2025年11月19日(水)、Unity Technologies主催の年次カンファレンス「Unite 2025」開催に伴い、Unityの最新バージョン「Unity 6.3」LTSが12月に正式リリースされることが発表されました。
今回は、Unity Technologiesのシニア・バイスプレジデントであるアダム・スミス(Adam Smith)氏にメールインタビューを実施。エンジン開発の最高責任者を務める同氏より、Unity 6.3の最新機能や今後のUnityの展望などをお聞きしました。
2025年11月19日(水)、Unity Technologies主催の年次カンファレンス「Unite 2025」開催に伴い、Unityの最新バージョン「Unity 6.3」LTSが12月に正式リリースされることが発表されました。
今回は、Unity Technologiesのシニア・バイスプレジデントであるアダム・スミス(Adam Smith)氏にメールインタビューを実施。エンジン開発の最高責任者を務める同氏より、Unity 6.3の最新機能や今後のUnityの展望などをお聞きしました。
TEXT / 浜井 智史, 神谷 優斗
――Unity 6.3以降における開発ワークフローの主流は、GameObjectベースからEntity Component System(ECS)ベースに移行されていくのでしょうか?もしそうであれば、移行にあたってサポートなどは提供されるのでしょうか?
従来のGameObjectベース開発を引き続きサポートすると同時に、パフォーマンスを重視するシナリオにおけるECSの利用を拡大します。いずれのワークフローも同一プロジェクト内で活用可能とするために、双方の連携を強化していきます。
――Universal Render Pipeline(URP)とHigh Definition Render Pipeline(HDRP)の統合について、進捗状況を教えてください。
Unityでは現在、HDRPの機能を段階的にURPへと統合させていき、1つのレンダーパイプラインに収束させる長期改革が進行しています。
エンジニアリングの注力対象をURPに統一し、全ての人にとって最も優れ、拡張性が高く、パフォーマンスに優れたレンダリングソリューションを提供することを目指します。これにより、さらに迅速に革新を届けることが可能になります。
エンジニアリングチームは、モバイルからハイエンドまであらゆる開発者に対応できるURPの実現に注力しています。多くのHDRP機能がURPに移植され、今後URPが主要かつサポート対象のレンダリングパスとなります。
このプロセスにおける重点領域は以下の通りです。
〈Focus & Velocity〉
開発リソースを分散させず、全員に向けて新機能や最適化をより迅速に提供できるようになります。
〈URP is the Future〉
今後の革新やプラットフォーム対応はURPで行われ、機能の同等性を確保しつつ、URPの幅広いデバイス対応能力を維持します。
〈Scalability for All〉
URPはモジュール設計の原則に基づいて構築されており、軽量なモバイル向けパフォーマンスからハイエンドプラットフォームまで柔軟に構成できます。
なおHDRPは完全に廃止されるのではなく、開発者が強く所望する場合は引き続きコアパッケージとして利用できます。
――2025年11月19日(水)の「Unite 2025」基調講演にて発表された「Unity AI Gateway」について、最大の特長を教えてください。
「Unity AI Gateway」は2026年に導入されるUnityの機能で、認証済のサードパーティー製AIエージェントをエディター上で使用可能とします。
シーンや階層構造、アセット、対象とするプラットフォームなどに関するUnityの深いコンテキストを活用した、高精度なアシストを活用できます。
編集注:
記事執筆時点、Unity Technologiesは「Unity AI Gateway」早期アクセス開始時に通知を受け取るための申込フォームを設けている
2025年11月19日(水)に実施された「Unite 2025」基調講演のアーカイブ。動画の9:07付近から「Unity AI Gateway」について言及されている
――Unity 6.3において、開発者が注意すべきポイントや、開発スタイルが変わるような変更はありますか?
Unity 6.3(記事執筆時点ではベータ版)では、2026年に向けた基盤づくりを進めています。今年はイテレーション速度をUnity最大の強みのひとつにすることを目指しています。
ゲーム開発会社「Stunlock」と実施したテストでは『V Rising』のビルド時間が従来の4時間から50%以上短縮されました。
また「10 Chamber」が手がけた新作タイトル『Den of Wolves』では、90分のビルド時間がわずか30分に短縮されました。
(画像は『V Rising』Steamストアページより引用)
(画像は『Den of Wolves』Steamストアページより引用)
――今後Unity 6で大きな機能追加・変更は予定されていますか?
現在CoreCLR(※)サポートに向けた取り組みを継続中で、今後のUnity 6リリースにおいて、デスクトッププレイヤーを対象としたCoreCLRの技術プレビューを提供する予定です。
※ C#などのコードを実行する、.NET Coreのランタイム。Unityは従来Monoのランタイムを使用していたが、今後CoreCLRのサポートによりパフォーマンスが向上する見込み
――Unity 7の開発構想や、Unity 6では提供されない新機能の開発などは現時点で検討されているのでしょうか?
Unityはさらなる進化を目指してCoreCLRやECSといったエンジン基盤の改良に投資を続けています。これらをUnity 7リリースまで温存するのではなく、Unity 6を通じて段階的に、より小規模で高品質なアップデートを提供していくつもりです。
かつてUnity 7で実装を検討していた革新的要素を、開発者はメジャーアップデートを待たずにUnity 6で早期に活用できます。今後のアップデート内容を予測しやすくなることにもつながり、プロジェクトを進める上でのリスクも低減します。
――Nintendo Switch 2 ™️(以下、Switch 2 と表記)のローンチタイトル『サバイバルキッズ』をKonami Digital Entertainment B.V.と共同で開発した背景を教えてください。
「Unite 2025」の基調講演で発表したUnity 6 Production Verificationプロセスにより、Unityの全チームにおいて新たなパフォーマンス基準を確立できました。
その一環として、Konami Digital Entertainment B.V.と協力して『サバイバルキッズ』を開発しました。このプロジェクトは、Switch 2 やおすそわけ通信の発売初日における対応を含む、多くの革新を厳しい条件下で検証する上で重要な役割を果たしました。
『サバイバルキッズ』ローンチトレーラー
本件は、Unityユーザー全員に高品質な製品・サービスを届けるための数多くのプロダクションパートナーシップのひとつに過ぎません。
「Unite 2025」で発表した、2K Gamesとの複数タイトルにわたる開発パートナーシップの第一弾として『ゴルフ PGAツアー 2K25』のSwitch 2 移植版をリリースします。この共同開発を通してSwitch 2 向けの技術検証を継続し、Unityのマルチプラットフォーム基盤をさらに強化していきます。
Switch 2 版『ゴルフ PGAツアー 2K25』は2026年2月6日(金)に発売予定(画像は『ゴルフ PGAツアー 2K25』公式サイトより引用)
――『サバイバルキッズ』の開発にあたり、最も効果を発揮したUnity 6の機能は何でしょうか?
改善されたランタイムパフォーマンスが最も効果的でした。これは60fpsの画面分割モードにおいて実証され、Switch 2 上で「おすそわけ通信」機能を活用する基盤となりました。
このレベルのパフォーマンスとスケーラビリティを実現するには、Unity 6の最適化されたレンダリングとジョブシステムが実際のプロダクションで稼働する必要がありました。
これにより、Unity 6が次世代のマルチプレイヤー体験に必要な安定性と速度を提供できることが実証されました。
「おすそわけ通信」は、Switch 2 本体1台および対応ゲームソフト1本を用意することで、ソフトを搭載していない最大3台までのSwitch 2 および従来機「Nintendo Switch™️」と通信プレイを可能とする機能。
「ゲームチャット」機能でオンライン接続したSwitch 2 とも通信プレイが可能。なおNintendo Switchは「ゲームチャット」非対応のため、この方法による接続は不可能(画像は任天堂公式サイトの「おすそわけ通信」機能紹介ページより引用)
※ 「Nintendo Switch 2」および「Nintendo Switch」は任天堂の商標です。
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