2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2024」。第9会場では数々のインディゲームが展示されており、来場者の注目を集めていました。今回はその中からCicada Gamesが開発するパズルアクション『空と海の伝説』をお届けします。
TEXT / HATA
目次
子供のころ向かいに住んでいた友人たちが再開してゲーム開発を開始
本作はインタビューに答えてくれたジェイソン・ニューマン氏(以下ジェイソン氏)と、プロデューサーのダン氏、ミュージックコンポーザのクレイグ氏の3人で開発していますが、ダン氏とクレイグ氏は兄弟でジェイソン氏が子供のころ家の向かいに住んでいたそうです。大人になった今、彼らは再開し、ゲームを作り始めたそうで、メンバーの結成自体もドラマチックです。3人はクラウドファンディングを成功させ、この開発に真剣に取り組んでいったと言います。
日本のゲームからインスパイアを受けた倉庫番ライクなパズルアクション
アートスタイルはゲームボーイカラーの『ゼルダの伝説』に影響を受け、ゲームデザインはメトロイドヴァニア、音楽は「ドンキーコング」シリーズや『スーパーマリオ64』と90年代の日本の数多くのゲームからインスパイアを受けつつも、見事に独特の世界観を作り出した本作について開発者に話を聞きながら、プレイをしました。
本作は、パズルアクションで、いわゆる倉庫番ライクなスタイルになっています。ドット絵で描かれたステージにちりばめられた岩を押して道を作り、不思議な音色を奏でる3種類の鐘を叩くことで道を開いたりとシンプルながらに考えることが楽しいゲームデザインになっていました。
難しいパズルより面白いパズル
このゲームデザインは意図して作られたもので、ジェイソン氏は、人がプレイするのを何度も見てトライ&エラーをして、ベストな難易度にしたとのことです。デザインについては、「難しいパズルより面白いパズルのほうがいい 」というコンセプトのもとにデザインをしたとのことです。
本作はオープンワールドになっており、パズルを解かないと進めないステージもありますが、解かずに進むこともできます。このため、詰まってしまうことがなく他のステージのパズルを解く中で、前のステージの解き方を思いついたり、ギミックによって進める設計になっています。これは先に進もうという意欲を引き起こすことにつながっていると感じました。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズの「One More Turn」の概念を表現
ジェイソン氏は本作のレベルデザインとして、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」シリーズのコンセプトである 「One More Turn 」の感覚を出したかったと言います。プレイヤーには多くの目標があり、達成するために多くの選択肢が用意されていることや、画面上部に収集したアイテムを表示し進歩を実感できるようにしています。このゲームには大小さまざまな目標があるので、小さな目標達成が大きな目標達成へとつながっていくので、プレイを続けたくなる狙いもあったとのこと。
また、パズルがモジュール化されているため、いつでも簡単にプレイを中断することができ、中断したところから再開できるのも良い点だと語りました。また、90年代のノスタルジーなドット絵のデザインと自然豊かなステージの風景も心を惹く要素になっています。
GameMakerで作られている本作は、3人で趣味から始めたプロトタイプに価値があるのかを試すため、クラウドファンディングで資金を募ったところ大成功し専業開発に移ったとのことで、その計画はSteamでも高い評価を得ており成功していると言えるでしょう。ジェイソン氏は今後は他コンソールへの移植もしたいと語っています。
最後に開発について他のクリエイターに自身の経験からアドバイスを求めたところ、ジェイソン氏は、「定期的にプロジェクトから一歩引いて、これまで自分が何を成し遂げてきたかを振り返ってみることだ」と語り、「特にゲーム開発では、完成までにとても時間がかかるため、自分がどこまで到達したかを見渡すのはとても難しい。一歩引いて、特に開発中に自分のゲームをプレイしている人(それが親しい友人でも)を見ることで、自分が本当に何かを成し遂げているという実感を持つことができた。それは私の自信とモチベーションにとってとても重要なことだった」と述べました。
イベントでプレイヤーが詰まるところを改善したり、共に楽しんだりすることができるのは展示会の良さではないでしょうか。東京ゲームショウに参加する方は、ぜひこの『空と海の伝説』をプレイしてみてください。Selected Indie 80 A24で皆さんを待っています。
『空と海の伝説』Steamページ東京ゲームショウ2024公式サイト5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れてゲームライフが始まる。2000年代にノベルゲーム開発を行い、異業種からゲーム業界に。ゲームメディアで記事執筆を行いながらゲーム開発にも従事する。
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