学生同士がチームを組み、与えられたテーマでBitSummit出展を目指す「第3回BitSummit Game Jam」コアDAYが6月10日(土)、11日(日)に京都・東京の2会場で開催されました。本記事ではBitSummit Game Jamの概要や、東京会場で行われたコアDAYの開発風景および展示会の様子をレポートします。
TEXT / 神山 大輝
目次
2ヶ月半の開発でBitSummit出展を目指す、学生だけのゲームジャム
「ゲームジャム」は、ゲーム開発者が一同に介して短期間で開発を進めるハッカソンイベント。最も有名なゲームジャムは毎年1月に開催される「Global Game Jam(以下、GGJ)」で、100カ国以上、数万人のゲームクリエイターが参加しています。
ゲームジャムの語源は音楽用語のジャムセッション(※)で、例年GGJでは全世界共通のテーマのもと、即席のチームが48時間という短期間の開発に臨んでいます。
※事前打ち合わせのない演奏家同士の即興演奏
BitSummit Game Jamの特徴は学生限定であることと、開発期間が2ヶ月と比較的長期にわたること。そして、いずれの作品も7月に開催される『BitSummit Let’s Go!!』での展示が確定していることです。
BitSummit Game Jamは例年オンライン主体のゲームジャムでしたが、第3回を迎えた今回は初めてオフラインの東京会場が登場。企画会議や日常的なミーティングはオンラインで行い、対面で集中開発を行う機会として2日間のコアDAYが設けられています。
学生たちは5月中旬からDiscord上で交流を続け、2度の企画ミーティングを経た上で今回のコアDAYに臨むこととなりました。
参加者はゲーム関連の専門学校や大学だけでなく、東京大学や筑波大学などゲーム科のない四年制大学の在籍者も目立ちます。参加者の総数は京都会場を合わせて約250名。東京では約100名、全12チームが開発に臨んでいます。
会場にはIndie Games Connectを主宰するKONAMI 安慶名伸行氏(写真・左)や、ゲームクリエイターズギルドやゲームクリエイター甲子園でお馴染みのSTAND 宮田 大介氏(写真・右)らの姿も。両社は運営協力というかたちで、本イベントの運営協力や当日の学生メンターを務めていた
全チームの作品を一挙に紹介
ここからは各チームの進捗発表会およびプレイ会をもとに、東京会場で発表された全12作品を紹介します。今回のテーマは「For The Future」。時間による変化を取り入れた作品が目立ったほか、短期開発という特性上アクションやパズルゲームが中心となっている様子がうかがえました。
※もちろん、全て開発中の画面になります。画像は2日間の進捗発表会でプレゼンされた内容を引用しています
『俺、死ぬの!?』
爆弾の解除を目的として部屋を探索する脱出ゲーム。選択肢によって理不尽な死が訪れる仕様で、全体を通してギャグテイストな作品。デモでは部屋内にある観葉植物に水をあげない選択をし、その後死亡していた
『Stock Race』
ジャンプ、移動、球撃ちが可能な横スクロールアクション。足元の白いチャートは人類の総数を示しており、敵を倒した時にドロップする歴史的イベントに応じて増減する。人類史の追体験のような壮大なテーマを持つ
『ロボツリ』
弾幕アクションと釣りをかけあわせた作品。クエスト受注型で、特定の魚(キカイギョ)に挑む仕様となっていた。デザイナーのPC不調のためデモはなかったが、こうしたトラブルもゲームジャムにはつきもの。本番の展示に期待したい
『バイト×バトル』
4人対戦のローカルマルチプレイ作品。プレイヤーはレストランのアルバイトで、画面内にはWORKゲージとHPゲージが存在。仕事をしないとWORKゲージが減る、周りのアルバイトからタックルを食らうとHPが減るといった仕組みで、相手を邪魔し合うパーティゲームの様相となっていた
これらの作品は今後1ヶ月間のブラッシュアップ期間を経て、BitSummit Let’s Go!の専用ブースで展示が行われる予定とのこと。今のうちからお目当てのゲームを見つけておけば、ブラッシュアップによる進化をより楽しめるはずです。
「次世代ゲームクリエイター育成を目指す」東京国際工科専門職大学 小野憲史氏インタビュー
現役学生に展示の機会やプロのメンターによるサポートを提供し、活躍の場を生み出している「BitSummit Game Jam」。本イベント開催の意図や経緯について、東京会場のオーガナイザー 東京国際工科専門職大学 (デジタルエンタテインメント学科ゲームプロデュースコース)講師 小野 憲史氏にお話を伺いました。
――改めて、BitSummit Game Jamの開催概要について教えてください。
BitSummit出展へ向けてゲームジャムを行う試みは2019年に始まりました。オンラインのゲームジャムとして始まった本イベントですが、昨年は京都会場、今年は京都と東京会場の2会場を併設し、少しずつオフラインでの開発体験を取り入れる試みも始まっています。
本来的なゲームジャムは、メンバーが瞬間的に集まって、48時間で作品を1つ作りあげるイベントです。ただ、BitSummit Game Jamは少し特殊で、2ヶ月半という期間を掛けた上で、最終的な目標として「BitSummitへの出展」を目指します。
――たしかに、GGJなどは性質上「作って終わり」という形式になりがちです。目標が明確化されていることは大きな差だと感じます。
BitSummitへ出展する以上、作品もしっかり作り込む必要があります。そのため、BitSummit Game JamのコアDAYでは、プロのクリエイターから作品に対するフィードバックを行ったり、Unityエンジニアのメンターを行ったりと、より良い作品を作るためのサポートを行っています。
――会場運営や協力会社のサポートなど、力を入れて取り組んでいる様子が伺えます。学生側ではなく、運営側の目標やヴィジョンを教えてください。
ひとつはBitSummitを盛り上げることですが、更に掘り下げて言えば「日本のゲームクリエイターの裾野を広げるため」です。このために、次世代のクリエイターを育成する必要を感じています。
BitSummitで展示できる機会は、普通はなかなか得難いものです。これを提供することで刺激を受けて欲しいですし、ここで経験を積んで来年、再来年と別のゲームで応募しようと考えていただきたいと思っています。
ゲームジャムが終わっても、開発は続きます。Indie Games Connectやゲームクリエイター甲子園、あるいは東京ゲームショウのスカラシップ展示など、1つの作品を次々に展開できる環境が整いつつあります。今回参加している学生にも、そういった次への繋がりを作って欲しいと思っています。
――最後に、BitSummit Game Jamに興味のある方に向けてメッセージをお願いします。
手を挙げれば必ず参加できますので、次回開催の際にはぜひ参加検討をしていただければと思います。今回も1年生から4年生まで、未経験の方も参加していますし、参加がきっかけで学習意欲が高まる方も多い印象を持っています。
本イベントはオンラインが中心のため、日本全国どこでも参加できます。そうは言いつつも、コアDAYの会場は京都と東京の2拠点のみで、個人的には「もっと会場が増えても良いのではないか」と考えています。
これを読んでいる学校教員の方がいらっしゃいましたら、学生へ教育機会を与える一環として、また地方コミュニティの活性化を目指して、ぜひ一緒に運営協力をしていただければ嬉しいです。
BitSummit 公式サイトBITSUMMIT ONLINE GAMEJAM 公式サイトゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。
ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。
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