この記事の3行まとめ
- 『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』のSE制作事例について開発者にインタビューした記事を「CAP’STONE」にて公開
- 振動スピーカーの音をリアンプする手法などにより、本作独自の「穢れサウンド」を表現
- ゲーム世界の実在感をユーザーに想起させるための環境音の制作事例なども紹介している
2024年9月11日(水)、カプコンサウンドチームの公式Webサイト「CAP’STONE(カプストーン)」にて、『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』のSE制作について開発者7名にインタビューした記事が公開されました。
(画像はCAP’STONEより引用)
『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』(以下、『祇(くにつがみ)』)は、2024年7月19日(金)にカプコンがリリースした、「神楽戦略活劇」を謳ったアクションゲームです。穢れに覆われた山村を舞台に、異界から襲い来る怪物「畏哭(いこく)」との戦いが繰り広げられます。
本作はモノクロ写真やフィルムに着色するレタッチ技術の雰囲気を再現する「人工着色感」がコンセプトにあり、これをサウンドで表現するにあたり、高品質で透き通った音ではなく、あえてノイズ感や汚れた印象のある「穢れサウンド」をベースに作成していったとのこと。
「穢れサウンド」は主に敵キャラクターの演出に使われていますが、それと乖離しすぎないよう、村人のボイスにも60~70年代の昭和らしさが感じられる加工を施しています。
YouTube動画「『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』 体験版告知映像」
「穢れサウンド」の実現に際して、振動スピーカー(※)で鳴らした音をリアンプすることで、編集では表現できない精細な音質を生み出しています。これはカプコンの海中探検アドベンチャーゲーム『深世海 Into the Depths』でも用いられた手法だそうです。
※ 板状の物体などに振動を伝えることで音を増幅させるスピーカー
イメージ通りの音を収録するため、さまざまな材質の物体に振動スピーカーを取り付け、試行錯誤を繰り返したと述べています。
振動スピーカーでリアンプした音は、さらにバイノーラルでも収録し、リバーブを掛け合わせることで「頭の中に語り掛ける」ボイスの演出に活用したそうです。
陶器に振動スピーカーを取り付けた様子。陶器から得られる固く冷たい音と独特の高音が合わさった音質は、人の体が「霊石」に変わっていく際の声質に適していたという(画像はCAP’STONEより引用)
敵キャラクターは、どの敵が近づいているのか声だけでも識別できるように、見た目の印象からさらにイメージを膨らませて、キャラクターごとに記号性のある声を制作しています。
ボスキャラクター「百足女郎」の声については、ディレクターと何度もコミュニケーションを交わしながら3回にわたり音声を作り直し、「クリーチャー感」とは異なる独自の「畏哭感」を掴んでいったとのこと。
既視感のある記号性ではなく、聞くだけで『祇(くにつがみ)』だとわかるような唯一無二の特徴を追求したと語られました。
画像左側がボスキャラクター「百足女郎」(画像はCAP’STONEより引用)
環境音の制作事例についても紹介されました。環境音の役割は、ユーザーに土地を想起させ、ゲーム世界が実在するかのような没入感を演出することだといいます。それを実現するため、山に住む生物の鳴き声といった本物の音声素材の収録を外部の協力会社に発注し、それを分解・再構築して音のループ感をなくすという工程が取られています。
また記事中では、環境音を構成するレイヤーを5種類に分けて解説しているほか、手水舎や鈴の音などを理想の音質に仕上げるための手法などが紹介されています。
拠点では戦闘ステージと比べて穏やかな環境音が流れ、心や耳が癒されるような心地を覚えるという(画像はCAP’STONEより引用)
そのほか、押し寄せる敵の群衆の規模感などを表現するためにMIXバランスを調整するツールを開発した事例、音声が多すぎて情報を処理できない問題を解決するために聞かせたい対象ではない音を下げるシステムを実装した事例など併せて8,000字を超えるボリュームで紹介されています。
詳細はCAP’STONEのインタビュー記事をご確認ください。
『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』公式サイト「『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』サウンドインタビュー 効果音」CAP'STONE