2024年7月19日(金)から21日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催された『BitSummit Drift』。展示されたゲームの中から、今回はMaboroshi Artworksが制作する2D青春アドベンチャーゲーム『Last Time I Saw You』を紹介します。
スペインのクリエイターから見た、レトロで新しい80年代の日本『Last Time I Saw You』。会場で2024年リリース予定の最新版を一足早くプレイ【BitSummit Drift】
TEXT / 酒井理恵
目次
スペインのクリエイターが描く、80年代の日本。数々の評価を受けた作品の最新版がBitSummitに登場
『Last Time I Saw You』は80年代の日本を舞台にした2Dの青春アドベンチャーゲームです。制作するのはスペインのクリエイターJuan Fandiño氏が設立したMaboroshi Artworks。
細部まで丁寧に描きこまれたアートワークは時代の空気感が濃厚に漂い、ルーツを日本に持たないアーティストによって制作されていることに驚かされます。
本作は2022年の「BitSummit X Roads 2022」でビジュアルデザイン最優秀賞、MEDIA HIGHLIGHT AWARDを受賞した他、「Taipei Game Show 2024」のIndie Game Finalistに選ばれるなど本年に入っても評価を受けています。
今回の「BitSummit Drift」では、2024年夏以降にリリースを予定している最新版を一足早くプレイできました。
本作は、主人公である「あゆみ」という少年が、いつも同じ少女の夢を見る場面から始まります。
町は瓦屋根やブロック塀、そして屋台のおでん屋や個人商店などが並ぶ昭和的な風景。近所のおばさんや飼い犬にも、それぞれ異なるアニメーションがつけられているためか、NPCであっても非常に存在感があります。
作りこまれた絵画のような背景の中をアクションも交えながら進むのは、フォトリアルとは一味異なった没入感をもたらします。
音楽は穏やかなLo-Fiミュージック。日本人がこうした風景を目の前にしたときに思い浮かべがちな、昭和歌謡曲的な音楽ではありません。
既成概念にとらわれない解釈と時代の空気感まで見極める観察眼が合わさり、まったく新しい日本の80年代が描かれます。
1枚の絵を作るように画面を構成。アニメーションは80年代らしくフレーム毎に手描きで制作
Maboroshi ArtworksのJuan Fandiño氏に本作の制作について、お話を伺いました。
Fandiño氏は8年前から大阪に居住。元々はフォトグラファーとして働いたり、ゲーム会社で開発に携わったりしていたとのこと。
ゲームを制作しようと決めた2018年頃は、他の仕事もやりながら、平日の夜に開発を進めました。当時は、ゲーム制作にどれくらいの資金が必要か算段がつかなかったため、自分でできることは自分でやろうと、かつてしていた美術の勉強の知識を活かしてすべてのイラストをFandiño氏自身で描きました。
ゲームエンジンは、あまりエンジニア経験のないFandiño氏がいくつものプラットフォームに対応する必要があったことから、Unityを選んだそうです。
2022年にリリースしたデモ版が評価され、2023年には資金繰りの目途も立ったとのこと。現在は、ゲーム制作専業です。
作品を作るきっかけはFandiño氏の失恋体験でした。とてもつらい経験でしたが「自分はクリエイターなのだから、この想いを何か作品に残したい」と思って制作したのが本作だったそうです。
ひとつひとつの場面が1枚の絵としても成立するように構成した、という画面の絵の点数はかなりの物量となりそうですが、Fandiño氏は絵を描くスピードがかなり速く、実現できたとのこと。
一方、作品を彩る豊富なアニメーションは、アニメーターが制作しています。80年代らしい表現にするために、フレーム毎に手描きで描く昔のアニメーション制作方法を使いました。
日本を舞台にしたのは、Fandiño氏が昭和頃の日本の技術や雰囲気が好きだったから。再現にあたっては、当時の映画やゲームを参考に作成しています。
BitSummitで先行プレイできる本作の最新版は今年の夏以降にリリースされる予定とのことです。
『Last Time I Saw You』公式サイトBitSummit Drift 公式サイトゲームメーカーズ編集。その他、ソーシャルゲーム、ボイスドラマ等のフリーのシナリオライターとしても活動中。突き抜けた世界観のゲームが好き。
『サガ・フロンティア』のアセルス編などのゲームを心のバイブルにして生きてます。
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