2024年11月30日(土)、インディーゲーム開発者向けカンファレンス「Indie Developers Conference 2024」が東京・新橋で開催されました。
本記事では、アクティブゲーミングメディアのJames Davis氏、上杉 舞結氏が登壇したセッション「失敗しないローカライズ依頼のTIPS!企業への依頼からフリーランスへの依頼まで」をレポートします。
2024年11月30日(土)、インディーゲーム開発者向けカンファレンス「Indie Developers Conference 2024」が東京・新橋で開催されました。
本記事では、アクティブゲーミングメディアのJames Davis氏、上杉 舞結氏が登壇したセッション「失敗しないローカライズ依頼のTIPS!企業への依頼からフリーランスへの依頼まで」をレポートします。
TEXT / HiMiKo
EDIT / 浜井 智史
登壇したのは、アクティブゲーミングメディアで翻訳のPMチームリーダーを務めるJames Davis氏と、同社の営業部に所属する上杉 舞結氏。
同社はゲームのローカライズ事業を手がけているほか、インディーゲームパブリッシャー「PLAYISM」やゲームメディア「AUTOMATON」の運営など、幅広い事業を展開しています。
はじめに、最近の情勢的に避けては通れない話題として「AI翻訳」が取り上げられました。AI翻訳は一般的に時間短縮・コスト削減が可能とされていますが、翻訳の品質やセキュリティ面については懸念があると指摘されました。
品質面においては、AIでは日本語の細かなニュアンスや言い回しが拾いきれず、またキャラクターごとに口調を統一するのも難しいといいます。明示されていない制作者の意図や、作品の世界観を加味した独創的で品質の高い翻訳を生み出せるのは人間だけだと語られました。
「AIの深層学習」は高精度なイメージがありますが、万能ではありません。AI翻訳だけで済ませず、専門家による校正作業「バックトランスレーション(逆翻訳)」の依頼が推奨されます。また、AI翻訳は二次使用リスクもあるため、利用する際にはセキュリティ面に注意を払いつつ、高い語学力を持つ人間が全体の監修を行うべきだと述べていました。
本セッションのメインテーマである「翻訳の依頼先」について、翻訳会社/フリーランスそれぞれの特徴や長所/短所が述べられました。
最大の違いは価格帯。日英翻訳の場合、フリーランスの相場は1文字あたり約4~8円であるのに対し、翻訳会社は約10~16円と大きな差があります。
翻訳会社は、依頼に沿ったゲームジャンルが得意な翻訳者をアサインしたり、チェッカーを通した翻訳漏れ防止の体制が整っていたりと、翻訳の品質が担保できる半面、費用はフリーランスより高額になりがちです。
フリーランスは、近い距離でやり取りできるため迅速な対応が可能であるほか、納期の調整しやすさ、契約手続きの身軽さが利点である一方、専門による品質チェックや、納品トラブル・情報漏洩リスクを回避する仕組みなどは依頼する側が準備する必要があります。
適切な依頼先を判断するにあたっては「予算」や「納品物のセルフチェックが可能か」が特に大きなポイントとなります。そのほかの判断材料を挙げると、知人などの伝手で翻訳を頼める人が見つかる場合や、ストーリーにこだわりがあるためイメージに合った翻訳者を探したい場合などはフリーランスが推奨されます。
一方、翻訳会社はスケジュール管理や品質チェックを一括で依頼可能なほか、多言語対応において言語ごとに翻訳者を探して交渉するといった負担が軽減できると語られました。
フリーランスの翻訳者に依頼するルートは「ホームページ」「SNS」「イベント」の3パターンが紹介されました。
ホームページから依頼する際は、見積もりに必要な翻訳言語・文字数を必ず記載したいと語られました。
SNSは「ダイレクトメッセージ(DM)で直接依頼する」「募集告知を打つ」「依頼用のメールアドレスを掲載する」などの用途で使われます。腕の良いフリーランスは引く手あまたなので、仕事を頼みたいなら積極的なアプローチが求められます。
ゲームイベントなどで翻訳者を探す場合は、会場で翻訳者・業界関係者や、翻訳を依頼した経験のある開発者と交流し、概算費用の事例といった有益な情報が得られることも期待できます。
いずれの方法を取るにせよ、フリーランスに依頼する際は、翻訳者の過去作やポートフォリオを分析し、翻訳の傾向やスキルを見極めることが重要です。
より確実な手段としては、トライアルを行うことで対応の細やかさやツールの使用有無などを把握することもできます。また、翻訳完了後にテキストを依頼元でチェックできる体制も必須となります。
翻訳依頼の注意点として「データ送付用のファイル形式の確認」「設定資料集の用意」「納期の設定」の3点が示されました。
データはExcelやCSVファイルでの送付が推奨されます。一方、PO(Portable Object)ファイルやPDFファイルの使用は避けるべきと述べられました。
POファイルは翻訳者がストーリーや会話を追いづらく、PDFファイルは翻訳ツールで読み込む際に文字化けが起きやすいことが送付に適さない理由。なお、ファイル形式の変更は翻訳会社側でも対応可能とのことで、手元で用意できない事情がある場合は依頼先の会社へ確認するのが良いと語られました。
世界観/キャラクター/アイテム/オリジナルの地名などを説明した文章や画像、収録済のキャラクターボイスといった資料を提出することで、翻訳者が作品を理解する助けになり、スムーズな翻訳が可能となります。
双方の認識のズレを抑えるためにも、渡せる資料はできるだけ提出し、開発者の意図を正しく翻訳者に伝えるのが良いと述べられました。
納期には余裕を持たせるのが安全です。締切までの期間が極端に近いと、翻訳を請け負った側は期日に間に合わせるため複数人で作業を進める場合もあり、品質にばらつきが生じる要因となります。また、誤訳・翻訳漏れも発生しかねません。
標準的な翻訳ペースは1日あたり約3,000字だといいます。必要な日数をあらかじめ計算し、余裕をもって依頼をしてほしいと呼びかけられたのち、本セッションは締めくくられました。
ゲームローカライズの実務に携わる担当者から、実際に翻訳を依頼する上でのTIPSがたくさん語られた本セッション。ゲームの翻訳依頼を検討する開発者にとって非常に参考になる内容が満載でした。
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