長考続出!?フルスクラッチ開発の3Dパズル『Synchronity』は専用エディタも完備の意欲作【BitSummit Let’s Go!!】

2023.07.20
注目記事イベントレポートBitSummit2023
この記事をシェア!
twitter facebook line B!
twitter facebook line B!

2023年7月14日(金)から16日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された『BitSummit Let’s Go!!』。今回取り上げるのは学生チーム「SyncMan3D」が開発する3Dパズルゲーム『Synchronity(シンクロニティ)』。ゲーム内容に加え、開発チームに聞いた自作エンジンを調整して使用しているフルスクラッチの開発環境や、パズルゲーム制作の難しさを紹介します。

TEXT / ハル飯田

目次

明快なルール、しかして難解なパズル

数字の描かれた2色のブロックを動かし、小さい数字を大きな数字へ合体させていく。そんなシンプルなルールに従ってステージクリアを目指すパズルゲームが『Synchronity』です。

同色のブロックは最も小さな数字のブロックに連動するので、合体させたい相手ブロックを壁に押し付けるなど上手く位置を固定させる工夫が必要です。ステージが進めばワープギミックや立体的な構造が登場し、よりパズルは複雑化。ワープの出入り口が同じ色で光るなど、視覚的に分かりやすいデザインには工夫が感じられます。

赤の「1」を左に動かすと、ワープして右から登場。赤の「2」は青の「1」でブロックされているため、あとは左に動かせば合体成功

段々と一度に動かすブロックの数が増えていくこともあって、連動を全て予測して動かすのは至難の業。Undo機能やリセットを駆使しつつ、カメラをぐるぐると回せば全体を眺め、ああでもないこうでもないと腰を据えて考えたくなるタイプのパズルに仕上がっています。

段差がひとつ増えるだけでも移動範囲の制限が大きく、一気に難易度アップ

見えているブロック同士を合体させる操作にどうやっても辿り着けない「歯がゆさ」もまたこうしたパズルゲームの醍醐味であり、同期によって合体させたいブロックが逃げているようにも感じられるのも悔しくて面白いポイント。体験ブースでも首をひねりながら考え込んでしまう人の姿が多数見られました。

専用エディタを開発しステージ考案に活用

『Synchronity』を開発したのは日本工学院専門学校ゲームクリエイター科の学生4名によるチーム「SyncMan3D」。なんとゲームエンジンもアセットも全て自作のフルスクラッチ開発によって本作は生み出されています。

取材に対応いただいたメンバー

元々は箱庭タイプのゲームを作ろうというアイデアだったところを応用して生まれたのが見下ろし型のパズルゲームであり、プログラマーとステージデザイン、プランナーとアセット制作のように4人がそれぞれ複数の役割を担いながら開発を進め、取材時点で30ものステージが実装。序盤はチュートリアル的な内容とは言えかなりのボリュームです。

ひとつのギミックにばかり気を取られていると、同期している他の数字が予想外の場所に移動してしまう

イメージで攻略するのは難解なシステムとあって、ステージのアイデアを固めるのもまたイメージだけでは非常に困難。そのためにチームはあらゆる構造のステージを作成&シミュレーションし、完成すればそのままゲームへと実装できる『Synchronity』専用エディタを作成し、効率的な開発に繋げています。

ただ、それだけ自在な開発環境があっても「1つ初期配置が違うだけで難易度が大きく変わってしまう」と、パズルゲームの難易度調整におけるデリケートさも感じているそうです。

この作品にはゲームメーカーズのマスコットキャラクターであるコロンちゃんも思わず「イイネ!」

必要以上に細かな説明を行わないシンプルさを重視した画面構成になっていることもあり“どのようにユーザーを誘導していくか”を更に改善できるポイントに挙げた一方で、ゲームにトライする来場者の反響からは「意外と大人が苦戦して小さなお子さんがアッサリとクリアしてしまうこともあるので、柔軟な発想が大事ですね」と、分析されていました。

『BitSummit Let’s Go!!』には同校の学生が開発した作品が4タイトルも出展され、それぞれ異なるアピールポイントを発揮していました。中でも本作は文字情報は数字のみかつ1ステージ見れば理解できるルールとあって、外国からの来場者も熱中。国境を越えて来場者を楽しませる作品として大いに注目を集めていました。

公式Twitter https://twitter.com/game_ginit
販売サイト(ストアページ) 未定
リリース時期 未定
日本工学院ゲームクリエイター科(蒲田校)Twitter『BitSummit Let’s Go!!』公式サイト
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

関連記事

『BitSummit Let’s Go!!』の総来場者数、BitSummit史上最高の23,789人を記録。来年は7/19(金)~7/21(日)に開催を予定
2023.07.25
叩きこむ!振りまわす!変わったコントローラーの気になる中身も見せちゃいます。「make.ctrl.Japan」ブース【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
『BitSummit Let’s Go!!』アワード受賞作品が発表。エレキギターを操る横スクロールアクション『Death the Guitar』が大賞に輝く
2023.07.19
アルゼンチンと東京の超長距離リモート開発。スマホ展開も見据えた対戦ゲーム『MonstaBox(モンスタボックス)』【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.19
画面の「回転」を駆使する「シュレディンガーシステム」が特徴の3DパズルRPG『CASSETTE BOY』、Web制作会社の社長が一人で開発中【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.18
思い通りの進化はしなくても、その多様な生態自体が美しい。海洋生態系シミュレーション『ECOSYSTEM』【TGS2023】
2023.09.23

注目記事ランキング

2023.09.16 - 2023.09.23
1
「UEFN」って実際どうなの? 編集部が3時間で「みんなで遊べるアクションゲーム(?)」を作ってみた
2
『フォートナイト』で動く本格的なゲームが作れるツール「UEFN」とは?従来のクリエイティブモードから進化したポイントを一挙紹介!
3
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧
4
【2022年5月版】今から始めるフォートナイトの「クリエイティブ」モードープレイ開始から基本的な操作方法まで解説
5
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.1「アイテム系」
6
【CHALLENGE1】「クリエイター ポータル」を使って、UEFNで作成した島を世界中に公開する
7
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.5「島の設定」
8
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part2
9
【STEP2】UEFNの基本的な使い方を覚えよう
10
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part1
11
フォートナイトとUEFNがv26.10にアップデート。「ジップライン」が仕掛けとして追加されたほか、Verseからマテリアルの差し替えが可能になった
12
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.3「プレイヤー系」
13
【UEFN書籍発売記念!2大キャンペーン】UEFNで島を作ろう!動画投稿キャンペーンを開催。『フォートナイト 2800V-Bucks』が15名に当たるプレゼント企画も
14
【CHALLENGE3】UEFNの機能「ランドスケープ」を使ってオリジナルの地形を作る
15
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.2「ユーティリティ系」
16
『フォートナイト』で建築ビジュアライゼーション!?UEFNでオリジナルの世界観をどう作り上げたか、その手法を解説【UNREAL FEST 2023 TOKYO】
17
まるで『マイクラ』?ボクセル地形を生み出す無料アセット「VoxelPlugin Free」で”地形を掘ったり積み重ねたり”して遊んでみよう
18
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.4「ゲームシステム系」
19
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.6「チーム・対戦系」Part1
20
【CHALLENGE2-1】フレンドと一緒にゲームを作ろう――UEFNプロジェクトをチームメンバーとリアルタイムで共同編集する
21
【STEP5-1】スタート時のカウントダウンを作る
22
フルカラー書籍「UEFN(Unreal Editor For Fortnite)でゲームづくりを始めよう!」、ついに本日発売!全国書店で好評発売中!
23
【STEP6-1】「オリジナルキャラクターを登場させよう」――Fabでアセットをダウンロードしよう
24
【STEP3】オリジナルのアスレチックコースを作ろう
25
【STEP5-2】ゴールの仕組みを作る
26
【STEP4-3】仕掛けを使って「坂を転がるボールのギミック」を組み込む
27
【STEP6-4】インポートしたアセットを使ってギミックを作る
28
フォートナイト クリエイティブやUEFNに実装予定の機能をまとめたロードマップが公開。2023年Q3には、ゲームの進捗状況を保存する機能が追加予定
29
【STEP4-2】リスポーンとチェックポイントの仕組みを作る
30
Epic Games、200を超えるフォートナイトの島クリエイターが年間10万ドル以上の配当金を得られると発表。島の「プレイ時間」が影響
VIEW MORE

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

法線
ホウセン 頂点がどの方向に向いているのかを決定するベクトル情報。ライティング情報を受けて、どのような方向に陰影を作リ出すかを決定する処理に利用する。 マテリアル内で、計算やテクスチャ情報により法線をコントロールすることで、メッシュそのものを弄らずに立体感を出すことが可能。 面の表裏を表す面法線もある。
VIEW MORE

Twitterで最新情報を
チェック!