ジャズと人生がテーマ。売れないピアニストの生き様を追体験する『Blue Wednesday』【BitSummit Let’s Go!!】

2023.07.16
注目記事イベントレポートBitSummit2023
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

2023年7月14日(木)から16日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催されたBitSummit Let’s Go!!展示されたゲームの中から、今回は「Buff Studio」が開発するストーリーアドベンチャーゲーム『Blue Wednesday』を紹介します。

TEXT / 神山 大輝

目次

ジャズピアニスト「モーリス」の人生を追体験する

Blue Wednesday Official Trailer

『Blue Wednesday』は、売れないジャズピアニスト「モーリス」を操作し、個性的なNPCと会話やミニゲームを繰り広げながらストーリーを進めていくアドベンチャーゲーム。

朝目が覚めて、少しだけピアノを弾いて、ボロボロの風呂場で身支度をし、いつものようにバイト先のスーパーマーケットへ。バスはストライキで走っておらず、道を歩く中でさまざまな登場人物と取り止めのない話をし、アルバイトには遅刻。退屈な仕事をし、もちろん翌日も遅刻をしてクビになり、最後のチャンスとして別の街にあるジャズバーのオーディションに応募する……。

本作はミニゲームを通じてジャズピアニストの人生を追体験していくゲームとなっており、ピアノの演奏は上からノーツが降ってくる音ゲーとして、「退屈な仕事」であるレジ打ちはタイミングよくボタンを押していくだけ、品出しは指定された位置に飲み物を移動させるだけの「退屈な」ミニゲームとして表現されています

シンプルなミニゲームを通じてストーリーを進めていくスタイルは『Florence』の影響を感じますが、本作は街の探索やNPCとの対話も重要であり、彼らとの関係が深まると楽譜やレア音源が貰えるなどコンプリート要素もあります。

基本的にはストーリードリブンなゲームですが、NPCとの対話を通じて世界の解像度を高め、細かく挿入されるミニゲームによって体験を自分ごとに落とし込む工夫が施されているように感じました。街や通りの名前もジャズミュージシャンが由来で、ところどころに映画や小説の小ネタやパロディも含まれています。

街にはたくさんの人物が住んでおり、彼らにもそれぞれサブストーリーが設定されている。ローカライズは完璧でない印象だが、会話内容がウィットに富んでいるのも面白い

日常の退屈さを表す無機質なミニゲームがあるからこそ、スーパーの帰り道、ネオンとして浮かび上がる「空想上のバックバンド」と共演する音楽的な演出とのコントラストが強烈に際立ちます

次々と登場するギターやアルトサックスなどの楽器ごとに小さなミニゲームが存在し、成功すると各パートがアドリブソロを取っていくようなインタラクティブミュージックの設計となっており、このシーンだけでも体験版をプレイする価値があるように感じました。

才能あふれるジャズ好きによる小規模開発

本作を制作したのは『7Days! : ストーリーを決める』や『マイオアシス』などスマートフォン向けのタイトルを開発してきたBUFF STUDIO(韓国)。プロジェクト初期はUnityエンジニア、デザイナー、コンポーザー兼プランナーという3名のコアメンバーで開発を行っており、現在は6名で開発を行っているとのこと。

特徴的なのは企画と作曲者が同一人物であることで、主人公の葛藤とピアノのピッチのズレ、ピアノを弾きながらバックバンドを想像し、ネオンのように浮かび上がるアコースティックベースなどのグラフィックスと合わさるように追加されるトラックなど、キャラクターの心情表現としての音楽演出が多く見られました。なお、ミドルウェアとしてはFMODが用いられています。

今回の体験版はオーディションが終わるところで終了しましたが、この後もプレイ全体を通して25種類ほどのミニゲームが存在するとのこと。特徴的なアートワークは全て2Dで表現されています。

電車に乗って別の街へ。これまでの風景とは対照的なネオン街が不安・緊張の感情を煽る

本作の開発はほぼ完了しており、2023年8月28日発売に向けて最終的なブラッシュアップを行っている段階。Steamページも公開されており、BitSummitでの展示内容と同じ体験版も配布されています。

公式サイト 未定
販売サイト(ストアページ) https://store.steampowered.com/app/2129160/Blue_Wednesday/
リリース時期 2023年8月28日
『Blue Wednesday』SteamページBitSummit Let's Go!!公式サイト
神山 大輝

ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビュー作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。

ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。

関連記事

『BitSummit Let’s Go!!』の総来場者数、BitSummit史上最高の23,789人を記録。来年は7/19(金)~7/21(日)に開催を予定
2023.07.25
叩きこむ!振りまわす!変わったコントローラーの気になる中身も見せちゃいます。「make.ctrl.Japan」ブース【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
長考続出!?フルスクラッチ開発の3Dパズル『Synchronity』は専用エディタも完備の意欲作【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.20
『BitSummit Let’s Go!!』アワード受賞作品が発表。エレキギターを操る横スクロールアクション『Death the Guitar』が大賞に輝く
2023.07.19
アルゼンチンと東京の超長距離リモート開発。スマホ展開も見据えた対戦ゲーム『MonstaBox(モンスタボックス)』【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.19
画面の「回転」を駆使する「シュレディンガーシステム」が特徴の3DパズルRPG『CASSETTE BOY』、Web制作会社の社長が一人で開発中【BitSummit Let’s Go!!】
2023.07.18

注目記事ランキング

2024.11.14 - 2024.11.21
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

フォワードシェーディング(Forward Shading)
フォワードシェーディング オブジェクト毎にライティングの計算を行い、その計算結果を描画するレンダリング手法。フォワードレンダリングともいう。ディファードシェーディング(Deferred Shading)に比べてポストプロセスの自由度は低いが、(何も物を配置しなかった際にかかる)最低限の描画コストが低く、アンチエイリアス処理などにおいてフォワードシェーディングの方が有効な分野も存在する。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!