画面の「回転」を駆使する「シュレディンガーシステム」が特徴の3DパズルRPG『CASSETTE BOY』、Web制作会社の社長が一人で開発中【BitSummit Let’s Go!!】

2023.07.18
注目記事イベントレポートBitSummit2023
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

2023年7月14日(金)から16日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された『BitSummit Let’s Go!!』。展示されたゲームの中から、今回はワンダーランドカザキリが開発する3DパズルRPG『CASSETTE BOY(カセットボーイ)』を紹介するとともに、同作品の開発者 Honda Kiyoshi氏に開発のいきさつや裏側を伺いました。

TEXT / 藤縄 優佑

目次

画面に写らないオブジェクトは存在しない「シュレディンガーシステム」を駆使して謎を解く

『CASSETTE BOY』は、初代ゲームボーイの緑がかった画面を想起させる見た目と、「シュレディンガーシステム」なる独特なシステムが特徴の3DパズルRPG。2024年リリースを目指して、Steam/Nintendo Switch/PlayStation 5向けに開発されています。

『CASSETTE BOY』は、アクションと謎解きの要素が強めのゲーム。会場ではSteam Deckでの試遊も可能だった

筆者が本作を紹介しようと思ったきっかけは、3Dのゲームであればたいてい搭載されている画面を回転させて視点を切り替える機能を、ゲームの核として据えている新鮮さに衝撃を受けたため。このゲームでは、画面に写っているオブジェクトのみが存在し、画面に写らないものは存在しないことになるシュレディンガーシステムを各所で利用することになります。

例えば、キャラクターが通路をふさいでいても、画面に写らないような位置までカメラを回転させてしまえば通行可能に。ボスでさえもシュレディンガーシステムの影響を受けるため、ボスを壁に隠れるような位置に誘導すれば、その間ボスは存在しません。ただ、これではボスをやっつけたことにはならず、ボスが画面に写りこめば活動を再開します。ボスが動けない・存在しない間に背後に回るポジション取りなどに活用できます。

ボスの姿をすっぽりと壁に隠してしまえば、ボスの存在はなかったことになる

2023年4月に開催されたインディーゲーム展示・即売会「Indie Games Connect 2023」にて初出展された本作は、『BitSummit Let’s Go!!』では画面をぐるぐる回転させ続けると、応じて反応するギミックを新たに搭載していました。今後も、頭も画面もフル回転させる謎解きが増えていきそうな作品です。

独学&一人でマルチプラットフォーム展開を果たしてきた

開発者のHonda Kiyoshi氏

本作を開発しているのは、「ワンダーランドカザキリ」の代表取締役 Honda Kiyoshi氏。同社は、これまでに『ダンジョンに捧ぐ墓標』『BQM – ブロッククエスト・メーカー』などをSteamやAndroid/iOS向けだけでなく、Nintendo Switch/PlayStation/Xboxでもリリースしてきました。また、冒頭でお伝えした通り、開発中の『CASSETTE BOY』はSteam/Nintendo Switch/PlayStation 5向けにリリース予定です。

マルチプラットフォーム展開をしているのなら開発スタッフも多そうに思えますが、開発者はHonda氏のみ。同社はWebサイトのデザインやシステムの制作を主に担う会社であり、ゲームを開発できる人がいないのです。テストプレイやネットワーク周り、出版物のデザインなどで手伝ってもらうことはあるものの、メイン開発だけでなくプラットフォーム展開もHonda氏一人でこなしています。

「外から見ると多言語展開から複数のプラットフォーム展開までやっている、体制の整った会社に見えるかもしれません。そのせいかパブリッシャーさんからお誘いいただくことがあまりないのですが、ぜひサポートしていただけたらなぁ……と思っています(笑)」(Honda氏)

Honda氏はゲーム業界に身を置いた経験もなく、すべて独学で開発しています。2011年頃にハンコを押しまくるカジュアルゲーム『田中部長』をiOS向けにリリースし、100万ダウンロードを突破したことでゲーム事業を含んだ法人化に踏み切ったと言います。

今の開発環境はUnity。「座学などは苦手で、作りたいものを開発してみて、詰まるたびに調べるスタンスで進めています。その場その場で勉強するほうが身になる気がしています」(Honda氏)。

2Dドット絵風な3Dのビジュアルも目を引く『CASSETTE BOY』ですが、同氏は元々3D CGデザイナーであり、画作りは得意分野だとしています。同作はメインビジュアルを最初に固めて、面白いゲームが作れそうだと確信を得てから本格的に開発することにしたのだと、Honda氏は話していました。

「基礎的な部分の実装は終わっているので、ストーリーやレベルデザイン、ステージ数を増やすといったことに注力していこうかと思います。これまでは前作のプラットフォーム移植などで時間を使っていましたが無事完了したため、これからは『CASSETTE BOY』に集中して開発します!」と、Honda氏は力強くコメントしていました。

関連記事
「BitSummit Let’s Go!!」編集部員が注目した作品を紹介!ゲームメーカーズ(勝手に)セレクション
2023.07.15
公式サイト https://cb.blk-quest.com/
販売サイト(ストアページ) https://store.steampowered.com/app/2334330/CASSETTE_BOY/
リリース時期 2024年(予定)
「ワンダーランドカザキリ」Twitter『BitSummit Let’s Go!!』公式サイト
藤縄 優佑

編集プロダクション「浦辺制作所」に所属。ITやゲームにかかわる書籍・Webメディアにおいて、執筆と編集を担当している。ゲーム全般が下手だけど好き。

合同会社浦辺制作所 公式HP

関連記事

『BitSummit Let’s Go!!』の総来場者数、BitSummit史上最高の23,789人を記録。来年は7/19(金)~7/21(日)に開催を予定
2023.07.25
叩きこむ!振りまわす!変わったコントローラーの気になる中身も見せちゃいます。「make.ctrl.Japan」ブース【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
長考続出!?フルスクラッチ開発の3Dパズル『Synchronity』は専用エディタも完備の意欲作【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
『BitSummit Let’s Go!!』アワード受賞作品が発表。エレキギターを操る横スクロールアクション『Death the Guitar』が大賞に輝く
2023.07.19
アルゼンチンと東京の超長距離リモート開発。スマホ展開も見据えた対戦ゲーム『MonstaBox(モンスタボックス)』【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.19
学生クリエイターによる「BitSummit Game Jam」集大成!実展示からピックアップ作品を紹介【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.17

注目記事ランキング

2024.11.14 - 2024.11.21
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

フォワードシェーディング(Forward Shading)
フォワードシェーディング オブジェクト毎にライティングの計算を行い、その計算結果を描画するレンダリング手法。フォワードレンダリングともいう。ディファードシェーディング(Deferred Shading)に比べてポストプロセスの自由度は低いが、(何も物を配置しなかった際にかかる)最低限の描画コストが低く、アンチエイリアス処理などにおいてフォワードシェーディングの方が有効な分野も存在する。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!