2026年5月22日(金)から24日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催されている「BitSummit PUNCH」。展示されたゲームの中から、今回はHIKO GAMEが開発する登山系2Dアクション『Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん』を紹介します。
TEXT / 池田大輔
EDIT / 浜井 智史
ジャンプなしで頂上を目指す2D登山アクション
『Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん』トレーラー
『Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん』は、ジャンプ機能を一切使用しない2D登山ゲーム。フックをまっすぐ射出するアクションと、壁や天井に張り付いて移動するアクションの2種類だけを駆使して、険しい雪山「ロミスト山」の攻略を目指します。
道中には強風が吹くポイントや崩れる足場、フックの刺さらない硬い壁などさまざまなギミックが随所に存在します。こうした地形の構造を注意深く観察しながら登山ルートを構築し、実際にトライ&エラーを繰り返しながら少しずつ最適ルートを編み出していきます。
ステージは終着点まで切れ目のない一本道となっており、ひとつ間違えると最下層まで一気に転落する恐れも。登り続けると徐々にスタミナも消費していき、一度のミスが命取りとなります。フックショットによるスイングと慣性をうまく制御することが攻略の鍵です。
ステージには敵やNPCは登場せず、環境そのものがゲームプレイの核となっています。
本作のあらすじは「山で消息を絶った大切な人の足跡を辿る」というもの。静謐な空気感が漂う中、プレイヤーは道中に残されたノートから物語の断片を読み取りながら、ただ寡黙にロミスト山へ挑み続けます。
ドット絵で描かれた静かな山の景色と、指先に全神経を集中させるシビアなアクションが組み合わさり、まるで孤独な登山をしているような没入感を味わえるタイトルです。
山登りの重圧と緊張感を追求。ひとつずつ経路を見定める静かで内省的なプレイフィール
開発者のヒコ氏に話を伺うと、本作の地形デザインはプレイヤーに「落ちるかもしれない」という感覚を常に意識させるよう組み立てられているそうです。
序盤は比較的簡単に通り抜けられますが、先へ進むにつれて、あえて落下しながら移動をするなど慎重なルート選びが必要となる地形が現れてきます。そうした場面では、空中に身を投げる瞬間のゾッとする感覚や、足がすくむような緊張感を味わってほしいとヒコ氏は述べていました。
難易度調整においては、ただ難しいステージを作るのではなく、静かに手に汗握るような体験を重視。焦って突き進むより、落ち着いて状況を見極めながら確かな道筋を見つけ出し、少しずつ山頂へ近づいていく内省的なゲームプレイを目指しているそうです。
開発の上で影響を受けた作品として、孤高な登山家の姿を描き出したドキュメンタリー映画『アルピニスト』がまず挙げられました。加えて、『SteamWorld Dig 2』におけるアクションの心地よさや、『Celeste』の緊張感、『Getting Over It with Bennett Foddy』の登攀体験にも刺激を受けたといいます。
とくに『Celeste』は本作とプレイフィールが近いという声を受けることもあったといい、改めて参考にしているとのこと。登るという行為そのものの重さと、失敗したときに受ける心理的な圧力を丁寧に作り込むべく、さまざまな作品から得られたものを注ぎ込んでいるようでした。
ゲームエンジンにはDefoldを採用しています。ヒコ氏は以前からLua言語に触れていたそうで、Lua言語で開発できるエンジンを探していたことが選定理由のひとつ。また、Nintendo Switchなどのコンソール展開に対応しやすい点も魅力だそうです。
Defoldは軽量なエンジンであるため、ビルドや試行錯誤を高速に回せることも個人開発において大きなメリットに挙げられるとのことでした。
開発中に苦労した点をお聞きすると、ディスプレイサイズの違いによってカメラの映し方が崩れる問題が起きたそう。自分のPCでは正常でも、別のディスプレイでは想定外の場所を映してしまうことがあったといいます。
この問題に対しては、現在のディスプレイサイズを取得して、それに応じてカメラのズームを変更するという力技で解決したそうです。
チュートリアルの作り込みについても伺いました。テキストで細かく説明するのではなく、実際に遊んでいるうちに「こうすれば進めるのか」と自然に気づける導線を引くことを大切にしているそうです。
難易度は高めに設定したい気持ちがありつつも、理不尽なバランスにはしたくないといい、落ち着いてルートを発見できれば問題なくクリアできるバランスを保ちつつ、緊張感はしっかりと感じられるように調整を続けていると語っていただきました。
BitSummitでの試遊では、ステージ後半に登場する「飛び石」のギミックがとくに好評だったそう。そうした反応は、狙った面白さがきちんとプレイヤーに伝わっていることを示す手応えになったといいます。
『Mount Lomyst ロミスト山のてっぺん』は、落下の恐怖や静かな緊張感を2Dアクションに落とし込もうとする意欲作です。
ジャンプをなくすという大胆な選択と、フックショットや地形設計の工夫によって、登山の重さをゲーム体験として成立させようとしている点が印象的でした。
本作はPC向けに開発を進めつつ、コンソール展開も視野に入れているそう。今後の開発の動向に注目です。
「HIKO GAME」公式サイト「BitSummit PUNCH」公式サイト立命館大学映像学部3回生。古着・キャンプ・映像制作が好き。好きなゲームはモンスターハンターシリーズ。
関連記事
注目記事ランキング
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
連載・特集ピックアップ
西川善司が語る“ゲームの仕組み”の記事をまとめました。
Blenderを初めて使う人に向けたチュートリアル記事。モデル制作からUE5へのインポートまで幅広く解説。
アークライトの野澤 邦仁(のざわ くにひと)氏が、ボードゲームの企画から制作・出展方法まで解説。
ゲーム制作の定番ツールやイベント情報をまとめました。
CEDECで行われた講演のレポートをまとめました。
UNREAL FESTで行われた講演のレポートやインタビューをまとめました。
GDCで行われた講演などのレポートをまとめました。
CEDEC+KYUSHUで行われた講演のレポートやイベントレポートをまとめました。
GAME CREATORS CONFERENCEで行われた講演のレポートをまとめました。
Indie Developers Conferenceで行われた講演のレポートやインタビューをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブルで行われた講演のアーカイブ動画・スライドやレポートなどをまとめました。
東京ゲームショウで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームダンジョンで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
日本と文化が近い中国でゲームを展開するための知見を、LeonaSoftware・グラティークの高橋 玲央奈氏が解説。
インディーゲームパブリッシャーの役割や活動内容などを直接インタビューします。
今日の用語
法線
Xで最新情報をチェック!