インディーゲームパブリッシャーに聞く! Vol.05「Astrolabe Gamesは開発者と“一心同体”になってゲームをつくり、マルチプラットフォーム展開を目指す」

インディーゲームパブリッシャーに聞く! Vol.05「Astrolabe Gamesは開発者と“一心同体”になってゲームをつくり、マルチプラットフォーム展開を目指す」

2025.11.14
注目記事ゲームの舞台裏インタビュー
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インディーゲームを世に送り出す「インディーゲームパブリッシャー」。その存在は知っていても実際の役割を知る機会はあまりなく、どんなことをしているかわからない、なんだか実態がつかめないという印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本連載「インディーゲームパブリッシャーに聞く!」では、そんな疑問の数々をインディーゲームパブリッシャーに直接質問し、その役割や実情を伺っていきます。

今回インタビューしたインディーゲームパブリッシャーは、中国とカナダに拠点を置く「Astrolabe Games(アストロラブゲームズ)」。同社の事業の詳細や設立した経緯・信念まで、同社CEOであるJokery(諸葛)氏にお話を伺いました。

INTERVIEW&EDIT / 藤縄 優佑

目次

Astrolabe Gamesとは

——Astrolabe Gamesについて、簡単にご紹介ください。

弊社Astrolabe Gamesは2022年、中国・上海にて4人で設立したパブリッシャーです。カナダにも拠点を構えながら、「マーケティングチーム」「ビジネスチーム」「技術チーム」「プロダクションチーム」の編成で、計15人ほどで運営しています。

Astrolabe Gamesのロゴ

提供できるサービスは、「パブリッシャー」という言葉から思い浮かべるものは、ほぼ網羅しているかと思います。具体的には資金調達、制作・移植などに伴うサポート、QA(品質保証)とローカライズ、パッケージ版のリリース、プロモーションを含むマーケティングなどです。

Astrolabe Games創始者チーム。左からSteve氏、インタビューに応じていただいた諸葛氏、Leo氏

——カナダに拠点を置いているのは珍しいように思います。

Astrolabe Games設立当初は上海だけで運営していました。しかし事業を続けていくうち、欧米在住の開発者さんの作品を担当することが増え、その弊害が出るようになってきました。

彼らとの連携においては英語を話せるだけでなく、同じタイムゾーンで迅速に対応できる体制が必要だったんです。

上海オフィス。コレクションを並べておくコーナー

タイムゾーンの話だけであればカナダに決める理由は薄いのですが、ちょうど共同創業者の一人がカナダに移住していて、カナダの市民権も取得していました。それならカナダを拠点にするのが良いだろう、という属人的な経緯でした。

——2025年11月に発表されたローグライトアクション『BLAZBLUE ENTROPY EFFECT X』のニュースに、Astrolabe Gamesが載っていて驚きました。同作ではどんなサポートをしているのでしょうか。

『BLAZBLUE ENTROPY EFFECT X』初発表&予約開始トレーラー

BLAZBLUE ENTROPY EFFECT X(以下、BBEEX)』における弊社の役割はグローバルでの宣伝統括、全プラットフォームのポーティングおよびリリース統括連携、パッケージ版の流通などに関する総指揮です。

『BBEEX』は『BLAZBLUE』シリーズのスピンオフ作品。Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|S向けに、2026年2月12日に発売される

『BBEEX』を開発する91Actは素晴らしいチームです。ソニー・インタラクティブエンタテインメントの配信番組「State of Play 日本」内での発表や、主要ハードの同時予約スタートなど、非常に難しい目標を彼らとともに実現できたのは、黄金の体験とも言える大きな成果です。

ゲームの魅力を高めることがマーケティングにつながる

——事業内容について質問させてください。マーケティングに対する方針からお話いただけますか。

プロモーションも含むマーケティングはゲームの成功を左右する唯一の要因ではなく、「ゲーム自体の魅力が宣伝効果を決める」という認識で臨んでいます。

たとえばADV『機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語(以下、機動戦艦ガンドッグ)』では、往年のロボットアニメを意識したキービジュアルや日本風のキャラクターデザイン、フルカラー化といったゲームの中身に関する提案・変更やサポートも行いましたが、これはマーケティングではなくプロダクションの仕事と位置づけています。

『機動戦艦ガンドッグ』ローンチトレーラー

弊社は開発者さんへの最大限の敬意を示すため、自我を捨てて仕事に没入することを重視しています。サービス・トレーラー・ゲーム自体の品質こそが重要であり、これらを追求することが最終的な成功につながると考えています。

——具体的なマーケティング施策についてはいかがでしょう。

メディアとの連携、世界への情報発信、プラットフォームホルダーとの連携、オンライン・オフラインイベントへの出展など、パブリッシャーとして実施すべき一般的な活動はすべて実施しています。

——さまざまな国でのオフラインイベントに出展したとき、ほかのブースの方に声をかけるといったスカウトもあわせて実施しているのでしょうか。

開発者さん本人がイベントに現地参加できないことがほとんどなので、開発者さんの代わりとして試遊の様子を観察することが弊社最大の使命です。

人数を割けない事情もありますが、ほかのブース訪問や勧誘は基本的に行いません。休憩などで離席した際、どうしても気になった作品が目に入ったとき、名刺をサッと渡したり後日連絡を取ったりする程度でしょうか。

来場者さんのプレイを見て、チュートリアルで困る点はないか、システムを理解できているかなどを細かく観察し、開発者さんに報告しています。クライアントである開発者さんが見えない部分であっても安心してもらえるサービスを提供できるよう心がけています。

Astrolabe Gamesは「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」にも出展していた

——「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT(以下、TIGS)」では、試遊の様子を熱心に観察している諸葛さんを拝見していたので、その言葉にも納得です。では、パブリッシュするタイトルはどうやって見つけるのでしょう。

過去の仕事を通じ、欧州地域やブラジルなどで築いた人脈やコミュニティからの紹介が、タイトル発見の重要な経路となっています。

Astrolabe Gamesで初めてパブリッシュを担当した作品『勇者よ急げ!Brave’s Rage(以下、勇者よ急げ!)』も、これまでの縁から契約に至った作品です。

『勇者よ急げ!』日本語版ローンチトレーラー

あとは運もありますね。完成が見えづらくても、可能性も感じられる初期段階のタイトルに出会えたのは運と言うほかありません。

各地域へのアプローチ方法

——世界の各地域へのアプローチについてもお聞きしたいです。まず、上海に拠点があることも踏まえると、中国市場は得意分野にも見えます。

ゲームプレイヤーの傾向や流行のサービスをつかむという意味では、得意な市場ではあります。例を一つ挙げると、中国市場においては、WeChatやTikTokだけでなくゲームコミュニティアプリ「HeyBox(小黑盒)」での露出も意識しています。

HeyBoxは中国内、とくにPCゲーマーが多く利用していて、ゲーム記事の閲覧やゲームの直接購入、レビュー投稿など、いくつもの機能が集約されています。Steamなどでリリースするならまず押さえておきたいサービスですが、アカウント登録時に中国の携帯電話番号が必要となるので、国外の方が参入するには少しハードルが高いかもしれません。

弊社ではHeyBoxでAstrolabe Gamesのアカウントだけでなく、開発者さんの代理としてアカウントを運営しています。これは、中国ではパブリッシャー発信の情報よりも開発者自身の活動に関心が集まる傾向があるためで、開発の進捗などを週2〜3回投稿しています。

『機動戦艦ガンドッグ』開発チームのHeyBoxアカウントもAstrolabe Gamesで運用している。「どの投稿でもつねに100以上のいいねと、たくさんのコメントをいただいています。HeyBoxにいるユーザーさんの情熱は半端じゃないよ」(諸葛氏)

——欧米市場についてはいかがでしょう。

カナダ支社が欧米地域の開発者さんのサポートをしながら、同地域のPRやマーケティング全体を統括する役割を担っています。欧米に限りませんが、地域によって愛されるタイプのゲームが異なるので、そのことも考えながらパブリッシュしています。

たとえばレースゲームは欧米のプレイヤーに好まれる傾向にあります。そういった方々に遊んでもらえるだろうとパブリッシュした『Old School Rally』は、Steamで早期アクセス中の段階なのにめちゃくちゃ売れています。

『Old School Rally』は2025年12月に正式リリースされることもアナウンスされている。なお、ラリーゲームの歴史やドライブ趣味の文化が薄い中国では売れていないという

SNSの活用については、Discord / X / Blueskyなど、現地で広く利用されているツールを活用しています。中国市場とは異なり、欧米の開発者は自身のアカウントを運営していることが多く、開発者さんに代わって弊社がアカウント運営の代行をする必要はないと考えています。

——Astrolabe Gamesは日本のイベントにもよく出展していますよね。

はい。BitSummit、東京ゲームショウ(TGS)、TIGSなどの日本の主要なゲームイベントに積極的に出展するようにしています。日本は成熟したマーケットで、弊社のゲームも日本からの売上が2割から4割を占めるものもあり、ビジネス的にも重要な市場です。

(左)2023年、BitSummitに初出展した際の写真。
(右)2023年のTGSではAstrolabe Gamesスタッフだけでなく、『機動戦艦ガンドッグ』『モス クビット』の開発者も来日していた

——このインタビューをしている時点では、日本の個人開発者さんや小規模チームの作品をパブリッシュしていません。今後、そういった計画はありますか?

日頃からSNSをチェックしていると、パブリッシュしたいと思う日本のタイトルを見かけることが多いです。私は幼少期から日本のゲームの大ファンであり精神的な支えにもなっているので、日本の開発者さんと一緒にゲームをリリースしたい思いは非常に強いです。

それにもかかわらず今のところ作品がないのは、「我慢していた」からと表現するのが近いでしょうか。弊社は2022年にできたばかりで、リソースも豊富とは言えません。言語の壁もあり、日本語での連携に課題を感じていました。

現状は既存のラインナップのケアに集中していますが、昨今は翻訳ツールも発展してきたので、今後はより具体的に考えていきたいです。

Astrolabe Gamesがパブリッシュを発表した『HARMA 亡国のエデン』の開発チーム「Indirect Shine」は韓国を拠点としており、日本のメンバーも協力している

——ちなみに開発者さんから連絡してもよいものでしょうか?

はい!つねに大歓迎です!いつでもWebサイトからご連絡ください。

マルチプラットフォーム展開だけでなく、パッケージ版も手がける

——Astrolabe Gamesが得意とするプラットフォームはありますか。

Astrolabe Gamesは設立当初からのビジョンとして、メジャーなプラットフォームすべてでのゲームリリースを目指しています。

Steamでの販売・プロモーション効果が低下していることもありますし、プラットフォームごとにユーザーの傾向も異なります。どこかのプラットフォームに偏重する姿勢のリスクを避けるためにも、マルチ展開しています。

——開発に使っているゲームエンジンによっては、コンシューマーでのリリースがうまくいかないことも起こり得るかと思います。そうした場合は、たとえばUnityなどメジャーなエンジンで移植して対応するのでしょうか。

別のエンジンを活用して移植するケースは、今のところありません。と言いますのも、技術チームには創業者の一人である優秀なフルスタックエンジニアが所属しており、彼にかかればたいていの技術的課題は解決するからです。

『機動戦艦ガンドッグ』はビジュアルノベルエンジン「Ren’py」で開発されていますが、彼が率いる技術チームはエンジンのコードを書き換えて対応し、Nintendo SwitchやPlayStation 5でも作品のパフォーマンスをフルに発揮できるようになりました。ただ、PlayStation 4でもリリースした同作は、ハードの制約もあって一部の動画を削減・削除してパフォーマンスを向上させています。

なお、技術チームでは特定のハードウェアでパフォーマンスが低下するといった問題へのサポートや、技術的課題のアドバイスも行っています。

——マルチプラットフォーム展開だけでなく、パッケージ版をリリースしているタイトルもいくつか見られます。

パッケージ版をリリースする効果は限定的であるものの、開発者さんの要望に応えた結果として実施しています。

私たちの力だけでは製造・流通は難しいので、欧州や北米などを販路に持つパートナーさん(Meridiem Games、Perp Games、PM Studios、Selecta Play)と連携してパッケージ版を実現しています。

『機動戦艦ガンドッグ』のパッケージ版は日本でも発売された。パートナーはネオスのインディーゲームレーベル「IndieTech Games」(画像はIndieTech Gamesの特設ページより引用)

プロダクションチームの仕事

——開発者さんを手厚くサポートされていますね。先の話にあった通り、『機動戦艦ガンドッグ』では、プロダクションチームの仕事としてグラフィックに手を加えることでサポートしていましたが、開発者さんからの反発などはなかったのでしょうか。

弊社で『機動戦艦ガンドッグ』を発表した時点から、キービジュアルは今のようなアニメ風でしたが、ゲーム内のキャラデザインは変更を加えていませんでした。この差異が「詐欺」だと、日本や中国の方からいくつも意見を頂戴しました。

『機動戦艦ガンドッグ』初期のキャラデザイン(画像はitch.ioから引用)

そんな声は正しい指摘だと認識したうえで、ゲーム内のキャラクターデザイン変更を開発者さんに打診しましたが、難色を示されました。

私たちとしても開発者さんの希望に沿わないことを進めるつもりはないこと、オリジナルのデザインも好みであることなども勘案し、オリジナル版と新規デザインのどちらも選べるように。選択肢があることで、プレイヤーさんと開発者さん、双方にメリットがあることを説明し、ご了承いただけました。

色数の少ない「ショウワ オマージュ」とフルカラーの「Vivid mode」が追加され、計3種のキャラクターデザインから選べる

結果として数か月かけてキャラクターを制作し、ゲーム内で切り替えられるようにしました。

——以前『機動戦艦ガンドッグ』の開発チームに取材したときには、フルカラー化の選択肢はなかったのですが、どういった経緯で生まれたのでしょうか。

フルカラー化の要望が多く寄せられたことが要因です。本作は古いSF映画のPCに出てきそうなレトロな雰囲気を演出するため、緑色を基調とした色数の少なさが特徴の一つです。

フルカラー画像を作ってから色数を落としたのではなく、元からこういった色合いなので、数千枚以上におよぶ画像をフルカラー化するには膨大な時間が必要です。AIを使ってみたこともありますが、色味の統一性を保てず、実現は難航していました。

もちろん諦めたわけではなく、半年かけて世界中から才能ある2Dアーティストを探し、最終的に中国のドット絵アーティストを見つけました。費用と時間は要したものの、その方に緑からフルカラーへの移行を全面的に任せることで、私たちも開発陣も文句なしのレベルのものが完成しました。

フルカラー化を担当した羅山(Luo Shan)氏

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Astrolabe Gamesが創立された経緯とこれまでの活動

——事業内容を理解できたところで、Astrolabe Gamesを起ち上げた理由をうかがいたいです。

長くなるのですが、思い出話をさせてください。私はこの会社を起ち上げるまでは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)上海でインキュベーションプログラム「China Hero Project(※)」の責任者として働いていました。

※  中国のゲーム開発者を育成・支援するプロジェクト。これまでに『フィスト 紅蓮城の闇』『ANNO: Mutationem アノー:ミューテーショネム』『Evotinction』などがリリースされている

China Hero Projectの2期生と諸葛氏

当時は『AI LIMIT 無限機兵』のサポートなどを担当していましたが、多忙を極めたことなどが原因で大病を患い、職場復帰はできたもののChina Hero Projectから降りることになりました。

復帰後に別の役職に就きましたが、今度は以前ほどやりがいのあるものではなくなってしまいました。体を労ってもらった結果だとは思うのですが……。

『AI LIMIT 無限機兵』リリーストレーラー

『AI LIMIT 無限機兵』は、2019年のTGSでも展示していた

そんな折、2022年の1月か2月ごろでしょうか。SIEの仲間たちに「パブリッシャーを一緒に起ち上げないか」と誘いを持ちかけられました。「自分は健康とは言い難いし、自殺と同じでは?」と思うくらい自信がなく、その場では断ったものの、投資家の知人に相談すると「君はパブリッシャーをやるべき」とアドバイスされました。

知人は、「君はChina Hero Projectで多くのタイトルを見つけ、育て、成果も出してきた。健康ではないかもしれないが、病気の経験から、もっと人の気持ちに寄り添える人間になったじゃないですか。パブリッシャーに向いています。もし会社を起ち上げるなら投資します」とまで言ってもらえました。

仲間の誘いと知人の助言、これらのおかげでAstrolabe Gamesの起ち上げに至りました

ロックダウンの中で創業

——会社の起ち上げからまもなく、上海ではロックダウン(都市封鎖)が起きました。

『勇者よ急げ!』の契約を締結できたのが2022年3月で、ちょうどロックダウンが始まったころ 。資金もなく、タイトルも一つしかない、まったく外出もできない厳しい状況でした。

——自分だったらくじけそうですね……。

難しい状況で何もないからこそ、やりがいがあるじゃないですか。最初から困難を経験しておけば、あとは良くなるばかりですし。

こうした気の持ちようは、資金調達がどんなに難しくても諦めずにタイトルを育ててきたChina Hero Project時代の経験が生きているのかもしれません。

——外出ができずお金もないとなると、諸葛さんが担当する仕事も増えていたのでは。

そうですね。自社のロゴも自分で描きましたし、『勇者よ急げ!』の日本語ローカライズも私が担当しました。ちゃんと伝わっているのかビビっていましたが、日本の方の「日本語が怪しいところはあるけどゲームに支障はない」といったレビューを見て、安堵したのを覚えています。

もちろんそれ以降の作品のローカライズは専門家におまかせし、本作のローカライズも更新しています。

作品内で表示するAstrolabe Gamesのロゴは、その作風にあったものに毎回変えている

——その後にリリースした『シャンハイサマー』はスムーズに進んだのでしょうか。

シャンハイサマー』は中国のどのパブリッシャーにも拾われなかったタイトルで、開発陣もリリースを諦めかけていました。一方、当時の私たちは今以上に知名度がないうえに、前職との関係性から中国での目立つ活動には気後れしつつも、作品を必死で探していました。ちょうどお互いの利害が一致して進めることになったプロジェクトでしたが、これはこれで困難続きでした。

私たちがもっとも手を加えたタイトルが『シャンハイサマー』です。シナリオ監修、美術サポート、トレーラー制作、タイトルのネーミング変更などなど、全面的に介入しました。

『シャンハイサマー』トレーラー

開発者視点で物事を考え、彼らに足りない部分を補うことに注力する。開発者さんと「一心同体」になって完成に導く。そして私たちのエゴを捨てて品質の高いサービスを提供する。このスタンスが明確に固まったのも本作のおかげでしょう。

代表作と成功作品

——『シャンハイサマー』はAstrolabe Gamesの代表作と呼べそうでしょうか。

たしかに私たちの思い入れが非常に強い作品ですが、代表作とは言いづらいです。私たちが代表作と呼べるものは「売上とゲームのクオリティ、どちらも満足・納得した作品」です。一部で満足することはあっても、総合的に見て代表作と呼べるものはまだありません。

——では、売上において成功した作品について教えていただくことは可能でしょうか。

先に話した『Old School Rally』は売れていますが、パブリッシャーとしての働きかけは薄かったので「弊社だから成功した」とは言いづらいです。

成功したと言えるかまだわかりませんが、『機動戦艦ガンドッグ』は10万本に迫るほど売れています。おかげさまでリクープし、開発者さんたちも収益分配を受け取れています。

ダンジャングル』もSteamで早期アクセス中ですが、数万本の売上を記録しています。

『ダンジャングル』は2025年12月11日に正式リリースされる

——最後に、開発者さんにメッセージをいただけますか?

夢を信じ、諦めない粘り強さを持ってほしいです。『機動戦艦ガンドッグ』の開発者さんも昼間は銀行で働き、夜は子育ての後で開発を続けていました。そのような姿勢を私は強く尊敬しています。

ゲーム開発は「とんでもなくつらく、しんどい」です。だからこそ、諦めない気持ちは大切です。

とは言いますが、それ以上に健康は重要です。ゲーム開発は過酷ですし、一度健康を損なうと私のように復帰に時間がかかります。心身ともに健康でありながら開発し続けるように心がけてほしいです。

開発との両立は難しいですけど……。うーん、めちゃめちゃ難しいですよね……。でも健康には本当に気を遣ってください。私が言うと説得力も生まれると思います。

「Astrolabe Games」公式サイト「Astrolabe Games」公式 Xアカウント
藤縄 優佑

編集プロダクション「浦辺制作所」に所属。ITやゲームにかかわる書籍・Webメディアにおいて、執筆と編集を担当している。ゲーム全般が下手だけど好き。

合同会社浦辺制作所 公式HP

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