2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている『東京ゲームショウ2024』。今回はホール10にある[Selected Indie 80]コーナー A07の「アトラクチャー」が開発する、生物進化のメカニズムをコンピュータ上で再現したシミュレーター『ANLIFE: Motion-Learning Life Evolution』を紹介します。またこのシミュレーターの開発者 中村政義氏に、どうして人工生命シミュレーターを開発しているのか、このシミュレーターでどのような世界を目指しているのかを聞きました。
進化する命が愛おしくなる人工生命シミュレーター『ANLIFE: Motion-Learning Life Evolution』。15年続く開発で目指す本作と世界の進化先を聞く【TGS2024】
TEXT / 田端 秀輝
世界に適応するよう学習し、進化する生命の作り方
本タイトルは、プレイヤーは神となり、物理エンジンベースの世界で仮想生物が進化していく様子を楽しむ作品です。といっても具体的なゴールがあるゲームではなく、世界に人工生命を誕生させ、食物を与え、時には地形や環境を変え、生物の学習や進化を見守り、その様子を楽しむというシミュレーターです。
それでは、プレイの様子を見ていきます。
まずは生物を作ってみましょう。アイコンを選択して、誕生させたいところをクリックすると…
立方体がつながってできた生物が誕生しました。
生物は、ボディに付いた手足…のような立方体を動かして移動します。生物の手足がボディのどこについているか、何個付いているかは様々で、数が多かったとしても、物理エンジンの世界で動かしづらい、バランスのとりづらい付き方のこともあります。そんな中で、生物はバランスが取れるような動き方を学習していきます。
次に、生物を複製させてみましょう。自己複製を促すエサを生物の近くに撒けば、エサのところにたどり着いた生物は増えていきます。
この時、ボディに繋がる立方体が増える(時には減る)ことがあります。これが進化です。増える立方体は、手足(のような立方体)の先に増えることもあれば、ボディの別の部分にくっつくこともあります。また、複製時に突然変異的な体が変わることもあります。こうやって、生物に種の多様性が生まれていきます。
生物には、頭上の数字で表現されるエネルギーがあり、これが尽きてしまうと消えてしまいます。そこでプレイヤーは力尽きないようにエネルギーが回復するエサを撒くことができます。
しかし、移動スピードが遅いため、エサまでたどり着かけなかったり、先に他の生物にエサをとられてしまったりしたら、やはり力尽きてしまいます。生物が生き延びていくには、学習と進化が重要ということです。
立方体だけでなく球で構成された種、手足が伸びる種、水の中で生きていく種、空を浮かぶ種、空を飛ぶ種を生み出すことも可能です。
プレイヤーは、エサの回復量やエサの認識距離、浮力や重力など、生物の個々にだけでなく全体に関わる内容も変える事ができます。
また、プレイヤーは世界を変える能力も持っています。山あり谷ありの世界にする・海面を上下させるなど地形を変える能力や、隕石を飛ばして生物にぶつけようとすることもできます。
エネルギー回復のエサと自己複製のエサをたくさん撒けばカンブリア大爆発のように生物種が増えていく環境になります。
そんな生存競争が激しい世界であっても、筆者はぴょこぴょこ動く種が誕生した時にはその命が愛おしくなり、「かわいい」と声をあげて応援しながら、その生物の周りにエサを重点的に置くなど大切に育てようとしました。
様々な種を増やして強靭な生命体を残していくか、自分の好みの種を愛でていくか、体験する人それぞれのスタイルで楽しめそうなシミュレーターです。
シミュレーターでまだ見たことのない生物の形を、人工生命がいる世界を目指す
中村氏に本タイトルを開発した意図を聞いたところ、「僕らがまだ見たことのない生物の形を見てみたい」というところが元々にあると答えてくれました。
我々が知らない、存在するけれど発掘されていない生き物の形もシミュレーションすれば実現させることができると、中村氏は本タイトルの前身となる人工生命シミュレーターを2009年から開発し続けています。
とは言え、続けるには開発費の問題もでてきます。そこで、人工生命との接点がない人にも未知の生物というものを楽しんでもらいやすい、興味を持ってもらいやすい、そして開発費を回収しやすいということで、ゲームとして開発をしているとのことです。
中村氏も知らない生物が生みだされていくのを見てみたい、さらに研究者として一緒に作ってくれる「同士」も増やしたいというのも期待しているそうです。
「センス・オブ・ワンダー ナイト(SOWN) 2024」にて「実験性の高さ」で高評価を受ける本タイトル。
リリースに向けてどの段階であるか中村氏に聞くと、なんでも自由にやれるというシミュレーターである本タイトルは、東京ゲームショウのような場面であれば解説があるから面白いところが伝わるが、それがないと難しい部分もあるとデモプレイを通じて実感。面白さが伝わりやすくするための設計が必要であると感じたと述べました。
一方で、リリースしてフィードバックも欲しいという点もあり、今年中のリリースを目標に動いているということでした。
そんな中村氏は、本タイトルが広まることで、現在は人間が進化の頂点にいる時代であるとも言えるが、その進化の先にはAIや人工生命がいる時代もくるのではないかと「中二病ながら」思っていて、そんな未来への架け橋になればという想いがあるそうです。
本タイトルでは神の視点で人工生命を飼育することができます。さらに意図的に厳しい環境にして強い生命体を選別したり、直接的に岩を投げつけたりするということもできます。今の時代ではそういったことも楽しみとして受けとらえられるけれど、20年後、100年後には技術の進歩によりAIや人工生命が普通に我々の生活の中にいて、その時代には価値観や倫理観も変わるのではないか、と中村氏はいいます。
「100年後から見たら残酷でひどいゲームではないかと言われるのも、歴史としては面白いのではないか」と、シミュレーターの中の生命の進化だけではなく、この世界の進化と価値観をも視野にいれた本タイトル。今後本タイトルがどのように進化していき、ゲームを楽しむプレイヤー、ひいてはこのプロジェクトを進めていく「同士」が増えていくか、楽しみに待っています。
『ANLIFE: Motion-Learning Life Evolution』公式サイト東京ゲームショウ2024公式サイト「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。
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