セガ、『PSO2』シリーズで新たに実装されたトゥーン表現の解説記事を公開。既存モデルを生かしながら描画方法を切り替え

2023.08.29
ニュース見た目を良くする3DCG
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

この記事の3行まとめ

  • 『ファンタシースターオンライン2(以下、PSO2)』『PSO2 ニュージェネシス(以下、NGS)』で実装されているトゥーン表現の解説記事が公開
  • 既存のモデルに合わせ、従来とは異なる方法でトゥーンレンダリングを実装
  • ランプテクスチャの追加が難しいモデルデータへの対応も行う

2023年8月10日(木)、セガの技術ブログ「SEGA TECH BLOG」にて、『NGS』『PSO2』のトゥーン表現を解説した記事「『PSO2 ニュージェネシス』におけるトゥーン表示対応について」が公開されました。

トゥーンレンダリングを想定していないモデルデータでの工夫

『NGS』ではトゥーンレンダリングを想定したモデルデータを作成していなかったため、一部の実装では一般的な手法とは異なり、その方法について同記事で解説されています。

本作でトゥーン表示する際は、ディファードレンダリングのGBufferから取得した情報を使用しています。『NGS』のレンダリングシステムは、不透明の描画には「ディファードレンダリング」、半透明・カットイン画面の描画には「フォワードレンダリング」が用いられています。

GBufferの内容(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

『NGS』のトゥーン表示におけるレンダリングパス(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

カットイン画面とは、本作においてチャット画面やショップでのプレビューで使われている画面を指しています。

カットイン画面(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

これまでの処理ではフォワードレンダリングを用いていたため、GBufferの情報を出力していませんでした。トゥーン表現を適用するにあたり、フォワードレンダリングの結果だけでなく法線、マテリアル情報などを含めたGBufferを出力するように変更したといいます。

トゥーン表現対応後のカットイン描画のパス(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

ランプテクスチャの追加が難しいモデルデータへの対応

拡散反射光(陰影)は、ランプテクスチャ(※)を用いて表現する方法が一般的です。しかし『NGS』では既存のモデルデータとの兼ね合いなどの理由から、ランプテクスチャを使用せずに、用意した一律のパラメーターの値を元に陰影を計算して表現します。

※ ランプテクスチャとは、色の段階を設定したテクスチャ。本作では、陰影をアニメのような表現に近づけるために使用されている

ランプテクスチャではなく、計算によって3段階に陰影が分けられている(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

上記の陰影付けの方法では、例えば肌の色が暗いキャラクターでは意図しない陰影描画が発生するため、鏡面反射光(スペキュラ)に対しても一律のパラメーターを用意して、3段階の陰影をもってトゥーン表現を実現しています。

拡散反射光だけでは陰影が落ちない例(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

鏡面反射光も考慮することで、綺麗に陰影が落ちるようになった(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

アウトライン表現

『NGS』は、GBufferの深度、法線、マテリアルの情報を元に「顔と毛髪以外は法線によるアウトラインを使用する」「毛髪のみ、マテリアルによるアウトラインを使用する」など、パーツごとに異なる方法でアウトラインを描画しています。

また、『PSO2』では「フォトンマフラー」など不透明と半透明を組み合わせたパーツが用いられています。この場合、アウトラインは半透明部分を無視し、不透明部分に沿った不自然な描画がされてしまいます。

その対策として、半透明部分を表すアルファマスクを作成。これにより、半透明部分にアウトライン描画されないよう対応しています。

GBufferの各情報を元にアウトラインを描画している(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

マスクを用意することで、半透明部分にアウトラインが描画されないようにしている(画像はSEGA TECH BLOGより引用)

その他、トゥーン表現に対応するために施したモデルの調整手法などの詳細は、こちらをご確認ください。

SEGA TECH BLOG「『PSO2 ニュージェネシス』におけるトゥーン表示対応について」

関連記事

ライティングの影響で見た目が変わる爆風エフェクトや、ゲーム背景の画作りのテクニックなど。Unityによる映像制作のコツを解説した記事2本、Aimingが公開
2025.03.25
「Blender 4.4」正式リリース。複数のアニメーションを単一のアクションで管理可能になるなど多数のアップデート
2025.03.20
「セガのゲームで学ぶ3DCGの基礎」特集号の『CGWORLD vol.321』、4/10(木)に発売。ゲーム開発の現場で使われる知識を学べる
2025.03.20
Substance 3D Painter最新アップデート情報が公開。パス範囲内を塗りつぶせる「Filled Path」やプロジェクト内リソースの自動更新などの新機能が登場
2025.03.19
CGWORLD、「3D人と選ぶ、注目のBlenderアドオン!」過去3回分の動画をYouTubeで公開。期間限定、3/31(月)まで
2025.03.19
Substance 3D Painter/Designer/Modelerを月額24.99ドルで使用可能。Adobe、Steamで「Substance 3D Indie Bundle」をリリース
2025.03.18

注目記事ランキング

2025.03.24 - 2025.03.31
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

ロード(Load)
ロード
  1. コンピューターの補助記憶装置(HDDなど)に保存されたデータを読み込んで、主記憶装置(メインメモリ)上に展開すること。
  2. ゲームにおいて、セーブデータを読み込んで中断時の状況を再現すること。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!