「ゲームマーケット2024秋」レポート【前編】初の幕張メッセで年末の新作ボードゲームを先行プレイ

2024.12.03
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アークライトは2024年11月16日(土)と17日(日)、千葉・幕張メッセにてアナログゲームイベント「ゲームマーケット2024秋」を開催した。

ゲームマーケット」は、ボードゲームをはじめ、カードゲームやテーブルトークRPG、謎解き、マーダーミステリーといった、基本的に電源を必要としない「アナログゲーム」が一堂に会するイベントで、すでに20年以上の歴史がある。

今回は幕張メッセに会場を移し、4つのホールを使って開催。2日間で合計1,239ものブースが出展した。

本記事では幕張メッセ初開催となったゲームマーケットがどんな様子だったか、気になったブースやゲームを中心に前後編に分けてお届けしよう。

なお、前編では幕張メッセ会場の様子と企業ブースの紹介、後編では一般ブースの紹介と特設ブースの様子を中心にレポートしている。

TEXT / 松井 ムネタツ
EDIT / 浜井 智史、酒井 理恵

目次

今回から開催場所が幕張メッセに

ゲームマーケットは通例、1年間で3回の開催を基本としている。東京では春/秋に1回ずつ、計2回の頻度で開催されてきた。2012年までは東京都立産業貿易センター台東館、2013年以降は東京ビッグサイトと、その規模はどんどん大きくなり、今回の「2024年秋」は幕張メッセでの開催となった。

出展しているのは、企業のブースだけでなく、個人や同人サークルによる出展が8割以上を占めている。その数はどんどん増えている。

今回の来場者数は、16日(土)が15,000人、17日(日)が11,000人、2日間で合計26,000人と発表された。「ゲームマーケット2024年春」は25,000人だったので、1,000人増えた形だ。

1日目の入場待機列。10時30分(11時開場)の段階で1,500人ほど並んでいた

会場を幕張メッセに移した理由の1つに、じつは東京ビッグサイトが2025年1月から大規模改修工事に入るという事情がある(2026年まで展示棟ごとに半年程度の休館、2027年と2028年は1月から2月中旬まで全館休館)。

ゲームマーケットは一足早く会場を移行した形となり、次回の2025年春も幕張メッセでの開催が決定している。ビッグサイトの改修工事があと3年ほど続くことを考えると、当面はこのまま幕張メッセでの開催となりそうだ。

ボードゲームメーカーによるエリアブースは、年末の新作を先行発売!

まず紹介するのは企業ブース。同イベントでは「エリアブース」と呼ばれるこの企業ブースでは、多くの企業が年末に向けて新作を先行発売したり、来年リリースする新規タイトルを発表したりと、さまざまな話題が飛び交う2日間だった。

70以上の出展があったエリアブースの中から、ここではエリア番号順に20ブースを紹介していく。
※ なお、見出しにある「エリア○○(○○は数字)」は出展していたエリア番号を意味している

エリア01:アークライト

同イベントの主催でもあるアークライトのブースでは、『レンソービンゴ』『ディング』『テラフォーミング・マーズ拡張 プレリュード 2』が先行販売。今年11月に発売されたばかりの『ギフトクラフト』、『ワイアームスパン』あたりも好評を博していた模様。

先行発売タイトルのひとつ『ディング』。前の手番の人が出したカードと色または数字が同じものを提出していき、手札を使い切れば勝利するパーティーゲーム

17日には『ギフトクラフト』のゲームデザイナーN2氏とイラストレーターOBOtto氏によるサイン会が行われた。なお一番乗りはゲームデザイナーかぶけん氏(ゲームNOWA)

今回はブースの半分が試遊コーナーとなっており、スタンプラリーを実施していた影響もあって客足が多く、絶えず行列ができていた。

試遊コーナーや新作展示コーナーは大盛況

商品化を前提に評価する年1回の「アークライト・ゲーム賞」受賞作も発表。今回は『バザールの商人たち』が最優秀賞を獲得した

エリア02:Sui Works

初のエリア出展となる福岡のデザインスタジオ Sui Worksは、ワーカープレイスメント(※)の中〜重量級ゲーム『EAUCHEMIN オーシェミン』などを販売。また、来年春に発売予定のドラフト式タイル配置ゲーム『デソリト』も展示していた。ボードやタイル、コマなど、とにかくコンポーネントが美しい。
※ コマを配置することでアクションの実行権などを獲得するゲームシステム

エリア15:トキキル

謎解き専門アパレルブランドのトキキルが「ゲームマーケット2024春」に続いて出展。

このブランドの服は一見すると普通のデザインだが、じつはデザインの中に「謎」が仕込まれている。それを解くことで初めて服が購入可能となる仕組みだ(買わずに謎を解くだけでもOK)。

通常はポップアップストアのみ展開しており、通販は行っていないため、こうしたイベントは購入できる絶好のチャンス! ブースは2日間とも大きな賑わいを見せていた。

エリア16:ライブレイジ

タイムボム』『菓子道』をデザインした佐藤雄介氏の新作『CRAFT BEER FEST』を出展。クラフトビールを模したコマがとても可愛いエリアマジョリティ(陣取り)ゲームだ。

エリア25:Engames

Engamesは富山のボードゲーム専門店で、同時にボードゲームの出版事業も手がけている。海外で生まれたさまざまな傑作ゲームの日本語版を積極的に展開し、熱心なボードゲームファンから人気を集めている。今回は新作『TRIO(トリオ)』『ヘゲモニー』などを出展していた。

『TRIO(トリオ)』は、「アスドール・フランス年間ゲーム大賞 2024」の大賞受賞作。日本人の宮野華也氏がデザインしたカードゲーム『ナナ』の海外版で、アートワークが一新されたほか、ルールも少し変更されている。『ナナ』好きなら『TRIO(トリオ)』もチェックしておきたい。

エリア27:グループSNE

古くはTRPG、いまやマーダーミステリーで有名なグループSNEだが、ボードゲームでも『テストプレイなんてしてないよ』や『シャドウレイダーズ』など数々のヒット作を送り出している。

会場では、マーダーミステリー『<三月のうさぎ>の鬼探し』や『ケイヴァー 洞窟の煌めき』のほか、ボードゲームでは『そういうお前はどうなんだ? 異世界転生編』やリニューアル版『ギャンブラー×ギャンブル!!』(作者は『TRIO』の宮野華也氏)などが先行販売。そのほか多数の作品が並んでいた。

エリア28:itten

ユニークなコンポーネントを使ったゲームが多いittenは、新作2タイトル『グラビティースリー』『四ツ角探偵』の試遊・先行販売を実施。

『グラビティースリー』は、重さが異なる1~5のピース×3色を使った合計3種類のゲームが収録されたもので、最大3人でプレイできる。

『四ツ角探偵』は、カードの四隅を指で触り、角の丸み「角R(※)」の違いを見極めるという、指先感覚が試されるゲーム。
※ 角のカーブの大きさを表す寸法。カーブを円の一部とした際の半径の大きさを参照する

画像右側に置かれているのが『グラビティースリー』、左側が『四ツ角探偵』

エリア29:SUSABI GAMES

デッキ構築型戦略シミュレーション「HacKClaD」シリーズに、LCG(Living Card Game)型の対戦カードゲーム「アイドルアライブ」シリーズ、2つの大人気タイトルを持つSUSABI GAMESは、それぞれのシリーズの拡張版を先行発売(そして開場と同時に大行列)。

HacKClaD. DeltA』は本作単体で遊べる独立拡張セットで、対戦・協力・ソロプレイが可能。

アイドルアライブ ステラビーツ』はアイドルが3人追加される拡張セット。『アイドルアライブ』本体に組み合わせる形でプレイできる。

『アイドルアライブ ステラビーツ』は、アイドルがライブステージで楽曲を披露したり、ファンサービスを送ったりと駆け引きを繰り出し、ファンを取り合う対戦ゲーム

エリア37:ジーピー

「カタン」シリーズ「ウボンゴ」シリーズをはじめ、各種ボードゲームやカードゲームなどを出版しているジーピー。話題の『カタン エネルギー版』は、現地販売はなかったものの、会場で先行予約(限定100個)が可能だった……が、開場20分で受付終了となった。

なお、『カタン 3D版』(定価4万円以上!)が当たるお馴染みの1,000円ガチャも実施され、いつものように大行列となっていた。

また、『ギャングポーカー』が和訳付き海外版として販売された。テキサスホールデムをもとにした協力ゲームで、全員の手札のランキングを予想し、合計3回的中させればクリアとなる。日本語版の発売は2025年を予定している。

エリア38:JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟

エリア出展しているブースは開場とともにどちらも人気だったが、そんな混雑ブースの中でも異彩を放っていたのが日本鉄鋼連盟のブースだ。出展したボードゲーム『リサイクルハンター』は、ゲームデザインにカナイセイジ氏(代表作:『ラブレター』『アールライバルズ』など)を迎え、鉄のリサイクル性や環境優位性を学べる本格派な内容となっている。全国の学童等に寄付するために作られた非売品なのだが、クイズに答えると抽選で200名に無料プレゼントが行われ、大いに注目を集めていた。

エリア45:JELLY JELLY GAMES

ボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」を全国展開しているピチカートデザインのボードゲームブランド「JELLY JELLY GAMES」は、3タイトルを先行発売。『トロッコタウン』はタイル配置+拡大再生産、『FIXER』はゲーマーに人気のトリックテイキング(場に出されたカードの優劣で決まった勝者が、場のカードを獲得する)をベースにしたゲーム、『YUBIBO』は指で棒を支え合う協力型バランスゲームというラインナップだった。

エリア47:TERIYAKI GAMES / ヨフカシプロジェクト

ブシロードクリエイティブのTERIYAKI GAMESと、ヨフカシプロジェクトのブースでは、多数の新作が先行発売されていた。まずTERIYAKI GAMESからは3作品。『レロレロ最終列車』、『神経が衰弱するデスクトップゲーム』、『恐れ入りますが、こちらの一言で危機を回避させていただいてよろしいでしょうか?』といずれもみんなでワイワイと遊べるカジュアルパーティーゲーム。KONAMI、ドロッセルマイヤーズ、ブシロードクリエイティブの合同プロジェクトであるヨフカシプロジェクトからは、『まっぷたツートンソウル2』と人気シリーズ「キルタイム・キラーズ」の最新作『キルタイム・キラーズ THE BOARD GAME 真明市連続殺人事件』を先行発売。

エリア48:Saashi & Saashi

Saashi & Saashiは新作『午前1時の大脱走』をイメージしたブースでタイトルをアピール。手札を最初に出し切ったプレイヤーが勝利というわかりやすいルールながらも手札管理の悩ましく、先行体験会などで人気が高かった一作。

エリア60:ホビージャパン

老舗アナログゲームメーカーであるホビージャパンは、ブース内の半分をスクウェア・エニックス エリアに。カナイセイジ氏がゲームデザインを手がけた『ファイナルファンタジー モーグリ6兄弟のモブハント ボードゲーム』の先行販売および試遊を実施。ホビージャパン エリアでは、新たな言語でコミュニケーションを行って文明を発展させる協力ゲーム『エスペライゼーション』を数量限定で先行販売。その他、イベント限定の拡張セットやワケアリ品(箱にダメージありなどでお買い得価格に)を出展。

エリア61:オインクゲームズ

オインクゲームズは、全世界で大ヒットした『海底探険10周年を記念して、パッケージの潜水艦をイメージしたバルーンをブース上に設置。場内のどこからでも見ることができた。新作は、バージョンアップ版となる『海底探険 深版』と、変形スゴロクの『ベネチアのおみやげ』。ブースでは旧作含めて多数のタイトルが購入でき、オインクゲームズのゲームの箱に入るトレイや、Tシャツ、ハンカチ、ピンバッジなど、オインクグッズも売られていた。

エリア64:ドイツゲーム喫茶 B-CAFE

兵庫県にあるボードゲームカフェ「B-CAFE」のボードゲームレーベル「B-CAFE GAMES」は、これまで「みんなでメイキング」シリーズなどをリリースしてきた話題のレーベル。新作は大喜利系ゲームの『すごい!自己啓発本を作るゲーム』で、指定されたターゲット層に、意識の高い単語を並べて表紙をデザインしベストセラーを目指すというもの。

エリア65:グランディング

デジタルゲームの開発会社でもあるグランディングは、ドイツ年間ゲーム大賞2015(Spiel des Jahres 2015)にて『街コロ』がノミネートされたことで、ボードゲーム業界にその名を轟かせた。今回の新作は『どうぶつ食堂』で、個性的などうぶつたちの能力を使って、もっとも人気のあるお店にしていく。どのどうぶつカードをどういうシフトで働かせるかがカギとなる。また、『街コロ』『街コロ通』のデジタル版として2024年7月に発売された『みんなと街コロ』(プラットフォーム:Steam / Nintendo Switch)の試遊コーナーもあり。

エリア70:ForGames & SUNNY BIRD

合同でブースを構えていたForGamesSUNNY BIRD。まずForGamesは『ハリコッツ新版』と、経営者として価格・需要・生産量のバランスを考えながらプレイしていく『フューチャー・インク』、AIが作ったボードゲーム『エッグ リリース・オブ・ヤバラス』の3タイトルを先行発売。

SUNNY BIRDの先行発売タイトルは、フリードマン・フリーゼ氏のトリックテイキング+デッキ構築の『Fischen』の日本語版。こちらは事前に遊ぶ機会があったのだが、さすがフリーゼ氏とうならざるを得ないものだった。氏のファンやトリックテイキング好きはぜひチェックしてほしい。

エリア71:CMON

「ゾンビサイド」シリーズなどミニチュアを使ったゲームを多数リリースしているCMONは、古今東西のヒーローたちがヴィランを倒す協力ゲーム『アンマッチド:アドベンチャー テイルズ・トゥ・アメイズ 日本語版』を先行発売。次に発売してほしい「アンマッチド」シリーズを聞くアンケートも会場で行っていた。

『アンマッチド:アドベンチャー テイルズ・トゥ・アメイズ 日本語版』のコンポーネント

Kickstarterでクラウドファンディングを実施した1人用ボードゲーム『ファイナル・ガール』の展示も行っており、その内容も確認できた。

エリア72:リゴレ

リゴレは横浜中華街のそばにあるボードゲームショップ。『アンダーカバー』や『ニムト』 のヴォルフガング・クラマー氏が1996年に発売した『HOTDOG』を、長谷川登鯉氏のアートワークでリメイクしたものが会場で先行発売されていた。カードに描かれたホットドッグのおいしそうなこと!

▼「ゲームマーケット2024秋」一般ブースの新作や特設ブースの様子をレポートした後編はこちら

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松井 ムネタツ

パソコンゲーム雑誌、アーケードゲーム雑誌、家庭用ゲーム雑誌を渡り歩き、現在はフリーのゲーム系編集/ライター。マイベストゲームは『ウィザードリィ 狂王の試練場』で、最近だと『Forza Horizon』シリーズに大ハマリ。メインPCはAlienware Aurora。セガ・レトロゲーム系メディア「Beep21」副編集長をやりつつ、ボードゲームメディア「BROAD」編集長も兼任。

「BROAD」Webサイト

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