2023年7月14日(木)から16日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催された『BitSummit Let’s Go!!』。展示されたゲームの中から、今回はヨコゴシステムズが開発するジュブナイルメトロイドヴァニア『The Good Old Days』(ブース番号DEV-39)を紹介するとともに、同作品の開発者 田崎 亮氏に懐かしさと新しさを感じさせるゲームデザインへの挑戦を聞きました。
TEXT / 田端 秀輝
目次
あのタイトルを彷彿とさせる設定とシステム、そして丁寧なレベルデザイン
『The Good Old Days』は、PC向け(Steam配信予定)の2D探索型アクション、いわゆるメトロイドヴァニアのタイトルです。
物語は主人公ショーンが父親が作った借金5万ドルを返済するため、そして借金取りが連れ去った仲間たちを救うため、自宅の地下に隠された財宝を探し出し、約束の期限までに借金を返済を目指すというところから始まります。
この設定は1985年に上映されたアメリカの冒険映画「グーニーズ」を彷彿とさせます。いや、2Dプラットフォームで爆弾を使って扉を開けながら地下を探索していくこのゲームは、むしろ映画を原作とした2Dアクションゲームやその続編である2D探索型アクションゲームを想起させてくれます。
爆弾を使って扉を開き、中に隠された鍵を入手するシーン。爆発に巻き込まれるとダメージを喰らうので、設置してから離れるという行動を取るのもあのゲームを思い出させる。なお、爆弾の上には乗れるので、高い位置への足場にしたりトゲ山を回避するといった新しい用途もある(画像はパブリッシャー向けトレーラーより引用)
『The Good Old Days』パブリッシャー向けトレーラー
それもそのはず。『The Good Old Days』はそれらのゲームにインスパイアされて開発されたタイトルなのですから!
インスパイア元のゲームでは、映画とは異なりいきなり(地下洞窟の入り口がある)ギャングのアジトから始まりますが、本作では自宅裏の井戸から地下に入ることになります。この、「自宅の近くから始まる冒険」という描写が映画を想起させてくれますし、またおっさんの中に眠っていた少年心もくすぐってくれます。
インスパイア元のゲームの続編は、今考えるとメトロイドヴァニアの始祖のひとつではないかと思われるゲームなのですが、本作でも「高くて今のジャンプ力じゃ届かない崖」「背が低くないと通れない通路」などが序盤でも各所に見え、早く探索を進めて能力を手に入れたいという気持ちにさせてくれます。
BitSummitで試遊したバージョンでは、仲間がギャングに連れ去られるシーンに出会い、それを追いかけるあたりまでプレイができました。このおそらくギャングのボスである女性(下記画像中央)、彼女の風貌も映画「グーニーズ」などをリスペクトしているのが感じ取れて、登場した瞬間に叫んでしまいました。
それでいて、令和のゲームプレイを意識したゲームデザインも
と、当時少年だった40代筆者が熱い昭和の昔話を交えながら本作の紹介をしましたが、同時に『The Good Old Days』は令和らしいゲームでもあります。
そのひとつが、目標が「地下に隠された財宝を探し出す」ではなく、「時間内に借金を返済する」であること。財宝を見つけることは借金返済の手段のひとつでしかなく、目標額に到達するのであれば別にほかの手段でお金を集めてもいいのです。
例えば「拾った宝くじを当てる」という稼ぎ方があります。筆者の今回のプレイでは4等100ドル分しか当たりませんでしたが、1等を当てるとなんと一気に目標金額に到達するとのこと。そんなことが起きたらSNSで言いたくなるし、配信ならばバズりますよね。そんな仕掛けも随所にあるようです。
もちろん地下奥深く進んで財宝を探し当ててもいいし、ボスと戦ってお金を稼いでもいい。どうやら悪事を働くという要素もあるようで、何度もプレイしたくなるようになっています。
また、ライフが0になったりトゲにあたるとリトライになるのですが、最初からやり直しになるのではなく、ゲーム内時間が5分経過してしまう(借金返済までの残り時間が短くなる)だけでその場からすぐリトライできます。アクション自体は微妙なコントロールが求められたり、道を進むのに大胆な行動も求められたりする中でデスペナルティが軽いというのも、近年のゲームらしいところです。
Unity + Corgi Engineならば、アーティストでもこだわりのゲームデザイン・レベルデザインができる
開発についてお話を伺ったのは、ヨコゴシステムズのピクセルアーティスト/ゲームデザイナー 田崎 亮氏氏。『The Good Old Days』はほぼ彼ひとりによって開発されたそうです。普段は別の開発会社でグラフィックを担当しつつ、帰宅後毎日3時間ほどの時間をとり、2年の時間をかけて本作を開発してきました。
なお、ヨコゴシステムズの過去作『リバーシクエスト2』でもゲームデザイン、シナリオ、アートを担当され、BitSummitへの出展経験もあるそうです。
開発環境はUnityと、アセットストアで販売されている2D/2.5Dプラットフォーマー制作アセット「Corgi Engine」。「Corgi Engine」のおかげで、アーティストである田崎氏も思うがままにゲームデザインやレベルデザインに注力できているといいます。
ほぼひとりでの開発のメリットを伺ったところ、なんといっても仕様書などのやりとり無しに、自分の頭の中にあるものを形にすることに専念できること。デメリットは、開発で生まれたバグなども自分ひとりで解決しなければいけないことですが、こちらは「Corgi Engine」のコミュニティで解決できているそうです。
おっさんゲーマーとしては、やはりあの思い出のゲームをリスペクトしつつ過去のゲームにはない部分も描いてくれる本作は、プレイしてて顔がにやけてしまいました。そんな特定の属性向けな要素を差し引いても、メトロイドヴァニアとして丁寧な作りこみをしているのは好印象。それでいてデスペナルティも小さく試行錯誤ができるようにして、それでいて多様な攻略方法ゆえの繰り返しプレイやSNS・動画配信受けも意識しているあたりが昨今のゲームらしい、そんな発売が待ち遠しいタイトルでした。
『The Good Old Days』公式サイトBitSummit Let's Go!!公式サイト「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。
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