世界的ヒット作も続々登場するインディーゲーム。開発者支援も拡大を見せる
第1部では、ルーディムス代表の佐藤 翔 氏、講談社ゲームクリエイターズラボ総合チーフの片山 裕貴 氏、ジェトロ 古川 喜一 氏が登壇し、インディーゲームを取り巻く環境や官民の支援の動向について議論が交わされました。
佐藤 翔氏(画像左)は、日本初のゲームに特化したインキュベーションプログラム「iGi indie Game incubator」(iGi) の事務局長を務める人物で、経済産業省のクリエイター支援施策「創風」のゲーム部門でアドバイザーとして参画しているほか、国際ゲーム開発者協会(IGDA)のSIG-Incubationにも所属している。
片山 裕貴氏(画像右)は、2020年9月に始動した「講談社クリエイターズラボ ゲームラボ 」の総合チーフで、出版業界で培った編集者のノウハウを活かしてゲーム開発者を支援している。そのほか、IGDA日本支部SIG-Growthの副世話人や、東京ゲームショウのSENSE OF WONDER NIGHTの審査員なども務める
モデレーターとして登壇した、ジェトロ デジタルマーケティング部コンテンツ課の古川 喜一氏。主にゲーム・音楽分野の海外展開支援などを担当している
世界のゲーム市場において、インディーゲームの存在感はかつてないほど高まっていると佐藤氏。もとはインディーゲームであった『Minecraft』をはじめ、現在では数百万本、さらには一千万本から二千万本を売り上げるタイトルが多数誕生している状況の中、ビジネス化やクリエイター支援の動きが表れ始めているといいます。
日本においても、古くから根付いていた同人・小規模ゲーム制作文化の土壌から、今では世界的なヒットを生むインディーゲームが誕生するまでに至っています。具体的には、インキュベーションプログラム「iGi」の出身者でもあるコタケ氏が手がけた『8番出口』が売上本数300万本を突破するなど、インディーゲーム全体で数百万本を突破したタイトルが国内でも登場し始め、大きな話題を呼んでいます。
このような市場拡大の要因として、2017年頃から個人でもSteamでゲームをリリースできるようになったことが一つの転機であると片山氏は指摘。当初は海外の個人制作作品が先行してヒットを生み出しましたが、その後日本のクリエイターも追従し、多くのヒット作を輩出するに至ったと見解を示しました。
海外展開に主眼を置くジェトロの支援プログラム こうした市場の成長を背景に、官民による支援プログラムも充実が図られてきました。
古川氏によると、ジェトロはゲーム開発の支援フェーズを大きく3つ(「企画・制作・育成 」、「パブリッシング・ローカライズ・QA 」、「発売後のPRや展示会出展など 」)に分類しており、ジェトロでは主に3つめのフェーズに含まれる「海外プロモーション」に注力 しています。
ゲームの海外展開支援施策として、ジェトロは今年で4年目を迎える「Made in Japan Collection 」事業を展開しています。Steam上での特設ページ開設による露出向上や、海外向けプレスリリースの配信などを行う事業で、現在300事業者から約600タイトルが登録されているとのことです。
また、オフラインの舞台でのプロモーションとして、ロンドンの「HYPER JAPAN 」、ドイツの「gamescom 」、アメリカの「PAX West 」、オーストラリアの「PAX Aus 」など世界各地のゲームイベントなどでブースを出展し、現地での試遊やB2Bネットワーキングの場を提供しています。昨年度は南アフリカやルーマニアといった地域への出展も行われました。
他業種からのゲームパブリッシング参入が相次ぐ時代へ
インディーゲーム市場の盛り上がりに伴い、近年は異業種からもゲームパブリッシング事業への参入が進んでいます 。
片山氏によると、講談社の「ゲームクリエイターズラボ」が創設された2020年当時はまだ少数だったところ、直近の2〜3年でさらに多くの企業が参入しているそう。各社がそれぞれの強みを活かしてパブリッシング事業を展開することで、クリエイター側の選択肢が増加する好ましい状況が生まれている と同氏は述べました。
佐藤氏もこの見解に同意し、国内では東宝や松竹などの映画業界がゲーム事業を立ち上げているほか、海外でもイギリスの金融機関Barclaysが「Barclays Games and Creative」として取り組むなど、ゲーム以外の企業の参入が相次いでいる点に言及しています。
世界市場で日本ゲームが注目を集めるためには 日本タイトルの海外展開を推進する上での課題として、片山氏は、北欧などの事例を挙げ、パブリッシャーやデベロッパーが協力して自国のゲームが売れる仕組みを構築していく重要性を強調。
また、ゲームアワードでの受賞も海外審査員からの注目を集める大きな要素であり、日本の作品が賞を獲得することで、海外市場でより存在感が高まっていくと語りました。
佐藤氏からは、Steam市場における日本のユーザー割合はわずか2.7% であり、日本市場単独でのビジネスは困難であるという現状が示されました。そのため、英語圏、中国語圏、ヨーロッパ諸言語、中南米のスペイン語・ポルトガル語などをしっかりとカバーしていく必要があると指摘。さらに、タイ語圏のみでありながらユーザーの反応が良く、口コミが他国へ飛び火して大ヒットに繋がるケースがあるタイなど、波及効果の高い地域への出展支援が求められている と持論を述べました。
海外ユーザーが期待する「日本のカラー」を発信する
続いて第2部では、Kando Factory創設者のボビー・ワートハイム 氏、ライツインタラクティブ代表取締役の七瀬 セイジ 氏、PARCO GAMESプロデューサーの福井 隆 氏が登壇。マーベラスの知念 さおり 氏がモデレーターを務め、海外から見た日本市場の魅力や課題、海外イベント出展の実情などについて意見が交わされました。
ボビー・ワートハイム氏は、浮世絵など日本古美術に携わる仕事を経て、2009年にゲーム業界へ転職。今から3年半ほど前にKando Factoryを設立し、現在は主にパブリッシャー支援を行っているほか、自らもパブリッシャーとして活動している
ライツインタラクティブ代表取締役の七瀬 セイジ氏。スクウェア・エニックス在籍時にテクニカルアーティストを務め、独立後はインディーゲーム制作を行っている。ジェトロの支援を受けながら多数の海外イベント出展も経験してきた
福井 隆氏は『サクラ大戦』シリーズのプロデューサーなどを務めた経歴を持ち、PARCO GAMESではパブリッシング事業の立ち上げと推進を担っている
マーベラスの「iGi」でプロジェクトマネージャーを務める知念 さおり氏。2026年より経済産業省「IP360」内の「創風」ゲーム分野で運営に携わっている
ワートハイム氏は、日本発のインディーゲームがかつてないほど海外から注目を浴びていると指摘。日本は世界的に強いIPを生み出すことに長けており、海外のユーザーやパブリッシャーも日本のIPに触れて育ってきた背景があるとした一方で、今後の成長の余地として、日本企業がさらに積極的に海外イベントへ出展し、直接的な人脈を構築する必要があると語りました。
福井氏はパブリッシャーの視点から、韓国の「Global Game Exhibition G-STAR」や中国の「WePlay Expo」「台北ゲームショウ」といった海外イベントでの出展経験をもとに、ゲームの遊び手は開発者の出身国をほとんど気にとめていない という実感を語りました。重要なのは作品そのものの面白さであり、日本のクリエイティブに対して期待されるカラーをどのように伝えていくかがパブリッシャーの役割である と述べました。
ワートハイム氏は補足として、スウェーデンのゲーム産業を例に挙げ「適切な教育環境が整っていれば自然と良いゲームが誕生する」として、日本にも優秀な担い手が揃っているため「日本」という枠組みを過剰に意識しすぎる必要はないと語りました。
七瀬氏は、和風の題材を扱うゲームを自社開発する立場から、日本のコンテンツを世界へ発信する際は、作品テーマや日本の魅力を海外ユーザーに伝わる形で変換する必要がある と指摘。開発中のタイトルを例に「犬と少年」「大切な犬を救う」という世界共通で伝わる普遍的なテーマを据えた上で、日本の風景や妖怪・神社といった和のモチーフを取り入れ、ビジュアルや言葉、ゲーム体験としてそれらの魅力を届けることを意識しているそうです。
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七瀬氏率いるライツインタラクティブが開発中の『モノノケの国 』トレーラー。突如奪われた柴犬ムサシの魂を取り戻すべく、穢れに覆われた「モノノケの国」に赴き妖怪を払う物語
ビジネスマッチングは積極的に挑戦するべき
海外パブリッシャーと提携する上で課題となりがちな言語の壁について、七瀬氏は、AI翻訳などの技術を活用することで十分に乗り越えられるため、ぜひ積極的に挑戦してほしい エールを送りました。
ワートハイム氏は、海外パブリッシャーと組む際の課題として「言語の壁」に加えて「時差」「文化の壁」を提示。これらは、エージェントの協力を仰いだりネットワーキングで人脈を構築したりと戦略を練ることで対応可能としています。国によって好まれるゲームのカラーが異なるため、各地域の特性に合わせたSNS運用やプロモーションを打ち出すことが必要だと語りました。
「MeetToMatch 」はパブリッシャーにアプローチする上で非常に有効な手段であるとして、PARCO GAMESでも運用していると福井氏。事前にしっかりプロフィールを登録してインビテーションを送ることで承諾率が向上するといい、積極的な人脈構築の重要性が説かれました。
最後に、今回語られた知見や取り組みが実を結んだ事例として、gamescom award 2026のMost Wholesome部門でPARCO GAMESの『Finding Polka 』が受賞に輝いた経験が福井氏から語られました。
ゲームのプレゼンテーションそのものより、クリエイターのバックボーンや開発に至った思いに重きを置いて説明し、共感を生み出したことが成功につながったと分析。事前に各種ゲームタイトルに合ったアプローチを用意して実行することが重要となると語りました。
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『Finding Polka』は、ボールペンで描かれた2D世界を舞台とするアドベンチャーゲーム。幼い頃に飼っていた愛犬ポルカにそっくりな犬を追い、行く先々でさまざまなキャラクターと交流していく
海外イベントへの積極的な出展に、地域文化に合わせたマーケティングと、ゲームのグローバル展開に向けたさまざまな実践的なアプローチが紹介された講演となりました。
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ゲームメーカーズで編集や諸業務に携わっています。『星のカービィ』シリーズと『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズが好きです。