「UNREAL FEST 2023 TOKYO」とは
「UNREAL FEST」はエピック ゲームズ ジャパンが主催する公式大型イベントで、多様な分野で利用される アンリアルエンジン についてのイベントとして、2014年から開催されています。
「UNREAL FEST 2023 TOKYO」は関東圏での開催としては実に4年ぶりとなりました。
初日の6月2日には「Unreal Showcases」と題してゲームジャンル、ノンゲームジャンルにおける講演が、2日目の6月3日には「Indie Focus」というタイトルの通り、インディーゲームに関する講演やユーザー参加型イベント「アンリアルクエスト5」といったインディーゲーム開発者にスポットを当てた企画が行われました。
展示ブースではエピック ゲームズ ジャパンお馴染みの「Unreal Engine なんでも相談所」やスポンサーブースのほか、両日あわせて25タイトルのインディーゲームの展示 、作品制作コンテスト「UE5ぷちコン 」受賞作品の展示など、こちらのほうでもインディーゲームを応援する形になっていました。
多種多様なジャンルの開発事例から学ぶ「Unreal Showcases」
初日に行われた「Unreal Showcases」は、Epic GamesのUnreal Engine セールス部門のVice PresidentであるNathan Thomas氏によるセッション『State of Unreal +』からスタート。
5月に正式版がリリースされたUnreal Engine 5.2(以下、UE5.2と表記)の機能紹介や、Fabなどのコンテンツ、Epic Online Services、ArtStationやEpic Developer CommunityなどのコミュニティなどEpic Gamesが提供するエコシステムの案内がありました。
さらに、Epic Games Storeといった流通システム、 『フォートナイト』 で自分の島がクリエイトできる「Unreal Editor for Fortnite 」(以降はUEFNと表記)、UEFNのプロジェクトも含めて資金援助の対象になる「Epic MegaGrants」の紹介も行い、ここでもEpic Gamesのクリエイターへの還元や支援の姿勢が強くアピールされました。
UE開発者の紹介も。『ジラフとアンニカ』『星のハルカ』開発のアトリエミミナ 紙パレット氏(左)、メタバース/RPG制作ミドルウェア『PEGASUS WORLD KIT』開発のJP GAMES 今村 哲矢氏(右)
バンダイナムコスタジオの『鉄拳』プロジェクト エグゼクティブプロデューサー 原田 勝弘氏(左)の登壇やバンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオの共同プロジェクト『BLUE PROTOCOL』(右)の紹介もあった
その後は、ゲームジャンル、ノンゲームジャンルそれぞれ5つのセッションが行われました。
ゲームジャンルのセッションでは、 Tango Gameworksの『Hi-Fi RUSH』の事例紹介ではコンセプト立ち上げからプロトタイプ作成に関する講演と、トゥーン表現の実装事例と最適化に関する講演がありました。
セガやトーセの開発者からは『龍が如く 維新! 極』や『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- リユニオン』といった過去作リメイク作品について、それぞれのタイトルの事情に沿った開発手法を解説しました。
コンシューマータイトルの講演が続くなか、『クマムシさん惑星』『英語ロギア』といったモバイルインディーゲームを開発している南原 成勲氏のセッションも行われました。講演では、開発のきっかけからデータの作成方法、さらには「国際クマムシシンポジウム」に参加したエピソードなどが伺えました。
ノンゲームジャンルのセッションでは、Twinmotionを使った銀座線渋谷駅の移設プロジェクトや自動車の開発現場での活用事例、メタバースのプロジェクトにおけるプラグインの設計やUE5の機能を活かした映像制作、大河ドラマ『どうする家康』でのバーチャルプロダクションの取り組みに関する講演が行われました。
インディーゲーム開発者にスポットを当てた「Indie Focus」と「インディーゲームブース」
2日目は「Indie Focus」と題して、インディーゲーム開発者を意識した特別企画が行われました。
講演としては、UEを漫画制作に活かす方法や「しくじり」も含めたインディーゲーム開発事例紹介、アート分野についてのインディーゲームクリエイター座談会、映像制作のノウハウを生かしたUEFNのTips紹介といったものがラインナップ。
事前に与えられた課題をこなしながらUE5でゲームを作るユーザー参加型イベント「アンリアルクエスト5」のミニステージも盛り上がりました。
会場の1階と地下1階(2日目のみ)に展開されたインディーゲームブース で展示されたゲームは「UNREAL FEST」最大の25タイトル。こちらでもエピック ゲームズのインディーゲームに対する力の入れようを肌で感じることができました。
2DのイラストがかわいいタイトルからUE5の新機能を活用したタイトルまでグラフィックも多種多様。メカアクションやRPGといった王道ジャンルからコマを操作して漫画を作り上げていくタイトルや海洋生物になって海の中を旅していくタイトル、実際にぶんぶん独楽を操作して遊ぶVR作品など、バラエティーに富んだゲームが並びました。
『Link: The Unleashed Nexus』
2日目の講演『「LinkRH」インディーゲーム制作・しくじり事例紹介&よきゲーム開発生活を続けるには?』に登壇したSig氏の開発タイトル。水上廃墟や海底を飛び回りながら進んでいく3Dアクションゲームでジャンプ中に高速で前進する、敵を踏みつけて前進するなどのアクションは爽快感があり心地よい
『DETECTIVE NEKKO』
2日目の講演『UEインディーゲームクリエイター座談会 アート編 2023』に登壇したアラ氏による「ダレも死なないミステリー」ADVゲーム。試遊デモはモノトーン中心の世界から始まり、ポストエフェクトによる網掛けのような表現が際立つ。ボイスは合成音声によるもの
『浮世』
『UEインディーゲームクリエイター座談会 アート編 2023』に登壇した久井 亨氏、halking氏が開発するタイトル。剣で街に散らばる三日月のマークをハックして進んでいく。和風サイバーパンク風の優れたルックが印象的
『路地裏漂流記』
『UEインディーゲームクリエイター座談会 アート編 2023』に登壇した化け猫00氏のタイトル。狭い路地裏を探索する謎解きアドベンチャーゲーム。初代PlayStation時代のゲームのようなルックが夢の中をさまよっているような幻想的な雰囲気を強化している
『ハルカノカナタ』
そらまめゲームスによる、縦読み漫画構築ゲーム。物語が止まってしまったら、前に戻ってコマを修正し先の展開へつなげる。コマ内のアニメーションはシーケンサーで表現。2つのコマが同時に存在する際は片方をレンダーターゲット(書き込み可能なテクスチャ)に書き込み、3D空間と置き変えて表示している
『Whale Fall』
Fuma Yamane氏による魚やイルカ、魚群などの海生生物を操作するゲームで、小さい魚が食物連鎖の上位の生物に食べられたら、食べた生物に操作対象が切り替わる。Yamane氏が東京藝術大学大学院映像修士であることもあり、大学のオーケストラに約40分の楽曲制作を依頼した
『Guns Undarkness』
VIDEO
ゲームメーカーズでもインタビューを行った、目黒将司氏による荒廃した近未来を舞台とした「ステルスRPG」。戦闘自体はコマンド式だが、3Dによるマップ上でいかに敵に見つからずに狙いを定めてから戦闘に入るかで有利不利が変わる。戦闘中も隠れるように移動を行うのが肝のようだ
『TrinityS』
VIDEO
Indie-us Gamesによる、3人でプレイするMMORPGのボスラッシュのような作品。止まっている間にキャラクターが強化され、経過時間に応じて攻撃力アップなどのボーナスが得られるため、敵の行動パターンを把握した上で「いかに動かないでいい場所を選ぶか」が重要。NORMALでさえ難しいのに、HARDモードも実装されている
『米砂原醫院』
DorsalFin Studio開発の、実在の病院をモデルとした探索型和風ホラー作品。UE4版はすでに販売されていて、今回出展されたのはUE5移行版。全体的にグラフィックの品質が向上し、特にLumenによる変化が大きいとのこと。「怖すぎてプレイできないけどマップはじっくり見たい」というプレイヤーに向けてフォトモードも実装されている
『ぶんぶん!ハンター』
asobi-lab開発の、ぶんぶん独楽をコントローラーとして利用するゲーム。自キャラは鳥で、ぶんぶん独楽を回すと「羽ばたき」、引っ張って維持すると「滑空」、左右に倒すと「旋回」のアクションになる。ぶんぶん独楽デバイスはM5Stackを使用。体験した編集部員は翌日軽い筋肉痛に
『Out of the World』
Toyota Ryuto氏による、キャラクターの視線の先にあるものが実体化し、目をつむると存在が消えるというルールの中で進める2.5Dプラットフォーマーパズルアクションゲーム。収集要素のハートをゲットした上でクリアを目指すと難易度はあがり、行き当たりばったりの攻略では不可能に
秋葉原の街中のビルの1階とアクセスしやすい会場であることもあり、試遊ができるブースには子供の姿も見え、ゲーム展示会のような賑わいのある2日間となりました。開発者だけではなく遊ぶ人にも優しいカンファレンスイベントでした。
『UNREAL FEST 2023 TOKYO』公式サイト
「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。