「撮れ高」をテーマにしたワールドを投稿するコンテスト「clusterゲーム革命前夜」連動企画として、ゲームメーカーズ編集部が気になるワールドをピックアップ!
砲弾をタイミングよくバットで打ち返してボスを倒すワールド『Don’t Hit The Rabbits!』の制作者に、テーマを企画として落とし込むまでのプロセスや制作で苦労したポイントなどを聞きました。
「撮れ高」をテーマにしたワールドを投稿するコンテスト「clusterゲーム革命前夜」連動企画として、ゲームメーカーズ編集部が気になるワールドをピックアップ!
砲弾をタイミングよくバットで打ち返してボスを倒すワールド『Don’t Hit The Rabbits!』の制作者に、テーマを企画として落とし込むまでのプロセスや制作で苦労したポイントなどを聞きました。
INTERVIEW / 神谷 優斗, 神山 大輝
TEXT / 神谷 優斗
KoNatsuさん
3Dアバターを制作してBoothで販売するほか、clusterのワールド制作も行う。「clusterゲーム革命前夜」では、飛んでくる砲弾をバットで打ち返してボスを倒すワールド『Don’t Hit The Rabbits!』を制作。
――自己紹介をお願いします。
KoNatsuと申します。普段はclusterやVRChatで使えるアバターをBoothで販売したり、clusterでワールドを作ったりしています。過去にはclusterで開催された「アバターマーケット」や、VRChatで行われた「バーチャルマーケット(Vket)」などのイベントにも出展しました。
――「clusterゲーム革命前夜」に参加した経緯を教えてください。
以前「ClusterGAMEJAM」に参加したことがあり、今回もその流れで面白そうだなと思って参加しました。
――今回制作された『Don’t Hit The Rabbits!』について、簡単に紹介をお願いします。
本作はウサギを守りつつ、敵から飛んでくる砲弾をタイミングよくバットで打ち返して敵を倒すのがコンセプトのゲームです。
「砲弾に交じって飛んでくるウサギを打ち返してしまうと、ウサギが怒ってミサイルで復讐しにくる」というかわいいペナルティが、今回のテーマである「撮れ高」につながっています。
――本作はUnity(Cluster Creator Kit ※1)とワールドクラフト(※2)、どちらを使用して作られているのでしょうか?
※1 clusterのワールドを製作できる、Unity用のテンプレートプロジェクト。制作したワールドは、Unityから直接clusterにアップロードできる
※2 cluster内でワールドを制作できるツール
UnityとCluster Creator Kit(CCK)を採用しています。CCKの方ができる表現の幅が広く、ワールド制作の自由度が高いためです。
――Unity(CCK)のほかに使用したツールはありますか?
モデル制作にはBlender、そのほかにもAdobe Illustrator、Adobe Photoshopを使用しています。
――今回のテーマ「撮れ高」から、どのようにしてワールドのアイデアを生み出したのでしょうか。
「撮れ高」という言葉から、配信者が驚くような仕組みがあるとよいと思いました。
そこから発想した「思わずやりたくなるちょっと悪い事を用意して、それを行ってしまうと罰が下る」アイデアが、本作の「ウサギを打つと、罰としてミサイルが飛んでくる」ゲームシステムにつながりました。
――アイデア出しから、アイデアを具体的な仕様に落とし込むまでのプロセスを具体的に教えてください。
私はどちらかというと、先にCCKの仕様から「実現できること」を考えます。そこから「実現できること」にゲームデザイン的な要素を組み合わせてゲームの形にしていきます。今回は、最初に思いついた「敵からプレイヤーめがけて飛んでくる弾を打ち返すゲーム」をベースに、細かなアイデアをノートに起こしつつ仕様を固めていきました。
――clusterで実際にワールド制作を行った際、どのような手順で行いましたか?
本作は2人チームで開発しており、私はデザインを、もう1人のチームメンバーはロジックを担当しています。
最初は思いついたゲームが本当にCCKで実現できるのかを確かめるために基本ロジックの実装から始めました。
敵からの発射物をプレイヤー付近に落とすロジックを作成したあたりから、実装と同時に3Dモデル制作を進めていきました。その後は出来上がった3Dモデルを都度ゲームに組み込んでいく形で進行していきます。ロジックはモデルの見た目に影響を受けないように作成し、見た目に変更があってもロジック側に影響が出ないPrefab作りを意識しています。
デザイン担当者はBlenderで作成した3DモデルをすべてUnityパッケージにして渡すことで、ロジック担当者のモデル取り込みの手間を減らしています。
――エフェクトや筐体、ボスキャラクターなどのアセットは、どのようにして用意しましたか?
サウンドとHumanoidアニメーションは外部のものを使い、エフェクトや3Dモデルは自作しています。エフェクト用のパーティクルは、Adobe Illustratorで用意した個々のイラストをUnityでパーティクルとして組み上げるフローで制作しました。
筐体やボスキャラクターなどの3Dモデルは、Blenderでのモデリングの後にAdobe Photoshopでテクスチャリングを行っています。
――カートゥーン調のエフェクトなど、世界観がうまく統一されているように感じました。世界観を表現するために気を付けていることがあれば教えてください。
「古いアーケードゲームっぽくしたい」のように、まずは大まかな世界観の雰囲気を決め、そこから世界観と統一感のあるストーリーを考えています。その後、緑だったらこの緑、赤ならこの赤といった配色パターンを決定します。統一感を出すために、あまり多くの色を使わない、フォントを統一する、文字の修飾は黒い淵・パキッとした影・ドットのみ使用するなどにも気をつけています。
――発射物や砲台、落下位置などを決める仕組みや、ボスキャラクターのアニメーション遷移などはどのように実装されているのですか?
「できるだけ決め打ちの実装にはしたくない」という思いがあり、発射物に関してはプレイヤーに対応したランダムな位置に飛んでくることを意識しています。
発射物のロジックでは、まずステージ上のプレイヤーの近傍2m~4mのランダムな位置を落下地点に決め、そこに落下予測地点を示すオブジェクトを生成します。その後、落下地点へ正確に発射物が落下するよう、砲台の水平角と仰角を変更し、初速固定で発射物を生成しています。
落下地点に対して放物線を描く経路は鋭角と鈍角で2つ求まります。どちらの経路にするかで打ち返す難しさが変わるため、難易度調整のためにもランダムで経路が選択されるようにしました。
敵のアニメーションはシンプルに実装しています。通常はアイドルアニメーションを再生し、「発射するとき」「被弾したとき」「ゲームクリア」「ゲームオーバー」それぞれのシグナルを受信してアニメーションが切り替わる仕組みになっています。
――実装やゲームデザインなどの面で、複数人プレイに対応するにあたって試行錯誤したエピソードがあれば教えてください。
本作では、プレイ人数に合わせて同時に発射される弾の数が変わるようにしています。前述した発射物計算のロジックをステージにいるプレイヤーの数だけ繰り返し、それぞれがランダムな弾、角度、位置で着弾するようにしました。
しかし、同期の関係でオーナー以外のプレイヤーは「打ち返せるタイミングと見た目にずれが生じてしまう」「打ち返しているのに被弾してしまう」ことが頻発しました。そのためオーナー以外は被弾しやすく、人数が増えた分だけ難度が上がってしまったことで、やむなく「ソロプレイ(複数も可)」と表記することになりました。
――clusterでゲームを制作する上で、clusterならではの利点はありますか?
利点としては、簡単にマルチプレイのメタバースゲームが作れることだと思います。スクリプトが使えるようになってから、実装の自由度がグンと上がった気がします。コンポーネントによるノーコード実装も利点です。ただ、受信者と型によって思い通りにイベントを送れなかったり、コンポーネントのパラメータをどう設定していいかわからなかったりと最初は戸惑うかもしれません。
――逆に、clusterならではの困りごとはありますか?
困りごとは、同期システムの都合上、オーナーと参加者にプレイフィールの差が生じてしまうことです。
また、VRとデスクトップによって共通の挙動になってしまうことも困りごとのひとつです。「VR版ではアイテムの好きな位置をつかめるが、デスクトップ版ではつかむ位置を固定する」のように、挙動を分けられるようになるとうれしいです。
――制作にあたり、最もこだわったポイントは何でしょうか?
デザイン面では世界観にこだわりました。統一感を重要視し、テキスト1つ1つのテイストが合うよう意識しました。打ったとき、被弾したとき、ダメージを与えたときに出るエフェクトなども、統一感を持たせるためにすべて自作しています。
ゲーム面では、結果としてソロプレイ推奨のゲームにはなりましたが、途中参加ができる点と繰り返し遊べる点は意識しました。ゲーム側の都合で、ユーザーにインスタンスの立て直しや待機を強いることができるだけないようにしたいと思っています。
――制作で苦労したエピソードはありますか?
デザイン面では、世界観を決めるのに苦労しました。本作を作るにあたり、入口とゲームのプレイフィールドをぶっつりと分けるのではなく、ストーリーの流れを感じさせたい思いがありました。そこで、筐体内にゲートを置くことで「100円を入れてゲームの中に入る」流れを表現しました。
ゲーム面では、落下地点に対して正確に発射物を落とす仰角計算の実装が、計算間違いによって何度もずれてしまい苦労しました。最終的に誤差の無い計算アルゴリズムができ、予測地点に正確に着弾するようにできました。
――これからの作品も楽しみにしています。ありがとうございました。
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