2023年7月14日(木)から16日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催された『BitSummit Let’s Go!!』。今回は、通常のゲームコントローラーではなく独自に制作したコントローラーを使用したゲームが集まった「make.ctrl.Japan」ブースについて、独特なプレイ感のゲームとともにそれらを生み出したコントローラーの中身も紹介します。
TEXT / 田端 秀輝
目次
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1.
make.ctrl.Japanとは
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2.
『激走!コインラン!』ハードウェアとか研究所
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3.
『軍手&ピース』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS
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4.
『Jet Cola』Tamakotronica(タマコトロニカ)
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5.
『BearRunner Any% RTA』しゅんて
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6.
『MarbleTower on 人工大理石透過型LEDタッチディスプレイ』京都産業大学・情報理工学部・平#研&蚊野研
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7.
『キューブでポン!』愛知工業大学CGメディア研究室
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8.
『チョークの叛乱』のへもん ・ Kenji Okuda
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9.
『みんなでもぐらたたかれ』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS
make.ctrl.Japanとは
「make.ctrl.Japan」は、通常のゲームコントローラーではなく独自に制作したコントローラーを使用したゲームを展示する企画です。アメリカ・サンフランシスコで開催されるGame Developers Conference(GDC)でのイベント「alt.ctrl.GDC」をモデルに、日本で開催されています。これまでに5回開催されており、アーカイブはこちらで見ることができます。
それでは、今回の出展タイトルを見ていきましょう。
『激走!コインラン!』ハードウェアとか研究所
穴や障害物をジャンプで超えていくランゲーム…なのですが、このタイトルのユニークなのは、ゲームコントローラーのボタンを押すのではなく、コインをコイン投入機の中に入れることでキャラクターをジャンプさせるというところ。
コントローラーのボタンを押してジャンプさせるのと、コインを投入してジャンプさせるのとでは、「ジャンプさせよう」と考えてから実際にジャンプするまでのタイミングが異なるので、その違和感が難しくもあり、楽しくもありました。
最初に4枚のコインが渡されるのですが、ゲーム中でジャンプをしてコインを取ると実際にコインが吐き出されるので、このコインを使ってゲームを継続させることも可能です。
なお、筆者が体験したときは吐き出されるコインの勢いが強すぎて床に落ちることもあり、それを屈んで取るというアクションも発生。意図せざるところで身体全体を使って遊ぶゲームになっていました。
『軍手&ピース』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS
なぜか軍手が道に落ちてること、ありますよね。この『軍手&ピース』は、トラックから落とされる軍手を回収して、街を綺麗にしていくゲームです。
コントローラーはターンテーブルの上に置かれた軍手で、ターンテーブルを回すと画面内の照準が動き、画面内の軍手にあったところでコントローラーの軍手の指の部分を押すと、画面内の軍手の指が折れたり伸びたりします。画面内の軍手の人差し指と中指が伸びそのほかが折れた状態、つまりピースサインの状態になると軍手を回収することができます。
もともとはゲームジャムで開発されたマウスクリックで操作するFlashゲームが、このたび軍手コントローラと合体。ハード制御はArduinoで、軍手や回転テーブル、台などのパーツは100円ショップで購入したものだそうです。
『軍手&ピース』作品ページ『Jet Cola』Tamakotronica(タマコトロニカ)
コーラの瓶型のコントローラーを8秒間振って振って振り続け、振ったコーラの泡の勢いで瓶を宇宙に打ち上げ、その高度を競うゲームです。
コーラ瓶を模したコントローラーを振るとカラカラ音がするので、楽しくなって振る手にも力が入ります。でも8秒は思ったよりも長いんです!6秒あたりから「そろそろ終わって」と振る力も意気込みも弱くなっていきました。
Tamakotronicaの千田 泰宏氏にコーラの瓶コントローラーを開けてもらったところ、中にはアーケードゲームの筐体で使われるボタンが入っていました。そしてボタンの上には50円玉3枚が入っており、ボタンが押される時間を取って瓶の振り具合を計測しているそうです。試行錯誤の末、このボタンと50円玉3枚という組み合わせが一番コーラを振っている感が出たとのこと。さらに中にビーズも入れ、振ると音がでるようにしてより臨場感がでるようにしたそうです。
『Jet Cola』作品ページ『BearRunner Any% RTA』しゅんて
一見したところランゲームなのですが、進むのに時間がかかりそうな障害物や穴があった時に、ゲーム機本体型のコントローラーに刺さったゲームカセットに衝撃を与えてグリッチ(バグ)を発生させそれを利用して最速クリアを目指す、Any%(なんでもあり)レギュレーションのRTA(リアルタイムアタック)体験ゲームです。
コントローラーとはいえゲームカセットを叩くのは最初は抵抗があるのですが、それなりに強く叩かないと反応しないので慣れたらバンバン叩いていました。
タイトル画面から先に進むのも、オープニングをスキップするバグ技もカセットを叩いて行う。開発したしゅんて氏に伺ったところ、オリジナルは「Unity1週間ゲームジャム」で開発したタイトルで、それに専用コントローラーを加えたものが本作だという
とはいえ、連続して叩きすぎると操作不能バグになるのでご注意を。連打による操作不能バグを回避して、それでいて適切なタイミングでグリッチを起こすのかが攻略のカギです。
『BearRunner Any% RTA』作品ページ『MarbleTower on 人工大理石透過型LEDタッチディスプレイ』京都産業大学・情報理工学部・平#研&蚊野研
コントローラーである人工大理石の上を指でなぞると、接触した部分が光り、その軌跡と同じ形のブロックがモニターの中にも生成されます。ブロックを上空からどんどん落としていき、いかに台の外に落とさないか競うゲームです。
こちらは、京都産業大学 情報理工学部の平#研究室の人工大理石透過型LEDタッチディスプレイという研究の応用例です。人工大理石の光を透過するという性質を利用し、人工大理石の下に配置した赤外線LEDの発光・受光によるタッチのセンシング機能と、LEDの発光によるディスプレイ機能を同時に実現しています。
『MarbleTower on 人工大理石透過型LEDタッチディスプレイ』作品ページ『キューブでポン!』愛知工業大学CGメディア研究室
通常のルービックキューブのルールは面を同じ色で揃えるというものですが、こちらのゲームは画面に表示された通りの絵柄にするのが目的です。
台の上にルービックキューブを置くと、台の上部にあるカメラによって正誤判定が行われます。9つのマスのうちの1マスだけでも判定をしてくれるので、簡単にできるところだけ揃えて少しずつ判定に持ち込むことができます(一気にまとめて判定したほうが点数は高くなる)。
開発を行った柴田 悠仁氏に話を伺ったところ、ルービックキューブが苦手な人にとっては一面を同じ色で揃えるだけでも大変なので、同じ色で揃えるという以外の遊び方でも楽しめる方法はないかと思い、本作を開発したそうです。
ハードについて、カメラで撮られた映像はOpenCVで画像処理を行い、正誤判定を行っているとのことです。また、制限時間を追加する、カメラに手などを映しても認識されないよう閾値を設定するなど、ゲーム面、ハード面ともに出展ごとに進化させているそうです。
『キューブでポン!』作品ページ『チョークの叛乱』のへもん ・ Kenji Okuda
画面の中で描かれるチョーク達の攻撃を、両手に持った黒板消しをタイミングよく叩いて跳ね返すというゲームです。
モニター前にある黒板を黒板消しで拭けばライフ回復、右にあるクリーナーで黒板消しを綺麗にすれば攻撃がパワーアップします。
開発した のへもん氏にゲーム部分はUnityで組まれています。クリーナーの実装や黒板を消す際に画面が揺れる演出など、出展をするたびにバージョンアップしているそうです。
また、各コントローラーの中身も見せてもらいました。黒板消しを叩く動きはジャイロセンサー、黒板を消す動きや黒板消しをクリーナーの上できれいにする動きは磁力計で取っているそうです。
『みんなでもぐらたたかれ』Wataru Nakano × MIYAZAWORKS
こちらは、BitSummitの翌日にホテル アンテルーム 京都で開催されたイベント「art bit Summer fest. – ホモルーデンスの夏休み、夏の夜の夢 –」にて展示されていたタイトルです。
通常のもぐらたたきは、穴からでてくるもぐらをプレイヤーがハンマーで上から叩くものですが、『みんなでもぐらたたかれ』はプレイヤーが穴の中にいて、モニターの中のハンマーに叩かれないように頭を出したり隠れたりするゲームです。
穴の縁にセンサーがあり、頭を出しているのを検知するとその時間に応じて得点が入り、モニターの中でハンマーで叩かれるタイミングで頭を出していたら0点になってしまいます。
ゲームマーケット2023春でのmake.ctrl.Japan5でも出展されていましたが、BitSummit会場ではブースが狭く本タイトルが展開できないため、こちらの会場での出展になったとのことです。
『みんなでもぐらたたかれ』作品ページここまで8タイトルを紹介しましたが、「独自に制作したコントローラーを使用したゲーム」と言っても、ひたすらに体力を使うゲーム、スピードとともに思考も必要なゲーム、普段のボタン操作のゲームとは異なる動きやタイミングが求められるゲームなど、バラエティに富んでいました。それでいて共通していたのは、ゲームコントローラー以上に感じられる「ゲームの世界が隣にある」という感触であり、「make.ctrl.Japan」の展示ならではの体験をすることができました。
「make.ctrl.Japan」公式サイトBitSummit Let's Go!!公式サイト「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。
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