作・出展方法まで解説。
ゲーム制作の定番ツールやイベント情報をまとめました。
CEDECで行われた講演のレポートをまとめました。
UNREAL FESTで行われた講演のレポートやインタビューをまとめました。
GDCで行われた講演などのレポートをまとめました。
CEDEC+KYUSHUで行われた講演のレポートやイベントレポートをまとめました。
GAME CREATORS CONFERENCEで行われた講演のレポートをまとめました。
Indie Developers Conferenceで行われた講演のレポートやインタビューをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブルで行われた講演のアーカイブ動画・スライドやレポートなどをまとめました。
東京ゲームショウで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームダンジョンで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
日本と文化が近い中国でゲームを展開するための知見を、LeonaSoftware・グラティークの高橋 玲央奈氏が解説。
インディーゲームパブリッシャーの役割や活動内容などを直接インタビューします。