知識アンロック系パズルゲーム『Öoo』の講演をレポート。「欲求ループ」で仕様を生む手法や、プレイヤーに「気付き」をもたらす工夫を解説

知識アンロック系パズルゲーム『Öoo』の講演をレポート。「欲求ループ」で仕様を生む手法や、プレイヤーに「気付き」をもたらす工夫を解説

2026.02.06
取材レポートイベントレポートゲームデザインレベルデザイン
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

2025年11月15日(土)、インディーゲーム開発者向けのカンファレンス「Indie Developers Conference 2025」が開催されました。

そのなかから、本稿では『ElecHead』も手がけた生高橋氏によるパズルプラットフォーム『Öoo』の開発秘話が明かされた講演「Öooのつくりかた」をレポートします。

TEXT / ハル飯田

EDIT / 藤縄 優佑

目次

ゲームのコンセプトは「知識で道を切り開く」

本講演のスピーカーは、『Öoo』を開発した生高橋(@namatakahashi)氏。

『Öoo』の開発期間は2年で、生高橋氏が企画・プログラム・レベルデザインを、グラフィックははちのす(@hachinos_)氏、サウンドはつよみー(@tsuyomi0508)氏が担当しました。

『Öoo』を「爆弾いもむし」と呼ぶ生高橋氏は、ゲーム内容を「爆弾を使った知識アンロック系パズルアクション」と定義。

『Öoo』は、プレイヤーキャラクターである「体が爆弾になるいもむし」を操作し、爆風を生かしたジャンプやダッシュなど、さまざまな爆弾の使い方を学びながらステージを進む

生高橋氏は本作の特徴を「爆弾の使い方をプレイヤーが発見してどんどん新たな道を見つけていく」と表現し、「知識で道を切り開く」ことがゲームのコンセプトであると述べました。

同氏がこのコンセプトにたどり着いたのは、前作『ElecHead』での反省があります。パズルとメトロイドヴァニアを組み合わせた作品として挑戦したものの、バックトラッキング(ステージを行き来する探索要素)がパズルと相性が悪いと判断したのです。

『ElecHead – Nintendo Switch Announcement Trailer』

その反省を生かしつつ、本作でもパズルゲームとメトロイドヴァニアの組み合わせに再度挑戦します。

『スーパーメトロイド』との出会い

まず、メトロイドヴァニアというジャンルの面白さを分析するため、同氏は『メトロイド』シリーズをプレイしました。なかでも『スーパーメトロイド』で「アイスビーム」獲得時の体験に衝撃を受けたと言います。

具体的には、アイスビームを武器として使っているうちに敵を足場として活用できると気付き、「これまで行けなかった場所でも役立つのでは」と、「隠れた仕様」を発見できたそう。

『2Dメトロイドシリーズの歴史』

このように、面白かったゲーム体験の一部を抜き出して、生高橋氏なりの解釈で抽象化した結果として「知識で道を切り開く」コンセプトが編み出されました。

コンセプト設定と同時期に、ターゲット層も想定。とくに『ElecHead』のファンを意識しており、短編でシンプルでありつつも広がりが感じられる遊びや非言語で楽しめる点など、前作で高く評価された部分は残しています。

逆に、『ElecHead』ではアクション性が強すぎる課題があったため、今回ではそうならないよう気を付けていることも明かされました。

アクションの考案は「ステージとセットで」

ここからはゲームの軸となるアクションについて解説。アクションの見つけ方については、生高橋氏の「泥臭くやっています」との言葉通り、コンセプトに合いそうなアクションをノートに書き出してから検討したのだとか。

ノートの一部内容も公開され、「アイデアを出してもステージや遊びが思いつかなければ広がりがない」ため、必ずステージをセットで考案していたこともうかがえました。

「ノートで当時を振り返ることを想定していなかったので、自分でも何を考えていたかよくわからない部分がある」とコメントした生高橋氏

さまざまなアイデアを試すうち、「隠しルートを発見する法則を知ることで、これまでの道中でも応用が効くことに気付く」遊び方が、コンセプトに近いのではないかと考案。

これをきっかけに爆弾を使ったアクションに至り、ステージを作るための広がりを求めて「爆風で移動する」「爆風を複数個生み出し、爆弾も爆風で飛ばせる」など、どんどん要素が追加されていきました。

この時点ではまだ仕様などは固まっていなかったものの「やりたいことのイメージ」は固まっており、作品の中で実現している

泥臭くプロトタイプに取り組む

次はプロトタイプの作成へ。生高橋氏は考案したステージを最低限の要素をもってプロトタイプを作り、コンセプトに合うよう仕様を少しずつ調整しました。変更を加えても遊びに広がりが生まれない場合は、その案を没にしていました。

たとえば初期のプロトタイプは爆弾を設置する位置を自由に狙える仕様でしたが、目標から少しでもずれてしまうと失敗につながり、テンポも悪くなることを懸念していました。

また、アクション性が高く、コンセプトにそぐわない点も問題でした。

初期のプロトタイプでは爆弾を置くのではなく、弾を撃つように自由に狙えた

時限爆弾の形式も試したそうですが、複数の爆弾を扱うと非常にシビアな操作を要求することになってしまい、この仕様も変更されます。

試行錯誤を続けているうち、転機となったのが『Bomb Chicken』との出会い。同作の「キャラクターの真下から爆弾が生まれる」メカニクスを取り入れたうえで、ボタンを押せば爆発する仕組みにすることで、ジャンプボタンを設定せずともジャンプできるようになりました。

『Bomb Chicken』の主人公は爆弾を産むニワトリ。爆弾を積み上げて足場にしたり、蹴って敵を倒したりしながらクリアを目指す

このようにコンセプトに合わせて少しずつ変化させながら、『Öoo』の基本的なアクションは形づくられました。

キャラは爆弾を自身の真下に生む。起爆すると、爆風が発生してジャンプを行える

生高橋氏が挙げたポイントは「ちょうどいい制限によって気付きが生まれる」。「自らの力でジャンプできない」制限によって、プレイヤーは爆弾の置き方を工夫して爆風を利用しようと思うようになります。

また、「爆弾を置くスペースが限られる」からこそ、爆弾そのものを飛ばすことに意識が向きます。

「欲求」「問題」「偶然」で仕様が決まる

生高橋氏はゲームの遊びを広げるには「ギミックから考えない」と話します。代わりに、無駄なく広げて仕様を決定するためのキーワード「欲求」「問題」「偶然」を挙げました。

「欲求ループ」で新たな仕様が生まれる

欲求」とは、その名の通り、生高橋氏が実現したいと思う心。

同氏の「落下中に反対方向にダッシュする」アクション(反転ダッシュ)を実現したい欲求を例に挙げると、ステージの下部にトゲを配置するなどして、プレイヤーに空中でのアクションを自然と誘導しています。

爆風による挙動も同様に改善し、爆風で押し出されているオブジェクトは重力がかからない仕様にしています。こうして段階的に実験を繰り返し、当初の「やりたいこと」である反転ダッシュを実現しました。

これで欲求が満たされ満足……ではあるものの、「高速反転ダッシュ」がやりたい欲求も生まれたそう。今度は空中に浮かぶ鍵を配置し、素早く反転ダッシュしないと「鍵を取って戻れない」ステージを考案。

このように、欲求を実現するために仕様・ギミックを決めていく過程で、新たな欲が生まれる「欲求ループ」によりアクションを生かした内容が作られました。

「問題」に向き合い、解決することで内容が固まる

次に、「問題」から仕様を決めるアプローチに言及しています。『Öoo』における問題のひとつは、所持している爆弾の個数を知ってもらうことでした。

個数を数字で表示したくなかったため、プレイヤーの後ろを爆弾が追従するシステムを考案したところ、「いもむしみたいでかわいい」ビジュアルになり、自然と主人公のキャラクターがいもむしに決定。

ストーリーや世界観、タイトルまでもが決まっていくという、問題解決がゲーム内容を固める結果となりました。

バックトラッキングの性質として、同じパズルを何度も解くことになる問題にも直面しました。これを解決するため、ワープギミックを追加するとともに、どこにワープしたのかわかるようにマップ機能も追加しました。

問題解決が別の仕様決定にもつながり、さらに「ワープを活用した遊びもやりたい」と新しい欲求ループも発生していたと、生高橋氏は話します。

「偶然」の確率を上げながら味方につける

3つ目のキーワードは「偶然」。欲求ループや問題解決で決めた仕様を実装する過程では思わぬ挙動やバグと出会うことになりますが、『Öoo』の開発では、それらも仕様として採用されました。

たとえば、あるとき意図せずキャラクターの頭に爆弾が乗ってしまいました。しかし、生高橋氏はこの挙動の面白さを気に入って採用。それをきっかけに別のアイデアが湧き、また新しい欲求へとつながり、ゲームの広がりを生みました。

また、「ワープポイントに飛び込んだときの動きの慣性は、別のポイントにワープした後も残る」仕様も、もともとはバグだったもの。ほかにも空中ダッシュなど、偶然から生まれた要素は多数存在します。

生まれた仕様を駆使して実装したいことが新たに生まれる欲求のループにつなげることで、ゲームがどんどん広がりました。

同氏はアイデアは偶然見つけたとしながらも、「偶然が発生する確率は上げられる」とも考えています。シンプルなのに広がりのあるアクションという方向を最初に決めたからこそ、新しい欲求や、ゲーム活用できる偶然が起きやすくなるのだと解説しました。

ただし、これは生高橋氏がゲームデザインとプログラムを兼任しているからこそ可能なアプローチであり、作りながら仕様化するのは難しいとの見方も示しました。

プレイヤーがひらめくためのレベルデザイン

続いてのトピックは「レベルデザイン」。本講演では1、2画面を「ステージ」、ステージの塊を「エリア」と表現・定義しました。

『Öoo』のレベルデザインにおいては、「知識で道を切り開く」コンセプトを再確認し、一見進めない道であっても別の場所で発見した学びを活用すればクリアできる体験だとしました。

この体験を実現するには「知識がないと突破できないステージ」と「知識を発見するステージ」が必要であり、生高橋氏は前者を「ロックステージ」、後者を「キーステージ」と名付け、エリアを構成しました。

実際のマップを見てみると、ひとつのロックステージを突破するために複数のキーステージを用意していることがわかります。

赤く囲まれている部分がロックステージで、黄色部がキーステージ

例示されたロックステージを分解すると、「隠し壁があること」と「画面外に爆弾を置くこと」、そして「ブロックの復活を見越して爆弾を置くこと(「ブロックが復活すること」+「爆弾を置いたままにして離れること」)」の知識が必要だとわかります。

ロックステージのクリアに必要な知識を得るため、キーステージを配置していきます。

知識を分解したステージを漫然と配置するわけではなく、得た知識を定着してもらうため、同じギミックのパターンを変える工夫も施しています。

キーステージをクリアしてくと、だんだんロックステージに近いギミックのステージが待ち受けています。

時間経過で復活するブロックの存在を知るステージ

ロックステージに近い構造のキーステージ

パズルには「予想と裏切りとひらめき」が重要

生高橋氏は、パズルの流れに「予想と裏切りとひらめき」が重要だと話します。

プレイヤーは、パズルゲームにおいて最初の行動である「予想」が面倒に感じると、長時間プレイするのが難しくて諦めてしまうと同氏は指摘。

解法が予想できないような難ステージが連続するのではなく、まずは「解けそう」と思わせることが重要です。

プレイヤーはパズルに相対したとき、一度でも解けるだろうと感じれば、詰まってしまっても諦めずにチャレンジすると言います。

しかし、すべて予想のまま進むような単調なパズルでは「やらされている感」につながるため、予想を外した解法の「裏切り」を用います。

裏切りもやりすぎると意地悪なゲームになってしまうため、予想通りにクリアできるステージも織り交ぜ、プレイヤーの感情をコントロールする。これが、生高橋氏の基本的なパズルの作り方です。

裏切りを組み込んだステージでは、プレイヤーの「ひらめき」をただ待つのではなく、「気付かせる工夫」も大切です。

プレイヤーが気付きを得やすくする3つの工夫

プレイヤーに気付いてもらう工夫は「本当はめちゃくちゃいっぱいある」としながらも、講演では以下の3要素を紹介しました。

  • 選択肢を狭める
  • 自然とそうなる形にする
  • 似た地形を使う

もっとも重要なのが「選択肢を狭める」アプローチ。生高橋氏は、プレイヤーが取れる行動・選択肢が膨大になるほど「難しいパズル」になると話します。すなわち選択肢を絞れば、正解にたどり着きやすくなるとも言えます。

選択肢を狭めるため、ミスリードを排除することも大事です。アクションでごり押しできないようなステージを構成し、怪しく見えてしまう箇所も減らし、プレイヤーが無駄な迷いをできるだけ生まないようにしています。

空中ダッシュを解法としたいシーン。しかしテストプレイをしてもらうと、操作技術でクリアしようとする人が多かった

天井付近にブロックを追加し、テクニックではクリアできないように改良

この制限にかなりの時間を費やした生高橋氏は「ミスリードを引き起こす原因は、開発者からはわからない」とし、テストプレイで反応を見ながらの改善が重要であると述べました。

気付かせる工夫の「自然とそうなる形にする」については、ワープ時に動きの慣性が残る「ワープダッシュ」に気付くステージを例として紹介。

反転ダッシュを使わないとワープポイントにたどり着けない構成にしたことで、そこに着いた時点で必ずワープダッシュの条件を満たすようになっています。

気付かせ方として最後に紹介するのは、「似た地形を使う」というもの。

とくにラストステージで重要になった手法で、生高橋氏は「プレイヤーは地形とテクニックをセットで覚えている」とテストプレイを通して気付き、活用することに。

地形を見れば必要なテクニックを思い出せるのではと考え、あえて同じ装飾を施すことで「ランドマーク化」していました。

必要のないトゲも配置しながら、以前登場した地形に似せている。似た場面で活躍したテクニックをここでも使えるのでは、と気付いてもらいやすい

完成にはテストプレイが不可欠!

最後のトピックは、生高橋氏が「本作はテストプレイでめちゃくちゃ面白くなりました」と話した、テストプレイについて。

初見でゲームを遊ぶ人の気持ちを理解するには、テストプレイをしてもらうほかなく、しっかりテストをすれば課題や問題にも気付けると生高橋氏は説明。実際に『Öoo』も最初のテストプレイでは誰もクリアできず、しんどい顔でプレイしていたエピソードも紹介されました。

その原因として、製品版では隠しステージとして登場する難度の高いステージが、当時はメインで入っていたことを挙げています。

当時はまだ地形によるヒントも取り入れておらず、まったくクリアできない難易度になってしまっていたため、テストプレイをしないままリリースしていたら大変なことになっていたかもしれない、と振り返りました。

テストプレイにおいても重要なのは遊んでもらいたい人を明確に選ぶことであり、広く意見を聞いてしまうと本来のターゲット層が楽しめなくなる可能性があります。

本作のターゲットとして想定していたのは『ElecHead』ファンであり、同作をクリアした人たちから募ってテストプレイが行われました。

また、テストプレイでは感想をもらうだけでなくプレイを観察することも重要としています。

テストプレイの観察方法は、オフラインでのプレイ、オンラインで画面共有してもらう、録画を送ってもらうという3つの手法を試しています。

開発者に直接見られていることを意識するとプレイヤーはどうしても緊張してしまい、自然な反応が得られなかったそう。録画以外の手法は「正直失敗だった」と生高橋氏は話します。

テストプレイは7時間にも及ぶこともあるため、相手もリラックスしてプレイでき、開発者も拘速されずいつでも見返せる録画方式が最も良いテストプレイ方法なのではないかとの考えも示されました。

緊張して遊んでいる様子を見て「つまらないんだろうな」と焦り、リリース時に攻略動画を作ることにしたそう

最後に改めて「テストプレイしていないゲームは未完成」と述べ、その重要性を強調した生高橋氏。「遊んでもらってゲームは完成」であるという感想をもって、講演の結びとしました。

『Öoo』Steamストアページ「Indie Developers Conference」公式サイト
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

関連記事

『FGO』塩川氏や『Öoo』生高橋氏らが『PEAK』の魅力を分析。無料勉強会「ゲームディレクター研究会 #3」、2/17(火)開催
2026.02.03
3D空間の移動が3倍速くなる左手デバイス「SpaceMouse」、クリーチャーズのプランナー陣が徹底レビュー!
2026.01.06 [PR]
2.5D格闘ゲームの背景制作テクニック、『GUILTY GEAR -STRIVE-』デザイナーが動画で解説。1枚絵としての魅力でプレイヤーを引き込む
2025.09.04
『アストロボット』のレベルデザイン「30の秘訣」!テンポのいいサブパス探索設計から丁度いい秘密の隠し方まで【CEDEC2025】
2025.08.22
『モンスターハンター』シリーズ21年の歴史にシリーズ拡大の“仕掛け”あり。アクションやグローバル展開の転換点【CEDEC2025】
2025.08.04
Epic Games、UEのレベルストリーミング最適化TIPSなどを解説。UE5.6で実験的に導入された設定なども紹介
2025.06.30

注目記事ランキング

2026.01.30 - 2026.02.06
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

ライトニングトーク(LT)
ライトニングトーク 5分ほどの短い時間で区切って行うプレゼンテーションの手法。2000年ごろから浸透した手法で、技術カンファレンスや勉強会で行われることが多い。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!