【インタビュー】モバイルグラフィックス最新事情2026──24時間ライティングからHLSL単体テストまで、サイバーエージェントに聞く“画作りの限界”の越え方

【インタビュー】モバイルグラフィックス最新事情2026──24時間ライティングからHLSL単体テストまで、サイバーエージェントに聞く“画作りの限界”の越え方

2026.11.02 [PR]
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モバイルゲームのグラフィックス品質がますます進歩するなか、アーティストと協業しながら高度なグラフィックス基盤を作る「グラフィックスエンジニア」の仕事もまた注目度が高まっています。

本記事では、サイバーエージェントの子会社群で構成される「ゲーム・エンタメ事業部(SGE)」のグラフィックスエンジニア3名に、最先端の現場で求められる表現や、会社・プロジェクトを横断するノウハウ共有による開発効率化など、近年のモバイル開発トレンドをお聞きします。

聞き手・執筆 / 神山大輝

目次

サイバーエージェントでは、グラフィックスエンジニアを募集しています。社会人として既に就業している方に向けた新卒採用の選考も行っております。

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会社が違っても、開発技術はすべて共有。みんな揃って効率化

──自己紹介と、現在の仕事内容を教えてください。

Colorful Palette 大河原 壱成氏(以下、大河原):2022年に新卒でサイバーエージェントに入社した大河原です。現在はColorful Palette(以下、カラパレ)のクライアントエンジニアとしてグラフィックスを担当しています。

入社後は『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の3DMV開発に携わりました。アートディレクターと協力しながら、各MVの演出要望に対して、シェーダー開発やレンダリングパイプラインの改造、Unity Timelineの改修などを行っていました。現在は新規プロジェクトで、描画基盤を中心に開発を担当しています。

QualiArts 中野 悠以氏(以下、中野):2024年に新卒入社した、QualiArts TA室所属の中野と申します。現在はライティング・背景・エフェクト表現の開発に加え、描画基盤のパフォーマンス周りの実装を担当しています。

もともと学生時代からゲーム制作は行っていましたが、当時からモーションをJSON形式で扱うシリアライズ機構を作ったり、Unityライクなエディター画面を作ってGPUパーティクルシステムを自作したりと、どちらかと言うと「ゲームを作るためのツール」に興味を持っていました。

サイバーエージェント 佐久間 尚輝氏(以下、佐久間):この中では私だけ中途入社ですね。昨年11月にサイバーエージェントに合流し、現在は「SGEコア技術本部」(以下、コアテク)という横断組織に所属する佐久間と申します。

以前はモバイルゲームのクライアントエンジニアとして働いており、前職では技術領域の横断組織の立ち上げをリードしていました。今日はよろしくお願いします。

左から、大河原氏、佐久間氏、中野氏

──カラパレやQualiArtsなど、ゲーム・エンタメ事業部には複数の子会社が所属していますが、横断組織であるコアテクは、どういった位置付けですか?

佐久間:コアテクはゲーム・エンタメ事業部の技術横断組織で、子会社で共通して使えるツールや基盤の開発、ノウハウの蓄積などを行っている部署です。

「Sirius(シリウス)」と呼ばれる、Unityをベースとしたスタイライズドレンダリングシステムや、「NOVA Shader」など子会社間で需要のある機能の汎用的な開発を担当しながら、子会社でグラフィックスエンジニアが不足している場合には、プロジェクトに直接入って最適化やツール開発のスポット支援を行います。

ちなみに、私もいまは特定のプロジェクトに入って仕事をしています。複数の会社、プロジェクトを跨いで仕事ができるのは、横断組織ならではの楽しさですね。

ゲーム・エンタメ事業部およびコアテクの組織構造。子会社と横軸組織のコアテクが連携し、事業部横断で開発効率の向上に努めている。ツール開発やパフォーマンス最適化を目的として、コアテクのメンバーが各社のプロジェクトに直接入ることもあれば、各社が独自に作ったツールがコアテクに吸い上げられ、ナレッジとして蓄積されることもある

コアテクが開発する「Sirius」は、Unityをベースとした統合型レンダリングシステムの総称。グループ各社で使えるシェーダーやレンダリングパイプラインを共通基盤として用意しており、セルルックからPBRまで幅広いビジュアル表現と開発効率の向上を支える。左上から順に、スタイライズド表現、PBR表現、影表現、水表現。いずれもモバイルに向けて最適化されているが、品質が高い

──横断組織の目的は、「同じ轍を踏まない」、車輪の再発明を各社間で防ぐことでしょうか。

佐久間:そうです。実際、各社間の連携も強く、会社をまたいだグラフィックスエンジニア同士のミーティングや勉強会が月1以上で開催されるなど、技術交流が盛んです。

子会社ごとに求める画作りの方向性が違うので、各社が独自にツール開発を行うパターンも多いですが、例えばプラットフォーム対応や最適化、テストなど、どの会社でもぶつかる課題については、コアテクが中心となってナレッジを蓄積して共有するようにしています。

──各プロジェクトで独自に生まれたツールも各社に閉じず、全社的に使えるように整備されるのでしょうか。グラフィックスエンジニアの仕事として、直近あった事例があれば教えてください。

大河原:最近の事例だと、遠距離のシャドウ描画において、Unity標準のカスケードシャドウマップだと距離上限があるため難しい表現がありました。そこでコアテクのメンバーにプロジェクトへ参加してもらい、遠距離のシャドウをベイクしたシャドウマップで実現する機能を開発し、パッケージ化してもらいました。

こうした機能・ノウハウはコアテク側にも蓄積されるため、他社でも利用できる状態になっています。

Before
After

(画像左)Unity標準のカスケードシャドウマップ。近距離の影は精細だが、描画できる距離に上限がある(画像右)Siriusで実装している遠景のシャドウマップ。ベイクしたシャドウマップを用いることで、遠景(例えば左右の通路の奥)まで一貫した質の影を低コストで描画している

カスケードシャドウマップと遠景シャドウマップをブレンドした合成結果。手前の精細な影と遠方まで届く影を低負荷で成立させている

中野:NOVA Shaderも、アプリボットのプロジェクトで使われていたシェーダーを前身として、共通基盤へと発展した例ですね。

私の場合、新しいツールを開発する前には必ずSiriusやNOVA Shaderに先行事例がないかを確認しています。プロダクトにそのまま合うかどうかはさておき、コアテクの基盤はモバイル最適化されているので、他の事例を調べるより先に頼るようにしています。

Unity URPに対応した多機能エフェクトシェーダーである「NOVA Shader」作例。MITライセンスのオープンソースとして公開されている。フローマップ、フリップブック、ディゾルブ、ディストーションなど、エフェクト制作で多用する機能を集約し、これらを組み合わせることで複雑な表現も効率的に制作できる

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テクニカルアーティストとは違うんですか?

──ここまでのお話を通して、グラフィックスエンジニアは「アート表現のためのツールや基盤を開発している人」と言えると思いますが、皆さんなりの定義はありますか?

大河原:当社においては、コアのパイプライン改造から描画自体の構築、例えば背景描画や空、フォグ、ライティング、水面、エフェクト、もちろんキャラクターのシェーダーまで網羅的に担当する感じです。

「最終的にこういうアートが作りたい」というコンセプトがあって、これをベースにしながらアートディレクターと一緒に開発をしていく仕事です。

中野:アートディレクターが表現したいものを作るための技術・ツールを提供する仕事ですね。これはモバイルゲームだけの事情ではないと思いますが、例えば「大量にライトを置きたい!」と思っても、どうしても処理負荷とのバランスで個数に制限が掛かります。

これを実現するための新規実装みたいなところがメインの仕事です。平たく言えば、処理速度に配慮しながら、デザイナーが自由にクリエイティブを発揮できる環境を作るということです。

──いわゆるテクニカルアーティスト的な仕事と言い換えても良いのでしょうか。

佐久間:組織、プロジェクトにより職務内容が異なりますね。ちなみにコアテクはテクニカルアーティストが存在せず、グラフィックスエンジニアだけが在籍しています。

グラフィックスエンジニアは、事業部全体だと20~25名程度になります。

中野:それこそ私がテクニカルアーティスト室に在籍していますが、QualiArts的には「テクニカルアーティストの中でも、描画周りを担当するのがグラフィックスエンジニア」と位置付けています。

テクニカルアーティスト室の中にはMayaなどのパイプライン構築を行ったり、Unity Timelineを改良したり、ADVを開発したり、あるいは私のように描画全般を開発するメンバーもいます。

大河原:カラパレはテクニカルアーティストはアーティストセクション、グラフィックスエンジニアはエンジニアのセクションで管轄が分かれています。これは歴史的経緯があるのですが、今は組織によってまちまちですね。

──整理すると、アーティストとエンジニアを橋渡しする仕事の中でも、描画に専門特化したポジションがグラフィックスエンジニアである、ということですね。

中野:そうですね。いま聞いていて改めて思いましたが、大河原さんとある程度は一緒かなと思いました。まっさらな状態から作るか、各社の基盤から作るか、Siriusから参照するか、スタート地点は違いますが、アートディレクターとの協業のなかで仕事をしていくエンジニア領域というのは変わらないと思います。

グラフィックスエンジニアがいなければ成立しない表現がある

──グラフィックスエンジニアリングの具体例として、ここからは3名が実際に開発した内容について聞いていきます。

中野:QualiArtsでの事例は「太陽光を疑似的に再現した24時間ライティング」です。

ゲーム・エンタメ事業部ではUnityが全社的に使われており、URPを採用するプロジェクトも多いのですが、その中では表現が難しい機能として、「3Dゲームの背景を24時間、シームレスにつなぐ演出」がありました。標準機能では、そもそも背景に24時間という概念が存在せず、平行光をどの軌道で移動させるかも定まっていません。

中野氏の開発した独自の24時間ライティングシステム。レイリー散乱やミー散乱など大気散乱までがシミュレートされており、それぞれがパラメータとしてGUI上で操作可能となっている。アーティストが触りやすいよう、物理法則に沿った実装を行いながら、場合によっては演出的な空模様が作れるような仕組みも取り入れている

中野:設計の軸になったのは、デザイナーがパラメータを調整しやすい環境づくりです。エディター拡張によって作業をエディター上で完結させ、時間を動かすと関連パラメータが連動し、1日分のパラメータが可視化される構成にしています。

──これは確かに、ディレクショナルライトの色や明るさ、あるいは環境光の変化だけでは表現できないレベルに見えます。

中野:Unity標準の機能でもある程度の表現はできると思いますが、突き詰めるとモバイルでは動作しません。モバイルという前提があり、描画だけにフレーム時間を割くわけではないため、描画コストを極力抑えつつハイエンドなグラフィックスを実現するためには独自機能が必要でした。

この実装を担当したのはTA室配属直後で、たしか入社2年目だったと思います。アートディレクターと相談しながら、約1年を掛けて表現の方向性やデザイナー向けGUIの設計などを続けました。

佐久間:コアテクにも24時間の仕組みはありますが、QualiArtsより後に作り始めたんです。プロジェクトごとに、どこまで厳密に24時間を再現するのか、描画負荷をどこまで抑えるのかが異なるため、中野さんの実装そのものを共通基盤へ取り込む判断はしていません。

中野:コアテクの24時間システムは、私の方で先行開発していた分野でもあるので情報共有を行っていましたね。

大河原:カラパレはコアテク側の実装を一部採用していますよ。許容できる負荷も求める表現もプロジェクトごとに異なるため、各社それぞれが自由に基盤を選択できています。困ったことがあったら聞ける関係性でもあるので、そこも助かっていますね。

──大河原さんも「一貫したライティング」に関する実装を担当していると聞いていますが、具体的にどのような仕組みでしょうか?

大河原:私は現在、新規大型タイトルの開発に取り組んでいます。「演出の幅をどれだけ出せるか」が、アートディレクターから自分に与えられた使命でした。アートスタイルのバリエーションが多いため、同じ機能でどれだけ幅を出せるかが鍵となる実装を行っています。

大河原氏が現在取り組んでいるのは、完全新作のフル3Dタイトルにおける描画基盤の開発だ。画像にあるような背景周りの描画はほぼ一人で担当している。(左)Directional Light, Additional LightによるBRDFライティングのみ適用したルック(右)大河原氏が開発した描画基盤による表現

掲載している画像は検証用のものであり、開発中タイトルの画面ではない。本記事の検証画像で使用しているシーンモデル:「Intel Sponza」 by Intel Corporation (Licensed under CC BY 4.0)

大河原:中野さんの話題と似ていますが、デザイナーが感覚的に扱えることを考慮した設計になっています。

実装面においては、例えば空間内の光源と連動して空気感やフォグを自然に演出できる仕組みや、環境光や大気のパラメータを一括で連動・制御できる設計を取り入れています。これにより、デザイナーが複雑な設定を意識することなく、直感的な操作でクオリティの高い空気感を構築できるようにしています。

──これをモバイルで動作させるには、処理負荷の面で課題が大きそうですね。

大河原:まさにその点が最大の難所でした。

本作はディファードレンダリングを採用していますが、URPをそのまま使うとメモリバジェットを圧迫するため、細部の最適化はグラフィックスエンジニア側が担当しています。キャラクターと背景でライティングを分ける開発を進めていますが、それに向けた最適化も行っています。

あとはGIですね。直近では、グラフィックスエンジニアの勉強会で、最近のUnityに追加された「Surface Cache GI」の解説を行いました。自社のライティング検証の結果を事業部全体にお伝えしています。現在はそうした知見も活かしながら、独自GIの研究開発も含め、よりプロジェクトの表現に即した効率的なライティング手法の検証を進めています。

「Surface Cache GI」に関する勉強会資料の抜粋

雨の表現に対する勉強会資料。このように、事業部内のグラフィックスエンジニア勉強会では、各人の調査内容や開発したツールの紹介を持ち回り制で行っている

横断組織がテスト環境を用意し、各プロジェクトの効率化を支援

──続いて、コアテクでの取り組みについて教えてください。

佐久間:入社後すぐに私が担当したのが、「グラフィックスのリグレッションテスト」と「HLSLユニットテスト」です。

リグレッションテストは、シェーダーの機能追加や、最適化による機能削減、Unityのアップデート前後で見た目が変化していないかを確認するために使用するものです。すでに基礎技術がありましたので、私はこれを各社で快適に使えるよう整える仕事をしました。

佐久間:システムがスクリーンショットを撮影し、正解画像と現在の画像を比較して、ヒートマップとして出力するという仕組みです。複数カメラやタイムラインへの対応、1ピクセル単位の表示異常の検知、バッチモードによるCI上での自動実行、実機・端末でのキャプチャにも対応しています。

──プロジェクトごとに開発環境が異なる中で、画一的な仕様のテスト設計は難しいように思いますが。

佐久間:各社はいずれもUnityで開発しているため、Unityへの依存は許容する構成にしました。一方でタイムラインやURPはプロジェクトにより採用が分かれるため、これらには依存しない設計にしています。

さらに、プレイヤーや背景を生成した後にアニメーションを紐付ける、ライティングの初期化を行うといった子会社固有の初期化処理は、自由に拡張できるようにしました。このテストはSiriusの一部になっていて、ポストプロセスのみ、背景のみ、テストのみといった形で、利用側が必要な部分を選べるようパッケージングされています。

中野:グラフィックスのアップデートは、肉眼では気付きにくい変化が多いんです。

大河原:例えばアンビエントオクルージョンの改善などは、本当に直っているのかどうか、このテストがないと確認が難しいですね。これはもう、かなりの頻度で使っていますよ!

──HLSLユニットテストについても教えてください。

佐久間:C#のユニットテストと同じく、ロジックを単体で検証するHLSL版です。

開発背景は2つあって、ひとつはAIによるコーディングの加速に伴い、修正差分の確認負荷が増大していること、そしてテストの需要が拡大し続けていることです。しかし、Unityの標準機能ではC#の単体テストはできても、シェーダーの単体テストは行えません。

もうひとつは、リグレッションテストがキャプチャ比較であるがゆえに実行速度が遅いこと、そしてテクスチャ比較では各チャンネル8ビットの画像を比較していたため、正規化した画素値では1/255刻みの差分しか扱えなかったことです。浮動小数点でもっと細かい差分を確認したい場面で対応できなかったため、新たに開発することになりました。

技術的には、コンピュートシェーダーを用いることで単体テストが可能になった点と、既存のHLSLロジックをそのまま利用できる点が特徴です。私の知る限り、国内の事例は多くないはずです。

余裕があるから技術的な挑戦ができる。若手にも大きな裁量が与えられる現場

──皆さん、全社基盤や画作りの根幹など、重要度の高い役割を担われていますね。新卒入社から数年の方も含め、若手でもこうした領域を任せてもらえる背景には、どのような仕組みや文化があるのでしょうか。

大河原:一言で言えば「裁量が大きい」という表現になるでしょうか。描画をやりたくて入社したため、その領域を任せてもらえるのはありがたいですね。

もちろん責任は伴いますが、周囲がさまざまな形でフォローしてくれています。コアテクに相談することもあれば、3D背景のアーティストとは席が近いので、パラメータを調整した画面を一緒に見て、さらに調整していくことも多いです。

相談しやすい環境の中で、自分のやりたい分野で自由に動ける――これが結果的に、裁量の大きさにつながっていると感じます。

カラパレ社内のフリースペース。対面でのコミュニケーションが基本で、日ごろからエンジニア・デザイナーが顔を合わせて対話を続けられるようなオフィスが整っている

中野:私の場合、与えられたタスクをこなすというよりは、「自分ならこういう表現をしたい」と自ら仕事の領域を広げていった気がします。

現在も、機能開発で出てきたイメージラフ(コンセプトアート)を見て、「このデザインならこういう表現ができる」と、業務とは関係なく一度試作を作ってみて提案する、という動き方を続けています。グラフィックスエンジニア側から3DCG的な演出手法を提案することで、グラフィックス全体のクオリティが上がっていくと考えています。

佐久間:ありがたいことに、かなりの裁量をいただいていますね。Siriusの開発もそうですし、テストも「自発的にやり始めたら、そのまま担当になった」という流れです。子会社の支援でも、「昨今のモバイルGPUの進化を踏まえて、こういう表現を提案してはどうか?」と自分から声掛けするなど、自発的に仕事ができています。

部署だけでなく会社をまたいだ交流も盛ん。カフェスペースは他子会社や部署とのミーティングスペースとしても扱われている。各社は基本的にサイバーエージェントと同じビル内にあるため、各社の交流が深い

──自発的に提案ができる環境というのは、デザイナーの皆さんが新しいものに寛容な姿勢を持っているからではないか、とも思います。「良くなるけど工数が増える」ものを許容できるかどうかは、組織文化に深く紐づくものだと感じます。

佐久間:その通りだと思います。新しい技術を積極的に取り入れる文化がありますし、それが追加の工数に見積もられたとしても、良いものを作れるのであれば導入したいと考えるデザイナーが多いですね。

大河原:デザイナーの熱量は非常に高いですね。ただ、それはそれとして現実的なスケジュールや工数の限界は存在します。そこを加味した技術選定が求められるのも、グラフィックスエンジニアとしてのやりがいを感じる部分です。現場を深く理解していないと務まらないですからね。

──エンジニアとしての働きやすさについてはいかがでしょうか。AIコーディングも主流になる中で、どういった点に成長を感じたのか、率直な意見を聞かせてください。

中野:技術面では、「パフォーマンス最適化が、新しい表現の追加につながる」ことを実感しました。これは現場に入らなければ理解できなかった部分です。

働き方の面では、グラフィックスエンジニアは、自ら課題や新しい表現の可能性を見つけることで、仕事の幅を広げていける職種だと学びました。目の前のタスクに取り組むなかでも、「これをより良くするために、次に何ができるか」を考え続けることで、挑戦したいことが次々と見えてきます。

「コードが汚くなるから」という理由を差し引いても、良い絵を作れる技術が思いつくなら、それをすべてやるべきだという思想で動いています。

佐久間:「視野が広がった」というのが率直な感想です。コアテクに求められるのは「どの子会社でも使える技術」です。事業部全体として文化は共通していても、求められる画作りや技術レベルは異なります。

リリースまでのパフォーマンスチューニング、クリエイターに向けたパイプラインやワークフローの見直しなど、「自分がやりたいこと」中心ではなく、「子会社が求めているものを踏まえ、さらに一歩先の提案をする」というマインドを持つようになりました。

大河原:「自分が作ったシステムが、プロジェクトの表現力の上限になる」と意識するようになりました。

「モバイルだと厳しいよな……」とデザイナーが諦めかけていた表現も、GDCなどの各種セッションを確認すると、実装方法のヒントを発見できることもあります。世の中の動向を追い続け、できることを増やし、それを提案し、プロジェクトまで落とし込む。そこまで一貫して自分が担わなければならないと感じています。

──最後に、この記事を読んでゲーム・エンタメ事業部のグラフィックスエンジニアに興味を持った方へのメッセージをお願いします。

中野:ゲームの画作りで「綺麗や可愛い」といった表現の追求が好きな方や、ユーザーに感動を届けたいという想いを持ち続けて試行錯誤を繰り返し続けることが大切だと思います。その意味では、技術力以上に柔軟性があると良いと思います。

佐久間:重要なのは考え方です。自身の中に確固たる指標を持つこと自体は良いのですが、決めつけすぎないこと。モバイルで可能な範囲は年々広がっているため、「これはできない」と決めつけず、新しい技術や他社のゲームに触れ続けることでインプットを怠らない方が向いていると感じます。

大河原:2人の話は新卒・第二新卒寄りなので、現場レベルで言わせていただくと、まず「応用力のある人」が必要とされます。モバイルには制約が多く、例えばテッセレーションが使えない、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングに対応した端末が少ない、といった状況があります。

そのとき「この技術は不可能だ」と切り捨てるのか、「形を変えれば制約なしで汎用的に使える」とするのか。プロジェクトの状況次第では「この表現は不要なので、最適化の観点で削る」という判断も必要です。最適化まで含めて応用力を効かせて仕事をすることが大切だと思います。

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