「常に“映画らしさ”を感じられる」ゲームを追求。第20回UE5ぷちコンの最優秀賞を受賞した学生開発者にインタビュー

2023.12.22
注目記事インタビューゲームの舞台裏アンリアルエンジン
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2023年7月21日(金)から9月3日(日)にわたって開催された、アンリアルエンジンの学習を目的としたゲーム制作コンテスト『第20回UE5ぷちコン』。今回は「コントロール」をテーマに183作品の応募がありました。

本記事では、最優秀賞を受賞した『Frame Per Second』の制作者であるWanoさんに、企画から実装に至るまでの工夫やこだわりについて伺いました。

TEXT / 佐藤 悠介
INTERVIEW&EDIT / 神谷 優斗
PHOTO / 神山 大輝

目次

Wanoさん

高校1年生のとき、授業でScratchを学んだのをきっかけにゲーム制作を始める。現在は大学3年生で、ゲーム業界を志望。

『第20回UE5ぷちコン』では『Frame Per Second』が最優秀賞を受賞。

Twitter:@WanoGameDev

ぷちコン参加のきっかけ

――まずは自己紹介をお願いします。

Wanoと申します。現在は大学3年生で、アミューズメント関連の研究室に所属しています。最近は、研究のかたわらUnreal Engine 5(以下、Unreal EngineはUEと表記)を使ってゲームを制作しています。

――いつからゲーム開発を始めたのでしょうか。

もともと中学生の頃からゲームを作りたい想いはありました。初めてゲームを作ったのは、高校1年生の授業でScratchを学んだときです。Scratchで作ったゲームが友達にウケたのがとてもうれしかったのを覚えています。

Scratchで作ったのは、姫に心肺蘇生をしつつ魔王撃破を目指すゲーム。『Undertale』や『Five Nights at Freddy’s』に影響を受けている

次にゲームを作ったのは、卒業制作です。卒業制作にゲームを選んだのは、ゲーム業界に行きたい思いがあったためです。

当時はプログラミングに自信がなかったのですが、UE4のブループリントの存在を知り、「Scratchに似ているこれなら使えるかも」と感じUEを使い始めました。

敵の攻撃をタイミングよく回避し、隙をついて攻撃するシステムとなっている

卒業制作では半年ほどUEを触っていましたが、大学に入った後はゲーム開発はせず、勉強に専念していました。

――ぷちコンへの参加のきっかけを教えてください。

就職活動の時期が近づいてきたこともあり、今年からゲーム制作を再開しました。まずは何かやらなければということで、ひとまず『アンリアルクエスト5(※)』に参加したんです。
※ エピック ゲームズ ジャパンが主催し、ヒストリアが運営するユーザー参加型イベント。課題を通して、アンリアルエンジンを使ったゲーム開発を学ぶことができる

UEの操作をほとんど忘れた状態でのスタートでした。しかし、イベントのテーマが卒業制作と重なる部分の多い「剣で敵を倒す」だったため、操作を思い出しやすかったです。

アンリアルクエストを終えた後は、就活のポートフォリオとして形のある作品を残すため、ぷちコンへの参加を決意しました。

フレームレートをコントロールする斬新なゲームシステム

――ここからは最優秀賞受賞作『Frame Per Second』についてお伺いします。まずは、簡単にゲームの紹介をお願いします。

Frame Per Second』は、物体のフレームレートをコントロールしてゴールを目指すアクションパズルゲームです。フレームレートを操る銃を駆使してギミックをクリアしていきます。

ゲーム全体で映画を意識した絵づくりが特徴です。ゲームシステムと見せ方は、誰とも被らない新しいものになるよう努力しました。

――フレームレートをコントロールするシステムが産まれた経緯を教えてください。

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」を観たときから、フレームレートを下げる「コマ落とし」の演出にあこがれていました。自分でも同じ表現をしたくなり、ぷちコン開催の1ヵ月ほど前から実験的にキャラクターアニメーションのフレームレートを変えるシステムを作っていたんです。

このシステムがちょうど「コントロール」にマッチしていたため、ぷちコン用の作品で使ってみることにしました。

ゲームのテーマが「フレームレート」に決まったあとは、面白いギミックのアイデアを考えていました。

その中で「高速で動いている物体のフレームレートを極端に下げることで物体が一瞬止まって見える」ことに気づいたんです。そこから、「プロペラのフレームレートを下げて通過する」ギミックを発想し、ゲームシステムが固まっていきました。

――作品の制作をどのように進めたか教えてください。

本作は1ヵ月程度で作りました。大学3年生の夏休みだったため、制作にかける時間はかなり多くとれましたね。

すでに頭の中にあったプロペラ鉄球をすり抜けるギミックは、試しに実装してみたらすんなりとできました。最初の1週間は、ギミックの仕組みやプレイヤーの操作など、ゲームに必須となる部分を優先して作りました。

次に、敵やギミックの種類を増やす段階に入りました。ギミック制作と並行して、ギミックに適したレベルのデザインも同時に進めていきました。

制作したレベルの一部

レベルデザインは初めてで、各ギミックをシームレスにつなげて作ろうとすると時間がかかる予感がありました。作品が未完成になるのは一番避けたかったため、ギミックごとにレベルを分割する方法をとりました。この方法のおかげで、後々のレベル修正が楽になりましたし、レベル間の接続を気にすることなく制作できました。

おおよそ3週間で、「これで遊べる!」と思える段階まではできあがりました。残りの1週間は、効果音やエンドロールなどを追加し、ブラッシュアップを行いました。

――自分を撃ってフレームレート(体力)を回復するというアイデアはどういったところから着想を得ているのでしょうか?

自分を撃って体力を回復するのは、『亜人』の1シーンに少し似ているかなと思っています。

アナログスティックを使ってエイムを合わせるシステムは『メトロイド』シリーズから、フレームレートを下げるシステムは前述の通り『スパイダーマン』から着想を得ています。

「映画らしさを常に感じられる」絵づくりとは

――『Frame Per Second』は「映画を意識した絵づくり」が売りだと説明していましたが、具体的にはどういった部分に現れているのでしょうか?

私は、ゲームにおける映画らしさは、重厚なストーリーやカットシーンでのみ表現されうるのではなく、プレイヤーがキャラクターを操作するなかで常に感じられるものだと考えています。

そこで、本作ではゲームプレイのどこを切り取っても絵になっている作品を目指しました。

具体的には、画面の上下に黒帯をつけたり(※)、HUDを使わず、UIを3D空間上に配置したりすることで映画らしさを演出しています。
※ 映画と同じ画面比率「2.35:1」にするため、上下に挿入される黒い帯のこと。2.35:1の画面比率は「シネマスコープ」と呼ばれる。

ほかにも、映画を観ている中で良いなと感じた要素を取り入れています。

例えば、エンドロールです。専用のレベルを用意するなど、本作では凝ったエンドロールを作りました。

文字の横に映像を流す演出は、文字と一緒にNGシーンも流すピクサー映画のエンドロールを参考にしています。

エレベーターの上昇にあわせ、配置したテキストが下に流れていく

画面比率を4:3にしてアナログテレビっぽくした映像や、VHS風のポストプロセスなど、レトロ風の表現が好きなんです。それが、映画らしいゲームを目指すことにつながったのかもしれません。

コマ落としにも通じますが、「必要ではないけど、味が出るから手間をかけてでもやる」というクリエイター魂に惹かれますね。

――ゲーム全体でレベルデザインにはアセットを使っていないように見えます。これにはどういった狙いがあるのでしょうか?

今回は1か月という短い期間での制作だったため、力を入れる部分の取捨選択が必要でした。

それもあり、本作は自分なりの「映画らしさ」を追求した一方で、見た目のリッチさにはそこまで力を入れすぎないようにしました。そこで、アセットを使わずにCubeのメッシュのみを使うことで、あえて「プロトタイプらしく」見せることを狙っています。

また、今回はゲームとしての面白さ以上に、提出した映像そのものを楽しんでほしい気持ちがありました。それもあり、3Dモデルのデザインではなく、ゲーム全体の演出に比重を置いています。

――なるほど。ライティングでもレベルデザインにはこだわりがあるのかなという印象でした。ライティングのツールやテクニックなどがあれば教えてください。

ライティングに関しては、特別なにか勉強したわけではありません。ただ、自分なりに意識したのは、ライトで場所をイメージさせるということです。

例えば、人工の建築物である研究施設では、等間隔にライトを配置しています。

研究施設のレベル

一方、終盤の洞窟は自然物であるため、ライトを無造作に設置して自然のものであることをアピールしています。

洞窟のレベル

ライトのカラーも、場所や意味によって使い分けています。

人工の部屋にはオレンジ、洞窟には、立ち入り禁止区域には、安全地帯にはを使っています。色によって空間が与えるイメージが違うことは、試行錯誤の中で実際に感じましたね。

緑色のライトがあることで、穴に落ちても安全だと感じさせる

洞窟は人工物とは異なり、青いライティングにしている

――絵づくりにおいて他にこだわった箇所はありますか?

2Dゲームでは珍しいと思うのですが、カメラの角度やズームをプレイヤーが常に切り替えられるようにしています。

視認性を上げる役割もありますが、プレイヤーがいいなと思う構図を自分で見つけられることが一番の狙いです。イメージは「リアルタイムのフォトモード」ですね。

また、キャラクターを小さく映し、画面の多くを背景で埋める構図「エンプティフレーム」が成立するよう、もともとカメラを引き気味に配置しています。

構図はエンプティフレームを意識。カメラを引きすぎるとゲームとして破綻するため、よい塩梅を試行錯誤したという

角度の「左/右」と、「寄り/引き」の計4パターンでカメラ位置を切り替えられる

あとは、アナログスティックの傾きによって歩き状態から走り状態に移行するまでの範囲を広くとっています。一般的なゲームはスティックを少し倒すだけで走り状態に移行しますが、本作はかなり倒さないと走らないようになっています。

敵を倒したときや爆発が起きたとき、カメラの方へゆっくり歩いてカッコつけるみたいなロールプレイが好きなんですよね。そういった遊びがしやすくなるように、歩きやすい設定にしています。

スティックをほぼ最後まで倒さないと走り状態に移行しないことがわかる

――制作に使用したツールやアセットがあれば教えてください。

BGMと一部の効果音は『Immersive Dark Ambient Music Pack』というアセットを使っています。UEマーケットプレイスで無料配布されているときに入手しました。

銃のモデルと効果音、キャラクターのモーションは『Lyra Starter Game』から、そのほかの効果音は、効果音ラボやエンジン内蔵アセットから使用しています。

キャラクターアニメーションの制作にも興味があったため、適したモーションを持っていなかった敵キャラクターのモーションはBlenderで自作しました。制作には、BlenderでUE4マネキンのリグが扱えるアドオン『Mr.mannequin tools』を使っています。

Blenderで敵キャラクターのモーションを編集する様子

制作したモーションを使用した、実際のゲーム画面

――実装してみたかったギミックや実装を断念したギミックはありますか?

基本的に、入れたかったアイデアはすべて組み込むことができました。ただ、ゲーム全体のfpsを映画と同じ24fpsにする案は、いざやってみると画面がガクガクしすぎてしまったため断念しました。

制作時には考えていませんでしたが、わざと画面にノイズをのせる映像表現「フィルムグレイン」を使うと、より映画っぽい絵になったかもしれませんね。

――制作で苦労した点はありますか?

鍾乳洞をイメージして、洞窟のエリアで細長い四角のメッシュをたくさん配置したんですが、プレイヤーには鍾乳洞であることが伝わらない気がしています。ただ、鍾乳洞であることが伝わらなくても、画面として映えるのであればよしと割り切りました。

プロトタイプのようなルックを採用した今回は、特にそういった割り切りが必要でしたね。

今後の展望とコミュニティへの想い

――最後に、今後作ってみたい作品や、キャリアの展望について教えてください。

今後も創作活動は続けていきます。現在制作中のゲームではアセットをすべて自作しているため、途方もない時間がかかりますが、死ぬまでにそのゲームを完成させるのが人生の目標の1つになりつつあります。そのゲームを出すときは無料でプレイできるようにするつもりなので、是非皆さんにも遊んでもらえるとうれしいです。

また、ぷちコンなどのコミュニティを盛り上げるイベントには感謝しています。創作活動を続けることでコミュニティに貢献できたらなとも思っています。

――これからの作品も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

使用ツール・アセット一覧

※記事中に登場したもののみ掲載しています

カテゴリ 使用機材・ツール
ゲームエンジン Unreal Engine 5
モーション作成 Blender
SE 効果音ラボImmersive Dark Ambient Music Pack
佐藤 悠介

ゲームメーカーズ編集部。とにかくゲームが好きで、プレイするジャンルはRPG、SLG、FPS、ADV…とさまざま。『CoD』シリーズでは、アマチュアプレイヤーとしてのesports経験も。

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