2023年7月14日(金)から16日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された『BitSummit Let’s Go!!』。今回取り上げるのは学生チーム「SyncMan3D」が開発する3Dパズルゲーム『Synchronity(シンクロニティ)』。ゲーム内容に加え、開発チームに聞いた自作エンジンを調整して使用しているフルスクラッチの開発環境や、パズルゲーム制作の難しさを紹介します。
TEXT / ハル飯田
明快なルール、しかして難解なパズル
数字の描かれた2色のブロックを動かし、小さい数字を大きな数字へ合体させていく。そんなシンプルなルールに従ってステージクリアを目指すパズルゲームが『Synchronity』です。
同色のブロックは最も小さな数字のブロックに連動するので、合体させたい相手ブロックを壁に押し付けるなど上手く位置を固定させる工夫が必要です。ステージが進めばワープギミックや立体的な構造が登場し、よりパズルは複雑化。ワープの出入り口が同じ色で光るなど、視覚的に分かりやすいデザインには工夫が感じられます。
段々と一度に動かすブロックの数が増えていくこともあって、連動を全て予測して動かすのは至難の業。Undo機能やリセットを駆使しつつ、カメラをぐるぐると回せば全体を眺め、ああでもないこうでもないと腰を据えて考えたくなるタイプのパズルに仕上がっています。
見えているブロック同士を合体させる操作にどうやっても辿り着けない「歯がゆさ」もまたこうしたパズルゲームの醍醐味であり、同期によって合体させたいブロックが逃げているようにも感じられるのも悔しくて面白いポイント。体験ブースでも首をひねりながら考え込んでしまう人の姿が多数見られました。
専用エディタを開発しステージ考案に活用
『Synchronity』を開発したのは日本工学院専門学校ゲームクリエイター科の学生4名によるチーム「SyncMan3D」。なんとゲームエンジンもアセットも全て自作のフルスクラッチ開発によって本作は生み出されています。
元々は箱庭タイプのゲームを作ろうというアイデアだったところを応用して生まれたのが見下ろし型のパズルゲームであり、プログラマーとステージデザイン、プランナーとアセット制作のように4人がそれぞれ複数の役割を担いながら開発を進め、取材時点で30ものステージが実装。序盤はチュートリアル的な内容とは言えかなりのボリュームです。
イメージで攻略するのは難解なシステムとあって、ステージのアイデアを固めるのもまたイメージだけでは非常に困難。そのためにチームはあらゆる構造のステージを作成&シミュレーションし、完成すればそのままゲームへと実装できる『Synchronity』専用エディタを作成し、効率的な開発に繋げています。
ただ、それだけ自在な開発環境があっても「1つ初期配置が違うだけで難易度が大きく変わってしまう」と、パズルゲームの難易度調整におけるデリケートさも感じているそうです。
必要以上に細かな説明を行わないシンプルさを重視した画面構成になっていることもあり“どのようにユーザーを誘導していくか”を更に改善できるポイントに挙げた一方で、ゲームにトライする来場者の反響からは「意外と大人が苦戦して小さなお子さんがアッサリとクリアしてしまうこともあるので、柔軟な発想が大事ですね」と、分析されていました。
『BitSummit Let’s Go!!』には同校の学生が開発した作品が4タイトルも出展され、それぞれ異なるアピールポイントを発揮していました。中でも本作は文字情報は数字のみかつ1ステージ見れば理解できるルールとあって、外国からの来場者も熱中。国境を越えて来場者を楽しませる作品として大いに注目を集めていました。
日本工学院ゲームクリエイター科(蒲田校)Twitter『BitSummit Let’s Go!!』公式サイト大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。
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