空間に音を配置してゲームを作ろう!『AUDIO AR GAME MAKER』ほか、視覚に頼らない「オーディオゲーム」を紹介【BitSummit Let’s Go!!】

2023.07.16
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2023年7月14日(木)から16日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催されたBitSummit Let’s Go!!VR/ARのコーナーにて、「DDD Project」が開発した『AUDIO GAME CENTER』の作品群が展示されていました。

ブースでは視覚情報を使わず音を頼ってプレイするアクションゲーム2作品の試遊のほか、実空間に音を配置してオーディオARゲームをつくることのできるツール『AUDIO AR GAME MAKER』が初披露されていました。今回はそれらの紹介をするとともに、開発者の野澤 幸男氏にツールのこだわりや、『AUDIO AR GAME MAKER』を使ったワークショップの様子について伺いました。

TEXT / 田端 秀輝

目次

「オーディオゲーム」とは

オーディオゲーム」とは、映像情報が欠かせない「ビデオゲーム」とは異なり、音で遊ぶゲームです。言い換えると、目を使って見るモニターもヘッドマウントディスプレイも使用せず、主に耳からの情報で遊ぶゲームです。

「DDD Project」はこれまでにいくつものオーディオゲームを開発し、またハッカソンで新しいオーディオゲームを作り出す試みを行ってきました。今回のBitSummitでは、過去作のうち『Screaming Strike(スクリーミング・ストライク)』と『モスキートが来る(モスクル)』を展示しています。

『Screaming Strike(スクリーミング・ストライク)』

前方と左右から迫りくる敵を殴って倒すゲーム。なお、コントローラーはジョイスティックとボタンひとつのみの単純なもの。そして与えられる情報はヘッドホンからの音のみ。

敵が迫ってくると足音が大きくなってくるので、ジョイスティックで前方か左右を向き、敵が近づいたタイミングでボタンを押して倒すゲームです。

Screaming Strikeのプレイの様子。操作は単純だが、ゲームが進むと短いスパンで敵が攻めてくるので混乱する

ゲームのデモ音声はこちらでお聞きください。

『モスキートが来る(モスクル)』

こちらも与えられる情報はヘッドホンからの音のみ。蚊がうっとおしい羽音を鳴らしながら耳元を飛び回っていますので、その方向にめがけて蚊取りスプレー型コントローラーを向けてボタンを押すと、徐々に蚊は弱り羽音も小さくなっていきます。

『モスキートが来る(モスクル)』の、蚊取りスプレーを模したコントローラーとヘッドホン

蚊にさされないように、またスプレーの薬剤を無駄遣いしないようにして、蚊を落としていってください。

『モスキートが来る(モスクル)』プレイの様子。時にはどの方向にいるか分かりづらいくらいの微妙な音量で、時には我慢できないくらい大きな音の蚊の羽音が本当にいやらしい

なお今回の展示のバージョンでは、蚊をやっつけた匹数と刺された回数をもとに、人類が勝ったか蚊が勝ったかをゲーム終了後に教えてくれます。

ゲームのデモ音声はこちらでお聞きください。

これらのゲームのゲームデザイン、プログラムは、「DDD Project」の野澤 幸男氏で、コントローラーの作成を岡田 憲一氏が行っています。

『AUDIO AR GAME MAKER』で実空間に音を配置してみよう

そして今回新たに出展された『AUDIO AR GAME MAKER』は、タブレットやスマートフォンを使って実空間に音を鳴らす領域(球体や線、壁)を配置し、その音の鳴らし方によってオーディオARゲームを作成することのできるアプリです。

使い方を見ていきましょう。基本の形として、タップすればタブレットが向いている方向に点(球状)の領域を設置できます。この領域にアプリを起動したタブレットなどを近づけば音がして、遠ざければ音が小さくなり、いずれ音がしなくなります。

領域は、点だけでなく線分や床、壁にすることもできます。

領域は静止状態でなく、直進させたり、ランダムに動かすこともできます。

常に鳴らす音と、領域に当たった時に鳴る音それぞれに5種類と無音が用意されています、また領域に当たったら消えるか消えないかという設定もあるので、「近づいたときに一回だけ鳴らす」ということも可能です。

このような形で空間に音を配置したら、実際に体験モードにして遊んでみましょう。設置した音はサーバーで管理されているので、あるひとりがつくったゲームは他の人も一緒にプレイすることができます。

なお、タブレットを「見ながら」遊ぶゲームではないので、体験モードにするとタブレットは黄色一色になります。

『AUDIO AR GAME MAKER』は、浦田 泰河氏がアプリケーション開発、野澤氏が音源作成とUI設計を行いました。今回は会場でアテンドをしていた野澤さんに、『AUDIO AR GAME MAKER』のこだわりについて伺いました。

「DDD Project」のメンバー。中央が野澤氏

音については、「ブブー」といった具体的で使いやすい音だけでなく、いろんな捉え方ができる音も選定したとのこと。「ニャーンという鳴き声ならば猫が想像できる」けれど、それよりも作る人やプレイする人の「想像を広げたい」ということで、「よく分からない音」も選定、作成をしたそうです。

また、『AUDIO AR GAME MAKER』で音を配置する時の操作UIについても、オーディオゲームらしく画面を見なくても、また全盲である野澤氏も操作できるよう、タップやスライドで操作する、操作内容が読み上げられる設定があるなど、野澤氏がUI設計を行い、浦田氏に実装を依頼したそうです。

『AUDIO AR GAME MAKER』の操作一覧。後述のワークショップの参加者も迷いなく操作し、オーディオARゲームを開発していったとのこと

『AUDIO AR GAME MAKER』でゲームを作ってみよう

7月15日(土)に、BitSummitの関連イベントとして、京都の「HOTEL ANTEROOM KYOTO」にて、「AUDIO AR GAME MAKER」でオーディオゲームをつくって遊ぼう!」というワークショップが開催されました。

先の操作の説明を聞いて、筆者は「音が鳴ることで壁を認識させる迷路」「壁にあたると正解不正解がわかる〇×クイズ」あたりが思い浮かんだのですが、ワークショップでは「音が鳴らないところを探して進んでいく」ものや「直進する点を使って、音でキャッチボールをする」ものなどが誕生したそうで、野澤氏も面白がっていました。また、『AUDIO AR GAME MAKER』のアプリ自体への参加者からの要望もあったようで、今後のアップデートに活かしていきたいと述べておりました。

なお、このワークショップは7月17日(月・祝)の13時~15時にも開催予定です。詳細は下記URLのWebページをご確認ください。

AUDIO AR GAME MAKER

今回だけでなく、今後も『AUDIO AR GAME MAKER』を使ったワークショップは開催されると思いますので、「空間に音を浮かべる」、「音と身体を使ったゲーム」というものに興味がある方はぜひ参加して、新しいオーディオARゲームを作ってみてください。

『オーディオゲームセンター』公式サイトBitSummit Let's Go!!公式サイト
田端 秀輝

「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。

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