大阪・梅田のインディーゲーム展示会「ゲームパビリオンjp」は大盛況!100以上の作品が大集合したイベントの中から注目作品をピックアップ【イベントレポート】

2024.04.02
注目記事イベントレポート
この記事をシェア!
twitter facebook line B!
twitter facebook line B!

2024年3月30日(土)、大阪の梅田スカイビル10階アウラホールにてインディーゲームイベント「ゲームパビリオンjp」が開催されました。

昨年3月の初開催から1年ぶりに大阪・梅田に帰ってきた春のインディーゲームイベントは、出展タイトル数も100を超えるなど規模を大きく拡大。春の陽気に包まれ多数の来場者でにぎわったイベントの模様を、ライターが実際にプレイして気になったタイトルのフォトレポートを中心にお届けいたします。

TEXT / ハル飯田

EDIT / 神山 大輝

目次

これぞ王道の2D横スクロールシューティング『Revolgear Zero』

「ゲームパビリオンjp」では「ロボゲー祭」や「シューティングゲームオンリー」などジャンルに沿ったタイトルが一団になった展示方式「プチオンリー」を採用。来場者が好みの作品を見つけやすいだけでなく、同じジャンルの開発に取り組むクリエイター同士の活発なコミュニケーションにも繋がっていました。

最初に紹介するのは、そんなシューティングゲームエリアの中でも2人同時にプレイできるデモ版が目を惹いた、びっくりソフトウェアの『Revolgear Zero』です。

本作は自機を操作して迫りくる小型機や大型のボスを破壊していく王道の2D横スクロール型シューティング。援護射撃を繰り出す2機のガンビットは合体状態と分離状態で機能が変わる仕組みになっており、強力な必殺技やシールドを駆使したプレイが楽しめます。

今回出展されたデモ版には、簡単なチュートリアルに加え、小型機を殲滅する爽快な序盤戦と巨大な敵に挑むボス戦で構成された1ステージが収録。直感的ですぐに思うように動かせる操作感が特徴で、筆者も一度はボスに倒されてしまったもののすぐに復活して攻略に成功しました。

2人プレイ用「DUOモード」によってイベント中は開発者自ら来場者とプレイしながらゲーム内容を解説することもあれば、来場者同士での協力プレイも繰り広げられ、2人プレイ対応ゲームならではの光景が見られるブースとなっていました。

2人プレイでは自然と画面上下での役割分担が生まれ、ボス戦は総火力で共闘

びっくりソフトウェアの代表である白銀ねこびさんにお話を聞くと、『Revolgear Zero』は「強い自機を直感的に操作できる、昔ながらのシューティングゲームの魅力」の表現を目指し、耐えるようなプレイイングではなく、自ら積極的に動くスタイルで楽しめるようデザインされているとのこと。

同サークルはこれまでにも数々のシューティングゲームをリリースしていますが、今回は前作『Graze Counter GM』に続いて開発ツールに「GameMaker Studio 2」を使用。こだわりはEDGE2で描かれたドットグラフィックで、特にキャラクターのグラフィックは線画から人力でプリレンダリングして制作されています。まだまだ前半段階ながら「過去作の経験から試算できる部分もある」と、ノウハウを生かしながら開発を進めているそうです。

「我慢するよりも発散するシューティングゲームの面白さを表現したい」と語った白銀さん

会場にはシリーズ作品のファンの方も数多く訪れており、白銀さんも「やっぱりファンの方が来てくださるのは嬉しいです。触ってもらった感想をフィードバックとして受け止めてこれからも開発していきます」と、喜びを口にしていました。

タイトル:『Revolgear Zero』
開発:びっくりソフトウェア https://bikkurisoftware.com/
ゲームエンジン:GameMaker Studio 2
リリース予定日:未定
ジャンル:横スクロールシューティング
プラットフォーム:未定

「避けられなければ消せばいいじゃない。」な弾幕STG『百合太刀降魔伝』

Pico Gamesの新タイトル百合太刀降魔伝』も、弾幕をかわしながら敵を倒していくスクロール型アクションシューティングゲームです。本作の特徴は射撃だけではなく刀での接近戦も楽しめるシステムで、押し寄せる弾幕も刀の一振りでかき消してしまえます。

敵の攻撃をパリィして一定の無敵時間も生み出せる「刀」は窮地を打開できる攻防一体の要素ですが、耐久の限界が設定されており“消せない弾”も存在するため、過度なインファイトは禁物。ステージを進めると複数の強化要素が提示され、射撃面を成長させるか刀の性能をアップさせるかが選択できるので、戦い方やバランスがプレイヤー次第で変化していくゲーム性となっています。

攻撃ボタンは長押しで射撃、短く押すと斬撃になり、ボタンを使い分けなくて良いのも直感的な操作感に

主人公となる刀を擬人化したキャラクターたちによる“百合”なテイストを感じさせる掛け合いも可愛らしく、妖怪モチーフらしき敵キャラクターなど和風テイストの世界設定も魅力。シンプルさと歯ごたえのある難易度が共存した遊び心地が楽しめました。

「弾幕シューティングが好きなんですが、下手なのですぐやられてしまうんです。それなら敵の弾を消せれば良いのでは?と思って生まれたのが『百合太刀降魔伝』です」と、着想のきっかけを説明していただいたのは開発のPico Gamesさん。

開発エンジンにはUnityを使用しており、背景などにはアセットを使いながらもキャラクターは自らデザイン。特に作中の食事シーンには力をいれており、思わずお腹が減ってしまいそうなほど美味しそうな料理のイラストだけでなく“食べるごとに少しずつ減っていく描写”も取り入れています。これは開発者が大好きな作品をリスペクトして導入している要素で「時間とコストをかけてでも」と、単なる回復要素で終わらせないこだわりを見せてくれました。

作者はグラフィック畑出身ということもあり、開発では「弾が消せるシステムなど独特のゲーム性については手探りでプログラミングを進めている面もある」と新たなチャレンジへの苦労も感じているそうです。Pico Gamesはこれまでに『ドールエクスプローラー』などの作品もリリースしていますが、本作は一味違ったプレイ感のゲームとして仕上がりが期待されます。

開発は40%程度完了しており、今冬のリリースを目指して制作中。最終的にはビルドによって近接と遠距離のどちらに特化しても戦えるようなバランスやプレイ感を目指しているとのこと。イベント中も「自分ひとりで調整しているので、操作に慣れて難しくしすぎてしまったかな」と、来場者の意見や反応を今後の参考にしていました。

ブースでは前作『ドールエクスプローラー』も展示

タイトル:『百合太刀降魔伝』https://store.steampowered.com/app/2797420/_/
開発:Pico Games https://twitter.com/PicoGames_off
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:今冬
ジャンル:横スクロールシューティング
プラットフォーム:Steam

結んで縛って導く! 『ロープくんアドベンチャー』

シンプルながらもアイデアが試されるプレイ感が光ったのは、Kei26氏の手がける『ロープくんアドベンチャー』です。

タイトル通り「始点を決めてロープを伸ばしていく」能力を持った主人公のロープくんがさまざまなステージをクリアしていくアクションゲームで、仕組みは非常にシンプルながらステージごとに伸ばせるロープの長さに上限が設定されており、動きに応じて“たわむ”挙動などを上手く利用することが攻略のポイントになっています。

今回のデモ版ではギミックを解いていくパズル調のステージと、敵をロープで縛って倒していくバトルテイストとで2種類のステージが登場。ロープを結ぶべき最善のルートをじっくり考えるパズルの魅力と、敵の動きを見ながら素早く立ち回るアクションの要素がどちらも楽しめ、シンプルなルールと適度に“ゆるい”ビジュアルが生み出すカジュアルさが心地よく遊べるゲームに仕上がっていました。

各ステージの目標はイラストで表示。シンプルなゲーム性を生かした手軽さに

この『ロープくんアドベンチャー』を生み出したのは、個人クリエイターのKei26氏。仕事をしながら独学でゲーム開発を始め、本作が2作目にあたります。

開発にはUnityを使用しており、作中のキャラクターイラストは自ら担当。今後はロープの挙動をリアルにしていく調整に加え、硬いロープで敵の攻撃を跳ね返すなど新しいアクションも取り入れていきたいとの開発方針も明かしてくれました。

シンプルで愛らしいデザインも、Kei26さんいわく「本当はかっこいいドラゴンとか描ければ良いのですが(笑)」とのこと

まだゲーム開発を始めて日が浅いこともあり、Kei26氏にとって初参加となったゲームパビリオンjpはデモ版のアピールだけでなく「周りの開発者さんとたくさん情報交換をしたい」と、クリエイターコミュニティ参加の場としても貴重な場に。遠征ではイベント後の懇親会にもなかなか参加しづらい関西圏のクリエイターさんにとっては、各方面からアクセスしやすい大阪・梅田でのイベントならではの魅力もあったようです。

今後はさらなるギミックの追加を検討中

タイトル:『ロープくんアドベンチャー』
開発:Kei26 https://www.kei26.com/
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2024年度中
ジャンル:見下ろし型ロープアクション
プラットフォーム:Steam

福岡発学生サークルが生み出した『ザコのあひる』はメスガキ×登山ゲー⁉

会場内でもひときわポップなビジュアルが目を惹いたのは、福岡発の学生インディーゲーム開発サークルが手がける『ザコのあひる』です。

プレイヤーはあひるのおもちゃとなり、「回転する」と「口から水を吹き出してジャンプする」の2つの操作だけで足場を登っていきます。シンプルなアクションゲームながら、高難易度のアクションに何度もチャレンジしていく“登山ゲー”の要素も持っています。

特筆すべきはチュートリアルやプレイヤー落下時に語り掛けてくるゲーム内ガイド役がいかにも生意気な幼女、つまりは「メスガキ」なキャラクターであるという点。「お兄さんにできるかな?」「ザ~コ」など、定番とも言えるセリフを浴びせられながらのチャレンジはついつい焦りに繋がりますが、人によってはモチベーションアップにも繋がる可能性も考えられる、ユニークなシステムはインパクト抜群。

あひるのおもちゃは素早く回転するため、なかなか狙い通りのジャンプを決めるのは難しく、5回まで空中でもジャンプ可能でありながらチュートリアルクリアも至難の業。公衆の面前でメスガキちゃんの生意気なセリフを聞いている気恥ずかしさも感じつつ、それでも「次はクリアできそう!」と思わせる程よいバランスで、多くの来場者を楽しませていました。

本作を手がけるサークル「FUファイターズ」は福岡県の学生クリエイターコミュニティ「作るっちゃん」から生まれたチームです。メンバーのイラストレーターが生み出したメスガキ調の女の子イラストを使って何かゲームが作れないか?とアイデアを練っていたところ、代表を務める豊田さんが何度もクリアするほどやりこんだ作品『Getting Over It with Bennett Foddy』のゲーム性を組み合わせることを閃いて生まれたゲームなのだとか。

登る壁はシンプルながら空中姿勢の制御が難しく、障害物や水中を生かしたアクションもあり歯ごたえ十分

豊田さんはこれまで主にアンリアルエンジンを扱っていたものの、本作の開発にはUnityが適していると感じたため、冬休みを利用して3週間でC#プログラミングを猛勉強。上級生も集まるチームをまとめての開発は大変なことも多く、途中では「面白くできているのか?」と思い悩むこともあったそうですが、イベントへ出展して「難しくても粘ってプレイしてくださる人が多く、間違っていなかったと感じて嬉しかった」と一定の手ごたえを感じているそうです。

代表の豊田さん(写真右)ら、開発チームの皆さん

今後はステージの充実だけでなくストーリー面や女の子のキャラクター性の掘り下げを目指しており、2024年夏頃のリリースを予定しています。

タイトル:『ザコのあひる』https://store.steampowered.com/app/2879980/ZAKO_NO_AHIRU/
開発:FUファイターズ https://twitter.com/fukuokafighters
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:今夏
ジャンル:高難易度2Dプラットフォームアクション
プラットフォーム:Steam

初開催から1年ぶりとなった今回のゲームパビリオンには100以上の出展が集まり、昨年より大きく規模が拡大しました。好天と穏やかな陽気にも恵まれたこともあって開場直後から多くの人出で賑わい、来場者の中には当日受付でふらりと立ち寄った家族連れや外国人の方も目立ちました。

主催者の方からは「来場者が増えてるだけでなく、出展が集まるペースも昨年よりかなり早かった」とのコメントもあり、クリエイターにもイベントの認知が拡大していることが感じられます。

今回取り上げた作品は奇しくも関西をはじめ西日本を拠点に活動されているクリエイターの方々が開発を手がけているものばかりで、なかなか関東圏のイベントに参加できない方にとっても貴重な機会となっているようです。

「前後に大きなイベントがないタイミングが丁度良いという声もあるので、来年以降も3月で続けていきたい」との展望もあり、今後は春のインディーゲームイベントのひとつに「3月の梅田」が定着していくのではないでしょうか。

「ゲームパビリオンjp」公式サイト「ゲームパビリオンjp準備会」Twitterアカウント
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

関連記事

インディーゲームの「絶対に勝つための必殺技」とは。3名の敏腕プロデューサーが企画・開発・販売について熱く語り合った講演をレポート
2024.04.30
【cluster革命前夜 注目作品インタビュー Vol.03】ゲーム内の体験で、プレイの外にある日常にも影響を与えたい。『The World Echo Seekers』
2024.04.27
メールマガジンに関するアンケートを実施中!ご意見・ご要望をお寄せください【回答期限:5/7(火)午前10時】
2024.04.26
プログラミング不要の「ティラノビルダー」で短編ノベルゲームづくり Vol.1―キャラクターを表示してしゃべらせてみよう
2024.04.25
UE6にはフォートナイト用の言語「Verse」が導入される?GDC 2024のVerse講演から見るアンリアルエンジンの今後
2024.04.22
ゲームサウンド実装、初学者向け。『ハーヴェステラ』開発者がサウンド演出の基本を語った講演をレポート【GCC 2024】
2024.04.22

注目記事ランキング

2024.04.26 - 2024.05.03
1
【2022年5月版】今から始めるフォートナイトの「クリエイティブ」モードープレイ開始から基本的な操作方法まで解説
2
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧
3
『フォートナイト』で動く本格的なゲームが作れるツール「UEFN」とは?従来のクリエイティブモードから進化したポイントを一挙紹介!
4
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.1「アイテム系」
5
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.5「島の設定」
6
【CHALLENGE1】「クリエイター ポータル」を使って、UEFNで作成した島を世界中に公開する
7
まるで『マイクラ』?ボクセル地形を生み出す無料アセット「VoxelPlugin Free」で”地形を掘ったり積み重ねたり”して遊んでみよう
8
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part1
9
UEFNで使えるプログラミング言語「Verse」のノウハウが集結。『UEFN.Tokyo 勉強会 03 Verse Night』レポート
10
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.2「ユーティリティ系」
11
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.8「ゾーン系」
12
【STEP2】UEFNの基本的な使い方を覚えよう
13
フォートナイトとUEFNがv29.30にアップデート。すでに公開した島をプレイできないようにする機能が導入される
14
【CHALLENGE3】UEFNの機能「ランドスケープ」を使ってオリジナルの地形を作る
15
フルカラー書籍「UEFN(Unreal Editor For Fortnite)でゲームづくりを始めよう!」、ついに本日発売!全国書店で好評発売中!
16
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.6「チーム・対戦系」Part1
17
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.10「UI系」Part1
18
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.3「プレイヤー系」
19
【STEP4-1】コース外に出たらデスする仕組みを作る
20
『フォートナイト』で建築ビジュアライゼーション!?UEFNでオリジナルの世界観をどう作り上げたか、その手法を解説【UNREAL FEST 2023 TOKYO】
21
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.4「ゲームシステム系」
22
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.7「NPC系」Part2
23
「UEFN」って実際どうなの? 編集部が3時間で「みんなで遊べるアクションゲーム(?)」を作ってみた
24
【CHALLENGE2-1】フレンドと一緒にゲームを作ろう――UEFNプロジェクトをチームメンバーとリアルタイムで共同編集する
25
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.6「チーム・対戦系」Part2
26
【STEP3】オリジナルのアスレチックコースを作ろう
27
【STEP5-1】スタート時のカウントダウンを作る
28
フォートナイト クリエイティブとUEFNで使える仕掛け一覧 Vol.9「建築物系」Part2
29
【STEP5-2】ゴールの仕組みを作る
30
【STEP6-1】「オリジナルキャラクターを登場させよう」――Fabでアセットをダウンロードしよう
VIEW MORE

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

リグ(Rig)
リグ 3Dモデルを動かす場合に、すべてのボーンを編集するのではなく、少ない編集箇所で直感的に動作などを付けるために作られたコントローラーやコントロールする仕組み。 またスケルトン自身をリグと呼ぶ場合もある。
VIEW MORE

Twitterで最新情報を
チェック!