大阪・梅田で大規模インディーゲームイベントが開催!「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2025」の注目作品をピックアップして紹介

大阪・梅田で大規模インディーゲームイベントが開催!「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2025」の注目作品をピックアップして紹介

2025.10.08
注目記事インタビューイベントレポート
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2025年10月4日(土)から5日(日)にかけて、グラングリーン大阪内の「コングレスクエア」にて、インディーゲーム展示会「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT」(OIGS)が開催されました。

2023年より開催されている「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」(TIGS)の大阪版とも位置づけられる展示会。2日間に渡って行われた大規模イベントから、初日となるビジネスデーの模様をお届けするとともに、気になるタイトルをピックアップしてレポートします。

TEXT / ハル飯田
EDIT / 浜井 智史

目次

あなたは勇者パーティ…の同行シェフ! 『奈落のキッチン』

まず紹介するのは、獣人の女の子「ロップ」として冒険者チームの一員となりダンジョンに挑む『奈落のキッチン』。

ロップの特技は戦闘ではなく、その場で料理を作り出す調理能力。前線で戦う仲間たちを後方からサポートする役割を担います。

パーティメンバーは自動で前進し、モンスターと戦います。ロップはそれに追従しつつ、ステージをクリックで「探索」して木材や食料を調達し、味方が倒した敵からも食材を収集していきます。

集めた食材を「即席調理」して仲間たちに振る舞うことで、パワーアップやヒーリングなどの支援も可能。最大まで強化すればカットイン付きの大技も発動できるようになります。

大型の敵に対しては、後方からボウガンを撃ってダウンさせる直接的な攻撃支援も可能。ボス戦では更なるギミックも登場します。戦略的な行動だけでなく、随所でアクション性も求められる仕組みになっています。

ステージの中間まで来るとキャンプを構え、お待ちかねの食事タイム。料理ごとにさまざまなバフが発生するようになっています。

料理の材料はレシピごとに異なり、また行動力の確保に必要な「枯れ木」も収集しなくてはならないため、素材をバランスよく集めておくことがポイントになりそうです。

リソース管理の奥深さを発揮するべく、アクション性を適度に調整

開発を手がけるPico Gamesさんは、『ドールエクスプローラー』や『百合太刀降魔伝』などのタイトルでも知られています。

本作でもPico Gamesさんお馴染みの可愛らしいキャラクターデザインが目を惹きます。キャラクターイラストは「CLIP STUDIO PAINT」で作成し、そのほかのアートではPhotoShopを用いるという使い分けを行っているとのこと。

また、ゲームエンジンにはUnityを使用しています。

着想のきっかけは「ご飯の力でパーティーをサポートする」という定番要素に加えて、昨今「美味しいご飯を作画で見せる」作品がトレンドになりつつあることを受け、「“ご飯で支援するサポート側”をゲームに落とし込めないか?」と考えたことから。

Pico Games作品と言えばアクションシューティングのゲーム性が大きな特徴でしたが、今作ではストラテジー要素が主体となっているため「アクションを難しくし過ぎないこと」を意識。代わりに「限られた資材・食材をどう使うか」というリソース管理の奥深さを楽しさにつなげているとのことでした。

リソース管理ゲームの開発は初挑戦ということもあり、「掘りゲー」など同ジャンル作品を実際にプレイして「気持ちよく遊べる難易度」を探っているとのこと

料理の見た目はファンタジー過ぎない「レストランにありそう」な雰囲気を意識しており、料理シーンではムービーも挿入されるなど、食欲をそそるビジュアル作りにもこだわりが詰まっています。

ボスを倒した後も数秒間は探索・収集を続けられるなど、細かな手触りまで作り込まれている本作。

ゲームシステムとしては既に完成段階にあるとのこと。Steamでのリリースに向けて、現在はボリュームアップなどの作業が進められています。

なお、2024年3月開催の「ゲームパビリオンjp」で『百合太刀降魔伝』が展示された際、ゲームメーカーズでは開発インタビューを行っています。

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『奈落のキッチン』Steamストアページ「Pico Games」公式Xアカウント

“自分の手”が操作デバイスに。牛を操り爆速飛行『時速1000kmの牛』

ユニークなデバイスを使用した“展示会ならでは”の作品と出会えるのもインディーゲームイベントの大きな魅力。

次に紹介する『時速1000kmの牛』も、そんな個性的な作品のひとつ。センサーの搭載によりプレイヤーの「手」で操作できるゲームシステムが目を引きます。

タイトル通り、飛行する牛を操作して時速1,000㎞に到達させることが本作の目的です。

牛の形にデザインされたセンサーに手をかざすと「操作デバイス」として認識され、画面上の牛が手と連動して動くように。うまく障害物を回避するように手を振り振りしながら突き進む、シンプルかつ超直感的な操作を楽しめます。

センサーはジェスチャーによる操作も認識可能。手を握ると牛がスローになり、回避動作を取りやすくなる「集中モード」に移行。条件を満たせば同じ操作で「フィーバーモード」に突入でき、一時的に「障害物にぶつかって加速する」状態になるので爽快感も一気にアップします。

そうして牛をどんどんと加速させていき、目標速度に到達すればゲームクリア。短時間でプレイでき、見ているだけでも楽しいゲームとあって、試遊ブースは大勢の方で賑わっていました。

現地会場ならではの盛況を見せた“手で遊ぶ”スタイル

『時速1000kmの牛』は「samirin33」さんが個人で開発しています。もとは大学の文化祭に向けて制作された作品で、「手を出すだけで遊べる短時間の作品」として、プレイしている人の姿も含めた人目を引くビジュアルで考案されました。当初の開発期間はわずか2週間ほどだったとのこと。

そのあまりにもユニークな世界観は、一時期話題となった「牛の身体は空気力学的に理想的なフォルムで、正面から時速1,000㎞の風が吹くと離陸できる」という実在するユニークな理論に、牛などがUFOに誘拐される怪現象「キャトルミューティレーション」を組み合わせたことで誕生しました。

ゲームエンジンはUnityで、音声管理にはCRIWAREを活用しています。

今回の展示に向けて、知人であるクリエイターのシロ(@petit_zome)さん協力のもとブラッシュアップを実施。モーションセンサー「Leap Motion」を牛型に装飾したほか、モニター下部に設置されたファンから「ゲームプレイに応じた強さ」で送風することで、非接触デバイスならではのフィードバック要素を生み出しています。

しっかりとした風圧で、プレイ中の手応え演出に大きく貢献したファン

boothにてPC版が公開されており、マウス操作にも対応していますが、展示ブースで遊んでこその魅力が凝縮された本作。ぜひ会場でLeap Motionを接続し、「魔法みたい!」と好評だったハンドジェスチャーによる操作を体験してみてください。

『時速1000kmの牛』booth配信ページsamirin33氏 Xアカウント

4人でボウリング勝負!ただし同時に投球!?『ばってん!』

関西圏の専門学校によるブースも数多く出展され、学生クリエイターが開発した作品を楽しめました。その中から今回は大阪工業大学ブースにて展示されていた、一風変わったボウリングゲーム『ばってん!』を紹介します。

『ばってん!』はコントローラーの左スティックを操作して投球方向を決めるという、シンプルな操作で楽しめるボウリングゲーム。投球後もスティックを操ることで、まるでカーブボールのような軌道を描くことも可能です。

しかし、一筋縄ではいかないのは「4人が同時に投球する」というポイント。ピンは4人用に幅広く配置されていますが、触れると加速・減速するアイテムもあり、NPCプレイヤーとお互いのボールをぶつけ合いながらの熾烈なスコア争いが楽しめます。

加速を取るか、安定する重りを狙うか。それとも干渉し合わないルートを狙うか

カウントダウンも素早く、1フレームは数十秒で完結。全10フレームを終えて最も得点の高いプレイヤーが優勝となります。

逆転要素として得点の高いピンやマイナス得点ピンも配置されており、最後の瞬間まで白熱できるゲームバランスとなっていました。

優勝を狙うのはもちろん、ハチャメチャな方向に吹っ飛んでいくボールやピンを眺める面白さも魅力のひとつ。ステージ範囲はかなり広く設定されており、手前側にボールが跳んでしまえばしっかりとカメラが引くなど、物理演算による挙動を楽しめる作り込みが光る作品でした。

はちゃめちゃに飛び交うピンを「誰が倒したか?」得点計算の工夫

本作はUnityで開発されています。ピンのモデルは外部アセットを利用していますが、それ以外は学生クリエイターの皆さんによる自作モデルとなっています。

語感の良い『ばってん!』というタイトルは、「弾く」を意味する“撥”に“転がす”を組み合わせた「撥転」から取ったのだとか

「短くて何度も遊べる」ボウリングゲームに、ワンポイントとして「4人同時に投げて弾き合う」要素をプラスして生まれたという本作。

とくに工夫を凝らした点は「誰がピンを倒したか」の判定。複数のピンが雪崩のように倒れて飛び交う状態ではピンの得点を正確に把握するのは至難の業で、ピンが倒れた後に別のボールが当たることで、スコアを持っていかれてしまう事態もあったのだとか。

最終的に「ピンに最初に触れたボール」を判定する仕組みに変更。これにより「ピンアクションに頼らず、最後までボールを操作する」ことがスコア向上のコツとなり、一気に高得点を稼ぐのが難しくなったため、特殊ピンの導入にも繋がったのだそう。

画面左には得点別に色分けされたピン配置が表示される。投球によりスコア獲得者が確定すると、ピンの色が対象プレイヤーのボールの色に変化する

対戦NPCは当初「とにかくピンを狙う」制御にしていたところ、動きに偏りが出てしまったため「アイテムを認識させる」「大まかに狙う」という制御を追加。3体のNPCがバラバラの行動を取るようになり、ソロプレイでも対戦ゲームらしいプレイ感を生み出しています。

大阪工業大学ブースでは学生作品の展示に加え、学生クリエイターが企業と繋がる独自イベント「GCP GAME X CROSS」のPRも行われていた

現在はソロプレイ専用のゲームですが、来場者からの反響ではマルチプレイで遊びたいという意見も数多く寄せられたといい、パーティーゲームとしてのポテンシャルが評価される作品となっていました。

大阪工業大学ゲームクリエイトプロジェクト(GCP)公式ページ

初開催ながら約120タイトルが集まり、大盛況となった「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT」。ビジネスデーではクリエイター向けのステージが実施されたほか、一般公開日には大阪でお馴染みのラジオ局「FM802」の公開収録が行われるなど、地域密着イベントとしての色も出ていました。

会場となった「コングレスクエア」はグラングリーン大阪南館4階にあるMICE施設で、2025年3月に開業したばかり。コンコースには休憩できる椅子も多く、建物内に飲食店も充実しているため、長時間イベントを楽しむにはピッタリな印象でした。

展示スペースは2ヵ所のホールに分かれて配置。天井が高く落ち着いた雰囲気で、これだけのタイトル数が出展してなおブースの間隔が広く取られているのもあって、試遊待ちなどの混雑も抑えられていました。

また本イベントでは、開発者が現地に行けない場合に学生スタッフが対応して作品を展示する「出展サポート」などの仕組みが導入されていたことも印象的でした。

ビジネスデー会場直後の様子。通路が広く取られているので「プレイを見ているだけ」でも気兼ねなく楽しめる

会期中の2日間は生憎の雨模様となりましたが、会場までは大阪駅から屋根付きの直通ルートが開通しており、各線梅田駅からもアクセスは良好と、出展者・来場者ともに便利な会場と言えそうです。

オリジナルグッズとしてクリアファイルと缶バッジも展開。来場の記念にピッタリ

すでに春の定番イベントとなっている「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」と同様、これから関西圏のクリエイターやゲームファンにとっての“秋の定番”として成長する可能性も大いに感じさせるイベントでした。

「OIGS2025」ステージイベントとして講演などが実施。ライブ配信アーカイブも公開されている

「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2025」公式サイト「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2025」公式Xアカウント
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

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