ゲームローカライズのベテランとWebサイト多言語化技術の出会い
——藤村様のこれまでのご経歴について教えてください。
『WOVN.games』プロダクトオーナーを務める藤村弘也と申します。実は元ロックギタリストで、イギリス ロンドンで6年半のバンド活動をしていました。その傍ら、大学で映像音楽修士課程を修了し、修士号を取得しました。
帰国後、日本の大手ゲーム会社で10年間ローカライズを担当し、別のゲーム会社に転職してからはスマホゲームを中心としたさまざまなタイトルでローカライズのマネージャーを担当しました。
2022年にWovn Technologiesに入社し、現在は『WOVN.games』のプロダクト及びサービスの開発に携わっています。
——Wovn Technologiesは、ゲーム開発以外にもあらゆる現場やコンテンツに向けてソリューションを提供していますが、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。
Wovn Technologiesは、Web・アプリ・ゲーム・動画字幕など幅広い分野を対象にしています。大手企業による導入実績も多く、コーポレートサイト・社内イントラサイト・ネットバンキング・鉄道の運行情報・ECサイトなどの多言語化において弊社の製品をご利用いただいています。
Wovn Technologiesは「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」ことをミッションに、さまざまな事業を展開しています。今回お話しする『WOVN.games』も、そのうちの1つですね。
『WOVN.io』はWebサイトの多言語化を実現するソリューションです。HTMLで作られているWebサイトに対して、たった1行のスクリプトを入れるだけで多言語化の環境を作ることができます。
HTMLのタグに囲まれた記述の多言語化を行うには、基本的にはその言語分のHTMLを作成する必要がある。例えばオリジナルの日本語のニュース記事を修正したとしても、他言語のどの部分を修正していいか分かりにくく、翻訳者とエンジニアに丸投げの状態になりやすい
——Webサイトは更新頻度が高いことが多く、複数の言語分のHTMLを手作業で作業するのは難しいということですね。
これを解決する1つの考え方として、「i18n(※)」というものがあります。例えばHTMLのタグに囲まれたテキストを「@xxxxx」といった変数とみなして、言語別のデータを用意すれば、単なる対比の関係としてWebページの作り込みは1つのHTMLで済みます。
※ 様々な言語や地域に対応できるようにアプリケーションを設計・開発する国際化を指し、「Internationalization」のスペルにある先頭の「i」と末尾の「n」の間が18文字であることを名称の由来とする
言語別データの作成といった困難な開発面の課題を、『WOVN.io』はスクリプト1行を挿入するだけで解決できる。ブラウザが持つ翻訳機能とは異なり、『WOVN.io』はクライアント自身が制作したサイトを多言語化するツールとなる
ゲームローカライズで重要なのは「コンテクスト」を読み解くこと
——これまでも多言語化ツールを手がけてきたWOVN.ioですが、ゲーム業界に進出した理由を教えてください。
私自身、長年ゲーム業界でローカライズ業務に従事する中で、よりよいワークフローを模索し続けてきました。その中で生まれたのが「翻訳者がゲーム画面をみながら作業できる環境を提供する」というアイデアです。
そこでWOVN.gamesが誕生したわけですが、すでにいくつかのプロジェクトで試用いただき、先日初出展となったGTMFでも多くの方にご評価を頂いています。
——ゲームのローカライズについて、そもそも「翻訳」と「ローカライゼーション」にはどのような違いがあるのでしょうか?
いずれも同じような意味で用いることもありますが、認識としては「現地化する」という意味での「ローカライゼーション」、そして「ローカライゼーション」の中に「翻訳」が含まれると考えてもらえればよいと思います。
——Wovn TechnologiesはもともとWeb業界向けのツールを展開していましたが、そういった観点から「ゲームのローカライズだからこそ発生する、通常の翻訳にはないユニークな点」があればお教えください。
何よりインタラクティブな点が特徴だと思います。ゲーム翻訳においては、出来上がった翻訳がゲームの中でどれだけ意味を成しているか、ゲームの進行上おかしくないかを判断することが大切です。
例えば、3人で会話しているシーンを翻訳したはずなのに、テキストをベースに翻訳した結果まるで独り言のような文章の連続になってしまった事例があります。テキストでは3人を書き分けたつもりでも、コンテクストを読み切れずに翻訳した結果、会話の文体が崩れてしまったというケースです。この原因は、おそらくゲームの画面を見ずにテキスト上だけで翻訳したからだと予想されます。
明らかな間違いなら修正しやすいのですが、ゲーム内で感じる微妙な違和感などは対応が難しくなります。翻訳者の方もできる限りコンテクストを読みイマジネーションを働かせてくれていると思いますが、それにも限界があります。
コンテクストと異なる翻訳の例
例1:「広い洞窟に入る」
問題:どのくらいの広さを指しているのか?
解説:翻訳者は画面を見ることが出来ないので、メモやト書きなど最低限の情報から想像で翻訳するしかありません。例えば「Entering a large cave」と翻訳すれば、汎用的でエラーを起こしにくい翻訳にはなりますが、このゲームで「広い洞窟」が意味するものが、実は地下帝国が広がるような巨大な広さだとすると「Entering the vast cavern」の方が適切な翻訳になり得ます。また、汎用的な翻訳だと、プレイヤーが受け取る感動や衝撃が半減してしまう可能性もあります。
例2「食料を用意した」
問題:食料の内容は?
解説:シリアスな状況で何とか用意したのか、平常時に用意したのかで翻訳が変わります。例えば平常時であれば「I prepared food」または「I have prepared food」と訳せますが、シリアスな緊急時だと「I’ve secured food」や「I’ve got the food ready」と訳す方が、よりゲーム体験を盛り上げてくれます。
——ここまでに挙がったゲームのローカライズにおける「コンテクスト」とはどういったものを指すのでしょうか?
ゲームの仕様や面白さなどをまとめたものを指すことが多いですね。そういった内容が頭に入っていると、各場面に適した翻訳を行いやすくなります。
例えば「良かった」というテキストは、心から安堵した「良かった……」や、お祝いの言葉としての「良かった!」など、文脈により意味が変化します。これを英訳するとき、「良かった」の4文字だけでは“good”なのか“excellent”なのか判別できません。その結果、シチュエーションに合わない訳文が並ぶこともあり得ます。
また、“You’re a genius.”と言う場合、そのままの意味で「あんたは天才だね」なのか、皮肉を込めた表現なのかは、場所やシチュエーションなど前後の流れから読み取らなければなりません。これもコンテクストに含まれるでしょう。
他にも登場人物の年齢や性別といったプロフィール、国ごとのカルチャライゼーションもコンテクストと言えます。
——先ほど『WOVN.io』の説明でソフトウェアの国際化「i18n」という考え方をご紹介いただきましたが、ゲームローカライゼーションの分野でもこのような考え方や規格はあるのでしょうか?
強いてルール的なものを挙げるとすれば、日本ではCERO、アメリカやカナダではESRB、ヨーロッパではPEGIといったレーティング審査があります。暴力的な言葉や飲酒に関する表現などがレーティングの対象となります。
「CERO(Computer Entertainment Rating Organization)」。日本国内におけるゲームソフトの年齢別レーティングを実施する(画像は公式サイト より引用)
「ESRB(Entertainment Software Rating Board)」。アメリカ合衆国及びカナダにおけるコンピュータゲームのレーティングなどの審査を行う(画像は公式サイト より引用)
「PEGI(Pan European Game Information)」。EU圏内を中心にヨーロッパの29か国を対象にしたコンピュータゲームのレーティング審査を実施する(画像は公式サイト より引用)
例えばスポーツゲームで年齢制限なし(全年齢対象)に収めなければならない状況で、ある国では許される表現でも他の国ではNGといった場合もあり、最も制限した表現に調整したこともありました。タバコ・酒・暴力などに関する言葉が対象となりやすいですね。
――こうしたルールの他にも、国際的な観点から気を遣うべき点があれば教えてください。
国ごとで異なる差別的な表現にも慎重になるべきです。例えば「女々しい」という言葉は日本国内でも使いにくい表現ですが、他言語から見ると「なぜ女っぽいことが弱弱しい意味になるのか」とさらに大きな問題になります。
他にも、日本で普通に使われている言葉をそのまま翻訳して海外で問題になる事例は良くあります。“Oriental”(オリエンタル、東洋人、東洋の)はアメリカ合衆国では差別用語とされていますし、オーストラリアを“Downunder”と呼ぶのも差別的な懸念があります。もちろんその逆もあります。海外では視覚障害や聴覚障害の方を直接的に呼ぶこともありますが、日本ではとてもセンシティブに扱われるといったケースです。
ゲームの世界では日常会話やファンタジー世界の文化を扱うことが多い分、翻訳においても特殊性があります。こういった点に対する配慮もゲーム翻訳におけるカルチャライズやローカライズの重要な役目です。同様な特殊性は映画や小説の翻訳にもあるのではないでしょうか。
規模に関わらずグローバル展開は最初から考えるべき
——ローカライズで気にかけるべき点が多いことは理解できましたが、現代は多くの企業や個人開発者がグローバル展開を見据えたゲーム開発を進めているのではないかと思います。改めて、海外展開の重要性についてお聞かせください。
ゲームのグローバル市場が26兆円といわれていますが、この約10%は日本市場が占めています。その日本市場において、国内メーカーに負けないくらい活躍しているのが海外メーカーです。これらの海外メーカーは、日本以外のグローバル市場でももちろん大きなシェアを獲得しています。
要因の一つは、グローバル市場へのリリースが前提として事業計画に含まれていることにあるでしょう。グローバル市場で勝負するのは当たり前で、その一部に日本市場があるということです。
一方、国内メーカーのうちグローバル展開を前提に事業を進めているのは老舗企業がほとんどです。若い企業は「国内市場で頑張ってから」という考えもあるのでしょうが、ぜひ最初から海外市場を見据えて制作していってほしいと思います。
昔と違って、組織の大きさに関わらずゲームをグローバルにリリースする方法も多数生まれ、ハードルも低くなっているので、どんどんチャレンジして欲しいですね。
——小規模チームや個人開発、また中規模ゲームメーカーの海外展開についてはどのようにお考えですか?
小規模チームや個人開発者にとって嬉しいのは、やはり自分が開発したゲームの反応が直接貰えることでしょう。今はSNSなどで海外のファンからもメッセージが届く時代です。売り上げの面だけでなく、応援をモチベーションに海外展開を頑張るのも良いと思います。
先ほどグローバル展開のハードルが低くなったと言いましたが、ゲーム開発自体のハードルも同様に低くなっています。大手ゲームメーカーの規模感に倣う必要もなく、カジュアルな内容でも大いにゲーム開発の魅力を味わうことができます。
中規模メーカーだと、海外展開を躊躇する企業もあるかもしれません。その要因の一つとしては、国内でのスマホゲームの成功が挙げられます。中には海外展開を試みたか、実際に行ったタイトルもあると思いますが、国内でこれだけ成功するならば無理に海外展開しなくても構わない、という風潮もあったのではと推測されます。
——ここからはより実践的なワークフローの話題に入りたいと思いますが、まずは現在主流のゲームローカライズがどのように行われているか、全体の流れを簡単にご説明ください。
およそ予想される一般的なワークフローとなりますが、まずは開発会社(デベロッパー)から翻訳依頼の内容をまとめたのち、インハウス部門や外部委託会社などへ発注するかたちになります。翻訳が終わるとテキストが開発会社に納品され、ゲームの中に組み込まれます。ここでテスト用のビルドが作成されます。
ビルドが作成されると、LQA(※)としてインハウス部門や外部委託会社にゲームをプレイしてバグを見つけてもらいます。見つけたバグを報告してもらい、報告の内容を翻訳担当者やローカライズマネージャーが判断して修正します。
※ Language(Localization, Linguistic) Quality Assurance、言語品質管理。その言語を用いるネイティブスピーカー(翻訳スキルは問わない)に、LQAテスターとして客観的にプレイして違和感がないか報告してもらう
修正された翻訳はゲームに組み込まれ、修正確認用として再度ビルドが作成され、再びチェックに回されます。そういった過程を繰り返してバグを潰し、最終的には翻訳がマスターに実装されてリリースされます。
——タイトルの規模に依存するとは思いますが、一般的にはLQAや翻訳には何名程度のスタッフが関わるのでしょうか。
どれくらいの文字数を扱うかで変わります。制作のスタイルや社内の担当者が誰になるかは、大きく3つのタイプに分けられると思います。
ひとつは、プランナーが翻訳担当を兼務して外部の翻訳会社に依頼するタイプ。もうひとつは、ゲームタイトルごとに各言語の翻訳担当を採用するタイプです。内製で一次翻訳を全て行います。
最後は、ローカライズマネージャーを置いて複数案件を扱うタイプです。ゲームタイトルやプロジェクトに適した翻訳会社や翻訳者を、コンペティションや相見積もりなどで選定します。自分も以前の会社ではこれを担当していました。ローカライズマネージャーが外部の翻訳会社をコントロールしてクオリティを担保し、社内とコンセンサスを取るスタイルです。
人数の比率の話に戻ると、プランナー兼務の場合は翻訳担当無しで済みますが、負担やクオリティ維持が心配です。内製翻訳の場合は、ゲームタイトルごとの対応言語分だけ人数が必要になります。その点、ローカライズマネージャーならば基本的に一人で済むので、このタイプを自分はおすすめします。
——よくあるミスや、ゲーム翻訳で特に注意すべき例としてはどのようなものが挙げられるでしょうか?
一番怖い例は、ガチャなどのキャンペーンですね。言語によっては小数点の表記の仕方が異なるので、数値表記を間違えてしまうケースがあります。
また、「~をあげる予定です」というのを「~をあげます」と翻訳してしまうだけで返金問題になってしまうこともあります。他にも原文にはないのに翻訳者側で「and more!」と書き足されてしまうケースなども見られますね。
——なるほど、景表法のような部分に抵触する可能性もあるのですね。インゲームテキストにおいて、LQAでよく発覚するトラブルがあれば教えてください。
例えば、表示のはみ出しやおかしい改行などですね。システム的なチェックで事前に見つけられる場合もありますが、テキスト翻訳の過程で不要な改行が入ってしまう場合などがあります。
また、ゲームの中に組み込むとどこか違和感を覚えるコンテクストエラーがやはり発生してしまいます。これは実際にゲームをテストプレイしないと見つけられないものです。
こういったコンテクストエラーについては、開発会社から翻訳者へ改善を依頼することもありますが、「ゲーム画面を見て翻訳しているわけでは無いのでどうしようもない。むしろLQAで見つけられているならば良いのではないか」と回答されることがほとんどです。しかし、それはエラーの分コストも発生しているわけで、ここが長年の課題と感じていました。こういった面も『WOVN.games』では改善できるようにしています。
こうした課題を解決するために生まれたのが『WOVN.games』
——ここまでにゲームローカライズの現状と課題をお話ししてきましたが、『WOVN.games』はこれからの課題にどのようにアプローチしていますか?
『WOVN.games』では、翻訳してビルドを作成する段階やLQAを一本化できます。ゲームに組み込まれたテキストを、翻訳者がゲーム画面を見ながら翻訳・校正できるので、翻訳・校正者がLQA同等の環境で作業をできます。実際のビルドが翻訳者側で走るわけではなく、スクリーンショットを取得して並べる仕組みのため、翻訳者がゲームの開発環境やハイスペックなPCを持っていなくても、同じ環境を提供できることも利点といえます。
『WOVN.games』では、従来の分かれていた翻訳プロセスとLQAプロセスを、翻訳者が判断できる一本化された新しいプロセスにできる
――『WOVN.games』を使用した場合、どのようなワークフローが想定されるのでしょうか。
いくつかのテキストを翻訳する場合を考えてみます。ツール画面上に、「いまのところは信用している」「百瀬のことは信用している」「誰も信用できない」などの日本語のテキストが並んでいますね。
「いまのところは信用している」には「誰が、誰を?」「百瀬のことは信用している」「誰も信用できない」には「誰が?」がありません。この場合、ゲーム画面を見られない翻訳者は不確定要素が多い中、想像で翻訳をするしかありません。
ここで『WOVN.games』を活用すると、翻訳・校正者はゲーム画面を見ることで「これらのテキストがプレイヤーの発言である」ことがわかり、一人称で翻訳して良いと判断できます。
他にも「広大だ」という日本語を英訳する際、どのくらい広大かはゲーム画面を見ないとわかりません。広大に対応する単語は何種類も存在しますが、実際のゲーム画面を見なければ適切な翻訳ができません。広場を見ているのか、天空の城から空を眺めているのか、シチュエーションが分かれば一発で適切な翻訳ができます。
従来のフローでは、テキスト翻訳の段階で翻訳者が頭を悩まし、ビルド作成を経てLQAの段階でようやく妥当な翻訳かを判断することになっていた。『WOVN.games』を用いることで、ゲーム画面を見ながらの翻訳が可能になり、品質向上とスピードアップが可能になる
ローカライズにおける翻訳とLQAのコストの割合は、およそ5:5から6:4くらいです。そしてLQAは圧縮が難しく、時間が必要となるので、開発会社にも大きな負担となります。
こういった負担を減らすだけでなく、人の手が介入する工程を削減することでバグの発生も抑えられます。
また、『WOVN.games』ではゲームに特化したLQAのサポートモードも用意しています。
バグ報告や修正報告などのチケット管理といったLQAプロセスも、『WOVN.games』でサポートしている
ゲームローカライゼーションのコツと海外展開へのアプローチ
——ローカライズの課題を明らかにし、対応するツールを開発してワークフローの改善に努めることは非常に価値的だと感じました。最後に、本ツールを使うか使わざるかを問わず、小規模チームや個人開発におけるゲームローカライズのコツのようなものがあればお教えください。
まず、コードに表示テキストを直接書き込むのは避けた方がいいですね。Webサイト翻訳と同じように、表示テキストを直接日本語でコード内に埋め込んでしまった場合、多言語展開が大変になります。Unityやアンリアルエンジンなら文字情報をID管理することをおすすめします。また、テキストのデータベースを散乱させず、マスターで一本化させておくのも大切でしょう。
いずれもゲームが売れてから海外展開を考えるのではなく、最初から対応しておけばそれ程難しいことではありません。
また、個人開発者にとっては難しいかもしれませんが、プロジェクトに最適な翻訳会社や翻訳者を選定することも大切です。例えばいくつかある大手の翻訳会社の一つに声をかけたとして、こちらがしっかり指定しなければ値段/時間/空き翻訳者で担当が決められてしまいます。そうはせずに、ゲーム仕様やプロジェクト概要をしっかり伝えて複数社に相見積もりを出してもらうといいでしょう。
また、翻訳会社によってはトライアルで翻訳結果を出してもらえますが、英語ならばまだしもそれ以外の言語ではクオリティ自体を確認できません。それよりも翻訳者のバックグラウンド、どんなゲームを担当したかや翻訳スキルなどの情報を提出してもらうのをおすすめします。依頼するゲームジャンルの翻訳経験があるかは重要な点で、経験の有無により翻訳品質に明らかな違いがあります。
他には先ほどレーティングの例を挙げましたが、ESRBなどの公式サイトでは、各タイトルのレーティングを確認して参考にすべきゲームタイトルを見つけられます。翻訳発注の際には、そういった参考になるタイトルを伝えておくのも有効でしょう。
——ローカライズに関わらず、藤村さんから見て日本のゲームが世界で遊んでもらえるようになるためには、どんなアプローチが良いと思いますか?
ゲーム規模の大小に関わらず「海外を目指す、次の海外イベントで発表する」といった決意を持つことが大切だと思います。そして「海外から見てどうなのか」という視点を常に持つことも重要です。
海外視点を取り入れることで、遊び方や見え方、例えばアイコンの作り方ひとつを取ってもグローバルな視点になっていきます。ここまでのローカライズに対する考え方と同様ですが、国内版と海外版を分けて開発するというものではなく、一つのグローバルな開発を行って同じビルドを言語分けしていくという感じが良いのではないかと思います。
——最後に『WOVN.games』を試してみたい方へご紹介をお願いします。
お問い合わせをいただければ、コンサルタントを経てSDKの組み込みなどトライアルをお試しいただけます。SDKを組み込んでしまえば、ゲーム画面を確認するためにUnityやアンリアルエンジンといった開発環境を用意する必要はなく、端末とネットワークさえあれば作業が可能になります。
ゲームローカライゼーションはAI翻訳など多くの技術も出てきて過渡期に入っています。その技術革新の模様を、ぜひ『WOVN.games』によって体験いただければと思います。
『WOVN.games』公式サイト
ゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。