アンリアルエンジンの大型勉強会「UNREAL FEST WEST ’22」が2022年11月19日から2日にわたって開催されました。講演だけでなく、アンリアルエンジンが体験できるブースやコンテスト受賞作品の展示、更にはPSVR2の試遊コーナーなど、リアル開催ならではの催しとなった本イベントの様子をレポートします。
TEXT / 神山 大輝
目次
アンリアルエンジンの大型勉強会「UNREAL FEST」
UNREAL FEST は、エピック ゲームズ ジャパンが主催するUnreal Engine公式の大型勉強会です。会場となったのは京都駅徒歩7分に位置する京都コンピュータ学院。リアル開催としては2019年秋のパシフィコ横浜開催以来で、現地は初日から多くの参加者で賑わっていました。
本イベントは国内コミュニティ活動の一環として2014年に第1回が開催されており、「FEST」という名前の通りお祭りに近い雰囲気が目指されています。ゲームメーカーズでも、以前にエピック ゲームズ ジャパンに開催意図や歴史をインタビューしています。
「フォートナイト」話題も飛び出したOpeningトーク
Openingにはエピック ゲームズ ジャパン代表 河崎高之氏が登壇。UE5の正式リリースをはじめ、2022年は同社にとって変革の年でした。3月にはBandcampがエピックファミリーに加わり、TwinmotionやSketchfabなどとのシナジーによってクリエイターコミュニティの支援が広がりつつあります。
また、日本国内イベントにおいては初めて『フォートナイト』に関する言及がありました。同作にはプレイヤーが自由に自分だけのレベルやルールを作成できる「クリエイティブ」というゲームモードがありますが、これをアンリアルエンジンに近付けて提供することが改めて発表されました。
『フォートナイト』クリエイティブにアンリアルエンジンの技術を活かす旨は2020 Year In Review | Inside Unrealで発表されていた
河崎氏は「フォートナイト上でクリエイターが自分の作品を世界発信できる環境を作りたい」とし、次回UNREAL FESTをはじめ2023年以降に関連情報を公開する見込みと語りました。
全10講演がラインナップ
2日間のうち、初日はノンゲームの5講演、2日目はゲームの5講演が行われました。初日は建築業界や自動車産業などの事例紹介のほか、エピック ゲームズ ジャパンによるUE5.1新機能まとめ講演などが行われました。
中でも話題を集めたのはエレクトロユニット「PRIDASK」の2人が登壇した『誰でも始められる!知識ゼロから自宅で本格【実写+3DCGミュージックビデオ】の作り方』。産業系カンファレンスのような雰囲気になりがちなNON-GAME DAYですが、本講演はエンタメ文脈での活用方法であることと、「初心者でもできる」という語り口調が人気を集め、会場には多くの参加者が集まっていました。
誰でも始められる!知識ゼロから自宅で本格【実写+3DCGミュージックビデオ】の作り方2日目のGAME DAYは各社のIP開発事例が中心。グラフィックス技術や開発効率化の話題が多く、『ライブアライブ』や『ヴァルキリーエリュシオン』、『THE KING OF FIGHTERS XV』などの裏側が開発者本人から語られました。なお、ゲームメーカーズでもGAME DAY 全5講演をレポート予定です。
GAME DAY タイムテーブルゲーム編、ノンゲーム編に分かれて開催された「アンリアルクエスト4」
講演と並行する形で「アンリアルクエスト4」が実施されました。本イベントはエピック ゲームズ ジャパンとヒストリアが共同で開催するユーザー参加型企画で、参加者は初級から上級まで難易度別に分けられたお題(クエスト)をクリアしながら作品を作ることを目指します。
第1回~3回はDiscordを用いたオンライン形式で開催されていましたが、今回からリアル会場が併設されたことで、直接スタッフからのサポートが受けられるほか、参加者同士で密にコミュニケーションを取るなど活発なやり取りが見られました。
オフラインならではの試遊ブースや展示ブース
オフライン会場になったことで、試遊や体験型展示などが復活。開催前に話題となった「PlayStation®VR2 体験会」では、2日間合わせて100人近い参加者が『Horizon Call of the Mountain』を体験していました。
アンリアルエンジン製タイトルが遊べるブースも盛況
今回から新たに「インディーゲームエリア」も登場。アンリアルエンジン製タイトルが集うイベントとして、6団体9作品が集結しました。
UNREAL FEST EXTREME 2022 SUMMERで講演を行ったCAVYHOUSE新作『こふんは生きている―マホロヴァ・クラブの死体さがし―』や全編ブループリントでプログラムされた『Link: The Unleashed Nexus RH』、会場となった京都コンピュータ学院の学生作品などが各部屋2団体で展示されていました。
また、インディーゲームエリアとは別に、「UE5ぷちコン」ブースではこれまでの受賞作品が9作品展示されていました。第18回UE5ぷちコン最優秀賞の『ぷちレスキュー』や審査員賞の『カケル』『いま、布団かけます』のほか、17回以前の最優秀作品の試遊ブースも展開されています。
カジュアルに遊べる作品が中心で、講演を行うメイン会場と近かったことから、多くの参加者がプレイする様子が見られました。
全7社が出展する協賛ブース
協賛ブースは大きく分けてPCメーカー、ミドルウェア&ツール企業、各種サービス系というラインナップで、全7社が出展。エムエスアイコンピュータージャパン株式会社やTSUKUMOブースではゲームエンジンを動かすために必要不可欠なPCの展示が行われたほか、株式会社サードウェーブではPCだけでなくアンリアルエンジンの学習資料に関する情報も公開されています。
エムエスアイコンピュータージャパン株式会社。前回の取材でも取り上げた通り、会場となった京都コンピュータ学院と同社の繋がりは4年前のUNREAL FEST WEST2018展示がきっかけ
カンファレンス展示ではお馴染みの株式会社CRI・ミドルウェアではマイクロソフトによる3D音響技術「Project Acoustics」とCRIWAREを組み合わせたデモが体験できたほか、Unreal Engine×Sofdec事例として花譜×たなか #95「飛翔するmeme」が紹介されていました。
また、株式会社ミライセンスでは最新のハプティクス(振動)に関するデモゲームが展示されていました。DualSense ワイヤレスコントローラーを用いて、左右に引っ張られるような指向性を感じる振動を体験できたほか、同社のハプティックスツール「AMPTIX™」の実際の画面を確認することができました。
3年ぶりに「なんでも相談所」が開設
会場内で最も実用的に活用されていたのが「なんでも相談所」。名前の通りエピック ゲームズ ジャパンのメンバーが具体的に相談に乗ってくれるというもので、合計10名のメンバーがそれぞれの得意分野でアンリアルエンジンユーザーのサポートを行っていました。
UNREAL FEST WEST ’22 では弊社サポートスタッフによる Unreal Engine なんでも相談所を約3年ぶりに実施いたします!
シフト表として各スタッフの担当分野・時間をまとめた物を用意しました!こちらを参考に当日はお立ち寄りください!https://t.co/3RndwbLMAs#uefest #UE4 #UE5 pic.twitter.com/fjjnkjL00M
— アンリアルエンジン (@UnrealEngineJP) November 18, 2022
また、物販コーナーでは公式グッズの販売が行われていました。
次回UNREAL FESTは来年6月開催
講演者と会って話せる楽しさや各種展示ブースでのリアルなコミュニケーション、しっかり遊べる試遊ブースなど、リアル開催ならではのイベントとなったUNREAL FEST WEST ’22。イベントの終わりに、次回開催予定が2023年6月であることも明かされました。
ゲームメーカーズでは次回の東京会場も取材予定です。また、今回の講演レポートも順次掲載予定となります。ぜひ、ご期待ください。
UNREAL FEST WEST '22 公式サイトゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。
ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。
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