TEXT / 神山 大輝
Perf Test / 神谷 優斗,くろさわ
目次
“ゲーム制作向け”デスクトップPCがついに登場!
10月1日(火)に発売となった「ゲームメーカーズ×GALLERIA(ガレリア) コラボPC」。ゲーム制作のために作られたPCとして、ゲーム会社の最前線で開発に携わってきたメンバーがスペック選定と検証を行っています。
最初に設定したコンセプトは迷わずに買えるPCであること。PC選びにはパーツの知識が必要ですが、このコラボPCは難しいことを考えなくても大丈夫。「これを買えば大丈夫だよ」と自信を持ってオススメできる性能と、コストパフォーマンスの両立を目指しました。
ゲームメーカーズ コラボPC 販売ページはこちら!神山(ゲームメーカーズ編集長)
コストパフォーマンスを一番に重視しながら、「これなら問題ない!」と自信を持って言える性能になるようチョイスしました。
一般的なゲーミングPCと同じような価格を目指し、標準的な性能を持ちながら、ゲーム制作を行うにあたって重要なパーツのみに絞ってアップグレードを行っています。
ゲーム制作で重視するポイント
GPU:3Dゲームに必須、画像処理に特化した最重要パーツ
ゲーム制作は総合的なスペックが求められますが、その中でも優先順位をつけるようにしました。最も重視したのはGPU。この性能が低ければ、せっかく作ったゲームが動きません。「ゲームがきちんと動く」とは、つまりゲーム画面が正常に描画され、フレームレートが十分に出ている状況を指します。
複数社にヒアリングした結果、多くのゲーム会社はNVIDIA Ge Force RTX 4070など「各世代の70」を選んでいることが分かりました。
CPU:PC性能を左右する装置。プログラム処理速度につながる
CPUは、プログラムの集合体であるゲームにおいて、コンパイルやビルドなどの処理速度に直結します。ただ、コンパイル時に大きな差異が生まれるケースは少なく、ビルドも「処理時間は変わるが、結果は変わらない」ことから、次点で重視するポイントに設定しました。
神山
3DCG制作におけるCPUレンダリング時の負荷と異なり、ゲーム制作の場合は「CPUが100%ブン回り続ける」という状況は意外と少ないです。
CPU冷却は簡易水冷と空冷の両方でUE5 エンジンビルド検証を行いましたが、GALLERIAのエアフローが優秀なため時間は大きく変わりませんでした。
ということで、今回はコストの安い空冷ファン方式を採用しています。
メモリ(RAM):データの一時置き場。同時作業の快適性に関係
メモリは32GBを標準としました。最近のゲーム制作は大規模化が進み、個人制作においても高解像度テクスチャを含んだアセットや高ビットレートの音声ファイルを数多く扱うようになりました(最適化前は重い!)。また、ゲームエンジンのエディタだけでなく、BlenderのようなDCCツールやブラウザなどを同時使用するのも当たり前になってきています。
ただ、DDR4からDDR5世代へ移行し、転送速度や帯域幅、メモリクロックが向上したことから、規模の大きいオープンワールドのようなゲームを除けば32GBでも十分機能するだろうと判断しました。
ストレージ:データの保存場所。「Cドライブ」などのこと
ストレージは絶対に1TB以上は必要です。理由は、ゲーム制作に関するツールやサンプルプロジェクトが大容量だから。転送速度もある程度は重要になりますが、ここは待てば良いだけ。しかし、ストレージの容量不足はそのまま作業停止につながってしまうので、ミニマムで1TBに設定しました。
※細かい話なので読み飛ばしてOK。ゲーム制作は総合的なスペックが求められるが、あえてプライオリティを付けるならGPUが重要。その他について、ストレージやメモリ不足で“やりたいことができない”は想像がつきやすいが、唯一CPUだけは「待てば解決する」ことが多い。また、全てのツールが昨今のメニーコアを上手に使えるわけではないため、この辺りを選定に反映した
オープンワールド?2Dアクション?制作対象に合わせた3モデル展開
今回は制作対象に合わせた3モデル展開を行います。「現時点で問題なく動く」ではなく、今後必ず訪れるゲームエンジン側の進化や、新たなツールの登場にも対応するため、ミドルクラスでも余裕を持ったスペックになるように調整しています。
なお、本記事では、性能順に上からXA7C-R47を「モデルA」、XA7C-R47TSを「モデルB」、RM5C-R46を「モデルC」と表記します。
ゲームメーカーズ コラボPCを選ぶ理由
ポイント1:ゲーム会社で使われるPCそのままスペックの“安心感”
ゲームエンジンはもちろん、DCCツールやプログラミング環境、画像、映像編集など、ゲーム制作は数多くのツールを使用します。真ん中のモデルである「モデルB(XA7C-R47TS)」は、ゲーム会社(株式会社ヒストリア)で実際に使用されるスペックそのままを基準にしました。
社内でもGALLERIAを使っており、このPCであれば間違いなくコンシューマータイトルまで作れることを自信を持って明言できます!
神山
このスペックで、ゲームエンジンはもちろん、MayaやSubstance 3D Painter、HoudiniをはじめとするDCCツール、Premiere Proなど映像編集ツールなどを実際に使用しています。
ポイント2:いずれ買い替えるモノだから、コストパフォーマンスが重要
PCパーツには「世代」があります。1年、あるいは数年おきに新たな世代の製品が登場し、そのたびに性能が大きく向上する——常にハードウェアの進化についていけるだけのコストを払える方は少なく、ゲーム会社においても買い替えは3-5年スパンが中心です。
この瞬間の最大瞬間風速的なスペックにもロマンがありますが、今回は「いつか買い替えることを見越して、なるべくコストを抑えながらストレスなくゲームが作れる」バランスを重視しました。
ポイント3:「ゲームが作れる」=「ゲームが遊べる!」
ゲームメーカーズモデルであれば、最新のゲームがストレスなく遊べます!
ゲームは作るだけでなく、遊ぶことも大切です。ゲームを作る過程において必ず発生するのがテストプレイですが、PC性能が低ければ自分が作ったゲームが試せません。このコラボPCで、自分のゲームも、誰かが作った素敵なゲームも、一気に楽しみましょう!
複数のツールで実力を検証!
ここからは、ゲームメーカーズモデルの実力をゲームエンジンとDCCツールで検証していきます。やや専門的な話題になるため、興味がある方だけご覧ください。
神山
「悩まず買ってOK」なのがゲームメーカーズモデルの特徴ですが、より詳しい情報が知りたい方に向けて、少しだけ情報を追記しました。
この他の検証も行っていますが、主要どころをピックアップしてお届けします。
【UE5】『The Market of Light』起動時間とビルド時間を計測
※スケーラビリティ「シネマティック」, WQHDで測定
検証結果の考察
パッケージ化やシェーダーコンパイルはCPUに依存するため、同じCPUを搭載するモデルA,Bでは近い値が出ていました。差分として現れた10分程度の差はストレージ転送速度と予測されます。また、今回のように大きいプロジェクトにおいて、キャッシュを利用する場合はメモリ64GB搭載のモデルAにアドバンテージがあります。
モデル3は他2機種に比べてCPU系の処理には1.5倍ほどの時間がかかっていましたが、Naniteの恩恵もあってフレームレートでは善戦。他機種からは2倍ほどの差がありますが、プレビューで16fps出ていればゲーム開発で困ることは少ないです。
【Unity】高精細な人物モデルをリアルタイムで表現したUnity Enemiesを検証
※Garden Scene,Median値
検証結果の考察
各プロジェクトの起動時間やフレームレート、パッケージ化に要する時間は性能の高いモデルからリニアに差が現れていました。10月17日に登場予定のUnity 6ではHDRP,URPいずれのレンダリングパイプラインもパフォーマンスが向上し、URPにも正式導入されるRenderGraphによりメモリ使用の最適化も図られる想定ですが、現時点ではモデルCはややフォトリアル表現のリアルタイムレンダリングが難しい結果となりました。
ただ、いずれのモデルもEnemiesのビューポート上で視点を大きく回転させた際のカクツキなどは見られず、制作時のストレスはそれほど大きくない印象。モデルA,モデルBの差異もそれほど大きくないため、モデルBを基準としつつ「起動を6秒早めたい」制作者はモデルA、コスト感を加味して「問題なく動作する」ならモデルCが推奨されます。
【Maya】MetaHumanモデルによるアニメーション検証
大規模開発においてデファクトスタンダード的存在のAutodesk Maya。ゲーム制作は3DCG制作と異なり、Maya上で街一つなどの巨大なシーンデータを組んだり(細かくパーツ単位に分け、ゲームエンジン側で構築を行うケースが多い)、高負荷のレンダリングを行ったりするケースが少ないため、キャラクターモデリングやアニメーションに関する検証を行いました。
その中からピックアップしたのは「MetahumanモデルにHumanIKを割り当て、モーションキャプチャーのデータをソースにして再生する」検証。モデルA,B,Cともにビュー操作がない状態では5体以上複製してもリアルタイム再生が可能(※)だったため、ビュー操作を行いながらアニメーション再生を行った結果、リニアに変化する結果が得られました。
※アニメーションのキャッシュ再生はOFF状態
【Blender】EeveeレンダリングによるGPU検証&パーティクル発生によるCPU検証
BlenderではGPU準拠のEeveeレンダリング時間を検証。Blenderのサンプルファイル「blender-4.0-splash」をデフォルト設定でレンダリングした結果、概ねGPU性能と比例した結果が得られました。ただし、今回は加味していない初回起動時のディスクアクセスを考慮すると、ストレージ性能の高いモデルAが優位と見られます。
CPU負荷検証では、Blenderのサンプルファイル「basic_particle_simulation」のEmission Density(放出濃度)=500でフレームレート計測を行いました。Core i5-14400F搭載のモデルCは7.90fps、Core i7-14700F搭載のモデルAは15.53fpsと、約2倍の差が出ています。一方、CPUをモデルAと同一とするモデルBでは14.24fpsと近似値が出ていました。
検証結果の総まとめ
処理負荷が高い作業と低い作業、GPU負荷が高い作業とCPU負荷が高い作業が交互にやってくる複雑な状況がゲーム制作です。こうした中において、「何があるか分からないから、なるべく余裕を持ったスペックを用意したい」と考える方はモデルAがオススメです。
一方、コスパで選ぶと「モデルB」優位は変わりません。数値上はモデルAよりわずかに下回る結果となっていますが、10万円を超える価格差を考えると「僅差である」と捉えても良いはずです。また、「モデルC」でも各種ソフトウェアはスムーズに動いていたため、Unity Enemiesなどフォトリアルな描画を行わない、あるいはフレームレートを追い求めないなら強力な選択肢になるはずです。
ゲームエンジンにおいては「待ちたいか、待ちたくないか」で選び、DCCツールにおいては「(シミュレーションやプロシージャルモデリングなど)負荷の高い処理に挑戦したいか?」で決めるのが良さそうです。
難しい話も多いですが、基本はモデルBを買っておけば大丈夫なので、迷ったら真ん中をオススメします!
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