乾いた砂漠の世界を舞台に、人と悪魔が織り成す物語を描いた冒険ファンタジー『SAND LAND』。この魅力の一端を担っているのは、原作者 鳥山明先生デザインの魅力的なメカを彩るサウンド表現です。
プロデューサー 南氏をはじめとする開発のコアを担う4名に、ビンテージテイスト溢れるメカサウンドの作り方や、漫画原作ならではのオノマトペ意識などサウンドデザインのコンセプトを伺うとともに、インタラクティブな表現を実現したCRI ADXの使用術について聞きました。
乾いた砂漠の世界を舞台に、人と悪魔が織り成す物語を描いた冒険ファンタジー『SAND LAND』。この魅力の一端を担っているのは、原作者 鳥山明先生デザインの魅力的なメカを彩るサウンド表現です。
プロデューサー 南氏をはじめとする開発のコアを担う4名に、ビンテージテイスト溢れるメカサウンドの作り方や、漫画原作ならではのオノマトペ意識などサウンドデザインのコンセプトを伺うとともに、インタラクティブな表現を実現したCRI ADXの使用術について聞きました。
TEXT / 神山 大輝
――自己紹介と、『SAND LAND』での役割を教えてください。
南:バンダイナムコエンターテインメントの南です。本作にはメインプロデューサーとして携わっています。『SAND LAND』は、ゲーム以外にも映画『SAND LAND』やアニメシリーズ『SAND LAND: THE SERIES』がありますが、これらのIP全体のプロデュースにも関わっております。
大久保:プラスシグナル代表の大久保です。大手ゲームメーカー2社でサウンドデザイナーを20年ほど経験し、その後独立してプラスシグナルを立ち上げました。本作にはプロトタイプの時点から開発に参加しており、メカの動作音や砂漠の環境音などの効果音の制作や仕様策定、実装までを担当しております。
中島:プラスシグナル チーフサウンドデザイナーの中島です。本作には開発後半からジョインしました。本作は大久保が驚くほどサウンドを作り込んでいたので、まずは同じ認識で音作りができるようにラーニングしたのち、後進のメンバーとともに量産期の作業を行いました。
後藤:ILCAの後藤です。本作ではリードプログラマーとして、プロトタイプ段階から開発に参加しております。私自身もCRI ADXを活用した開発経験があり、システム面だけでなくサウンドに関する初期構築も担当しました。かねてから「ゲームエンジンとミドルウェアの両方が触れるサウンドデザイナー」の重要性は感じており、大久保さんも以前から存じ上げていたので、本作では非常に綿密なやり取りをさせていただきました。
――『SAND LAND』は漫画原作で、映像化の報道が先んじていました。本作をゲームとして開発するに至った経緯について教えてください。
南:本プロジェクトは実はゲーム開発が先で、映画制作の前から開発が進行していました。原作『SAND LAND』は2000年5月から週刊少年ジャンプで連載された作品で、水源である川が枯れてしまった砂漠が舞台となり、悪魔の王子ベルゼブブが人間の保安官ラオと一緒に砂漠のどこかに存在する“幻の泉”を探し出す冒険ファンタジーです。鳥山明先生が得意とするメカデザインも相まって素晴らしい作品であるため、これをさらに世界に広めたいと考えました。
バンダイナムコグループとして、映像制作はバンダイナムコフィルムワークスが中心となり、玩具やフィギュアなどMD展開が出来る強みを活かし、集英社様の協力も得ながらプロジェクトが始まり、まずは企画書ベースでゲームの骨子を固めることになりました。
――ゲームとアニメシリーズでは、漫画原作にはない緑豊かな「フォレストランド」が追加されました。ここで登場するムニエルやベルゼブブ達と共に冒険するアンは、は、鳥山先生によるキャラクターデザインと設定とのことですが、ゲーム内容に対し、鳥山先生は原作者として監修をされていたのでしょうか。
南:原作は1巻完結ですが、より世界中の多くの方々に「SAND LAND」を好きになっていただきたいと思い、砂漠の対比となるような「フォレストランド」の設定やアイデアをいただきました。
本作で一番に見せたかったのはもちろんベルゼブブ達の冒険ではありますが、やはりアクションゲームとして「鳥山メカ」が動かせるところが魅力だとも思っています。そこにアクション的な要素を追加して、ゲームとして成立するように開発を続けました。新キャラクターである天使ムニエルやアンの設定やデザインは鳥山先生に描いていただき、シナリオも鳥山先生にご監修いただきました。
ゲームは、鳥山先生が描いてくださった世界を大切にしながら開発をしております。ゲーム部分は動画を見ていただきまして、キャラクターの動きやメカの再現度など、ご好評いただきました。
――ちなみに皆さんは原作漫画をご存知でしたか?
後藤:当時、本誌で読んでいましたよ。基本的にはラオのイメージがあって、ヒロインがいないという、その印象をよく覚えています。
中島:「おじさんとメカ」という描きたいものを描いているといった感じでしたね。もちろん、開発が始まってからも、資料としてかなり読み込んでおります。
――開発にあたって言語化されたコンセプトがあれば教えてください。
南:「鳥山メカでアクションゲームを作りたい」というのがコンセプトです。それに加えて、「SAND LAND」を舞台としていますので、鳥山先生からは「ラオとベルゼの物語をしっかり描いて欲しい」とご要望ももちろんございまして、悪魔と人間のストーリーをしっかり描くことを心掛けていました。
水がほとんどない砂漠の世界を伝えるため、ビジュアル面では熱波による揺らぎの表現を付与したり、「水のゲージがなくなるとピンチになり、水を補給すると回復する」といったゲームデザイン上の要素と結びつけたりして表現しています。
――サウンドのコンセプトについてはいかがでしょうか。本作の開発にあたって、どのようなサウンドデザインを目指したかを教えてください。
大久保:サウンドは全体的にお任せいただきましたが、特にメカについては「機械」そのもののサウンドを写実的に表現するのではなく、ところどころサビがあるような、乾いたビンテージ感を覚えるサウンドを意識して制作しました。
また、漫画原作ということもあり、オノマトペ化しやすい、口で表現しやすいサウンドを目指しています。実制作においてはデフォルメと写実的表現の中間辺りを狙って制作しました。
中島:オノマトペは漫画に描かれた表現も大いに参考にしました。例えば「ガキーン!」という音は、「キ」が金属音なんです。この音が大げさに入ることによって、それっぽさが出てくるんですよ。
「鳥山メカ」はデフォルメされたシルエットに見えて、とにかく描き込みがすごいんです。サウンドの情報量も負けないように増やす必要がありましたし、実際に操作できるという点では「音の手触り感」を重視しました。具体的には、1つ1つのアクションが全てサウンドとして返ってくるような設計にしています。
南:本作ではメカのカスタマイズが可能ですが、エンジンを変更するとエンジン音も変わるんです。また、メカのブーストを吹かすと「ドゥルン!」という駆動音が鳴るのですが、この感覚もエンジンごとに特色があって面白いんですよ。
中島:それに加えて、例えば戦車のような見た目の「バトルタンク」には旋回やハッチの開閉、車体の揺れ、全てに音が付いています。1つに書き出した音声ファイルを貼り付けているのではなく、メカの1つ1つの動作に対して、UE4で細かく音を付けているんです。
南:あとは「バトルメカ」も大好きなんですよ。ウィーンガシャガシャみたいな、二足歩行で頑張っている感がたまらないというか。
大久保:バトルメカは「メカなのに、生き物のように息をぜえぜえしてる感じ」を意識しました。軋む音を入れると、頑張っていたり、疲れていたりするような表現を付加できるんです。動作音も、メカが実際に喋っているわけではないですが、あのシルエットから発音されているサウンドとして違和感がないように意識して作りました。
――原作が漫画だからこそ、オノマトペを意識した音作りを行ったというのは面白いですね。サウンドとしては何名ほどが関わっていましたか?
大久保:実は最初は1人で頑張っていたんです。仮BGMまで作っていました。ただ、プレイされた方は分かると思うのですが、このゲームはかなり大規模なんですね。さすがに手が回らず、最終的には新卒や未経験者が3名、これに加えて経験者として中島がジョインし、総勢5名で作業を行いました。まさに『SAND LAND』はプラスシグナルの組織化の契機となった作品でもあります。
中島:開発後期は、大久保が東京からディレクションを行い、私が神戸スタジオ側をまとめるかたちで制作しました。過去に私が経験したタイトルでは、サウンドの再生処理はプログラマーに依頼していたので、今回は「ここまでツール側で音作りをして良いのか!?」という新鮮な驚きがありました。デバッグや設計まで含めて弊社が担当することで、本当に「ここまでやって良いのか?」と思うくらい、やりたいように作らせてもらいました。やりすぎて、後藤さんに泣きつくこともありましたが……。
大久保:サウンドのアウトソーシングはどうしてもwav職人(音声ファイルを作る専門で、実装までは行わない)になりがちですが、それを変えたかったんです。自分たちで実装まで責任を持ってやらせていただくことができたタイトルという意味でも感慨深い作品となりました。関わってくれた新卒たちも大きく成長してくれて、開発後の今は『SAND LAND』ロスになってしまっています。
後藤:ほぼインハウスのような(社内にサウンド職がいるかのような)動き方をしてもらっていましたね。やり取りの回数も多く、いずれもカジュアルで、細かい音も1つ1つすり合わせしながら進めていきました。
――サウンド制作に使用したツールを教えてください。
大久保:メインDAWはReaper、カットシーンのMAとジングル系の制作はNuendoで行っています。ミドルウェアはCRI ADXを採用しました。また、本作の特徴として、メカの動作音などはUE上のアニメーションエディタに発音トリガーを配置して細かく制御しています。このため、サウンドデザイナーは全員CRI Atom CraftだけでなくUE4も触っています。
中島:あとはExcelですね。VBAを用いてダイアログ(セリフ)の再生制御を行っています。フィールドを移動中、ベルゼは「良い宝箱があるぞ」のように自動で喋っていますが、彼のセリフが発音されている間はジャンプなどの動作を行った際の「はっ!」「やっ!」といったダイアログが発生しないようにしています。このようなリミットグループの割り当てを自動化しています。
後藤:セリフの優先度についてはプランナーから指摘されたものですね。何万というファイルがある中での作業でしたが、「CRI ADXを使えば、音の制限が掛けられたはず」という感じで、あとはプラスシグナルにお任せしてしまいました。
――ダイアログを含めて、ファイル総数を教えてください。
大久保:全部で53,175個のサウンドが組み込まれていました。広い世界を表現する環境音も多いですし、メカサウンドも細かく1つ1つ制御しているので、それなりの数になっています。
中島:音数が多いとメモリを逼迫しますので、なるべく素材は少なく、尺(長さ)も短くした状態で、CRI Atom Craft側で揺らぎを持たせるような工夫をしていました。例えば滝や川は1秒ほどの素材ですが、AISAC(※)で長めのモジュレーションを掛けることでランダム性を持たせています。炎などの表現も同様の仕様となっています。
※ CRI Atom Craft内の機能。Advanced Interactive Sound and Active Controller。AISACコントロール値に対応するボリュームやピッチ、フィルタ等のカーブを作成して音色をインタラクティブに変化できる
――メカサウンドの制作について具体的に教えてください。
大久保:メカは大量にフォーリー収録した機械音や金属音を細かくファイル分けして、ピッチとボリュームの変更と組み合わせによってUE4上で音作りをしていました。モーターのガーンというアタック部分と、金属系のキーンというリリース音を組み合わせて、それぞれピッチなどを変化するだけでも大量のバリエーションが作れます。
また、本作はメカが大切なので、メカのアニメーションが開発途中で変更されるケースもあったんですね。アニメーション尺に合わせた音作りをDAWで行うよりも、UE4のアニメーションシステム上で細かくサウンドを設定したほうが後段の作業にも対応しやすくなっていました。
後藤:AnimNotifies(アニメーションシーケンスの特定地点でのイベント発生を通知する機能)にミリ秒単位の誤差があったときなど、プログラマー側ではサウンドの正誤判定が難しい場合では実際にサウンドデザイナーにUE4を触ってもらったほうが早いんですよ。
私自身もCRI Atom Craftなどは触ったことがあったので、キューシートの割り方の指定や、AISACで欲しそうなパラメータの事前設定など、できる限りサウンド側が作りやすい設計を心がけました。「ここは常時パラメータを流しておく設計にするね」といった感じで、大久保さんともやり取りしながら開発環境を整えていましたね。
中島:当初は「ここまでサウンド側が実装に関わって良いのか!」と驚きました。この辺りはCEDECでも発表しようと思っているので、気になる方はぜひ聴講していただきたいです。
『SAND LAND』におけるCRI Atom Craft活用術 | CEDEC2024――本作では10種類以上のメカを実際に操作できますが、皆さんそれぞれの視点から、一番のお気に入りを教えてください。
南:バトルアーマーとバトルメカですね!バトルアーマーは近接攻撃特化で攻撃力が高いので、敵を一掃する爽快感がたまりません。また、オーソドックスにバトルタンクにも思い入れがあります。
サウンドという意味だと、ジェットホバーが一番好きです。パーツを変えるとエンジン音が変わるという仕様が特に分かりやすいメカになっています。だだっ広い砂漠と違って、フォレストランドでは道なりにうまくカーブして進まなくてはいけないレベルも多いので、ブレーキを掛けたりエンジンをふかしたりといった操作面でのフィードバックがとても良いメカになっています。
中島:ジェットホバーは割とオーソドックスな実装になっていますが、気に入っていただけたなら嬉しいです。実装面の立場から言うと、バイクが一番好きです。序盤から活躍するハイスピードなメカですし、小回りが効くので操作しがいがあります。
中島:カスタムパーツで「加速装置」があるのですが、これを使うとさらに高速な移動ができるようになるんです。バイクのスピード感を演出するために、加速中は周りの時間の流れが遅くなり、これに伴ってBGMやSEのピッチを露骨に下げています。これはかなり大胆な設計ですよね。エラーが出ないか心配でしたが、意外に大丈夫だったので、演出として取り入れてみました。
大久保:私はジャンプメカが一番好きです。膝の逆関節にロマンがありますよね。ベルゼが乗り込むコックピットの左右回転などの細かい動きに音をつけるのも楽しかったですし、ストンプなどのアクションもあって良いメカなんです。
コックピットの左右回転はモーター制御だと思っていたのですが、イラストを見るとマフラーが付いていました。つまり、これはエンジン駆動なのかもしれません。そして、膝パーツの制御は油圧の可能性があります。最終的にモーター回転音とエンジン駆動音をレイヤーしたサウンドを作りました。
後藤:ホバータンクが好きですね。浮いていて、攻撃の威力も戦車砲相当なので、「これが最強では?」と思っていました。でも、やっぱりサウンドで言えばバトルタンクが好きかな……最初期はずっとバトルタンクで調整や実装を繰り返していたので、かなりの思い入れがあります。
――それぞれお気に入りメカが異なっているのは面白いですね。それだけ、どのメカにも魅力があると感じました。先ほどバイクの事例もありましたが、特に実装面でこだわったメカはありますか?
大久保:それで言うと、バイクは横滑りの値も取得していますよ。ドリフト時の「ザザザザッ!」というサウンドも、タイヤと接地している地面が砂漠か植物かを検知していましたので、走行面だけでも音数が非常に多くなっていました。
中島:大久保が作ったシステムですごいなと思ったのが、車輪系のメカではジャンプして着地できなかった場合にモーターが空転する仕組みが入っていたところです。走行速度に応じてエンジン音のピッチなどが変化するのはよくある実装ですが、高いところからジャンプした後に着地できないと回転数が上がって、さらにサウンドが変化するんですね。
後藤:これは自分も覚えていて、ある日「空中に浮いているという判定を取ってくれ!」と言われて。それって中間値は必要ですか?0,1だけで大丈夫ですか?飛び降りて滞空時間が長いときはどうしますか?など仕様を相談しながら進めた記憶があります。良い演出ですよね。
――メカ以外のサウンドについても触れたいと思いますが、環境音などで意識した点などがあれば教えてください。
大久保:まず、砂漠の環境音は自分がいる位置の高さ(標高)でサウンドが変化する仕組みを取り入れています。また、マップにはいくつか洞窟がありますが、洞窟の入口に風が吹き込むようなサウンドを配置しています。洞窟に入る瞬間はサイドチェインでもともとの風の音を下げ、専用のサウンドが大きく再生されることで場面の切り替わりを表現しています。
――洞窟に入った瞬間の風の音は非常に良い実装と感じました。一般的なゲームでは洞窟の内外で環境音と残響の設定が異なるのみですが、移動時に風切り音を入れる実装では「砂漠の過酷な環境から、風が凌げる洞窟に入った」ことが強調されているように思います。
大久保:あとは、砂漠の世界は昼と夜で様相がまったく異なるんですよ。日中の熱波と打って変わって、夜は気温も大きく下がります。このため、環境音をガラッと変えているほか、BGMもグラデーションで変わるようになっています。
本作では戦闘状態とフィールド移動はシームレスに変化しますが、ここはBGMの水平遷移などではなく、通常のクロスフェードでぬるっと切り替わるような処理を入れています。
――バイクなどで敵のそばを駆け抜けていくシーンも多いですよね。本作は川や水の定位、洞窟内の反響などが作り込まれている印象ですが、特に工夫した演出やエピソードがあれば教えてください。
中島:後藤さんにエリアごとのスナップショットの切り替え処理を用意してもらって、DSPスナップショット(※1)をCRI Atom Craftで管理しました。川はAtom Area Sound Volume(※2)と専用のボリュームを組み合わせて実装しています。また、洞窟内では川や滝が聞こえないよう、UE4標準のオクルージョンをCRI Atom Craft側で制御しました。これと同時に、滝の裏に回った際は音がこもるなどの処理も入れています。ただ、ボリュームの配置は自動化ができておらず、洞窟などは手動でボリュームを配置することになりました。
※1 DSPバス設定に追加できるパラメータセット。ゲームのシーンに応じてスナップショットを適用することで、それぞれのシーンに応じたDSPエフェクトのパラメータを一括で設定できる
※2 環境音を3D空間上の領域を指定して実現する機能。川や森などの広域にわたって環境音を実装する際、通常は点音源オブジェクトを複数配置する形になるが、Area Sound Volumeを使うことで擬似的にエリア内での広域環境音をシミュレートできる
南:このゲームは東京ドーム1,900個ぶんの広さがあるんですよ。手動での作業はなかなか大変ですね。
大久保:力技になってしまいましたが、自動化した場合も「ここだけ残響がおかしい」「おかしな音が鳴っている」など不具合が必ず生じますし、今回はサウンドのデバッグも弊社が担当しておりましたので、これが適切なワークフローでした。
――ちなみに、サウンド以外にCRI・ミドルウェアが提供するミドルウェアを使用した部分はありますか?
後藤:CRI SofdecとCRI LipSyncを使用しました。本作はカットシーンも基本的にはリアルタイム処理となっていますが、背景に巨大な建造物が出てくるシーンなどはメモリが足りなかったりロード時間が間に合わなかったりするため、カットシーンの一部のみをCRI Sofdecで圧縮したムービー再生で代替していました。UE4で動画を撮ったものをそのまま持っていっています。
CRI LipSyncに関しては、モーションに活用したわけではなく、喋っているかどうかの判定に使用しています。鳥山先生のキャラクターには誇張したリップシンクが似合うことと、そもそも人間以外の登場人物が多かったことから、再生と停止の指針として活用させていただきました。
大久保:CRI・ミドルウェアはサポート体制も素晴らしかったです。チャットも常時繋がっていて、「ひょっとするとチームの中にサウンドプログラマーが2人くらい入ったのではないか?」と錯覚するくらい開発が捗りました。
後藤:パッチも何回も作っていただきましたし、なにか問題が起きたときの調査も非常にスピーディで助かりました。Niagaraとの連携ツールなども作成していただきましたね。すごく有益でした。
――ありがとうございました。最後に、本作ファンや未プレイの方に向けて、メッセージをお願いします!
南:映画公開やアニメ配信に続いて、鳥山先生が大好きなモノが詰まったゲームを無事に発売することができて、本当に嬉しく思っています。人間と魔物がどのように関わっていくのか、そのストーリーを感じていただくとともに、サウンドも含めて世界観を隅々まで体験していただけると嬉しいです。
後藤:特にメカの動きやキャラクターの動きは、漫画の世界がそのまま動いているような形にできたのではないかと思っています。映像媒体で『SAND LAND』を知っていただいたファンの方にも楽しんでいただけると思いますので、ぜひ手にとっていただきたいです。
中島:メカは手触り感は、本当に丁寧に調整しています。カスタマイズによるゲーム性の変化も含めて、映像だけでなく「動かせるメカ」をぜひ楽しんでいただければと思っています。
大久保:後進や学生には「ゲームサウンドは、手で触れる音を作るべき」と伝えています。本作でも、鳥山先生の素晴らしい世界を「サウンドを通じて手で触れる」ということを感じていただきたかったんです。こればかりは動画で見るだけでは伝えられません。ぜひゲーム本編をプレイして、メカを実際に操作する感覚を味わってください!
『SAND LAND』公式サイト『SAND LAND』におけるCRI Atom Craft活用術 | CEDEC2024ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。
ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。
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