この記事の3行まとめ
Blender開発チームは2024年7月16日(現地時間)、オープンソースの無料3DCGツール「Blender」のバージョン「4.2 LTS」を正式にリリースしました。
バージョン4.2はLTS(長期サポート版)として開発されており、2026年7月までの2年間のサポートが行われるとしています。
本バージョンでは、レンダリングエンジン「EEVEE」の大幅なリファクタリングや、コンポジットでのGPU使用といったレンダリング機能の強化などが行われています。
レンダリングエンジン「EEVEE」の改善
EEVEEに大幅なリファクタリングが実行され、グローバルイルミネーション、ライト、シャドウなど広範囲にわたる機能改善がなされています。
多くの機能は互換性が保たれていますが、環境光やシャドウ、一部のマテリアル関連機能、ブルームなど一部の機能は手動で設定が必要です。設定が必要な機能と設定方法については公式ドキュメントをご確認ください。
2つの空間を接続した表現が可能な「Ray Portal BSDFノード」が追加に
Ray Portal BSDFノードは、シーン内に別の場所のレイを転送します。
ポータルを通過する際の色・転送先でのレイの開始位置や方向を指定することで、2つの空間を接続するポータルのような効果を表現できます。
また、レイの位置と方向を置き換えることで、画面上のカメラフィードのような効果も実現できます。
それぞれの場合のノード設定例はBlender 4.2マニュアルを参照してください。
コンポジットの高速化や、コンポジターにおけるnodeの仕様変更
最終レンダリングのコンポジットが、GPUを使用して高速化できるようになりました。GPUを使用するかどうかは、コンポジターエディターのプロパティパネルで設定できるほか、Render settings画面からも設定可能です。また、CPUベースのレンダリングコンポジターも改善の結果、高速になったとのこと。
コンポジターにおいて、ノードは左から右へと処理されるように変更されました。これにより、一度縮小したピクセルは再度拡大しても元の情報を復元せず、ピクセルが縮小したままとなります。
他にもこのノード処理の変更により、繰り返しやサイズの推論、画像サンプリングなどの場面で影響がおよぶ可能性があります。
詳細は公式ドキュメントをご確認ください。
ジオメトリノードの改善
ジオメトリノード関連では、マトリックスソケットと呼ばれる新たなソケットタイプが実装され、対応ノードが多数追加されました。また、既存のノードには大幅な高速化を含む多くの変更が加えられています。
これにより、Scale Elementsノードでは4~10倍、Sample UV Surfaceノードでは大きなメッシュに対して10~20倍ほど計算速度が向上するとしています。
また、ビューポート上におけるマウスカーソルの位置を認識し、処理できるようになりました。本バージョンで追加された「クリックを待つ」機能とジオメトリノードを組み合わせることで、クリックした部分を中心に効果を発揮させるといった制御が可能です。
Blenderのアドオンやテーマをオンラインで導入可能に
従来アドオンやテーマと呼ばれてきた機能は、本バージョンより「Extensions」として扱われるようになりました。
併せて、Blender 4.2のアルファ版から新たに導入された、ExtensionsをWeb上で公開・共有できる公式プラットフォーム「Blender Extensions」が、正式に利用開始されました。以前までBlender内に標準搭載されていたアドオンなどの多くが同プラットフォーム上で扱われるようになりました。
「Blender Extensions」で公開できるのはオープンソースのExtensionsのみです。同プラットフォームで公開されていないExtensionsは、以前と同様の手順でインストールできます。
その他、ベータ版で使用可能であった9種類に加えてさらに7種類追加された、合計16の新たなスカルプトツールが使用可能となるなどのアップデートも行われています。
詳しくは、Blender 4.2 LTSのダウンロードページならびにリリースノートをご確認ください。
「Blender 4.2 LTS」ダウンロードページ「Blender 4.2 LTS」リリースノート