この記事の3行まとめ
- スパーククリエイティブが、リアルタイム流体シミュレーションの実装と最適化に関する全5回の連載記事を公開
- マコーマック法によるディテール維持や、マルチグリッド法を用いた圧力計算の高速化などの技術を紹介している
- 最適化により、ローエンドなGPUでも複雑な流体シミュレーションがスムーズに動作することが示された
スパーククリエイティブは2026年1月5日(月)から7日(水)にかけて、同社の技術ブログにてリアルタイム流体シミュレーションの実装手法と最適化のテクニックを解説する連載記事を公開しました。
同社CTOの広本氏が執筆した本連載では、煙や爆発といったエフェクトのクオリティを左右する描画・計算アルゴリズムから、低スペックな環境でも安定して動作させるための最適化手法までが網羅されています。
作成された炎の流体シミュレーションの様子(画像は記事本文より引用)
本連載は全5回で構成。第1回から第3回では、レイマーチング(Raymarching)を用いたボリューメトリックな描画手法、数値散逸によるボヤけを防ぐ「マコーマック法(MacCormack Method)」、そして燃料・酸素・温度・密度の4要素を連成させた物理ベースの「燃焼モデル」の実装が解説されています。
これにより、単なるパーティクル(粒子)の集まりでは難しかった、物理的に説得力のある爆発や煙の挙動を再現するフローが示されました。
マコーマック法を活用して精度を高めた流体シミュレーションの様子(画像は記事本文より引用)
温度に基づいて明るさや色味が変化する、物理ベースの燃焼モデルの様子(画像は記事本文より引用)
連載の後半(第4回・第5回)では、リアルタイム動作を実現するための「最適化」に焦点を当てており、流体シミュレーションにおいて計算時間の60%〜80%を占めるとされるポアソン方程式(Poisson equation)の求解について、段階的な最適化手法が提示されています。
具体的には、赤と黒のセルに分けて並列化を図る「RBGS(Red-Black Gauss-Seidel)法」や、収束を早める「SOR(Successive Over-Relaxation)法」、そして粗いグリッドで低周波誤差を解消する「マルチグリッド法(Multigrid Method)」が紹介されました。
これらの数学的なアプローチにより、192グリッドにおける圧力計算時間は9.95msから1.81msへと短縮されました。複雑な計算手順ながら、実用可能なレベルでのパフォーマンス向上を達成しています。
RBGS法が計算を高速化する手法について説明した図(画像は記事本文より引用)
また、第5回では、アルゴリズムレベルの改善にとどまらない、より実務的な最適化手法が紹介されました。
記事中で紹介された例では、描画負荷の軽減策として「占有マップ(Occupancy Map)」と「動的境界(Dynamic Bounds)」を導入しています。流体が存在する領域のみを計算・描画対象とすることで、無駄な処理を省いています。これにより、影生成のコストを従来の3分の1にまで削減することに成功しました。
これらの最適化を組み合わせることで、本来は高負荷な流体計算が、統合型GPUのような低スペック環境でも十分な速度で動作することが示されています。
動的境界によって計算リソースが削減される流れを説明した図(画像は記事本文より引用)
本連載記事は、同社の公式技術ブログ「SPARK CREATIVE Tech Blog」にて全編無料で公開されています。
詳細は、記事本文をご確認ください。
流体シミュレーションを実装してみたい その1(レンダリング編) - SPARK CREATIVE Tech Blogスパーククリエイティブ 公式サイト