2023年9月21日(木)から24日(日)の4日間、幕張メッセで開催された日本最大のゲーム展示会『東京ゲームショウ 2023』。企業・インディー、そして国籍を問わず世界中からゲームが集まる祭典ではホール2からホール3にかけて「ゲームアカデミーコーナー」が設けられ、実に50近いブースが出展されました。
今回はそんな数多くの作品が集まった「ゲームアカデミー」エリアの中から、筆者が気になった作品をピックアップ。クリエイターの皆さんに開発の過程や工夫、今後の作品の生かし方などを聞きました。
2023年9月21日(木)から24日(日)の4日間、幕張メッセで開催された日本最大のゲーム展示会『東京ゲームショウ 2023』。企業・インディー、そして国籍を問わず世界中からゲームが集まる祭典ではホール2からホール3にかけて「ゲームアカデミーコーナー」が設けられ、実に50近いブースが出展されました。
今回はそんな数多くの作品が集まった「ゲームアカデミー」エリアの中から、筆者が気になった作品をピックアップ。クリエイターの皆さんに開発の過程や工夫、今後の作品の生かし方などを聞きました。
TEXT / ハル飯田
産学連携プロジェクトを通じて生まれたARホッケーやVRシューティングなど、大規模な展示も来場者の目を惹いた「バンタンゲームアカデミー」のブースから紹介するのは、横スクロールアクション『RED MASK』です。
タイトルにもなっている赤いマスクを被った主人公が“ヒーロー”を名乗り、サイバーパンク調の世界で立ちはだかるロボット兵を撃ち倒して進む本作。6発装填のマグナムを方向指定で発射するという直感的な操作で、ダッシュ移動はなくじっくりとプレイできるゲーム性になっています。
会場への出展はチュートリアルを兼ねたステージ1のみでプレイ時間は短めですが、その中でもマグナムのリロードアクションや回避行動など随所に「かっこいい!」と唸りたくなる演出が盛り込まれており、ドット絵ならではの味のある表現も光ります。主人公が何者で、何のために敵を倒しているのか?というストーリーの謎はゲームを進めると明らかになっていくようです。
『RED MASK』はバンタンゲームアカデミーの学生10名以上によるチームで制作されており、今回はディレクターを担当している青山さんに代表としてお話を伺いました。
本作は日本ゲーム大賞のアマチュア部門への応募を目指してスタートした企画で、2023年の募集テーマが「こだわり」だったことから、青山さんはとにかく「自分なりのかっこよさ」の表現にこだわって制作を進めてきたそうです。
「かなりの人数で制作しているので、自分の中にある『かっこいい』を表現するためにはチームのメンバーにそれを共有するためには言葉で伝えなければいけないんです。頭の中のイメージを言語化してゲームに落とし込むのが難しかったですね」(青山さん)
開発環境はUnity。中でも主人公の射撃モーション表現には工夫が詰まっており、右スティックで射撃方向を定める操作のため、360度を12分割してモーションを作成しているのだとか。もちろん高精細なドット絵もその表現に一役買っており、ゲーム全体の雰囲気を盛り上げています。
ゲームは全3ステージ。中盤以降では「貫通弾」など特殊な弾丸も活躍しますが、マグナムは装填された順番でしか発射できないため「どの弾丸をステージに持ち込み、いつ装填するか」など戦略性も求められる内容で開発が進められています。完成後にはSteamで無料公開予定とのことなので、是非プレイされてみてはいかがでしょうか。
バンタンゲームアカデミー 公式サイト独創的なアイデアをチームワークや工夫で形にしたゲームも学生作品の魅力のひとつ。愛知工業大学ブースはなんと日替わり展示方式となっており、訪れた日によって出会える作品が変わるという面白い試みが行われていました。そんな中から今回は2日目に展示された『テントウ虫(チュウ)』を紹介いたします。
本ゲームのルールは至ってシンプルで、迷路のようなマップ上でてんとう虫をゴールとなるトウモロコシまで誘導するというもの。しかしその誘導方法は「手回し式のライトで画面を照らすと、そのライトに向かっててんとう虫が進んでいく」という、非常に独特なものになっています。
ライトにはレーザーポインターが取り付けられているので自分が照らしている箇所が分かりやすく、チュートリアルの段階では迷路も複雑ではありませんでしたが、意外と操作難易度は高め。手回しハンドルを動かしながらではライトを安定させるのが難しく、てんとう虫が上手い具合にトコトコと動いてくれた時には思わず感動を覚えてしまいました。
『テントウ虫』を開発したのは愛知工業大学の1・2年生で構成されたチーム。同校では展示作品に「普通のデバイスを使わないこと」を条件としており、ブースにはそれぞれおよそゲームの操作デバイスとは思えないような個性的なアイテムがずらり。
中でも直感的な操作が特徴の本作は、チームのメンバーでアイデアを出し合って企画を固めてから現行のバージョンまでの開発期間は約4カ月。チームのメンバーは「学校で習っていないC#での開発が大変だった」「コライダーが上手く制御できず壁をすり抜けてしまうバグがなかなか解消できなかった」と、それぞれ苦労を振り返ってくれました。
あたかも手回しライトの光が画面に反映されているかのように感じる操作方法は、実は「画面認証でレーザーポインターの位置を把握し、手回しハンドルが動いている時だけ操作を受け付ける」プログラミングによって実現。そのためにプロジェクターとカメラを使った専用の環境で展示されていました。
操作デバイスとなる手回しライトも3Dプリンターを用いて作られたオリジナルであり、ゲームのギミックを完成させるために「てんとう虫を動かすゲーム」「カメラを用いたレーザーポインター画面認証」「専用操作デバイス」と、実質3種類の開発が組み合わさった力作に仕上がっています。
現段階ではハンドルを固定するゴムが外れやすかったり、ハードモードで敵となる鳥の動きが余りにも速いため実質クリア不可能な難易度となってしまっていたりと、まだまだ改善点も数多く認識しており、学園祭や近隣施設での展示会に向けてアップデートを重ねていくそうです。
愛知工業大学 公式サイト神奈川工科大学のブースで展示されていた『声波万波(せいはばんぱ)』のコーナーにはもはや操作デバイスはなく、置かれていたのはヘッドセットのみ。そう、このゲームはタイトルの通り「声」で操作するサーフィンゲームなのです。
ヘッドセットのマイクを通じて出した声の高さによって波の高さも変動する仕組みとなっており、自動スクロールで右へと進んで行くサーファーが得点アイテムを獲得できるようタイミング良く声の高低を調整します。
各ブースで大きな音楽も流れるTGSの会場内でも声の高低が滑らかに反映されていたのが印象的で、プレイはとても快適。アイデアだけでなく得点・減点オブジェクトの配置も巧みで、減点となるサメに当たってしまって思わず「あっ」と声を挙げ、また波が乱れてしまって……という連鎖も楽しい、ゲーム実況にも向きそうなタイトルでした。
『声波万波』を開発したチームの皆さんにお話を聞くと、本作の開発に至るまでチームのメンバーでなんと1000以上のアイデアを出し合い企画を練り上げてきたとのこと。Unityを使用し、1年ほどかけて今回の展示バージョンを開発しました。
開発に当たってはマイクからの音声をゲームにインプットするまではスムーズなものの、人によって異なる声の高さへの対応が課題に。そこでゲーム開始時に「最も高い声」と「最も低い声」を計測し、その周波数を元に高低差を調整することで誰がプレイしても同じ体験ができるようになりました。
「誰もがプレイできるための工夫」は他にもあり、実は開発当初は「最後に出した声の高さ」で波が固定されるようになっていたため、得点を稼ぐためには「波を下げるために低い声を出し、またすぐに高い声を出す」ことが求められ、少し難易度が高かったのだとか。そこで現在は一定時間声を出さずにいると自然と波の高さが最低へとリセットされるように改善されています。
ポップな見た目と「声で操作する」仕組みによって年齢を問わず親しみやすく、実際に会場でも幅広い年齢層の方にプレイされていた『声波万波』。少しの工夫によってたくさんの人に遊ばれるゲームへと進化させられる好例と言える作品でした。
神奈川工科大学 公式サイト4日間で計24万人を超える来場者で大いに賑わいを見せた東京ゲームショウ2023。ゲームだけでなくイラストの展示やコスプレなど各校の学生が工夫を凝らしたブースを出展したゲームアカデミーコーナーもバラエティーに富んだ内容で来場者を楽しませており、残念ながら今回紹介できなかった作品も魅力的なものばかりでした。
学生作品は一般向けにはリリースされないものも珍しくありませんが、ゲームショウ以外でも学園祭など独自のイベントでも展示・発表を楽しめることも。会場で見かけた学校のイベントを探してみると、また新しい魅力的なゲームと出会えるかも知れません。
東京ゲームショウ2023公式サイト大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。
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