アークライト 野澤 邦仁のボードゲームを作るには Vol.03「モックアップ制作、クローズドテスト編」

2023.07.28
注目記事ゲームづくりの知識チュートリアルアークライト野澤流ボードゲームを作るにはアナログゲーム
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本連載は、『ito』『ボルカルス』などを手がけた株式会社アークライトの野澤 邦仁(のざわ くにひと)氏に、ボードゲーム(※)の企画から制作・出展方法まで指南していただきます。

※ ドイツ・ユーロ流の近代ボードゲーム・カードゲーム

具体的には、「予算50,000円で、創作ボードゲームを20〜50個制作&ゲームマーケットに出展し、販売すること」を目標に据え、その条件をクリアする手法を解説していきます。

連載3回目の本記事では、ゲームの面白さをチェックする「テストプレイ」と、テストプレイに必要な「モックアップ」の制作について紹介していただきます(連載1回目の記事はこちら)。

TEXT / 野澤 邦仁
EDIT /  藤縄 優佑

目次

Vol.01:企画編Vol.02:ゲームの着想7つ道具を通じて自分の作りたいボードゲーム(ボドゲ)の構想が浮かんだら、次は「手を動かしながら考えること」をオススメします。そこで必要になるのが「ルールのメモ」「ゲームのモックアップ(モック※)」です。

※ 「モック」とは、ここでは「粗く作ったテスト用のゲームのこと」を指します。「プロトタイプ」や「テストキット」とも呼ばれます

制作に慣れていない方は、ここまでの段階で企画をまとめることも難しかったかもしれません。そういった方でも、とりあえずモックを作ってテストプレイを重ねていくと、そのゲームの面白さを見つけられたり、「こうすれば面白くなりそう」といったアイデアが浮かんだりするのが、ボドゲ制作の良さです。

ルールのメモの書き方

『ねるまえダンジョン(仮称。1人用ローグライク風カードゲーム)』制作時のメモ

まずはルールや要素を箇条書きします。基本的には自分しか読まないメモなので、自分が判別可能な字であれば見栄えも気にせずに書き出しましょう。

この段階ではルールの粗には目をつぶり、気になることがあれば端にメモしておく程度に留めておきます。私の場合は、A4コピー用紙に手書きすることが多いです。モックと一緒のケースにしまっておけるのと、手書きをすると頭が働くので好き、というのが大きな理由です。

他にも、テストプレイ時に傍らに置くことで気付きを追記しやすく、文字だけではわかりづらい部分には気軽に図を入れられるのも、手書きが好きな理由です。

モックの作り方

カードのモックの作り方

カードのつくりも簡素でかまいません。コピー用紙に複数のカード情報を書いたら切り取り、市販のカードスリーブに入れればOKです。

カードをまぜる(シャッフルする)ゲームなら、カードが硬くないとまぜづらいので、使わなくなったTCGのカードを「下敷き用カード」としてコピー用紙と一緒にスリーブに入れることを推奨します。

下敷き用カードは、カードゲーマーの友人から不要なカードを譲ってもらうか、カードショップで100枚あたり数百円で売られているものを購入すると、費用を抑えられます。

100円ショップでも買える、両面が透明なカードスリーブ(写真左)と、カードショップや家電量販店で買える、ウラ面に色や柄が付いたもの(写真右)

下敷き用カードをオモテ向きの状態で入れると、下敷き用カードが悪目立ちし、自作カードが見づらくなってしまいます

下敷き用カードをウラ向きに入れることで、見づらさの問題は軽減できます

下敷き用カードをウラ向きに入れた状態。邪魔な視覚情報が減り、見やすくなりました

上記で紹介した手法に使うスリーブは、ウラ面に色が付いているものを使うのがオススメです。透明のスリーブを使い、下敷き用カードをウラ向きに入れたままカード自体を裏返すと、下敷き用カードのオモテ面が見えてしまいます。

つまり、どちらがオモテなのか一瞬では判別しづらいのです。こうしたことを防ぐためにも、ウラ面に色が付いたスリーブをオススメしています。

ボードのモックの作り方

ボードはまぜることが基本的に発生しないため、コピー用紙をそのまま使ってかまいません。お金をかけるとしても、100円ショップで売っている硬いポストカードに手書きする形でOKです。

コマ、ダイス類を用意する

コマやダイス類は、他のボドゲに入っているものを流用したり、100円ショップを活用したりして揃えましょう。

数年前にコスパを吟味してたどり着いた100円ショップのガラスタイル(100円で80個入り)。チャック袋も100円ショップにさまざまなサイズが用意されています

ケース(箱)を用意する

作ったモック一式と、前述したルールメモや企画書などの書類は、クリアケースにひとまとめにして保管するのがオススメです。クリアケースは、さまざまなサイズのものが100円ショップで売られています。また、保管目的だけでなく、パッケージの大まかなサイズ感もイメージできるようになります。

ただし、ケースには完成品以外のもの、入れ替えるかどうか迷っているカードなど試行錯誤している物品も入れるため、私は完成品のイメージより大きいサイズのクリアケースを使います。

完成品が小箱ゲームならA5サイズ中〜大箱ゲームならA4サイズに入れるといった具合です。ルールのメモや企画書はA4コピー用紙で書いているので、ケースがA5サイズの場合は半分に折って入れています。

ケースに関しては、私はこれまでにファスナー付き袋やタッパー、ビニール袋や封筒など、さまざまな種類のケースとサイズを試してきました。

結果としてA5、A4、B5あたりのクリアケースが使いやすかったので、今はそのあたりのサイズを採用することがほとんどです。

モックはどの程度作り込むべき?

モックづくりにこだわりすぎると、モックの制作に時間がかかってしまいます。また、今のバージョンへの思い入れが強くなりすぎてしまい、指摘を素直に受け入れづらくなったり、仕様の変更が億劫になったり、といったことにもつながります。

ボドゲ制作に慣れないうちは修正点も多くなりがちで、ゲームをボツにすることも起きやすいと思うので、モックづくりが何回も発生しても心が折れない程度にテキトーに進めていきましょう。

一方で、モックの出来が雑すぎると、カードやボードの見づらさ・使いづらさのストレスがゲームの面白さを阻害し、テストプレイヤー(テストプレイ参加者)の感想に悪影響を及ぼす可能性があります。

もしテストプレイヤーが特段ボドゲ好きではなく、「あなたのお願いだから」ということでテストに付き合ってくれているならば、少しだけ見栄えにも気を使った方が良いかもしれません。

まとめると、「遊んでもらえるギリギリのテキトーさ」を目指すのがオススメです。上記の事情を説明して、ほどよい塩梅を探りましょう。なお、テストプレイヤーがボドゲ制作に慣れているほど、モックの出来が粗いものでも勘案してプレイし、意見をくれるようになります。

1人回し

ルールのメモとモックができたら、まずは自身で何役もこなして疑似的にゲームをプレイする「1人回し」をしてみましょう。

細かい駆け引きや心理戦などのチェックは難しいですが、ゲームの基本的な手順や流れに破綻がないか、勝負として成立しているか、といった前提を確認できます。1人回しを一度するだけで、初歩的なミスやルールの漏れなどが見つかることはよくあります。

1人回しをしてみたところ、ゲームとして破綻していて、かつ自分だけでは解決策が思いつかないことに気付く場合もあります。そういったときは、破綻していることを承知で、次の工程「クローズドテスト」に進むのも手です。その場合はテストプレイヤーに事情を伝えた上で、遊んでもらいましょう。

クローズドテスト

1人回しの次は、いよいよ自分以外の人に触れてもらうテストプレイに移ります。テストプレイには大きく分けて「クローズドテスト」「オープンテスト」の2種類があります。

この2つの言葉はデジタルゲーム界隈の用語だと思いますが、ボードゲーム界隈でもよく耳にします。意味合いもほとんど同様で、「クローズドテスト」は比較的閉じた環境で実施し、「オープンテスト」は広くテストプレイヤーを募って実施します。

テストプレイ実施中にテストプレイヤーに意見を聞き、ときには議論に発展することもあるのはボドゲならではかもしれません。

制作の序盤では「クローズドテスト」を実施します。近年はオンラインでテストプレイをするケースも見られますが、ボドゲは最終的にはオフラインで遊ばれるものです。テストプレイヤーの反応やしぐさを間近で観察するためにも、なるべくオフラインで開催することをオススメします。

実施場所は自宅やボドゲショップのプレイスペース、貸会議室や多目的ルーム、カラオケなどを利用するケースがメジャーかと思います。なお、テストプレイにかかる時間は、私の感覚では1ゲーム20分のゲームの場合、プレイ1〜2回+ヒアリングや議論もしたいので最低1時間。理想は2時間ほどを確保しておきたいです。

クローズドテストの狙いは以下の通り。

①体験の面白さの核を見つける
②面白さの核にどれほど伸びしろがあるか、どこまで伸ばせそうかを確認する
③一番楽しんでくれる層であるメインターゲットの確認と更新をする

一つずつ説明します。

①体験の面白さの核を見つける

テストプレイ中、ワイワイ遊ぶパーティーゲームなら、「そのゲームで盛り上がったタイミングはどこか」「なぜその盛り上がりが引き起こされたのか」「その盛り上がりや体験は、他のゲームの下位互換ではない独創的なものか」「一番楽しんでくれる層はどこか」「その盛り上がりや体験は、今後の制作でより強化できそうか」といったことに気を払います。

テストプレイヤーの様子と、自分の心の動きを観察し、理由や課題、仮説の言語化を試みます。どのポイント(調整点)が面白さ(盛り上がり)に寄与しているのかを言語化できるまで、ルールや内容物を修正し、テストを繰り返しましょう。

言語化ができれば、制作を続けている中で、ポイントの発生頻度を増減させたり、盛り上がりを強化したりといった調整を狙ってできる可能性が高くなります。そうなれば、「漫然と調整を続けて暗中模索状態に陥ること」を防げます

上記のような「狙った調整」を行うには「ゲームメカニクスへの理解と、使いこなせるストックの量」があるほど確度が高まります。私などのボドゲ編集者はそれで飯を食っているのですが、一朝一夕で身につくものではありません。あまり気にせず進めましょう。

この段階では「粗を取る」ことは二の次にして、「面白いポイントを見つける」「尖らせる」「独創性を出す」ことに注力してみてください。手札の枚数を倍や1枚にしたり、カードの形状やサイズを変えたり、カードではなくコマで遊んでみたりと、極端なことを試すのもオススメです。

テストプレイヤーから「これ考えた奴バカじゃねーの(笑)」といった盛り上がりを見せる反応が出てきたら、良い作品になる芽があります。

②面白さの核にどれほど伸びしろがあるか、どこまで伸ばせそうかを確認する

既存のゲームや、ゲーム以外のコンテンツやサービスなどの市場規模を参考にして、販売数の期待値を想像、調整します。

例えば、以下のようなイメージです。

「この自作ゲームには、『ドミニオン』に通じるゲームメカニクスの面白さ(拡大再生産、買い物の楽しさなど)を持たせながら、「すごろく」の形式に落とし込むことで、30分で決着する。間口が広く、遊びやすいゲームに設計したい。」

これが面白さの核であり、独創的な発明の部分です。

「今はまだモチーフを考え中だが、ゲームの内容を活かすなら『どうぶつの森』のような可愛くキャッチーな世界観にするのはどうか?20代男女でも一緒に遊びやすくなり、ボドゲ初心者に安心してオススメできる、ボードやタイルを使った本格感のある、中量級ゲームの定番枠が目指せないか?」

これがモチーフの面から伸ばそうとしている思案です。

他にもゲームルールの工夫などでゲームの良さを伸ばす想像をしますが、具体的になりすぎるので割愛します。

上記の場合は、『ドミニオン』「すごろく」「30分の中量級ゲーム」『どうぶつの森』などのキーワードが出てきたので、それぞれの販売数を調べるなどして、そのゲームが何人の手に取ってもらえるポテンシャルがありそうかを予測していきます。

とはいっても、予測するには経験やデータが必要です。本連載のように20〜50個を販売するには、それほど必要ないかもしれません。余裕があったらイメージしてみる、くらいで良いでしょう。

③一番楽しんでくれる層であるメインターゲットの確認と更新をする

Vol.01:企画編にて想定ターゲットは一旦決めているかと思いますが、クローズドテストを通じてそれを確定・先鋭化しましょう。

例えば企画段階では「ボドゲ好きな20代男性向け」など、やや範囲が広い状態で進めているかと思います。しかし、そのままではターゲットの幅が広すぎて何かと活用しづらいです。

私のオススメは、テストプレイヤーの中で一番反応が良く、楽しんでくれた「具体的な1人」を心の中で選び、その人をメインターゲットに設定することです。

今後の制作の中で、複数の案で迷うことがあったときなどは、その人の反応を決め手にします。

オープンテスト

オープンテストは制作の終盤、ゲームがほぼ完成した状態で実施します。オープンテストの狙いは以下の通りです。

①さまざまなプレイヤーの反応を観察する
②①から、ルールや説明書の不備を修正する
③①から、口コミの広まり方や売れ方を読み、キャッチコピーの調整や製造数の検討を行う

オープンテストについては、Vol.06で詳しく説明する予定です。

今回は、クローズドテストのコツについて説明します。

クローズドテストのメンバー

クローズドテストは、まだ面白さの核を見定めている段階なので、少人数で行いましょう。作者である自分がその作品の面白さに対して確信を持てていないのに、多くの人に意見を聞いてしまうと、意見の取捨選択ができずに右往左往してしまいます。

また、クローズドテストでは作者自身がテストプレイヤーとして参加してもかまいません。自身がプレイヤーとなって感じた心の動きを観察することで、制作に活かすことができます。

テストプレイヤーの適正と見つけ方

クローズドテストのテストプレイヤーに向いている理想的な人は、以下の通りです。

【必須事項】

  • テストプレイに快く付き合ってくれる
  • ゲームが面白くなくても怒らない

【あるとより良い事項】

  • 「つまらない」など辛辣な意見も言ってくれる親しい間柄
  • ゲームを一時中断して感想や改善点について議論することになっても付き合ってくれる(むしろ楽しんでくれる)
  • 普段からボドゲでよく遊んでいて、いろいろなボドゲを知っている
  • ボドゲの制作経験がある

上記はあくまで理想なので、全て満たす必要はありません。できる範囲で、近しい人を探してみましょう。

例えば「ボドゲの経験はほとんどないが、デジタルゲームはよく遊び、辛辣な意見も言ってくれる親しい友人」などです。あるいは家族も付き合ってくれやすく、ストレートな意見をもらいやすいかもしれません。

身近に頼めそうな人がいないなら、インターネットで「テストプレイ会」を調べてみるのも手です。テストプレイ会とは、制作中のボドゲを持った人が集まり、お互いのゲームをテストプレイして感想を言い合ったり改善点について議論したりする会のことです。

テストプレイ会を探すには、Twitterで「テストプレイ会」などと検索するか、ボドゲ総合Webメディア「ボドゲーマ」などを見てみるとよいでしょう。

テストプレイヤーへの謝礼

テストプレイヤーの確保はプロの現場でも悩みの種です。テストに付き合ってくれるだけで、大変に貴重な存在です。テストプレイヤーへの感謝は忘れずに。

もう一つの悩みが、テストプレイに参加してくれたことへの謝礼です。特に同人制作のテストプレイに「時給いくら」といった計算をしだすと、全く現実的でないことになると思います。

「昼食をおごる」とか、ゲームが完成したら説明書のクレジット欄に名前を掲載する、などで引き受けてくれる親しい間柄の人が現実的に思います。もしくはテストプレイ会のボドゲ制作者なら、お互いにテストし合っている「お互いさま」の関係を築けるでしょう。

少なくとも説明書のクレジット欄への掲載は、感謝の表明としてぜひやっていただきたいです。説明書に「制作協力」などの項目を作り、テストプレイヤー全員の名前を掲載させてもらいましょう。掲載の可否や、名前の表記については本人に確認を取ってください。

クローズドテストの意見のもらい方

テストプレイの前に伝えておくこと

テストプレイヤーに、テストの目標や条件などをあらかじめ伝えておくと、ほしい意見が上がりやすくなります。具体的には、「今回はゲームの粗さには目をつぶっていただき、面白いと感じた点を中心に教えてください」といったことを伝えましょう。

他にも、状況に応じて次のことを伝えます。これらは私がテストプレイヤーだったら聞きたい情報であり、回答によって意見や伝え方を変えます。

①何個くらい売りたいのか(たくさん売るのが目的か、自分の理想のゲームを作ること自体が目的か)
②どんな人たちに遊んでもらいたいか
③箱のサイズ感、販売価格帯、販売場所(ゲムマ専売なのか、ショップにも卸すのかなど)
④現状の完成度(何回目のテストかなど)
⑤内容物について、モックの段階なので目をつぶってほしい箇所などあれば、本番ではこうなる予定、ということを合わせて説明

その後、ゲームの紹介やルール説明をして、テストプレイを開始します。

テストプレイ中に注目すべきこと

テストプレイ中はプレイヤーの表情やしぐさ、発言などに注目します。どんなシーンで楽しんでいるのか、どこで遊びづらさを感じているか、などを観察しましょう。

プレイ後に感想は聞くとしても、感想にはならない無意識で感じていることを観察で見つけ出せるケースは多いです。

また、プレイヤーの反応が起きた原因を想像したり、後で本人に質問することも大切です。これにより、どういった属性や経験のある人に、何の要素がウケたのか / ウケなかったのか、といった知見が貯まります。

意見交換

テストプレイが終わったら、テストプレイヤーにはざっくばらんに意見を聞きます。このとき、「求められていないときに言い訳をしないこと」に注意します。

ゲームに対する否定的な意見が出てくると、その場で反論したくなる気持ちはわかりますし、私もやってしまうことがあります。しかし、反論してしまうとテストプレイヤーが意見を言わなくなったり、忖度した意見しか出なくなったりしてしまいます。

テストプレイヤーが「そう感じた」のは事実なので、一旦受け止めてメモを取っておきます。

メモを取るときは、

  • 発言者
  • 状況や事実
  • 原因の仮説
  • 改善案

などに分けて書くと良いでしょう。

例えば、

「発言者:友人B」
「状況や事実:後半が盛り上がらなかった」
「原因の仮説と改善案1:とある資源の数値バランスが悪く、後半になると獲得するメリットがなくなっている?バランスを調整する」
「原因の仮説と改善案2:ゲーム最後の1ラウンドが蛇足かも。1ラウンド短いパターンをテストする」

といったことをヒアリングし、必要に応じてそう思った理由などを質問して、メモしましょう。

ついつい1つのことについて長く議論してしまいがちですが、時間は限られているので適度に切り上げるのも大事です。

その回のテストプレイヤーが感じた「状況や事実」を漏れなくメモすることが最優先です。それ以外は、テストプレイが終わった後からでも考えられます。

ヒアリングシートは有用?

事前に聞きたい項目を書いた「ヒアリングシート」を配り、テストプレイ後に書いてもらうのも一つの手です。

メリットは、話すことが苦手な方でも意見を聞き出せることです。また、チームで制作している場合、テストプレイ会に参加できなかったメンバーに雰囲気を共有するのにも役立ちます。

デメリットは、テストプレイヤーにわざわざ書いてもらう手間を強いることになるのと、ヒアリングシートに書いてもらうだけで達成感が出てしまい、制作の柔軟性やスピード感が落ちることです。

ちなみに私は何度か使ってきましたが、デメリットの方を大きく感じ、続けられていません。また、ヒアリングシートに盛り込むべき質問はケースバイケースなので、割愛します。興味がある方は各自調べてみてください。

㊙テクニック:シビアな意見を引き出す質問

作者であるあなたの心が折れないなら、テスト後にぜひ試してみてほしい質問は以下の通りです。

  • 粗いところは目をつぶるとして、面白かったですか?
  • 今すぐもう一度遊びたいですか?
  • 一晩中、遊び続けられますか?
  • 誰かにこの作品をオススメしたいですか?オススメする場合は、誰にオススメしたいですか?
  • 体験は独創的でしたか?
  • いくらなら買いますか?

テストプレイに慣れた方であっても、作者本人に面と向かって「つまらない」とは言えないものです。「良いと思います」「面白いんじゃないでしょうか」くらいのことは言ってくれると予想します。そしてそれは、別段ウソでもないでしょう。

そんなとき、シビアな感想を引き出すのが上記の質問です。これらの質問をするのは私でも怖いですが、経験上、これらに即答でポジティブな回答が返ってきた場合、そのゲームは人気作になる可能性があります。

逆に言えば、ほとんどのゲームは良い返事がないか、言い淀んだ回答が返ってくるので、「ではどこがイマイチか」「どうすれば良くなりそうか」という点を掘り下げて、議論すると良いでしょう。

理想を言えば、上記が「即ポジティブ回答」になるまで改善とテストを繰り返すのが、クローズドテストの目的とも言えます。

なお、想像以上に辛辣な答えが返ってきて心が折れそうになった場合、ほどほどのところで開き直って次のステップに進みましょう。

Vol.01:企画編で書いたように、「とにかくいったん完成させて、販売してみよう!」が合言葉です。万人が面白く思う完璧なゲームはあり得ません。「どんなゲームでも誰かしら、気に入ってくれる人はいる」というマインドで先に進めることも重要です。

「完成・販売が最優先」を忘れずに!

モック作りやテストプレイは面倒な工程も多く、辛辣な意見を受けて挫けそうになるかもしれません。

ただし、「完成させて販売した経験」を積むことで、どのくらいモックに凝ればいいのか、どの意見を聞いて、どの意見は聞き流していいのか、ゲームを制作する度に、段々わかってくると思います。

そうして、いずれは脳内で1人回しができるようになったり、1人回しの段階でゲームルールのどこが調整の肝なのか目星がつくようになったり、調整にかかる時間の予想がつくようになったりするものです。だんだんと慣れて、早く・楽に進められるようになるので、頑張ってみてください。

さまざまなアドバイスを書きましたが、億劫になり挫折してしまうのが一番避けたいことです。繰り返しになりますが「とにかくいったん完成させて、販売してみよう!」が合言葉です。不十分でもいいので、制作を進めていきましょう!

本連載のVol.03は、これにて終了です。少しでもお役に立てば幸いです。

本連載は全7回を予定しています(予定は随時変更される可能性があります)。

Vol.01:企画編
Vol.02:ゲームの着想7つ道具
Vol.03:モックアップ制作、クローズドテスト編(今回の記事)
Vol.04:ルール調整編
Vol.05:イラスト&グラフィック、印刷編
Vol.06:説明書、オープンテスト、宣伝編
番外編:ゲームマーケット出展申し込み編

引き続き、本連載をよろしくお願いいたします!

アークライトゲームズ 公式サイト株式会社アークライト 公式サイトゲームマーケット 公式サイト
野澤 邦仁(のざわ くにひと)

1987年生まれ。デジタルゲームのプランナーやボードゲームショップの店員を経て、2015年に株式会社アークライトに入社。ボードゲーム編集者として70作以上に携わる傍ら、ゲームマーケットの企画も一部担当。2022年より制作責任者(編集長)に就任。

ボードゲームの代表作は、『ito』シリーズ、「Kaiju on the Earth」シリーズ(『ボルカルス』『ゴジラ』など)、『タイガー&ドラゴン』、『タイムボム』、『未来逆算思考』など。

【主な受賞歴】

  • 日本ゲーム大賞2010 アマチュア部門 大賞『SAND CRUSH』(レベルデザイン)
  • 第15回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 優秀賞『アナグラのうた~消えた博士と残された装置~』(プロジェクトマネジメント)
  • Makuake Of The Year 2020 受賞『ボルカルス』(シリーズ共同企画、プロデュース、編集)
  • Makuake Of The Year 2021 受賞『ユグドラサス』(シリーズ共同企画、プロデュース、編集)
  • ゴールデンボックス ボードゲームアワード2022 ゲームデザイン部門 ノミネート&ルールブック部門賞 受賞『ゴジラ』(シリーズ共同企画、プロデュース、編集)

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