UEと『フォートナイト』を通したエコシステムの発展
講演の冒頭、Tim氏は、アンリアルエンジンと『フォートナイト』を活用したIP展開の事例として、セガの「ソニック」シリーズを紹介しました。
セガは『ソニックレーシング クロスワールド』をUnreal Engine 5(以下、UE5)を用いて開発。また、『フォートナイト』ではコラボレーションによりソニックがコスチュームとして登場しました。
Tim氏は、ソニックのように、IPを単一のゲーム内にとどめず、プレイヤーが集まる多様なプラットフォームへと届けることこそが、Epic Gamesの目指す未来だと説明しました。
続いて、個人開発者 レモリオン氏とはがねいろ氏が開発するUE5製タイトル『めっちゃカメレオン』を紹介。『フォートナイト』向け開発ツール「Unreal Editor for Fortnite(以下、UEFN)」で経験を積んだ両氏が、スタンドアロンのゲーム開発へと移行し成功した事例として取り上げました。
「既存のIPが『フォートナイト』に参入する」、「UEFNで経験を積んだ開発者がSteamや家庭用ゲーム機向けのタイトルを作る」といった双方向の動きが、UEを基盤としたエコシステムの広がりを象徴しているとTim氏は述べました。
UEFNで少人数チームの大規模運営を支援。開発者への支払いは累計10億ドル超
UEFNで制作した『フォートナイト』向けのゲームは、同作が対応するPC・家庭用ゲーム機・モバイルなどで配信できます。プラットフォームごとのビルドや決済、サーバーなどの運営基盤もEpic Games側が担うため、開発者の負担を大幅に抑えられます。
実例として紹介された『Steal the Brainrot』は、わずか7人のチームが制作・運営するタイトルながら、ピーク時の月間アクティブユーザー数(MAU)は450万人、同時接続プレイヤー数は110万人規模に達しています。
UEFNを通した収益化の仕組みとして、プレイヤーのエンゲージメントに応じて分配される「エンゲージメント配当」と、島内でアイテムを直接販売する「島内トランザクション」の2種類が提供されています。UEFNのローンチ以降、Epic Gamesから開発者への支払総額は累計10億ドルを突破したとのこと。
さらに、パートナーIPの利用条件に同意することで、『スター・ウォーズ』や「レゴ」などを題材としたゲームを制作できる仕組みも提供されています。
UEFNで利用できるパートナーIP。各IPに関連するアセットを使ったゲームを制作できる
UE6は2027年末のアーリーアクセスからBPを廃止。AI活用を前提にVerseとScene Graphへ移行
続いてTim氏は、2027年末にアーリーアクセス開始が予定されているUnreal Engine 6(以下、UE6)の構想を語りました、UE6は、UE5の機能と『フォートナイト』のエコシステムを融合させた、次世代のゲームエンジンとして位置づけられています。
制作したゲームを各プラットフォーム向けに配信できると同時に、『フォートナイト』やUE6で作られるほかのUGCゲームにも展開できるようにすることを目指しているとのこと。
そのために、タイトルやエンジン、制作ツールの間でコードやコンテンツを移動しやすくする相互運用性が重要だとTim氏は語ります。glTFやUSDといった業界標準フォーマットを積極的に活用するほか、標準規格が存在しない領域については、Epic Gamesが定めた仕様を他社も利用できるようオープンに公開していく方針が示されました。
UE6では、ゲームロジックの実装にブループリントではなく独自のプログラミング言語「Verse」を使用します。
Tim氏は、UE6のゲームプレイAPIとあわせて、プロジェクト間でコードやコンテンツを共有しやすくすることを目指してVerseを設計していると述べました。
あわせて、UE6ではシーンの構築基盤がアクタやコンポーネントから「Scene Graph」へ移行。
Scene Graphでは、従来のアクタを中心とする構成とは異なり、「Entity」を基本単位として、そこにデータや振る舞いを定義する「Component」を組み合わせ、シーンやゲームプレイを構築します。
UE6では、Scene Graphがゲームプレイやシミュレーション、ネットワーク、物理演算などを包括的に扱います。
Scene Graphを使ったオブジェクトの構成例。EntityとComponentの階層構造になっている
社内でのAI活用が進み、生産性は最大4倍に
Verseへの移行を強く後押ししているのが、AIを活用した開発スタイルの変化です。同社では、プログラミング、デバッグ、レベルデザインなどの領域において、AIの導入により生産性が1.5倍〜4倍になったとTim氏は言います。
同社では、開発パイプラインをAI活用を前提とした形へと再構築しているとのことです。2026年末までにプログラミングからコンテンツ制作に至るまで少なくとも4倍の生産性向上を目指しており、2027年半ばには多くの領域で10倍もの改善が見込まれるとしています。
開発者に対しては、MCPサーバーやPythonのスクリプティングインターフェースを介して、任意のAIモデルをUEへ柔軟に接続できる環境を整えるとのこと。Tim氏は、Epic Games自身が最先端のAIモデルを開発・販売することは目的とせず、AIモデルを提供する各社と協力しながら、ゲーム開発における実用性を高めていくと説明しました。
BPはUE6のアーリーアクセス版から廃止へ。AIでVerseへの移行を支援
UE6の発表当初は、アクタやBPを非推奨としつつ段階的に廃止していく方針でしたが、こうしたAI活用の成果を受け、Tim氏はUE5からUE6への移行戦略を変更。ゲームプレイの実装をVerseへと集約し、UE6のアーリーアクセス時から全面的にBPを廃止する方針となりました。
具体的には、アクタやブループリント、従来のC++で書かれたGameplay Frameworkが廃止されます。UE6では、新たな構成としてScene GraphやVerseによるプログラミング、Verse用の「Gameplay API」、MCPとPythonを使った実装が標準となります。
UE6においてもレンダリングや物理演算といったエンジンの低レイヤー基盤では引き続きC++を使用する一方、ゲームプレイのフレームワークはVerseへと移行します。
Tim氏は世界中の多くの開発者がBPを愛用していることに触れ、廃止の決断について謝罪の言葉を述べました。それでもなお、次世代の開発環境に注力することが、今後の制作効率を飛躍的に改善するうえで不可欠だと判断したと言います。
既存プロジェクトのUE6移行にあたっては、AIを用いた変換支援ツールが提供される予定です。同社ではBPやC++の実装をVerseへと変換する仕組みを検証しており、すでに『フォートナイト』の現場では、数千にのぼるBPと残存するC++のゲームプレイコードの移行を進めているそうです。
UE5.9はプレビュー版が講演翌週に公開予定。AIを使ったワークフローが改善
続いて登壇した河﨑氏より、アンリアルエンジンの最新バージョン「Unreal Engine 5.9」が翌週にプレビュー版を公開予定であることが発表されました。
UE5.9では、AIを活用したワークフローの改善やWebプラットフォームへの対応、レンダリングおよびアニメーション機能のアップデートなどが予定されています。
最後に河﨑氏は、UE6に関心を持つ開発者に向けて、まずはUEFN上でVerseやScene Graphといった基盤技術に触れてみてほしいと呼びかけました。
日本語の学習リソースや教育コンテンツの拡充、ゲームジャムの開催、技術サポートなどを通じて、国内のクリエイターによるUE6の導入を全力で支えていくとし、基調講演を締めくくりました。
「Unreal Fest Tokyo 2026」公式サイト