叩きこむ!振りまわす!変わったコントローラーの気になる中身も見せちゃいます。「make.ctrl.Japan」ブース【BitSummit Let’s Go!!】

2023.07.20
注目記事イベントレポートBitSummit2023
この記事をシェア!
twitter facebook line B!
twitter facebook line B!

2023年7月14日(木)から16日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催されたBitSummit Let’s Go!!。今回は、通常のゲームコントローラーではなく独自に制作したコントローラーを使用したゲームが集まった「make.ctrl.Japan」ブースについて、独特なプレイ感のゲームとともにそれらを生み出したコントローラーの中身も紹介します。

TEXT / 田端 秀輝

目次

make.ctrl.Japanとは

make.ctrl.Japan」は、通常のゲームコントローラーではなく独自に制作したコントローラーを使用したゲームを展示する企画です。アメリカ・サンフランシスコで開催されるGame Developers Conference(GDC)でのイベント「alt.ctrl.GDC」をモデルに、日本で開催されています。これまでに5回開催されており、アーカイブはこちらで見ることができます。

関連記事
アイスの棒や洗濯板でゲームをプレイ!変わったコントローラーが集まるゲームイベント『make.ctrl.Japan4』、『ゲームマーケット2022秋』会場内で開催
2022.10.25

それでは、今回の出展タイトルを見ていきましょう。

『激走!コインラン!』ハードウェアとか研究所

穴や障害物をジャンプで超えていくランゲーム…なのですが、このタイトルのユニークなのは、ゲームコントローラーのボタンを押すのではなく、コインをコイン投入機の中に入れることでキャラクターをジャンプさせるというところ。

コントローラーのボタンを押してジャンプさせるのと、コインを投入してジャンプさせるのとでは、「ジャンプさせよう」と考えてから実際にジャンプするまでのタイミングが異なるので、その違和感が難しくもあり、楽しくもありました。

最初に4枚のコインが渡されるのですが、ゲーム中でジャンプをしてコインを取ると実際にコインが吐き出されるので、このコインを使ってゲームを継続させることも可能です。

なお、筆者が体験したときは吐き出されるコインの勢いが強すぎて床に落ちることもあり、それを屈んで取るというアクションも発生。意図せざるところで身体全体を使って遊ぶゲームになっていました。

コイン投入機の中身とコイン吐き出し機

『軍手&ピース』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS

なぜか軍手が道に落ちてること、ありますよね。この『軍手&ピース』は、トラックから落とされる軍手を回収して、街を綺麗にしていくゲームです。

コントローラーはターンテーブルの上に置かれた軍手で、ターンテーブルを回すと画面内の照準が動き、画面内の軍手にあったところでコントローラーの軍手の指の部分を押すと、画面内の軍手の指が折れたり伸びたりします。画面内の軍手の人差し指と中指が伸びそのほかが折れた状態、つまりピースサインの状態になると軍手を回収することができます。

もともとはゲームジャムで開発されたマウスクリックで操作するFlashゲームが、このたび軍手コントローラと合体。ハード制御はArduinoで、軍手や回転テーブル、台などのパーツは100円ショップで購入したものだそうです。

ちなみに、ハードとソフトが結合したのは展示当日であったとのこと

『軍手&ピース』作品ページ

『Jet Cola』Tamakotronica(タマコトロニカ)

コーラの瓶型のコントローラーを8秒間振って振って振り続け、振ったコーラの泡の勢いで瓶を宇宙に打ち上げ、その高度を競うゲームです。

コーラ瓶を模したコントローラーを振るとカラカラ音がするので、楽しくなって振る手にも力が入ります。でも8秒は思ったよりも長いんです!6秒あたりから「そろそろ終わって」と振る力も意気込みも弱くなっていきました。

Tamakotronicaの千田 泰宏氏にコーラの瓶コントローラーを開けてもらったところ、中にはアーケードゲームの筐体で使われるボタンが入っていました。そしてボタンの上には50円玉3枚が入っており、ボタンが押される時間を取って瓶の振り具合を計測しているそうです。試行錯誤の末、このボタンと50円玉3枚という組み合わせが一番コーラを振っている感が出たとのこと。さらに中にビーズも入れ、振ると音がでるようにしてより臨場感がでるようにしたそうです。

瓶コントローラーはBluetoothでハードと接続している

実は各国がロケットの開発を競う時代での、パイロット選抜試験であるという設定も

『Jet Cola』作品ページ

『BearRunner Any% RTA』しゅんて

一見したところランゲームなのですが、進むのに時間がかかりそうな障害物や穴があった時に、ゲーム機本体型のコントローラーに刺さったゲームカセットに衝撃を与えてグリッチ(バグ)を発生させそれを利用して最速クリアを目指す、Any%(なんでもあり)レギュレーションのRTA(リアルタイムアタック)体験ゲームです。

コントローラーとはいえゲームカセットを叩くのは最初は抵抗があるのですが、それなりに強く叩かないと反応しないので慣れたらバンバン叩いていました。

タイトル画面から先に進むのも、オープニングをスキップするバグ技もカセットを叩いて行う。開発したしゅんて氏に伺ったところ、オリジナルは「Unity1週間ゲームジャム」で開発したタイトルで、それに専用コントローラーを加えたものが本作だという

とはいえ、連続して叩きすぎると操作不能バグになるのでご注意を。連打による操作不能バグを回避して、それでいて適切なタイミングでグリッチを起こすのかが攻略のカギです。

画面左上にはRTA配信の実況コメントも

『BearRunner Any% RTA』作品ページ

『MarbleTower on 人工大理石透過型LEDタッチディスプレイ』京都産業大学・情報理工学部・平#研&蚊野研

コントローラーである人工大理石の上を指でなぞると、接触した部分が光り、その軌跡と同じ形のブロックがモニターの中にも生成されます。ブロックを上空からどんどん落としていき、いかに台の外に落とさないか競うゲームです。

直線だけでなく、三角形や円なども描くことができる

こちらは、京都産業大学 情報理工学部の平#研究室の人工大理石透過型LEDタッチディスプレイという研究の応用例です。人工大理石の光を透過するという性質を利用し、人工大理石の下に配置した赤外線LEDの発光・受光によるタッチのセンシング機能と、LEDの発光によるディスプレイ機能を同時に実現しています。

実世界指向エンターテインメントシステムの研究として、ハードウェアと同時にソフトウェアプラットフォームも開発が行われている

『MarbleTower on 人工大理石透過型LEDタッチディスプレイ』作品ページ

『キューブでポン!』愛知工業大学CGメディア研究室

通常のルービックキューブのルールは面を同じ色で揃えるというものですが、こちらのゲームは画面に表示された通りの絵柄にするのが目的です。

台の上にルービックキューブを置くと、台の上部にあるカメラによって正誤判定が行われます。9つのマスのうちの1マスだけでも判定をしてくれるので、簡単にできるところだけ揃えて少しずつ判定に持ち込むことができます(一気にまとめて判定したほうが点数は高くなる)。

開発を行った柴田 悠仁氏に話を伺ったところ、ルービックキューブが苦手な人にとっては一面を同じ色で揃えるだけでも大変なので、同じ色で揃えるという以外の遊び方でも楽しめる方法はないかと思い、本作を開発したそうです。

ハードについて、カメラで撮られた映像はOpenCVで画像処理を行い、正誤判定を行っているとのことです。また、制限時間を追加する、カメラに手などを映しても認識されないよう閾値を設定するなど、ゲーム面、ハード面ともに出展ごとに進化させているそうです。

『キューブでポン!』作品ページ

『チョークの叛乱』のへもん ・ Kenji Okuda

画面の中で描かれるチョーク達の攻撃を、両手に持った黒板消しをタイミングよく叩いて跳ね返すというゲームです。

モニター前にある黒板を黒板消しで拭けばライフ回復、右にあるクリーナーで黒板消しを綺麗にすれば攻撃がパワーアップします。

主人公は黒板消しクリーナーの中のフィルターである「ふぃる太くん」だ。逆光で見えづらいが、右画像の中央にいるのがリアル「ふぃる太くん」

開発した のへもん氏にゲーム部分はUnityで組まれています。クリーナーの実装や黒板を消す際に画面が揺れる演出など、出展をするたびにバージョンアップしているそうです。

また、各コントローラーの中身も見せてもらいました。黒板消しを叩く動きはジャイロセンサー、黒板を消す動きや黒板消しをクリーナーの上できれいにする動きは磁力計で取っているそうです。

黒板消しに入っているのはM5StickC Plusか

黒板の下に設置されているmicro:bit

『みんなでもぐらたたかれ』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS

こちらは、BitSummitの翌日にホテル アンテルーム 京都で開催されたイベント「art bit Summer fest. – ホモルーデンスの夏休み、夏の夜の夢 –」にて展示されていたタイトルです。

通常のもぐらたたきは、穴からでてくるもぐらをプレイヤーがハンマーで上から叩くものですが、『みんなでもぐらたたかれ』はプレイヤーが穴の中にいて、モニターの中のハンマーに叩かれないように頭を出したり隠れたりするゲームです。

穴の縁にセンサーがあり、頭を出しているのを検知するとその時間に応じて得点が入り、モニターの中でハンマーで叩かれるタイミングで頭を出していたら0点になってしまいます。

ゲームマーケット2023春でのmake.ctrl.Japan5でも出展されていましたが、BitSummit会場ではブースが狭く本タイトルが展開できないため、こちらの会場での出展になったとのことです。

『みんなでもぐらたたかれ』作品ページ

ここまで8タイトルを紹介しましたが、「独自に制作したコントローラーを使用したゲーム」と言っても、ひたすらに体力を使うゲーム、スピードとともに思考も必要なゲーム、普段のボタン操作のゲームとは異なる動きやタイミングが求められるゲームなど、バラエティに富んでいました。それでいて共通していたのは、ゲームコントローラー以上に感じられる「ゲームの世界が隣にある」という感触であり、「make.ctrl.Japan」の展示ならではの体験をすることができました。

「make.ctrl.Japan」公式サイトBitSummit Let's Go!!公式サイト
田端 秀輝

「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。

関連記事

『BitSummit Let’s Go!!』の総来場者数、BitSummit史上最高の23,789人を記録。来年は7/19(金)~7/21(日)に開催を予定
2023.07.25
長考続出!?フルスクラッチ開発の3Dパズル『Synchronity』は専用エディタも完備の意欲作【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
『BitSummit Let’s Go!!』アワード受賞作品が発表。エレキギターを操る横スクロールアクション『Death the Guitar』が大賞に輝く
2023.07.19
アルゼンチンと東京の超長距離リモート開発。スマホ展開も見据えた対戦ゲーム『MonstaBox(モンスタボックス)』【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.19
画面の「回転」を駆使する「シュレディンガーシステム」が特徴の3DパズルRPG『CASSETTE BOY』、Web制作会社の社長が一人で開発中【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.18
学生クリエイターによる「BitSummit Game Jam」集大成!実展示からピックアップ作品を紹介【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.17

注目記事ランキング

2024.04.26 - 2024.05.03
1
【2022年5月版】今から始めるフォートナイトの「クリエイティブ」モードープレイ開始から基本的な操作方法まで解説
2
『フォートナイト』で動く本格的なゲームが作れるツール「UEFN」とは?従来のクリエイティブモードから進化したポイントを一挙紹介!
3
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧
4
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.5「島の設定」
5
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.1「アイテム系」
6
【CHALLENGE1】「クリエイター ポータル」を使って、UEFNで作成した島を世界中に公開する
7
まるで『マイクラ』?ボクセル地形を生み出す無料アセット「VoxelPlugin Free」で”地形を掘ったり積み重ねたり”して遊んでみよう
8
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part1
9
UEFNで使えるプログラミング言語「Verse」のノウハウが集結。『UEFN.Tokyo 勉強会 03 Verse Night』レポート
10
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.8「ゾーン系」
11
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.2「ユーティリティ系」
12
【CHALLENGE3】UEFNの機能「ランドスケープ」を使ってオリジナルの地形を作る
13
【STEP2】UEFNの基本的な使い方を覚えよう
14
フォートナイトとUEFNがv29.30にアップデート。すでに公開した島をプレイできないようにする機能が導入される
15
フルカラー書籍「UEFN(Unreal Editor For Fortnite)でゲームづくりを始めよう!」、ついに本日発売!全国書店で好評発売中!
16
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.6「チーム・対戦系」Part1
17
【STEP4-1】コース外に出たらデスする仕組みを作る
18
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part2
19
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.10「UI系」Part1
20
『フォートナイト』で建築ビジュアライゼーション!?UEFNでオリジナルの世界観をどう作り上げたか、その手法を解説【UNREAL FEST 2023 TOKYO】
21
「UEFN」って実際どうなの? 編集部が3時間で「みんなで遊べるアクションゲーム(?)」を作ってみた
22
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.4「ゲームシステム系」
23
【CHALLENGE2-1】フレンドと一緒にゲームを作ろう――UEFNプロジェクトをチームメンバーとリアルタイムで共同編集する
24
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.6「チーム・対戦系」Part2
25
【STEP3】オリジナルのアスレチックコースを作ろう
26
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.3「プレイヤー系」
27
【STEP5-1】スタート時のカウントダウンを作る
28
【STEP6-1】「オリジナルキャラクターを登場させよう」――Fabでアセットをダウンロードしよう
29
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.9「建築物系」Part2
30
【STEP4-3】仕掛けを使って「坂を転がるボールのギミック」を組み込む
VIEW MORE

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

リグ(Rig)
リグ 3Dモデルを動かす場合に、すべてのボーンを編集するのではなく、少ない編集箇所で直感的に動作などを付けるために作られたコントローラーやコントロールする仕組み。 またスケルトン自身をリグと呼ぶ場合もある。
VIEW MORE

Twitterで最新情報を
チェック!