「MMOエンドコンテンツの死闘をもう一度楽しみたい!」――48時間でプロトタイプを開発した『TrinityS』ブラッシュアップの歴史と今後のロードマップ

2022.12.12
注目記事ゲームづくりの知識しくみをつくる見た目を良くするインタビューゲームの舞台裏アンリアルエンジン
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MMORPGのボス戦闘のみを抽出した3Dアクションゲーム『TrinityS』。4月公開の早期アクセス版から人気を博し、2022年8月に行われたBitSummit X-RoadsではPlayStation Awardを受賞するなど、尖ったコンセプトながら多くのプレイヤーに評価される作品です。

一方、MMO慣れしていない編集部3名(※本作は3名プレイが推奨)は1ステージ目から10回以上のコンティニューを強いられるなど惨敗。「こんなに難しいのに、なぜ何度も遊んでしまうのか?」という本作の魅力について、コンセプト設計やゲームデザインの観点からIndie-us Games代表 中村氏と本作ディレクター 兵藤氏に語っていただきました。

INTERVIEW & TEXT / 神山 大輝
INTERVIEW / 佐々木 瞬

目次

中村 匡彦 氏

Indie-us Games代表。会社員、フリーランスを経て2017年にIndie-us Gamesを創業。Unreal Engine専門一筋で現在も活発に活動中。
最近結婚して家庭持ちになった。

兵藤 大瑚 氏

Indie-us Games所属のゲームデザイナー。Unreal Engineを用いて、企画だけでなく実装面も担当する。学生時代にオープンワールドヒーローゲーム「UNDEFEATED」をSteamにてリリースし、​ 先日150万DLを達成した。​

MMOエンドコンテンツを濃縮した『TrinityS』誕生のきっかけ

――自己紹介をお願いします。

中村:Indie-us Games代表の中村です。普段は社長業をしながら、Unreal Engine(以下、UE)の何でも屋として、UEに関するお仕事を行っています。ゲーム会社に4社ほど所属したのちに独立し、フリーランスとして講師業と開発を兼業しながら、2017年にIndie-us Gamesを立ち上げました。最初はゲームプログラマーという職業からスタートしていますが、最近はテクニカルアーティスト的な仕事やプロジェクトのワークフロー周りの最適化なども行っています。

兵藤:ゲームデザイナーの兵藤です。ゲーム業界4年目で、UEを講師時代の中村から直接教わっていました。最初からゲームデザイナーを目指していましたが、「企画書を作るよりもプロトタイプを作ったほうが早い!」ということで、ブループリントに惹かれてUEを触るようになりました。ちなみに、学生時代には『UNDEFEATED』というヒーローゲームを開発しており、現在は144万ダウンロードと多くの方に遊んでいただいています。

中村:ちなみに、弊社ではプランナーとは呼ばず、ゲームデザイナーという役職があります。プランニングではなくゲーム自体を作れる人、手を動かして体験を作れる人という意味で、ゲームデザイナーという名前にはこだわっています。

――『TrinityS』のゲーム内容について教えてください。

兵藤:TrinitySはMMORPGのエンドコンテンツと言われる「ボス戦」のみを抽出したゲームです。ファンタジーアクションRPGのエンドコンテンツの要素を凝縮した遊びを提供しています。

プレイヤーはナイト、プリースト、ウィザードの3キャラクターから1人を選び、ゲームに参加します。「移動」と「位置取り」を駆使して、ジョブごとに最適な立ち回りを模索しながら戦っていく内容になっています。

――MMOのエンドコンテンツということを聞いて納得しました。私たちもプレイしましたが、さくさくボスを倒していく爽快な作品かと思いきや、さくさく倒されるのはこちら側という……。やはり、コアターゲットはMMOを深く遊んでいた層なのでしょうか?

兵藤:そうですね。ですから、最初から「このゲームは売れないですよ」とは言っていたんです。というのも、私のようにMMOのエンドコンテンツを楽しんでいた層は全体の2%ほどしかいないからです。

私も中村もMMO廃人ですが、私自身はサーバー1位になって名が通るほどのプレイヤーでした。でも、今はもう仕事をしているのでレベリングもできないし、クエストも当時のようにはできません。ただ、「あの頃の死闘がもう一度やりたい!」、あの日あの時のワクワクした戦いを想いながら、それを楽しめる層に向けたゲームを作っています。

もうひとつの目的は、「エンドコンテンツまでは行かないやり込み具合だけど、バトルは楽しみたい」という方に向けて、MMOの美味しいところ、面白いところを味わっていただくということ。TrinitySを通じて、MMO業界を盛り上げたいとも考えていました。

中村:私はMMOで仲のいい友人と冒険するのが楽しかったから10年以上続けていたんです。兵藤のように「死闘」への憧れがあったわけではないですが、それでも1人のMMO好きとして、会社が誇れる名刺代わりの作品になり得る作品としてトライしてみようと思いました。

ゲームシステムの根幹は48時間で開発したプロトタイプ時点で完成

――企画自体はいつ頃立ち上がったのでしょうか。時系列で教えてください。

中村:2019年1月、GGJ(※)の横で作っていた作品がTrinitySの前身でした。その時はフラッシュアイデア的に「MMOのエンドコンテンツを手軽に遊びたい」というものを実装して、3日でプロトタイプを作っていたのですが、それが今と変わらないくらいゲームシステムが完成していて。せっかくここまで尖ったコンセプトなんだから、ターゲットが狭いとは言え、サクッと1本作ってしまえるならリリースまで走りきっても良いのではないかと思い、プロジェクトとしてスタートしました。

※Global Game Jam。48時間という制限時間でゲーム開発を行うハッカソンイベント。毎年異なるテーマが提示され、チームメンバーも初対面同士で組むケースが多い。

兵藤:専門学校の卒業を控えた2019年1月、「最後にいつものメンバーでゲームを作ろうぜ!」ということで友人同士で集まりまして、GGJのスケジュールに合わせて開発を行いました。この時一緒に開発をしたメンバーは今もTrinitySのスペシャルサンクスに載っています。

ターゲットの話に戻ってしまうのですが、私たちは在学中お世話になったスタッフさんがいまして、その方へ恩返しするために「プロになる前に、好きなゲームを1本作るよ」と約束をしたんですね。その方はMMOのヘビーユーザーで、その方に喜んでもらうことが最初のゴールでした。MMOのエンドコンテンツを遊んでいるプレイヤー層は少ないですが、コンセプトさえ合っていれば狭いターゲットでもある程度刺さると考え、開発を進めました。

――本作は「意図的に動きを止める必要があるアクションゲーム」かと思います。これはどういった狙いがあるのでしょうか。

兵藤:48時間という限られた時間で作る作品はシンプルにならざるを得ないですが、シンプルなほど面白さが凝縮します。TrinitySは移動して攻撃してを繰り返すだけのゲームではなく、移動の反対、つまり停止をゲームの要素に取り入れました。長く同じ場所に留まれば留まるほど強くなる、つまり止まることにメリットがあります。

止まることにメリットがある、つまり「敵の攻撃の場所さえ分かっていれば、より長くその場に留まれる」ということで、ここでタイムライン(動き方のパターン)把握の欲求が生まれます。止まったご褒美をキャラクターのスキルとして落とし込み、それをジョブの特性へ落とし込みました。

ジョブロールが生まれると「誰かが攻撃を受けると、別の誰かが止まっていられる」という状況が生まれます。こうなると、敵の位置と味方の位置を把握した「位置取り」の遊びが生まれます。TrinitySは、「動く」、「止まる」のジレンマを遊んでいただくゲームになっています。

――動くと止まる、ジレンマを遊ばせるのは面白いですね。一方において、それはタイムラインの覚えゲーになりませんか?

兵藤:そうですよ!エンドコンテンツの面白さは「知らないところから知っていく面白さ」なんです。だから、本作では何度でもリトライできるシステムを作ってあげて、何度も何度も試せるようにする。トライアンドエラーから攻略方法を見つけ出すんです。

――MMOプレイヤーではない目線から見て、このゲームは脱出ゲームのようにも感じました。知らないところに放り込まれて、洞察力でクリアしよう!という感覚に近いです。

兵藤:エフェクト1つ1つに意味があります。察することができる情報は散りばめているつもりです。でも、初見のプレイヤーが戦いの中でアイコンをひとつひとつ見ることができないのも当然分かっています。だから、「今回はクリアできない!だから情報を吸い出すことに徹しよう」「情報をもとに、次はスキルを変えてみよう」と作戦を練りながら、その時できる最善をみんなで見つけていきます。

――今の話を聞くと、スキル取得がランダムなのは意図と反するのではないですか?

兵藤:いえ、その瞬間のベストを見つけるという部分こそがゲーム性です。例えば、ポーション1個で挑む敵とポーション10個で挑む敵は、敵が一緒でも戦いの質は違いますよね?「この前はこれでクリアできたけど、今はこのスキルがないから戦い方を変えよう」という遊び方が出来るようになっています。

中村:ともすれば理不尽に感じる部分もあると思いますが、MMOに慣れ親しんだ方はこれでも簡単過ぎるって言うんですよ……。何回も100円玉を入れて挑戦してようやくクリアするような、昔ながらのアーケードゲームのイメージもあります。更に、自分だけが仕様を理解しても仕方がない、みんなで協力して情報分析して頑張るという部分が面白さなんです。その観点でいうと、結構バランスが取れているんですよ。

兵藤:初見殺しでは一度死んでもらう、その後ステージが進んで慣れてきた後にもう1回絶望を味わってもらう。MMOのエンドコンテンツという文脈を分かっていれば「なるほど」と思うでしょうし、そうでなければコントローラーを投げたくなるかも知れませんが、その反応の差もターゲット層の観点からは想定内でした。

見下ろし型タイトルで「見栄えを良くする」ための工夫

――プロトタイプが2019年1月で、その後2022年4月28日にはSteamのアーリーアクセス版が公開されました。約3年間の開発期間でしたが、初期に想定した「サクッと1本」よりはコストが掛かっているのではないでしょうか。

兵藤:期間だけ見れば3年ですが、TrinitySは3ヶ月以上開発がストップするタイミングが3回ほどありました。受託案件も数多くある中で、自社開発だけに時間を割くことができなかったんです。

仕切り直しのタイミングは2021年4月でした。ここからはTrinitySに注力しようと決め、まずはキャラクターとステージの作り直しを行いました。目に見える部分は全部やり直したんじゃないかと思います。

――なぜ作り直しを行ったのでしょうか。

中村:明確にクオリティ不足だったからです。もっとやれることはいくらでもある、もっと良くすることができる、だとしたらやらないのは勿体ないと感じたんです。時間さえあればクオリティが底上げできる自信はあったので、時間と工数を掛けてでもブラッシュアップを行う方向にシフトしました。

ブラッシュアップ前のゲーム画面

――アート部分の試行錯誤について、より具体的に教えてください。

兵藤:まず、根本的にこのゲームは”地味”なんですよ。「止まる」ことでパッシブスキルが発動する要素を取り入れたため、全員止まっている時間が非常に長いんです。動きを止めるゲームを見下ろし型でやるとこんなにも地味なのか、という気付きが最初にあり、これを何とかするためにエフェクトを盛ったり、カットインを検討したりと演出面の検討がスタートしました。

――今はカットイン演出が入っていないと思いますが、どういった経緯で検討されたのでしょうか。

兵藤:カットイン演出ということは画面が止まります。3人同時プレイが基本の本作では、1キャラクターのアクティブスキル使用でいちいちゲームが止まってしまっては操作が成り立ちません。次に「スキルを使用したキャラクターのみを無敵状態にし、カメラを移動させてカットイン演出を施す」という方向性を検討しました。しかし、この場合はカットイン自体が無敵技として強すぎる問題がありました。ゲームシステムとバランスの両面から考えて、カットインは廃止しました。その代わりに、戦闘テンポを速めることで「止まっている感」をなくし、止まった状態で得られるマナ量を調整したことでアクティブスキルの回転が良くなり、画面も派手になりました。

――なるべく動かずに敵と戦うのがベスト、ただし動きがないと見た目が地味という相反する要素を、スキル回転とボス敵のタイムライン調整によって解決したということですね。

兵藤:また、プレイヤーとボスの位置関係によってカメラが寄り引きするように変更しました。ナイトが敵の攻撃を避けることでカメラが引いた場合、ウィザードやプリースト側も「仲間が攻撃を避けてくれた」と認識することができます。ウィザードは止まっているとDPSが上がりますが、場合によっては本人が動いて避けなければいけない。味方とボスとの位置関係の把握にカメラの動きが役立っています。

中村:カメラの話題で言うと、もともとTrinitySはローカルマルチを入れようとしていたんですよ。ローカルマルチだと、自分以外の誰かのせいでカメラが頻繁に動くのはやりづらくなるという場合もあります。でも、それに引っ張られて画面が地味になってしまったので、それならばとローカルマルチをやめる決断をしました。この決断はかなり初期の頃で、2020年1月頃だったと思います。

――そこはかなり大きな決断ですよね。そうまでして整えたかったアート面に関して、どのようにジャッジを行っていたのでしょうか。

中村:ユーザー目線で見て、変化のないゲーム画面ではダメだろうと判断しました。シミュレーションや放置系のゲームなら良いですが、TrinitySは状況に応じて行動が変化するゲームなので、何かしらの動きが必要でした。面白さだけではなく、ゲームとしてハラハラドキドキするような感覚を提供しなければいけない、初期段階ではそれが足りていなかったので、その部分を足すように兵藤に伝えました。

兵藤:自分で言うのもおかしいですが、私自身は理論派で、ゲームの面白さは白黒でも、箱と丸と三角形だけでも成立すると考えています。でも、皆さんに「買って遊びたい!」と思ってもらえる見た目の美しさも製品には必要です。ゲームがシンプルゆえ、骨子の部分は先に出来上がってしまい、アート待ちの状態が続いていました。

中村:ようやく変化がユーザーに伝わったと感じたのは、ボスのHPが50%を切ったときにステージ背景が大きく変化し、BGMも変わる演出が実装されたタイミングですね。ボスの行動が50%の段階で大きく変化するのは演出的にも良かったのですが、これをアート部分が補強してくれたことで作品のレベルが一段階変わったと感じました。これらの工夫が功を奏したのか、2022年8月に開催されたBitSummit X-RoadsではPlayStaion賞を受賞するなど、非常に良い結果を得られました。

「ヘイトの順番が分からない!」デモ版とアーリーアクセスで得られたフィードバック

――ゲームを作っていると「ユーザー目線で足りないものは分かるが、ゴールに辿り着けない」という状況も多いと思います。その意味では、アーリーアクセスによるフィードバックは参考になったのではないでしょうか。

兵藤:TrinitySは2022年2月にリリースしたデモ版の段階でヘイトシステムを入れていました。でも、ヘイトの数字を示していなかったんですね。私は無意識に「タンクはヘイトを買うもの」と認識し、あえて数字を表示しなくても良いと思っていたのですが、これだと熟練者以外は上手く遊べないことに気付きました。結局、デモ版を出してから10日程度でヘイト順番の表示を行いました。

とはいえ、その後のアーリーアクセスの時点では「死んで欲しいところで死んでくれた」「スキルの打ちどころを分かっている人は”分かっている”タイミングで打ってくれた」という意味で、予定通りのプレイをしていただけました。

――ヒントを紐解いて遊んでいくゲームなんだ、というのが最初に分かると理不尽感もコントロールできるように思いました。難易度調整や遊び方の指南などは行わないのでしょうか。

兵藤:説明概要欄に書いたとして、文字通りに伝わるかは微妙なところで難しいですよね。難易度については、回復ギミック然りで簡単にするのはいつでも出来るんです。ただ、この理不尽さはアイデンティティだとも思っています。このゲーム、チュートリアル自体は強制で、チュートリアルを終えないと本編に入れないんです。ですから、チュートリアルの部分を改善することで「ヒントを紐解く」要素を表現できるかも知れません。

中村:個人的にはチュートリアルの強制は嫌なんですが、このゲームはチュートリアルをやらないと成立しないゲーム性です。ヘイトゲージの見方や止まるメリットの明示など、チュートリアルについてはまだまだ改善の余地がありますね。

――その他、アーリーアクセス全般について「やって良かった」ということを教えてください。

中村:他のタイトルでもアーリーアクセスはやっていますが、ゲームが完成していなくても出せるというのは明確な強みですね。完成していない状態を出させていただいて、直接的にフィードバックを得られるのはすごく嬉しい仕組みです。

兵藤:ユーザーも、開発中のゲームに触れるところに特別感を覚える人もいると思います。「開発途中のゲームを発信している」というのが明確だからこそ、ユーザーもその目線からレビューを送ってきます。例えば「このスキルはこうした方が良い」という、どうしてそのパラメータを知っているんだ?という具体的なフィードバックが来ることもあります。

これは恐らくコアなユーザーが「自分がゲームを良くしている」という要素に面白みを感じていて、ちょっとしたゲームプランナー体験のようなことが出来ていることと、早期アクセスならではのコミュニティが形成されることによって開発者との距離が近づくことにメリットを見出しているのではないかと思います。

中村:Steamのプラットフォーム自体は非常に優秀ですし、開発機能も揃っています。ただ意外と情報が少なく、HowToはあれどQ&Aがありません。当初は「1本買ったら2本ついてくる」という売り方をするつもりでしたが、途中からこの販売方法が禁じられてしまいました。プラットフォームがしっかり整えられているぶん、セールスのルールを理解してプロモーションをする必要があります。開発者としては、アーリーアクセスにせよ製品版にせよ、売り方も吟味する必要はあると感じました。

理不尽さをどう遊ばせるのか?ボスの行動パターンから見るゲームデザイン

――ここからは具体的に、ボスの行動パターンなどのデザインについてお聞きします。すべてを解説するとネタバレになってしまうので、1,2体目の駆け引きポイントなどを教えてください。

兵藤:まず、ステージ1「ファイアビースト」はパッシブスキル(止まった状態の強化)を理解しないと絶対にクリアできません。逆に言えば、チュートリアルでやったことだけでクリアできます。止まっていられる時間を短く設定していて、最大でも12秒しか一箇所に留まれません。

最初は「通常攻撃>通常攻撃>グランドブレイク>通常攻撃>通常攻撃」というパターンで、1人がヘイトを買えば他の2人は止まることができます。次はボルカニックバーンという複数箇所に円形の攻撃が発生する技が来ます。これは避けるか避けないか判断ができます。HPが充分にある前提であれば、そのまま攻撃を受ける代わりに30秒以上こちらが攻撃を続けられるメリットもあります。これが終わったら通常攻撃が2回来て、最後にアースシェイク(ステージ全体に対するノックバック技、ステージ外に落ちるとキャラクターは死亡するため全員が中央に集まる必要がある)で終わりです。

通常攻撃

グランドブレイク

アースシェイク

ヴォルカニックバーン

――なるほど、実際にプレイした時はボルカニックバーンの攻撃判定から逃げ回っていました。初見では止まっていたほうが良いという判断が出来ませんでした。ちなみに初見のアースシェイクでは見事に全員がステージ外に落とされました。

兵藤:最初はそういうものです。ここまではHPが50%以上の行動で、HPが50%を切ると追尾型の攻撃が2番目のヘイトの人に飛んでいきます。ここでヘイトの概念を理解できるのが理想です。技も大胆に変化するので「なるほど、HPが減ると技が強化されるのか!」とも気が付けると思います。

まとめると「技は少ないが、止まれる時に止まらないといけない」というボスです。最大まで行動を強化するためには10秒は止まりたいので、最初に止まる位置が重要です。これが位置取りですね。この際、立ち位置を三角形にできるときれいにヒールが届きますよ。

――なるほど。2ステージ目についてはいかがでしょうか。

兵藤:2ステージ目の「リヴァイアサン」は、少し簡単に感じませんでしたか?玉と波という、明確なギミックがありますが、玉については「色の順番によってプレイヤーにもメリットがある」という状態を作っています。裏を返せば、「ギミックを解除しないとあなたたちは不利になりますよ」ということを理解させるための仕掛けになっています。

これに加えて、特定の場所に誘導するということを覚えてもらいたいと思って技をデザインしています。他のボスと異なり、リヴァイアサンはタイムライン理解がなくとも倒せるかも知れません。

ちなみに、このゲームはボスの攻撃においてランダム要素が一切ないんです。ランダムがある場合は必ず予兆を出しているか、確定の安全地帯がある場合のみ。攻撃発生場所は全て指定しています。だから、失敗した理由はプレイヤーにしかないんですよ。

自前でサーバーを立てずにネットワーク対戦を実現するSteam/P2P技術

――本作はネットワーク通信が前提のタイトルですが、サーバーを立てることなくSteam ネットワーキング(Steam/P2P)を利用してこれを実現しています。採用の理由と、判断の基準を教えてください。

中村:これはListen Serverと呼ばれるもので、ユーザー自身がサーバーになって他の2人と接続するという仕組みです。明確なメリットは運用コストがないことです。一方、デメリットは、ユーザーのマシン状況、つまりサーバーのホストになっているプレイヤーのスペックが低かったり、ネットワークが不安定だったり、何らかのトラブルを抱えていると全体が不安定になる点です。

本来はDedicated Serverを使うべきところだと思いますが、TrinitySの場合はListen Serverでもゲーム性自体は成立します。というのも、Listen Serverではサーバーになった人が落ちるとゲームが終了してしまいますが、TrinitySは誰か1人でも落ちたらクリア不能なバランスだからですね。

――Listen Serverではチート対策などが出来ないと思いますが、そこは割り切った形でしょうか。

中村:対策のしようがないのはデメリットですね。Dedicated Serverならサーバー側が隔離されているために制御が可能ですが、そのぶんサーバーコストはそのまま乗っかります。更に、サーバーのスケーリングの仕組みなど、バックエンド開発の必要性も出てきます。こうした開発負荷を下げるためにも、今回はListen Serverによる実装を行いました。

兵藤:もうひとつのデメリットはエラーが追いきれないところです。「この人とこの人で遊べませんでした」と言われても、原因を特定するのが困難です。ただ、それでもすぐに試せるというメリット、コスト面のメリットが勝っているので、こちらを取った形です。

中村:すごく人気ゲームになって拡大するなら、いずれListen ServerからDedicated Serverに変更することもあり得ますね。ただ、今はSteamのシステムに乗っかる形で動いているので、ネットワークの開発は最低限の工数で済んでいます。

TrinitySは”更に”難しくなる―ロードマップと発売予定

――最後に、TrinitySの今後の展望について教えてください。

中村:正式版の発売日は未定ですが、今年中に追加コンテンツは出ると思います。また、年内に「ハードモード」も実装されます。先日のBitSummitでもそうですが、ありがたいことにさまざまなところで応援をいただくことも多いので、広くプラットフォーム展開が出来ないかと考えています。ここではお約束できませんが、前向きに検討しています。

――ハードモードというのは、つまりここから更に難しくなると……。

兵藤:ハードモードは私、ディレクターからの挑戦状です。我こそはという3名は是非、というレベルで作っています。最初から全てのスキルが開放されていて、全員で9個のスキルで戦略を立てていきます。ランダムではないですが、ボスの行動パターンはプレイするごとに違います。一度全滅したら、全滅したタイムラインでリトライが可能です。

AIは出走できず、3人は全員プレイヤーである必要があります。人間でしか出来ない動きやテンポ感、ギミックの上にギミックの上に更にギミックのような、針に糸を通すような感覚のプレイ感になっています。1人でも欠けると失敗する、別物のようなコンテンツを作っています。

現在開発中の「ハードモード」

――その他、追加要素があれば教えてください。

兵藤:ウィザードで何ダメージを出しましょう、といったミッションを用意することを検討しています。ステージ1から6まで1度も死なずにクリアしよう、などの内容を想定しています。達成報酬として新スキルやキャラクタースキンなども検討中です。

あとは、当然のことながら細かなバグフィックスやUI改善なども、製品版に向けて確実に直していきます。完成度はここから更に上がるはずですので、楽しみにしてください。

――今日はありがとうございました。発売を楽しみにしています!

TrinityS 公式サイト
神山 大輝

ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビュー作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。

ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。

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