Premiere Pro 25.2では、短いクリップを「2秒間」引き伸ばせるように!先週新たに追加されたフレーム追加機能「Generative Extend」が、ゲームのPV撮影などにも使えるのかを簡易的にテストしてみました。
TEXT / 神山 大輝 , 神谷 優斗
目次
Premiere ProとAfter Effects 25.2で「AIによるフレーム生成」が可能に
2025年4月2日(水)現地時間、AdobeはPremiere ProおよびAfter Effects 25.2の新機能をNAB SHOW 2025で発表しました。中でも注目を集めたのは、クリップの末尾をドラッグ&ドロップするだけで動画を引き伸ばせるPremiere Proの「Generative Extend」機能。
もともとはβ機能として2024年10月のAdobe MAXで発表されていましたが、約半年のテストを経て今回無事に正式リリースとなりました。
(画像はAdobe ブログより引用)
実写撮影においてはカメラが遅れてスタートしたり、早すぎるタイミングでカットしたりして、必要なクリップが短くなってしまうケースが起こり得ます。Generative Extendでは、2秒間だけクリップにフレームを追加して、余韻を追加する、あるいはトランジション尺をカバーすることが可能になります。
ゲームPV撮影においても、「もう少し長ければ綺麗にトランジションができたのに」「あと1秒あればBGMの尺と合うのに」など撮影後にクリップを編集したい機会も多いはず。実写に比べて撮り直しが簡単とはいえ、特にマルチプレイタイトルでは人員を再度集めなければならず、再撮影には少なくないコストが発生します。
Generative ExtendはゲームPV撮影でも使えるのか?簡易的ではありますが編集部で検証を行ってみました。
映像ソースは「サードパーソンテンプレート」と「3Dアクションゲーム」デモ
映像ソースとして利用したのは、UE5のテンプレートのひとつである「サードパーソンテンプレート」。背景は極めてシンプルですが、網目状の床を破綻なく描けるかが分かりやすいはずです。また、今回はゲームPV撮影を想定しているため、音声は無音でチェックしています(機能的には音声も自動生成されます)。
また、より実際のゲームらしい映像として、ゲームメーカーズPC付属コンテンツも利用しました。こちらは一般的な3Dアクションゲームに近い見た目で、キャラクターの見た目もエンバイロメントもやや複雑になっています。
映像はフルHD以上の必要あり。生成時間は約2分半
さっそく生成を試したところ、エラーが発生。どうやら映像フォーマットや解像度については一定の仕様が定められており、今回は解像度とアスペクト比の逸脱が指摘されています。
素材のアスペクト比を指定の数値に設定し、生成をスタート。操作自体はクリップの後ろをドラッグ&ドロップするだけで完了します。タイムラインのクリップ上で進捗がパーセント表示され、ビューポートには「生成中」という文字が複数言語で表示されています。
生成に使用したマシンはIntel Core -i7 14700F、メモリ32GB、NIVIDIA RTX 4070(VRAM 12GB)というスペック。2秒と短いクリップ生成のため、生成自体は2分半ほどで完了。これは映像ソースにも依存しそうですが、十分実用的なスピード感です。
さっそく生成された映像を確認。しかし……。
生成された映像を確認してみました。サードパーソンテンプレートではブラーのようなモヤモヤが掛かり、手が一瞬消えてしまうなど、なかなかなクオリティとなってしまいました。Adobe公式では、銀色の人物が格子状のマップを歩き回る姿は想定されていない可能性があります。
ただ、これは「やり直し」が効きますので、再度試してみます。
身体が反転したり、床が歪んだり……
続く結果はこちら。身体の向きが改善され、床の破綻も減ったように感じます。肝心のキャラクターは巧みなドリブルをしているようにも見えますが、例えば次カットへの派手なトランジションの余白として考えればどうにか使い所はあるような感覚です。この辺りは実写と比較すると教師データが不足しているため生成難度が高いようにも思います。
続いては「ゲーム制作キット」の映像。動く床に乗っている、動きの少ない映像は大きな破綻なく生成されています。UIとして表示されている時間が停止しており、次に乗るべき動く床の上部は変形していますが、全体として気づかれにくい印象です。
UIの時間が止まっている以外は、パッと見では生成と分からない。PVではUIを出さないケースも多いので、大きな問題にはならない感覚も
ただし、激しいアクションシーンは大きな破綻も。トランポリンを渡って進んでいくシーンの続きを生成したところ、「これはさすがに……。」という映像も出力されました。見ていただいた方が早いですが、突然足場が消え、空中にキャラクターが浮いています。
飛び去った
検証結果:動きが少なければギリOK。あくまで「最終手段」的に使うのがベター
簡単なテストではありましたが、得意不得意が見えてきました。
そもそもAdobe自体「最も効果的と思われるビデオクリップは、カメラの高速な動きなど、ショット内のコンテキストの変化が少ないものです。 一貫したノイズや雰囲気のあるオーディオクリップでパフォーマンスは良好です。」とFAQに記載しているので、当たり前ですが実写であれゲームであれ変化の少ない映像が好ましいでしょう。
体感として、大きな動きのあるトランジションを用いる余白としては必要十分。全画面表示されず、複数のゲーム内映像が1画面に収まるシーンでは違和感少なく使える印象を持ちました。困った時の一手として活用機会があるかもしれないので、この機会に最新版にアップデートしておくといいかもしれません。
Introducing new AI-powered features and workflow enhancements in Premiere Pro and After Effects 25.2Adobe Premiere Pro に導入された生成延長の機能に関するよくある質問ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。
ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。
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