Epic Games Storeを「開発者・パブリッシャー向け」だけでなく「プレイヤー向け」へ機能強化
講演の前半では、エピック ゲームズ ジャパンのオペレーションマネージャーであるWilliam Bernard氏が登壇し、Epic Games Store (以下、EGS)における最新の取り組みと、エコシステム拡大に向けたビジョンについて語りました。
エピック ゲームズ ジャパンのオペレーションマネージャー William Bernard氏
EGSはリリース以来、長らくストア開発の多くをパートナー(開発者・パブリッシャー)向け機能の拡張 に充ててきました。その結果、パートナー向けの機能が整ってきた一方で、ユーザーエクスペリエンスの向上は十分に取り組めなかったといいます。
Bernard氏はこの状況を「ストアの半分はできたが、もう半分が残っている」と表現し、今後はプレイヤーコミュニティに注力を移す 方針を示しました。
Epic Gamesが目指すのは、他者との交流を楽しみながら長期的にEGSを使い続けるユーザーを増やす こと。主な対象は、『フォートナイト』を通じて同社のエコシステムに入ってきた次世代のPCゲーマーです。友達と協力して遊ぶ楽しさや、印象的な瞬間を共有する楽しさを知る彼らにとって、EGSを「ゲームを買うためにわざわざ訪れる場所」ではなく「ホームベース」に、さらには家でも職場や学校でもない「サードプレイス 」にしたいとBernard氏は語りました。
ロイヤルティ、パーソナライズ、フレンド経由の発見を3つの柱に 現在のデジタル配信プラットフォームを支える土台として、「ロイヤルティ 」「パーソナライゼーション 」「ソーシャルディスカバリー 」の3つの柱が挙げられました。
1つ目の「ロイヤルティ」は、単にポイントを配るだけでなく、ユーザーの行動や参加に報いて「また来たい」と思ってもらう仕組み です。これまでの「Epic報酬」や無料ゲームの配布は初期の試みと位置付けられ、2027年には新たな施策の提供が予定されています。
2つ目の「パーソナライゼーション」は、現在のストアにはまだほとんど備わっていないといいます。今のストアは、ユーザーの好みや地域、誰と遊んでいるかといった情報を十分に活用しきれていません。人気の高い「Discover Something New」のエリアもユーザーひとりひとりに最適化した内容にはなっておらず、今後は一例として「ゲームのメインストーリーをクリアした人に、そのDLCを薦める」といった仕組みを取り入れていく必要がある と語られました。
3つ目の「ソーシャルディスカバリー」は、フレンドを新しいゲームとの出会いのきっかけにする 考え方です。Epic Gamesの調査では、38%のユーザーがオンラインの友達を通じてゲームを見つけており、リアルの友達と合わせるとその影響力はさらに拡大すると見られています。EGSで要望の多い機能の上位2つも「フレンドアクティビティの表示」と「ユーザーレビュー」だといい、この領域の強化が急務であることがうかがえます。
加えて、近年ではYouTube ShortsやInstagram Reels、TikTokなどのショート動画をきっかけにゲームを発見するユーザーが増加 しています。Bernard氏によれば、ストアでゲームを確かめるまでに同じゲームのショート動画を平均20回ほど見るともいわれており、こうした外部サービスでの体験をいかにしてストアと連携させるかも今後の課題に挙げられました。
Epic Gamesのユーザー調査の結果、新たなゲームを発見するきっかけとして、38%はオンラインの友達経由、88%はYouTubeやTikTokとの回答が得られた
外部ストアやキュレーターとも連携 プラットフォームへ費やした時間が長くなるほど、ユーザーはより深くプラットフォームに関わるようになり、結果的にゲームの購買にもつながるとBernard氏は述べました。
そうしたエンゲージメント向上の施策として、EGSではキーレス連携 を導入しています。外部ストアでPCゲームを購入する場合、プロダクトキーを受け取ってEGS側で有効化するというフローを挟まず、EGSが販売プラットフォームと直接連携することで、ユーザーは連携先でゲームを購入しつつ、ゲームの権利が自動でEGS側に付与 されます。
また、Discordとの連携を生かしたプラットフォーム「player.gg 」との連携も開始。プレイヤーはゲームのプレイテストに参加登録でき、開発者はプレイヤーから直接フィードバックを集められます。
さらに、キュレーターとの協業施策も始動。最初のキュレーターである「lookingfor.game 」のLucy James氏とは、プレイヤー向けのニュースレターを共同で準備しているほか、キーレス連携を使って同氏のチャンネルを通じたゲームの提供も行っています。
新ランチャーはゼロから再設計。起動速度は平均約5倍へ
「Epic Games Launcherは競合と比べて動作が重い」という声を受け、新しい技術でランチャーをゼロから作り直し 、講演の数週間前にプレビュー版を公開 。起動速度は平均で約5倍 、システムトレイからライブラリに戻る操作は平均で約15倍 の高速化を実現し、ライブラリもほぼすぐに表示されるようになったとのことです。
新ランチャーのパフォーマンス測定結果。調査環境はWindows 11、AMD Threadripper(3.5GHz、32コア)、RTX A6000、メモリ128GB
パッチノートとプロフィールを追加。ストア自体の作り直しも 長らく要望が寄せられていたというパッチノート が新たに実装。今後はゲームのアップデート情報を商品ページから直接確認でき、公開時にはユーザーに通知が届きます。
また、プレイヤープロフィール機能 についても紹介されました。アバターやバナー、レベル、ウィッシュリスト、最近遊んだゲーム、実績などで、プレイヤーが自分らしさを表現できるページです。これがフレンド同士のつながり(ソーシャルグラフ)の土台 となり、友達と新しいゲームとの出会いを共有できるようになるとのこと。
なお、EGSで表示される実績は、講演後半で紹介されたEOSの実績機能を使って実装する仕組みとなっています。
新ランチャーの目的は性能の改善だけではありません。もう1つの大きな目的として、旧ランチャーでは難しかったストアそのものの作り直しを可能にする とJames氏。今後さらに多くのアップデートを予定しているとのことです。
Epic Online Servicesでオンラインゲーム開発・運営の負担を軽減
後半では、エピック ゲームズ ジャパンにて技術サポートを担当するYooCheol Choe氏より、ゲームにオンライン機能を統合する基盤技術「Epic Online Services 」(以下、EOS)の概要と、開発現場での具体的な活用基準について解説されました。
講演の目標は、EOSがどのようなサービスを提供しているのかを“1枚の地図”として示し、自身のゲームに必要かどうかを判断する基準を持ってもらう ことだといいます。
エピック ゲームズ ジャパンでEOSの技術サポートを担当するYooCheol Choe氏
まずは、EOSを使わずにオンライン機能をすべて自前で用意する場合に必要なものが整理されました。
〈ログイン〉
プレイヤーが誰かを確かめ、その状態を保ち続ける
〈マッチング〉
誰と遊ぶかを決め、部屋の一覧を管理する
〈通信〉
プレイヤー同士をつなぐ。NATを越え、直接つながらない場合は中継(リレー)も行う
〈セーブ・実績・ランキング〉
データが消えないように守る
さらに、システムをただ構築するだけにとどまらず、ゲームのリリース後はこれらを24時間止めずに運用 する必要があります。Choe氏は、この中で一番重いのは「作る」ことよりも「ずっと回して、問題なく動かし続ける 」ことだと強調しました。
EOSは、こうしたシステム一式をまとめて借りられる、Epic Gamesが運営するゲーム向けのオンラインバックエンド です。
EOSには大きく3つの特徴があります。1つ目は、インフラ費用がかからず完全無料で利用できる点(※)。2つ目は、特定のゲームエンジンやストアに依存しない点。3つ目は、必要な機能だけを選択して利用できる柔軟性です。
※ 各サービスには利用上限が設けられている
EOSは、もともと『フォートナイト』のために作られた基盤を外部向けに開放したものです。PC、コンソール、モバイルに対応しており、Epicアカウントの規模は2025年末の公表値で約9.7億に上るなど、すでに大規模に稼働している基盤 を利用できる利点が強調されました。
EOSを構成する4つの主要カテゴリー EOSの機能は4つのカテゴリーに分かれており、それぞれ「誰なのか (ログイン認証 )」「誰と、どうつながるのか (マッチング・通信 )」「何を残すのか (セーブ・実績・ランキング )」「どうやって守るのか (不正対策・通報・年齢確認 )」を取り扱います。
各カテゴリに属するEOSの各種サービスについて順に紹介されました。
【Account & Social】ログインとフレンド管理 「Epic Account Services(EAS)」はEpicアカウントを用いたログイン認証 を提供するサービスで、フレンド機能やプレゼンス(オンライン状態の表示)、ソーシャルオーバーレイも含みます。
一方で「Connect」は、各プラットフォームのアカウントを1つのID「Product User ID(PUID)」 で扱うサービス。Steam、PlayStation、Nintendo Switch、Xboxなど多数のプラットフォームを行き来する場合も、ゲーム側はPUIDを1つ管理するだけで済み、プラットフォームごとの分岐が不要 となります。
別のアカウントを後から同じPUIDにひもづけることも可能です。ただし、扱える範囲は各プラットフォームのポリシーに従います。
また、現在のフレンドリストを取得・管理できる「Friends」や、フレンドのオンライン状況などを確認できる「Presence」についても紹介されました。
【Multiplayer】部屋立てと通信システム 「Lobbies」はゲーム開始前にプレイヤーを招待する待機部屋 を担う機能です。「Sessions」は進行中のゲームを一覧にし、条件で探して参加 できるようにします。この2つを組み合わせることで、マッチメイキングの仕組みを作成できます。
「P2P」はプレイヤー同士を直接つなぎ、NAT越えや中継も処理します。「Voice」は部屋につないで使えるボイスチャットです。
【Player & Game Data】セーブ・実績・ランキング 「Stats」は倒した回数や歩いた時間などの数値をカウント する機能です。
「Achievements」は、Statsと結び付けておくと基準値を超えた時点で自動的に実績を解除 でき、コードから直接解除することも可能。
「Leaderboards」は小さな規模でも成り立つランキング機能 です。これらはいずれもシングルゲームでも活用できます。
「Player Data Storage」はプレイヤーごとのデータを預けるクラウドセーブ の機能で、デバイスを替えても続きからゲームを遊べます。
また「Title Storage」は、お知らせや設定など全プレイヤーに同じデータを送信 する機能で、Dev Portalで設定を変えればクライアントを再ビルドせず、Web上のポータルからパラメータを変更するだけでゲーム内設定を更新できます。
【Trust & Safety】不正対策や年齢確認 「Easy Anti-Cheat(EAC)」は不正行為を取り締まるチート対策ツール 。基本機能は無料で利用できますが、より高度な保護システムなどを取り揃える有料プランも提供されています。
「Player Reports」はプレイヤーからの通報 を受け付ける機能で、「Sanctions」は違反者へ制裁 をかけて記録を残す機能。Epic Gamesは、EACを含むこれら3つの組み合わせを推奨しています。
「Kids Web Services」は、地域ごとに異なるルールに合わせた年齢確認 や保護者の同意 を受ける機能を実装できます。
そのほか、ゲーム内アイテムの販売やアイテムの所有権管理などを行える「Ecom」といった機能も利用できます。
いずれの機能でもコードの形はほぼ同じで、インターフェースを取得し、完了時のコールバックを渡して呼び出し、結果を受け取るという流れのため、1つの機能の使い方を覚えれば、ほかのサービスも同じ要領で扱えます。
UE専用?大規模タイトル向け?EOSのよくある誤解を解消
開発者から頻繁に寄せられるというEOSに関する「4つの誤解」について、明確な回答が提示されました。
誤解1:Unreal Engine専用のサービスである C言語のSDKが提供されているほか、Unity用の公式プラグインを利用したり、自社製の独自エンジンに直接SDKを組み込んで利用したりすることが可能です。
誤解2:ゲームをEpic Games Storeで販売しなければならない ほかのストアや各種コンソールなど、プラットフォームを問わず自由に利用できます。
誤解3:導入するなら全機能を使わなければならない EOSはモジュール化されており、ロビー機能だけ、あるいはクラウドセーブだけといった部分的な導入が可能です。
既存の自社バックエンドシステムと併用し、足りない部分だけをEOSで補うといった運用も推奨されています。
誤解4:大規模な運営型オンラインゲーム専用である EOSは、2人協力プレイのインディーゲームや、ランキングのみを使用する完全なシングルプレイのゲームなどでも十分に活用できます。プロジェクトの規模やジャンルを問わず、要件に合わせたスケーリングが可能です。
プロジェクトに必要かどうかは「段階」で考える
自分のゲームにEOSが必要か否かを判断するにあたって、Choe氏は「オンラインへの依存度」を段階で捉える 考え方を示しました。
〈段階0〉
オンライン機能のない、完全なシングルプレイゲーム
〈段階1〉
クラウドセーブや実績解除、プレイデータの集計などをオンラインに任せる
〈段階2〉
ランキングシステムや、ほかのプレイヤーの非同期データを使用する
〈段階3〉
リアルタイム協力プレイなど、P2Pでプレイヤー同士がつながる
〈段階4〉
常時接続のオンラインゲームとして運営する
「段階1」と「段階2」は、ゲームの設計を大きく変えなくてもEOSを活用できる範囲です。また、段階が上がるほどオンラインへの依存度は高くなりますが、上の段階ほど優れているわけではありません。自分のゲームに合わせて、どこまでサービスを使うか の問題だとChoe氏は述べました。
よくあるケースとしては、シングルプレイ作品なら段階1・2でクラウドセーブや集計に、自社のシステムがあるなら足りない機能の補完としてEOSを活用できます。コンソールでもリリースする場合は、ロビーやセーブデータの処理をプラットフォーム間で共通化できることが強みになるとのことです。
クロスプレイ機能の実装 近年のゲームにおいて重要なテーマとなるクロスプラットフォーム対応について、「クロスプレイ」と「クロスプログレッション」の明確な違いが説明されました。
クロスプレイとは異なるプラットフォームのプレイヤーが同じ部屋で遊べるようにすること。対してクロスプログレッションは、同じプレイヤーが別のハードウェアからアクセスした際にも、セーブデータや実績を引き継いでプレイできる仕組みを指します。
EOSでのクロスプレイの構造は、PCやコンソール、モバイルのプレイヤーを「Deployment(デプロイメント)」という1つの単位に集約 するというもの。同じDeploymentのプレイヤーは同じロビーを見られるため一緒にプレイできます。
実際の処理としては、中心となるのはコードではなくDev Portal(Epicの開発者向けWebポータル) での設定です。プラットフォームごとにログインの入り口となる「Identity Provider」を登録し、ゲームが使う資格情報「Client」を作り必要な機能を有効にします。「Deployment」はプラットフォームごとに分けず、1つの環境として作る必要があり、開発環境と本番環境はSandboxという単位で区別します。Deploymentが異なると一緒にゲームを遊べなくなります。
ログインの流れはどのプラットフォームでも同じで、各プラットフォームで受け取ったトークンをConnectに渡すとPUIDが返ってきます。ゲーム側で分岐が必要なのは入り口だけで、その後のロビーや通信、セーブは共通に処理できます。
ロビーやセッションで相手が見つからない場合は、次の4点を上から順に確認するとよいとのこと。
Deploymentが同じ環境になっているか
ロビーやセッションの「Bucket(部屋を分ける区分)」が一致しているか
部屋に付ける属性の定義が双方で同じか
検索条件が食い違っていないか
また、ログインしたのが同じプレイヤーだと認識させるにはアカウントのひもづけ が欠かせません。ひもづけないと機器ごとに別のPUIDが発行されてしまいます。この状態でもクロスプレイ自体はできますが、後にアカウントの統合で問題となります。
実際の開発でつまずきやすい点も紹介されました。最も頻繁に起こり得るのがDeploymentに関する設定ミスで、ほかにはConnectでのユーザーのひもづけ忘れが挙げられました。これによりロビーの操作が失敗することがあるため、EOSが提供するログをもとに失敗箇所を確かめながら進めることが推奨されました。
また、ホストとの属性定義が異なると検索で表示されなくなることや、許可プラットフォームをロビーに設定すると相手が見えなくなることが語られました。
Choe氏が推奨する開発の流れとして、まずPC2台を同じDeploymentにつないでロビーとの通信を試し、それを土台にプラットフォームを増やして、最後にコンソールでテストするという手順が紹介されました。
無料で賄えるもの、開発側が補うべきもの EOSを導入することで、サーバー費用、24時間の監視、障害対応、プレイヤー数に応じたスケーリング についてはコストをゼロにできます。一方、ゲームに合わせたデータ設計、各プラットフォームへの申請手続き、各サービスの利用上限の設定、プライバシーポリシーの策定 などは開発側が負担する必要があります。
EOSですべてをカバーできるわけではないとしたうえで、無料の範囲で必要なオンライン基盤を利用できる点が強みであるとChoe氏は語りました。
EOSをゲームから使う手段はエンジンによって異なります。UEでは公式プラグイン「Online Subsystem EOS」が現在のメインであり、新世代となる「Online Services EOS」はベータ版として更新が続いています。
Unityでは「EOS Plugin for Unity」がEpic Gamesの公式ドキュメントで推奨されており、そのほかのエンジンではSDKの直接呼び出しを使います。どれを選んでも、SDKの呼び出しの形とDev Portalの設定は共通 です。
EOSは「導入する/しない」の0か1かではなく、プロジェクトごとにオンライン機能を使う段階があり、必要な機能を選んで実装でき、開発が進むたびに追加することができます。
システムをずっと起動させ続ける体制が負担となる中、それをEOSから借りてコストを削減することに運用上のメリットがあるとChoe氏。
最後に、開発で必要となる情報はEpic Gamesデベロッパーポータル のドキュメントで確認できることや、EOS導入の入門となる公式サンプル「EOS-Getting-Started」がGitHubで公開 されていることを紹介し、講演を締めくくりました。
「Unreal Fest Tokyo 2026」公式サイト Epic Games Store 「Epic Online Services(EOS)」公式ページ
ゲームメーカーズで編集や諸業務に携わっています。『星のカービィ』シリーズと『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズが好きです。