Unity 6製の協力型強盗FPS『Den of Wolves』試遊レポート。『PAYDAY』生みの親ウルフ・アンダーソン氏にインタビューも実施

2025.04.02
注目記事インタビューゲームの舞台裏Unity
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いまだ根強い人気を誇る協力型強盗FPS『PAYDAY: The Heist』、『PAYDAY 2』。これらのタイトルを生み出し、のちに独立して10 Chambers社を設立したウルフ・アンダーソン氏が来日。同社の新作『Den of Wolves』プロモーションの一環として、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのオフィスを借りてメディア向けの試遊会が行われました。

本レポートでは開発中である『Den of Wolves』のプレイ感をたしかめるとともに、開発のキーマンであるウルフ氏本人にゲームデザインやUnity 6での開発について詳しく聞きました。

TEXT / ゲームメーカーズ編集部

目次

※ 2025年4月3日(木)更新
10 Chambersが公開したプレアルファ版のゲームプレイ動画を記事に追加しました。

Unity 6製、『PAYDAY』生みの親が手がける4人協力型の強盗FPS『Den of Wolves』

業界ベテランによって設立された10 Chambers社にとって、『Den of Wolves』は2作目にあたります。最初に手がけた『GTFO』は大企業的なスタイルに疲れていた開発者たちが「ゲーム開発を再び楽しいものにする」ために作ったタイトルで、その結果、難易度の高いハードコアな協力型FPSが誕生したとのこと。

リリース当初、『GTFO』は難易度の高さから売り上げが不安視されていましたが、発売後わずか9~10日で損益分岐点を超え、Steamのトップセラーにまで上り詰めました。

『GTFO』がゲーム開発の楽しさを再認識するためのゲームであったことに対して、『Den of Wolves』はウルフ氏にとって「作らなければならないゲームだった」と語られています。PAYDAYシリーズの強盗というルーツに回帰する作品として、同氏の中で10年以上も構想が温められてきました。

舞台となるのは2097年の「ミッドウェイ・シティ」。前例のないディープラーニングAIによるサイバー攻撃によって世界中が混乱に陥るなか、企業連合が規制なしに実験を行える自由貿易圏として創設した街です。

企業が辿り着いた解決策は、人間の脳をストレージとしてデータを保存する技術を基盤とするものでした。プレイヤーはこの世界における犯罪的な企業家として、数多くのミッションをこなしていきます。

2024年12月に行われた「The Game Awards 2024」で初のゲームプレイトレイラーが公開された

企業の秘密は人間の脳内に格納された安全な仮想環境「バイオ・スタッシュ」に保管されている。プレイヤーは物理的な障壁だけでなく、精神的なセキュリティ・システムを突破する必要があるが、こうした設定がどのようなシステムに活かされるかの詳細は明かされていない

脳内ストレージである「バイオ・スタッシュ」などの要素を含めて、本作はPAYDAYシリーズに比べて“強盗”という概念がより広範になり、ミッションも多様化。企業の秘密プロトタイプの強奪や競合他社の不正暴露、産業スパイ、暗殺などのミッションを最大4名の協力型プレイで攻略していきます。

また、PAYDAYシリーズとの大きな違いとして、一度アクションが発生したあとも再度ステルスに戻ってミッションを進行できるのも特徴。より複雑なシナリオが楽しめるようになるとのことです。

ランチブレイクのような短い時間でプレイできる準備ミッションも存在する。これは、より大規模なメインミッションに繋がるもので、例えばメインミッションに必要なドローンを盗むといった内容となっている。

平日に準備ミッションをこなし、週末に時間をかけてメインミッションに挑戦するといったプレイスタイルが想定されているとのこと

なお、前作『GTFO』は1つのミッションに数時間かかることもあり、死亡すると最初からやり直しになる厳しい仕様だったことに対し、『Den of Wolves』はそれよりも“フレンドリー”になるとされています。これは決して簡単になるわけではなく、挑戦しやすくなる方向で調整中とのこと。

さらに面白いことに、10 Chamberは自らのゲーム開発をドキュメンタリー作品として撮影していました。『Do the Game』は、ゲーム開発者と起業家たちのストレスフルな生活を追う映像で、約30分のエピソード8つで1シーズンとなり、現在はシーズン2の撮影も進んでいると発表されました。

初期の資金難から『GTFO』の成功、そしてTencentによる多額の出資を受け規模拡大する中で、ビジョンが共有できず意見が衝突する――などなど、ゲーム開発者であれば思わず頷くような内容になっているようだ

さっそく試遊!FPS好きな編集部員がミッションに挑戦

今回の試遊会では開発陣や別メディアの方、そしてゲームメーカーズの編集部員の4人でミッションに挑みました。

なお、編集部員は『Apex Legends』や『VALORANT』などのFPSが好きでよくプレイする20代と、テストプレイにぴったりな人材に思えます。

ロビー画面。本作は連携が重要なタイトルであり、ボイスチャットは必須だ。試遊時も、Discordを使って報告や相談をしながらプレイした

ミッション開始前のロビー画面では、ミッションの概要説明ロードアウト選択を行います。メイン武器(AR / ピストルなど)、サブ武器(DMR / ショットガンなど)、そして特殊アイテム(地雷 / シールド / タレットなど)からプレイスタイルに合わせた装備を選択できます。

ロードアウト選択画面。パーティ内での装備の組み合わせや、ミッションの特性に応じて武器を選択する

本作のキー操作

最初のミッション:緊張感あふれるステルス

最初に挑戦したのはステルスがメインのシンプルなミッション。目標は建物奥にある金庫を開け、中にあるお金が入ったカバンを持ち帰ることです。

本ミッションの舞台

カバンは一人ひとつしか持てないため、より多くのカバンを持ち帰るにはリスクの高い複数回の往復が必要になります。一度でも失敗すればすべてが水の泡。

施設内を巡回する警備員に見つからないよう、しゃがみながら慎重に進みます。警備員の視線上にいると遠くからでも発見されてしまいますが、背後からなら接近しても気づかれません。

警備員の巡回パターンを確認しながら慎重に進む様子

もちろん、見つかればステルスから一転して激しい銃撃戦に。敵にもいくつか種類があり、それぞれ異なる装備で襲いかかってきます。

銃撃戦に突入した瞬間。ガラスや周囲の環境が破壊され、緊迫感が一気に高まる

つねに変化する状況に対して、メンバー同士で交わされる「右側の通路に敵がいる」「そこにいると敵が来るから早く移動した方がいい」などの報告。こうした会話がミッションの成功には不可欠でした。

ミッションに「サーチ」として全員が一箇所に集合するシステムが組み込まれている点も含め、本作がコミュニケーションと連携に重きを置いていることが伺えました。

大規模ミッション:作戦会議からはじまる本格的な強盗

続いて挑戦したのはより規模の大きいミッション。目標は、鍵が保管されている可能性のある複数の金庫を破り、鍵を一定数入手するというもの。

プレアルファ版のゲームプレイ動画。試遊では、動画と同一と思われるミッションを体験できた

今回のミッションは、「鍵の入手」だけでなく、「ターゲットの脳内に侵入してデータを盗み出す」「マップ北側にある大きな窓を爆破して脱出する」といった複数のフェーズで構成されていました。迫りくる警備員と戦闘しつつフェーズを進めるため、より緻密な計画性が求められます。

金庫を破ると警備員との戦闘が開始する。金庫の数が多いうえ、鍵の配置はおそらくランダム。効率良くマップを周る必要がある

本作では、実行前に全員が同じマップを見ながら作戦を立てられる「ブリーフィング」フェーズが用意されています。

試遊時点では未実装であったため、今回はその代わりとしてマップを印刷した大きな紙とマーカーを使ってリアルでの作戦会議を行いました

作戦会議の様子。全員でマップを囲み、侵入ルートや役割分担を検討した

会議の結果、二人ずつ二手に分かれて行動する、効率を重視した作戦に決定。

赤い矢印が進行方向。序盤から2人チームで進み、互いにカバーしながら金庫を開けて周ることに

いざ作戦実行。作戦通り二手に分かれ、それぞれが別の金庫に向かいます。

金庫を破るドリルを設置しても、即座に鍵を入手できるわけではありません。ドリルは一度稼働しても、時間経過で停止してしまうため、その都度インタラクトして再起動する必要があります

ドリルを設置している様子。停止したドリルを再起動するには、その場から離れられない

戦闘中に仲間がダウンしたら、近づいてインタラクトすることで蘇生可能です。ただ、蘇生中に攻撃を受けるとキャンセルされてしまうので、他のメンバーによるカバーが重要になります。

ミッションの終盤では敵の集中砲火により、他プレイヤーのカバーなしでは蘇生がままならなくなる

敵の猛攻に耐え切れず、初回の挑戦ではあえなく失敗……。再度ブリーフィングを実施し、金庫が密集しているエリアに優先して向かう計画に変更し、敵が集まる前にクリアすることを目指しました。

ターゲットの脳内に侵入する「ダイブ」ではゲームプレイが大きく変化。これまでの銃撃戦とは打って変わって、仲間と共にジャンプで足場を渡って目的地を目指す3Dプラットフォーマーが楽しめました。

「ダイブ」のステージ。タイムリミットまでに全員が目的地にたどり着く必要がある

失敗を重ねつつ、何度も挑戦を繰り返すことで、最終的にはミッションを成功させることができました。

『Den of Wolves』に感じた特徴

試遊を通じて感じた本作の特徴は、ステルスとアクションの切り替わりと事前プランニングの重要性でした。本作の魅力を大きく分けると、4つのポイントが見えてきます。

  • ステルスから戦闘へのフロー:ステルスパートから激しい銃撃戦へ緊張感が高まっていく展開
  • プランニングの重要性:事前のブリーフィングと作戦立案に重きを置いたゲームデザイン。大枠の計画を立て、実行時に臨機応変に対応するバランスが絶妙
  • 実行・失敗・改善のループ:失敗することでプランの穴が見えてくる設計。次の作戦会議で「じゃあこうしよう」と改善案を出しやすく、試行錯誤が楽しめる
  • 協力前提の戦闘デザイン:シールドなど1種類しか選択できない特殊アイテムの重要度が高く、役割分担が必須。また、仲間を蘇生する際のカバーなど、つねに連携を意識したプレイが求められる

開発者インタビュー。Unity 6の採用理由やレベルデザインについて聞く

試遊会のあと、本作のキーマンであるウルフ・アンダーソン氏へインタビューする機会を得られました。

10 Chambers設立者であり、本作のクリエイティブディレクターを務めるウルフ・アンダーソン(Ulf Andersson)氏

――本作はスリリングな展開の連続で、非常に楽しめました。フォトリアリスティックなルックが特徴な本作ですが、開発環境としてUnityを選んだ理由を教えてください。

ウルフ氏:私たちがUnityでの作業に慣れており、Unityを熟知しているからです。Unityを使うことをエンジョイしていますし、ゲームプレイの作成も楽しく行えています。

現状、レンダリングの面ではUnity 6が最適ではないかもしれませんが、最終的には私たちはすべてをカスタムして実装し直すので、問題とは感じていません。

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――Unity以外に活用しているDCCツールなど、開発プロセスで頻繁に使用されたツールについて教えてください。

ウルフ氏:モデリングにはMayaと3ds Max、ZBrushを使用し、テクスチャ作業にはPhotoshopやMudboxを使用しました。ただ、いまはBlenderが最も柔軟なツールだと考え、チームのほとんどがBlenderに移行しています。

――開発環境はUnity 6とのことですが、最新バージョンに移行する際に困難はありましたか?また、アップグレードの恩恵を受けた機能などはありますか?

ウルフ氏:Unity 6への移行はそれほど困難ではありませんでした。むしろUnity 2023.2.18から19や20への移行の方が困難だった気がしますね。

本作は、HDRPやレイトレーシング、そしてDOTSパッケージ(ECS)を使用しています。DOTSはUnityのデータ指向技術スタックで、通常は10,000個ほどの多数のオブジェクトを効率的に処理するのに適していますが、本作では200個程度のオブジェクトしか扱いません。

そのため、標準的なECSとは大きく異なるアプローチとして、より多くの機能やオブジェクトをまとめて処理できるよう設計するほか、非常に汎用的なコードを書くことで、より多くの処理を同時に実行できるようにしています。

「Unite 2024 Keynote」にも『Den of Wolves』と10 Chambersが登場している

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――このゲームのマップは、『GTFO』や『PAYDAY 2』と比較してどの程度広いですか?

ウルフ氏:本作のマップは『GTFO』よりは小さいですが、『PAYDAY 2』よりは大きいです。

狭いマップもありますが、それはゲームとして必ずしも悪いことではありません。この手のゲームはマップをすぐに覚えることが重要になるため、小さいマップが適しているシーンもあります。今日プレイしてもらったマップは、『PAYDAY』マップよりも少し大きめでした。大きめとはいえ、ミッションを成功させるためにはマップのレイアウトを覚える必要があるので、サイズは一定程度に留めています。

――マップの開発プロセスにおいて、プロシージャルモデリングなどでの効率化は行っていますか?

ウルフ氏:補助的にジェネレーティブツールは使用していますが、品質のコントロールが重要だと考えています。

――今回の試遊でも、事前に相談したうえで二手に分かれるなどのルート選択が重要でした。こうしたルートプランニングはどのように行っていますか?

ウルフ氏:多くの強盗ゲームでは、攻略に使える10個程度のオプションが用意されており、攻略方法を自由に選択できます。ただ、本作は複数のマップをプレイし、そのプレイ方法やセットアップ方法、複数のマップを通る順番の選択によって、利用できるオプションが変わります。そのため、(進行度合いによって)マップ開始時にどのオプションも選択できない場合があります。

攻略方法も「爆発物でドアを破壊する」というように単純に決めるのではなく、もっと早い段階から「爆発物を工場から盗む」などの意思決定を行います。複数のマップにまたがる、より長期的な決定に基づいてルート選択を行うようになっています。

――開発者が意図したとおりにプレイヤーが計画を立てられず、物事が予想どおりに進まない場合もあると思います。こうした場合にプレイヤーをサポートするためのガイドはありますか?

ウルフ氏:こういう場合は、YouTubeコミュニティやDiscordコミュニティに頼ることが多いと思います。彼らは非常によく助け合っており、私たちもそれを見て楽しんでいます。特に脱出を目標とするミッションはどれも難しくなるように設計しており、何度も試行錯誤し、さまざまなアプローチを試すことで経験を積んでいく楽しみができるようになっています。

プレイヤー同士で相談しあいながら攻略法を探るのは少し昔ながらの手法かもしれませんが、私たちはそれこそが協力型ゲームの醍醐味だと感じています。

今回の試遊でも、リアル作戦会議が大きく印象に残った。インゲームにおいても、チームで密にコミュニケーションを取りながら高難度ミッションに挑戦する楽しさが感じられるはずだ

『Den of Wolves』はUnity 6で鋭意開発中。Steamでアーリーアクセスとしてリリース予定で、すでにSteamストアページは公開されています。

『Den of Wolves』Steamストアページ「10 Chambers」公式サイト

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