『アークナイツ:エンドフィールド』などのパブリッシャーから見る日本モバイルゲーム市場の強み。中国との協業可能性も語られた講演をレポート【GAME FUTURE SUMMIT 2026】

『アークナイツ:エンドフィールド』などのパブリッシャーから見る日本モバイルゲーム市場の強み。中国との協業可能性も語られた講演をレポート【GAME FUTURE SUMMIT 2026】

2026.06.22
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2026年6月3日(水)、ゲーム業界向けビジネスイベント「GAME FUTURE SUMMIT 2026」が東京・ベルサール渋谷ガーデンで開催されました。

本稿では、「中国ゲーム企業が見据える日本マーケットの真価と共創の未来」と題したパネルセッションの模様をレポートします。

中国を拠点とするゲーム企業「WANDA CINEMAS GAMES」と「GRYPH FRONTIER」の代表者より、日本のモバイルゲーム市場に対する評価や、異なる文化圏でモバイルゲームを運営する上での考え方、今後の展望などが語られました。

TEXT / 小川 翔太
EDIT / 浜井 智史

目次

日本のユーザーは「好きなタイトルを推し続ける」傾向が高い

講演に登壇したパネリストとモデレーターは以下の通り。

【パネリスト】
畢 晟氏:WANDA CINEMAS GAMES 日本支社取締役
梁 禕氏:GRYPH FRONTIER パブリッシング責任者

【モデレーター】
平井 昭利氏:ゲームエイト Store&Commerce事業本部 マーケットプレイス部 部長

WANDA CINEMAS GAMES(ワンダシネマズゲームズ)は、2011年に設立されたオンライン・モバイルゲームの開発・運営企業です。中国に本社を置く「大連万達集団(Wandaグループ)」の傘下にあり、おもにMMO、RPG、SLGなどを世界規模で展開。2024年1月には『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』の日本版をリリースしています。

GRYPH FRONTIERは、『アークナイツ』の開発元である中国デベロッパー「Hypergryph(ハイパーグリフ)」が展開するブランド「GRYPHLINE(グリフライン)」の日本法人で、『アークナイツ:エンドフィールド』などの作品を配信中。「GRYPHLINE」は、シンガポール本社と数か国の支社を拠点にグローバルなゲームパブリッシングを手がけています。

左から、WANDA CINEMAS GAMESの畢 晟氏、ゲームエイトの平井 昭利氏(モデレーター)、GRYPH FRONTIERの梁 禕氏

日本のモバイルゲーム市場に対して「新参者として学ぶ姿勢で臨んでいる」と語った梁氏。『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』といった長寿タイトルを「手本」と位置づけ、長期的なサービス運営に励んでいきたいと述べていました。

同氏は、日本のモバイルゲームユーザーの特徴として「好きなタイトルを長期にわたり推し続ける傾向が強い」と指摘。広告などの影響を受けて別タイトルへと流れるユーザーが諸外国と比較して少なく、ひとつの作品に対する定着率が高いとの見解を示しました。

また梁氏は、日本製ゲームの強みは「アニメや漫画を起点とした海外への影響力」にあると主張。自身も幼少期からアニメに親しんできたという経験を踏まえ、「東南アジアなどの地域には日本発のゲームが受け入れられやすい土壌がある」と持論を述べました。

二次元ゲームの市場規模が世界的に拡大しつつある現在、日本市場を主軸に据えた戦略でも安定した事業展開が期待できると語った梁氏

畢氏によると、WANDA CINEMAS GAMESの運営タイトルにおける日本ユーザーのLTV(※)は中国本土の2倍に上り、グローバル市場の平均と比較しても1.5倍に達するとのこと。
※ Life Time Value(顧客生涯価値)。顧客1人あたり、取引開始から終了にかけて企業が獲得できる総合的な利益の指標

この結果は、日本ユーザーのARPU(※)の高さを示すものではなく、プレイ時間そのものが諸外国と比較して長いことに起因するそうです。
※ Average Revenue Per User。ユーザー1人あたりの平均売上

中国国内ではリリースから1〜2年でユーザー数が大きく落ち込むケースも多いとのこと。対する日本では長期にわたり好調が維持されやすいと畢氏は語った

バグ対応や「詫び石」配布。日本と中国でのユーザー対応の違い

続いて、日本でのタイトル運営において苦労したエピソードとして、『聖闘士星矢レジェンドオブジャスティス』で発生したバグを巡るユーザー対応の事例が紹介されました。

2026年1月中旬、同作のリリース2周年を記念したキャンペーンを実施していた最中「スペシャルパックを1回購入するだけで通常の約1万倍ものアイテムが入手できてしまう」という重大な不具合が発生。

ユーザーからは「対価を払って正規にアイテムを入手したのだから、そのまま手元に残しておきたい」といった要望が数多く寄せられたといいます。

こうした事態における中国での一般的な対応が日本では最善策とならず、ベストな対処法を模索するのに苦心したと畢氏は語りました。

中国国内で同様のミスが起きた場合、発表と同時にサーバーデータを1〜3週間前の状態に巻き戻し、ユーザーに詫び石(ダイヤモンド1,000個など)を配布するとともに、実際にアイテムを購入したユーザーに対して詫び石の金額の10倍相当のアイテムを付与するといった対応が一般的とのこと。

ところが日本ユーザーから寄せられる声が中国とは大きく異なり、またAppleストア経由での返金リクエストに対する運営側からの返金手段がなかったことで、適切な解決策を見つけられず頭を悩ませたといいます。

最終的には、当該アイテムを周年記念として通常価格のまま全ユーザーが自由に購入できる形に変更するという苦肉の策を決行。その結果、売上は過去最高記録を突破したそうです。

中国ゲーム企業の強さは「スピード」と「積極投資」

日本企業にはない中国企業ならではの強みを問われると、畢氏は「仕事のスピード」と即答。「リリース前後は徹夜も辞さない体制で臨むことが慣例となっており、柔軟な対応を取る姿勢が根付いている」と述べました。

梁氏からは、キャラクターデザインや3Dモーションなどの各工程に対して積極的に投資・人材育成を行い、組織全体で試行錯誤を重ねる風土が強みとして挙げられました。

また中国のゲーム開発会社は、グローバル展開に関する専門のデータ分析チームを設置していると梁氏。各社のデータを横断的に解析し、得られた知見を活かしてプロモーション手法やゲームシステムを改善する強固なサイクルが構築されており、蓄積されたノウハウにおいて日本企業とは大きく差をつけているとの見解を示しました。

続けて畢氏は、グローバル市場での成功を勝ち取るために必要な要素として「ローカライズ速度」と「有償のベータテスト」を挙げました。

中国企業が海外にゲームを展開する際は必ず有償のベータテストを実施し、そのフィードバックをもとにマーケティングコストやプランニングを設計すると説明。日本ではこうした有償テストが一般的ではないと同氏は語ります。

ユーザーの反応が芳しくない地域に対しては迅速に修正を入れるなど、有償提供のテストでは積極的な改修が必要であることが強調されました。

日本と中国がタッグを組めばグローバル規模での成功も夢ではない

最後の議題は、「日中それぞれの強みを掛け合わせてグローバル進出に挑む協業の可能性」について。

梁氏は、日本側の強みであるストーリー構築力・キャラクター表現力と、中国側の強みである開発スピード・ゲームシステムの設計力が相乗効果を発揮すれば、世界規模で成功するコンテンツを生み出せる余地があると述べつつも、「実現するには非常に難しい部分もある」と慎重な立場を示しました。

異なる言語・文化を持つ両国が連携する上での課題として、AI翻訳ツールの運用だけではカバーできない文化の相互理解や、双方のワークフローや業務に対する意識・価値観を共有し、間に立って整理できる人材が不可欠であると主張。

日本企業は段階を踏みながら作業を進めるのが常であることに対し、中国側は目標に向けて一気に推し進める気質があり、そのギャップをいかに埋められるかが鍵になるとのこと。

畢氏は「WANDA CINEMAS GAMESではすでに、日本のIPを活用したグローバル展開を実践している」と語ります。中国企業のスピード感と日本スタッフの細やかな仕事ぶりが組み合わさり、現時点での進捗は上々とのこと。

また梁氏は、グローバル展開においては地域ごとに優先するべき事項を明確化し、現地ユーザーに合わせた実装を行うことが重要だと主張し、それを実現するためにはゲーム運営だけでなく、各国の政治や宗教、文化に深く通じる必要があると語りました。

梁氏は「まだ日本ユーザーの意見や理想を完璧に理解しきるには至っていない」と述べ、日本市場向けの広告、マーケティングをさらに強化していく方針を示しました。

今後の課題について梁氏は、大学生や新入社員といった若いユーザー層が求めるゲームプレイに対する知見が不足しているとの見解を示し、継続的な分析が必要であると述べました。

セッションの締めくくりとして、両氏からそれぞれ一言が寄せられました。

畢氏は、WANDA CINEMAS GAMESとして日本国内のモバイルゲーム市場への展開を継続していく方針を示し、アジアの他地域へのリリースも来年頃を目処に予定していると展望を明かしました。

また「これまで日本のパートナーの協力があってこそここまで来られた」と感謝を伝え、引き続き力を合わせて活動していきたいと語りました。

梁氏は、GRYPH FRONTIERが展開する「GRYPHLINE」ブランドを今後さらに拡大していきたいとの意向を示しました。大手メーカーとの提携を積極的に模索しつつ、ユーザーニーズのさらなる分析に取り組んでいくとのこと。

日本市場からの撤退は一切想定しておらず、5年、10年、20年という長期目線で向き合っていくと強調しました。

日本のゲーム市場において中国企業の存在感が増している中、本講演は「中国企業が日本のマーケットをどう捉えているのか」という生の声を知る貴重な機会となりました。

「GAME FUTURE SUMMIT 2026」公式サイト
小川翔太

1987年生まれ。会社経営者。大学時代はFPSにハマって留年。
「キャリアコンサルタント」から「飲食メディア編集長」を経て、eスポーツ業界へ。
7年間のeスポーツ取材の経験をもとに、eスポーツ専門の編集プロダクション兼、取材代行会社を設立。

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